光の四妖精   作:松雨

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今話はフランドール視点です


姉からのお願い

 お姉さまのように積極的ではなく、むしろ館の地下室(自室)に好き好んで引きこもるタイプの私にとって、紅魔館の主の役職は一時的であれ、猛烈に嫌なことである。

 

 しかし、自分を含む紅魔館の住人たちが安寧を得られているのも、お姉さまがその重責を一手に担ってくれているから。

 

 ド派手な姉妹喧嘩だってするし、互いに酷い悪口を言ったりすることもあるし、お願い事を一蹴したりで雑に扱う時も、勿論ある。

 性格だって、自身とまるで合わないものにも関わらず、お姉さまは全く私を嫌わない。

 

 他にも挙げればキリがないくらいに、私はお姉さまに守られ助けられているのだ。

 

 今日みたいに、親しい誰かと外に息抜きで遊びに行った時くらいは、妹たる私が代わりとして引き受けて然るべきだろう。

 

 今となっては、たった1人のお姉さま(家族)。もう居ないお母さまやお父さまと同等かそれ以上に、強い家族愛を以て接してくれるお姉さまが居なくなった世界なんて、想像したくもないのだから。

 

「お姉さま、随分楽しんでるみたいね」

「そのようですね、妹様」

「本当、妖精に対する肩の入れ様はいつ見ても凄いわ。気持ちはまあ、理解できるけど」

 

 それはそうと、館を発ってから大分経っているけど、お姉さまたちが遊びから帰ってくる気配が全くなかった。

 

 行き先は確か、魔法の森の奥地にあるらしい古代遺跡。お姉さまや咲夜、霊夢や魔理沙が絶賛する程に料理上手な妖精、メノウの生まれ故郷だ。

 

 魔法の森が相応に面倒な性質を持つ場所である上に、目的地がその森の奥地にあるとなっては、移動するだけでも時間を食ってしまうのは想像が容易い。

 

 遺跡内部だって、咲夜の能力で拡張されている紅魔館を遥かに凌駕する広さ、もしくは多数の面白く興味深いものが発見できた、またはその両方の可能性がある。

 

 もしそうならば、時間がかかるのも至極当然のことと言えるだろう。

 

「今日に限って言えば、やることなくて暇なのは良いことだわ。面倒な来客もないし」

「一応、霊夢や魔理沙はついさっきまで来ていましたけど」

「あー……まあ、あの2人は特別枠みたいなものよ、咲夜。面倒には該当しないわ」

「なるほど。確かに、妹様とも交友関係ありますしね」

 

 今の時間は夜8時過ぎだから、流石にもう面倒事は来ないはずだ。とは言うが、来ない確率がゼロではない以上、時間が伸びれば伸びる程確率はどんどん上昇していってしまう。

 

 お姉さまには思う存分羽を伸ばして欲しい思いもあるけど、早く帰って来て面倒から解放して欲しいとも思っている。勿論、実際に口に出すことはないけども。

 

「ただいまー! フラン、今日はありがとうね。助かったわ!」

「えっ――」

 

 そんなことを考えながら、お姉さまの自室で本を読みながら咲夜とのんびり過ごしていると、いつの間にか帰ってきてたらしいお姉さまが、部屋の中に元気いっぱいな感じで入ってくると、いきなりハグしてきた。

 

 恥ずかしさとかもあって、大体は素っ気ない態度を取ってしまうのだけど、こうされると嫌な気分が吹き飛んで幸せな気持ちになれる。

 

 お姉さまも、そんな私の内心を全て理解しているから、今日もお願い事を聞いてあげた時のお礼の1つとして、やってくれたのだろう。

 

「うん、どういたしまして。結構楽しんできたみたいだね」

「ええ! 色々と話したいこととかあるんだけど、付き合ってくれるかしら? フラン」

「勿論。いくらでも、お姉さまの気が済むまで付き合うよ」

「ありがとう。それで、咲夜も暇なら聞いてって欲しいわ」

「はい、お嬢様がお望みとあらば」

 

 ちなみに、今日の目的である古代遺跡探検は相当楽しかったらしく、その表情はとても晴れやかであり、ご機嫌な時特有の仕草もいくつか見せている。

 

 光の四妖精に妖精軍団、二大妖精長と行ったからと言うのもあるだろうけど、古代遺跡とやらが心をがっちりと捉えた凄い場所でなければ、こうはならない。

 

 一体、どれ程の場所だったのだろうか。ニコニコなお姉さまの話を聞くのが楽しみだ。

 

(……へぇ)

 

 そうして口を開き、まるで妖精かと言わんばかりの高いテンションで話し始めたお姉さまの話は、私でも興味を引かれるくらいには凄かった。

 

 古代遺跡……最深部に居た守護者(妖精)曰く、妖精たちの理想郷(フェアリーズユートピア)と言っていたらしいそれは、1日ではとても探検しきれる広さではなかったみたいだ。

 

 また、その名の通り内部には多数の妖精たちが住んでいたようで、特殊な植物や動物以外……人間や妖怪などの存在は影も形も見られない。

 

 最深部に関しては、紅魔館の敷地に霧の湖を足しても足らない程に広い()()()で、昼夜のサイクルや天候の変化もあると言う。

 

 お姉さま曰く、どこかにあった妖精の里ないし町をそのまま持ってきたのかと、守護者に招かれて実際に目の当たりにした際に思ったとのこと。

 

