光の四妖精   作:松雨

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再びの妖精大庭園

 楽しい時間ないし幸せな一時と言うのは、得てして過ぎ去るのが早く感じるもの。

 

 僕の場合、幻想郷に転生してから殆んどそんな時ばかりではあったけど、お泊まり会が始まってからは特段そう感じていた。

 

 妖精たちの理想郷の探検から4日、お泊まり会16日目……もう既に、今日で半分が終わっているのだ。1週間と少しくらいしか経ってない感覚でいたから、本当に驚きでしかない。

 

「それにしても、飽きずに良く来るわね。2人とも」

「うん。だって、ルナが本読むの好きだし……僕も、ゆったりしたところで本読むの好きだから」

「同じく。コーヒーを飲みながら、メノと話してのんびり本を読んで過ごす時間は格別」

「まあ、こちらとしては静かに過ごしてくれるなら誰でも良いし、理由なんて気にしないから、好きなだけゆっくりしていって」

 

 ちなみに今日は、ルナに誘われて一緒に地下の大図書館に行き、本を読みながらの会話やお茶会を楽しんでいる。

 

 僕たちに紅茶とかを出しておもてなししてくれてるこあさんはともかく、ルナは妖精であっても割と大人しめで、パチュリーさんは更に静かな一時を好む性格の魔女(妖怪)さんだ。

 

 僕もサニーやスター、チルノたちや魔理沙、スフェ辺りが一緒であればまだしも、基本はそんなにはしゃぐような性格でもないから、この場は比較的静かめである。

 

(……)

 

 なお、僕が読んでいる本は前世でも見たことのある童話集、とある魔法使いの家族の物語、美味しい料理の作り方解説などだ。

 

 料理関連書籍以外は、何を読もうか迷っていた時にルナがおすすめしてくれて、読んでみたらあっという間に夢中になるくらいに面白くて、時間が湯水の如く消費されていく。

 

 後、他にも色々と難しそうな本とか魔導書も沢山あったから、読んでも理解できないのを前提として手に取ったりもしている。

 

「ところで、メノウ。理想郷の件なんだけれど、ようやく私事が片付いたからいつでも行けるわ」

「私もパチュリー様と同じ。メノウちゃんが行く時に、声かけてね」

「あっ、本当に? そっかぁ……」

 

 そんな時、新しい分厚い本を何冊か持ってきたパチュリーさんとこあさんから、そう話しかけられる。

 

 理想郷探検を終えて紅魔館に戻ってきてからすぐ、レミリアは1人で早速当時の体験を皆に事細かに話しに行っていた。無論、パチュリーやこあさんも例外ではない。

 

 結果、持ち帰ってきた水晶の欠片を目で見た上にもらったこともあり、興味を抱いたらしい2人が探検翌日の朝に僕を訪ね、連れていって欲しいとお願いしてもらえたのだ。

 

 パチュリーさんはあまり外出は好きではないと聞いていたから、気分が乗らないのに僕から誘われたら嫌がるかもしれないと思い、遠慮して声をかけなかっただけに、本当に嬉しかった。

 

 こあさんは仕事柄あまり外出しないだけで、外出そのものはどちらかと言えば好きな方らしいけど、それが僕からの誘いを受けてくれるかどうかは全くの別問題。なので、言わずもがなかなり嬉しい。

 

 とは言え、あの光景が2人のお眼鏡に叶うか否かについては、こればかりは個人の好みによるところが大きいから、何とも言い難い。僕的には、気に入ってもらうだけの自信はあるけど。

 

「あっ、ちょうど良いところに居たのね。メノウ、少し良いかしら?」

 

 大水晶のハンドベルを使えば行き帰りが容易だから、2人やルナに今すぐ行こうと声をかけようとしたその瞬間、大図書館の中に入ってきたフランさんから逆に声をかけられる。

 

 僕に何の用事があったのかは分からないけど、表情を見れば何かを心の中で強く決意した人のものに見える。

 いつぞや、僕に料理を作って欲しいとお願いしてきた時とは比べ物にならない、考える時間が必要な内容であったことは間違いなかった。

 

 ただし、お願いをしてくる相手はフランさん。僕にとって辛いお願い事でないことだけは確かだから、その辺の心配はしていない。

 

「うん、良いよ。僕に何かお願い事でもあるの? 何でもって訳にはいかないけど……」

「ありがとう。単刀直入に言うと、私もパチュリーやこあと一緒に連れていって。妖精たちの理想郷とやらに」

「……わぁ」

 

 なんて考えていたのだけど、フランさんからのお願いがまさかの理想郷関連だとは予想すらできず、思わず呆けた声を出してしまう。

 

 恐らく、パチュリーさんやこあさんと同様の理由で興味を持ってくれたのだろうけど、それにしても誘いたかった3人全員と一緒に行けるようになるなんて、何たる幸運と幸せだろうか。

 

「勿論だよ! えへへ……もし大丈夫なら、今すぐでも良い? 行き帰りが凄く楽になる手段を持ってるんだ。僕」

「あら、そうなの? じゃあ、是非お願いするわ」

「うん! パチュリーさんとこあさんは、大丈夫? 急な話だけど」

「大丈夫よ。さっき言った通り、いつでも行けるから」

「右に同じくだよ、メノウちゃん」

「分かった……ルナ、せっかく誘ってくれたのにごめん。後で必ず埋め合わせはするからさ、一緒に来てくれるかな……? あっ、どうしても嫌なら言って。行くこと自体を次の日辺りに回すから」

「今日で良いよ。私の誘い云々とか、埋め合わせとか別に気にしなくても大丈夫なのに……でも、メノがそうしてくれるって言うのなら、埋め合わせの時を楽しみにしてる」

 

 しかも、3人全員今すぐにでも行けると言ってくれた上に、ルナに至っては自分のお誘いは後回しでも良いと、一緒についてきてくれると、そう言ってくれたのだ。

 

 のんびり読書とお茶会を始めてからまだ1時間程度しか経っておらず、話の流れでルナに断りを入れずに決めたにも関わらず、である。

 

(埋め合わせは絶対に良いものにしなきゃ、ルナに申し訳ない)

 

 つくづく思う。ルナは……サニーたちもそうだけど、僕に色々な場面で嫌な顔1つせずに合わせてくれるなんて、神様の如き優しさだと言い表そう。

 

 それこそ、僕に合わせようとするがあまり、自分の意思を封じ過ぎて辛い思いをしているのではないかと、思ってしまうくらいには。

 

 しかし、実際確かにかなり合わせてくれているけれど、状況的に無理だったり気分が乗らない時とかは、優しく断ってくる。

 

 後は、合わせてもらう度に必ず僕が別のことで合わせたりするし、料理を作ったり一緒に外で遊んだりなど、サニーたちが確実に喜ぶことでお返ししている。何だかんだで、しっかりと釣り合いは取れているのだ。

 

 ただし、それとは別に返さなくてはならない数多もの恩があるので、実際は釣り合いが取れているとは言い難いのだけど。

 

「よっと。じゃあ皆、今から行くよ」

「ハンドベル……? それを鳴らせ――」

 

 頭の中でそんな風に思考を巡らせながら、魔力を込めた大水晶のハンドベルを鳴らすと、一瞬にして景色があの大庭園のものへと変わる。

 

 念のため確認したところ、パチュリーさんとフランさん、こあさんにルナも無事に瞬間移動できていた。

 

 初回とは違って不思議な祭壇ではなく、4日前に最後に訪れた少し高い丘の上の神殿前が、ハンドベルを使用して理想郷に入った際の移動先となっている。

 

「うっわぁ……本当にこれが外じゃないの? いやいや、何かの冗談だと思うって。しかも、妖精の数も凄いし」

「確かにこれは、レミィが興奮するのも納得の場所ね。穏やかで、それでいて生命の輝きに満ちている……流石は異世界の産物、大したものだわ」

「幻想郷の大自然とはまた違った雰囲気が良いですね。空気も美味しいですし、リフレッシュ効果はかなり高そうです」

 

 ルナは2度目だからさほどテンションは変わらないものの、フランさんとパチュリーさん、こあさんは初回の僕たちのように、ざっとこの場から見渡せる景色だけに対してでも驚きを隠せない様子だ。

 

 実際に連れて来るまで、3人にここが気に入ってもらえなければどうしようと不安に苛まれていたけど、この分だと問題なく気に入ってくれると思う。

 

「本当に帰ってきてくださったのですね、メノウ様。良かった……」

 

 そして、僕がルナや3人と一緒に大庭園へと訪れてからほんの数秒後、大ちゃんの瞬間移動を彷彿とさせる感じで、目の前に嬉し泣き状態の翡翠の妖精さんが出現した。

 

 4日前のレミリアの時もそうだったけど、3人に対しても、それなりに警戒心を抱いているようだ。何となく、レミリアより警戒されているような感じに思えてくる。

 

 なお、ルナに関しては妖精な上に、僕の大好きな家族である旨を既に伝えてあるので、当然のことながら全く警戒されていない。

 

「うん、ただいま。えっと、この3人は僕の友達だから……その、大丈夫だよ。危ない妖怪さんとかじゃないから」

「そうですか。確かに、メノウ様が連れている方が危険な訳ないですものね……はい、記憶しました。お二方、大変な失礼をお許しください」

「許すもなにも、最初から不快には思ってないわ。妖精の楽園に妖怪と悪魔が混じれば、警戒するのは当然だもの」

「右に同じく。他の妖精ならまだしも、一大勢力の守護者が未知の来訪者を全く警戒しない方が、むしろあり得ないし」

「そうですねー。あまり皆さんを怯えさせないように気を付けます」

「流石はメノウ様のご友人、寛大なそのお心に感謝いたします」

 

 勿論、この3人も僕の友達である。致し方ないにせよ、警戒されたままなのは悲しいので、理想郷や妖精さんたちに対して害をなす存在ではないことを真剣に一言伝えたら、翡翠の妖精さんはすぐに警戒を解いてくれた。

 

(次はちゃんと、事前に言っておかなきゃね)

 

 今度、ここに初めて来る僕の友達を連れてくる時は、事前にどんな種族の何て名前の友達なのか、簡単な容姿とかの情報を知らせておくべきかも……いや、妖精でなければ知らせるべきであろう。

 

 そうすれば、僕たちも翡翠の妖精さんもお互いに余計な気遣いをすることもなく、気分良く過ごせるのだから。

 

「では、ごゆるりとお楽しみください。もし、私に用事がございましたら、この神殿の中か湖の大木内部へお越しくだされば対応します」

「分かった。妖精さん、ありがと」

 

 そう考えながら、僕たちと軽くやり取りを交わした妖精さんが再び瞬間移動でこの場から去ってからすぐ、ひとまず4日前と同じルートで3人の案内をしようと、僕とルナで決める。

 

 その後については、まあ案内でもしながら相談して決めれば良いかと考え、早速神殿のある丘の長階段を歩いて下っていった。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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