 異世界からやって来たみたいだけど、そんな大層なものを人工物の内部に用意できるとは、理想郷の製作者と技術は流石としか言い様がない。咲夜の能力みたいに、空間を拡張できる魔法なり能力があるのだろうか。

 

「へぇ、メノウがそこの主に? 生まれ故郷だから……いや、それだけだと理由としては弱すぎるし、他にもあるでしょ?」

「そうなのよ。幻想郷に来た当初は崩壊しかけてたらしいんだけど、メノウが生まれたお陰で数ヵ月で回帰できたとか」

「なるほど。じゃあ、メノウは実質一大勢力の主になったも同然なんだね。あっ、そうなるとサニーたちも主みたいなものかも?」

「間違いないわ。それに、守護者のメノウに対する忠誠心……背格好もそうだけど、咲夜を彷彿とさせたわね」

「えっと……お嬢様、私ですか?」

「ええ。だから、もしメノウに何かあって、それを守護者が知れば……」

「必ず表へ出てくると、そう言いたいのですね」

「そう言うこと。まあ、メノウを酷く痛めつけようなんて輩は守護者が出張る前に、処されて終わるでしょうけど」

「何かと交遊関係深いもんね、あの子」

 

 それに、知らぬ間とはいえ崩壊寸前の一大勢力を手助けして回帰させ、あれよあれよと実質的な主にされたメノウも、きっと内心で驚いていることだろう。

 

 幻想郷では、妖精は実質的な不死を獲得しているものの、純粋な力は妖怪よりも基本的に弱い種族だ。

 ここに来る前から生まれていた()()()()は、お姉さまから話を聞く限りでは恐らく、一部ないし全てが適応されていない。

 しかし、ここに来た後に生まれた妖精に関しては、間違いなく幻想郷の法則が適応される。

 

(1度くらい、見に行ってみようかな……?)

 

 人数は圧倒的、理想郷内に住む妖精の個の強さは、守護者の魔力(妖力)が未知数なことを除けば、現状大したことはない。

 ただ、メノウと同等以上で、守護者と同等以下の妖精が存在しないか生まれないとは限らないのだ。

 

 加えて、壊滅寸前から数ヵ月で元の状態近くまで回帰できたなら、勢力拡大の速度も早い可能性はある。

 

 その上、特性の1回休みが適応されている想定でいるなら、総合的には時間さえかければ、幻想郷の面々が妖精を見る目が変わるだろうと、そんな気がしている。

 

 まあ、メノウ自身はとても穏やかで優しい妖精だし、守護者もメノウへの忠誠心は強い上に、幻想郷を良いところと評しているみたいだから、変な方向に向かう心配は要らない。

 

 むしろ、私としては「メイドとしてスカウトできないかしら」とか、「うちのメイドの息抜きにもなりそう」とかいって、喜ぶお姉さまが見れるから、理想郷には是非ともこのまま居て欲しいものだと考えている。

 

「ねえ、フラン。私からのお願いが終わったところで本当に申し訳ないんだけど、お泊まり会中に1回だけでも良いから、メノウの希望を叶えてあげてくれないかしら?」

 

 と、咲夜も交えて今日起きたことの話をして盛り上がっていた最中、お姉さまが急にこんなことを言い出した。

 

 私とメノウの付き合いはほんの僅か。呼び捨てにされているお姉さまたちと違ってフラン『さん』呼びされていて、少し心の距離感がある程度の付き合いしかない。

 

 わざわざお姉さまを通してくるのは、まだ直接お願いをするには緊張感が拭えないのだろう。お互いの性格も性格だし、距離感を縮めにくいのも仕方ないか。

 

「取り敢えず、話を聞いてから考えるから、内容を教えて」

「ええ。実は……」

 

 そんなことを考えつつ話を促してみたところ、内容自体は特に難しいことではなかった。

 

 今話に挙がった妖精たちの理想郷、そこの最深部へメノウと一緒に遊んできて欲しいというものである。

 

 帰る道中に何気なく、「フランさんとパチュリーさんにも、見て欲しいなぁ」とメノウが呟く。

 で、それを聞いたお姉さまが代わりにお願いしておこうかと問うと、「ううん。外出好きじゃないし、やっぱり誘うのはやめとくからいい」と、遠慮したみたいだ。

 

 こあに関しても、「お仕事あるみたいだし、誘えば迷惑かな……?」と、やはり遠慮がちであるとのこと。

 

 嫌な思いをさせて、嫌われたくないとの考えから来ているらしいけど、羽の輝き具合から誘うことを諦めきれておらず、不憫に思ってしまったためにこうして私に話したのだと言う。

 

「お嬢様。これを言うのは、あまり好ましくなかったのでは?」

「理解しているわ。だから、事が済んだら謝るつもりよ」

「そうですか。ならまだ良いですけど……」

 

 そして、パチュリーにはもう既にこの話をつけているらしく、行くことを了承してくれたとのこと。

 

 メノウのことは割と良く思っていて、なおかつ良質な異世界産の魔法系素材が入手できるかもともなれば、その程度なら良いやとでも考えたのかもしれない。

 

 私としても、メノウのことは色々な意味で一目置いているし、良く思っている方だけど、確かに外出が好きではないのもまた事実。だから、どうしようか迷う。

 

「勿論、フランの意思が最優先よ。叶えなかったからといって、何かある訳じゃないから安心して」

「うーん……分かった、少し考えてみる。早めに結論は出しとくから」

 

 なので、この場で結論を出さずに考える時間を作ることに決め、お姉さまにも私はそう伝えた。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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