光の四妖精   作:松雨

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心優しい友達

 良いも悪いも関係なく、自身にとってあまりにも予想外の出来事が起きた時、幻想郷でも全員とは言わないけれど、大抵の人妖は一瞬であっても困惑してしまうことだろう。

 

 勿論、僕も大抵の人妖のくくりに入る。最近と言うか今朝の例として1つ挙げると、リリーと一緒に何をする訳でもなく館内をうろついていた時、何故かクリームまみれで立ち尽くしていたモリオンを見たことだ。

 

 何度も見かけたことがあるならまだしも、なにゆえ僕もリリーも初見だったものだから、10秒近くどうしようかと迷ってしまうのも無理はないはず。

 

 ちなみに、モリオンがクリームまみれだった理由は、メイド妖精さんの仕掛けたイタズラトラップに気づかず、引っかかってしまったからだと後に判明している。

 

「メノウ。私はあなたに謝らなければいけないわ、ごめんなさい」

「えっ……何で? リリー、僕って何かレミリアにされたっけ?」

「メノに分からないことを私に聞かれても、分からないよー。でも、本人的には何かしたから謝ってるんだとは思う!」

「だよねぇ。何もしてないのに謝る訳ないもんね」

 

 そして今も、サニーたちが人里へお出かけ中なので、引き続きリリーと館内散歩を楽しんでいた時に、心当たりが全くないのにレミリアから何故か謝られ、困惑している。

 

 むしろ、レミリアに優しくしてもらってばかりであり、現状僕からはそれに見合うだけのお返しができてないため、仮に謝るなら僕の方なのに。

 

 何なら、ちょっとやそっとのことであれば気にしない。サニーたちが傷ついたなら怒るけど、そうでないのにしょうもないことで大切な友達を失いたくないのだ。

 

「3日前、フランとパチェとこあの3人と理想郷に行ったでしょ?」

「うん、その3人にルナと僕も加えた5人でね。えへへ、わざわざ僕に声をかけてくれたんだよ。嬉しかったなぁ」

「実はね、私が勝手にお願いしたのよ。メノウが誘いたがってるけど、気遣って遠慮してるから、可能なら声をかけてあげて欲しいって」

「あっ、そうなの……?」

 

 すると、レミリアは3日前にフランさんたち……いや、フランたちの方から理想郷へ連れてってと声をかけてきてくれたのは、僕が遠慮しているのを勝手に無視し、そのことを3人に伝えてお願いをしたからだと言ってくる。

 

 なるほど。何でいきなり謝ってきたのか、全然予想すらできなかったけど、話を聞いて確かにレミリア的には謝るに値する理由があったのだと、すんなり理解できた。

 

 でも、それを聞いても謝って欲しいなどとは全く思わない。同様に、謝るべきとも思わない。

 多分と言うか絶対、僕のことを思ってやったことであり、なおかつそれで良いことしか起きていなかったからである。

 

 何なら、僕のために色々と動いてくれてたと分かって、とっても暖かい気持ちになれているのだ。

 

「ありがと。レミリアが僕のために動いてくれただけでも、凄く嬉しいの。だから……お願い。謝らないで」

「そう。メノウが嬉しいなら良かったわ」

 

 だから、当然の流れで謝らないで欲しいとお願いしたら、レミリアは僕の言葉を聞いて微笑んでくれた。

 

 こんなことが悩みの種になって、いつもの元気を失わせようものなら、僕はレミリアと友達では居られなくなってしまう。

 それのみならず、レミリアを慕う紅魔館の皆からも嫌われ、2度と遊んでくれなくなるに違いなかった。

 

 最悪、巡りめぐってチルノたちや博麗神社の2人(霊夢とあうん)に加え、魔理沙や大好きなサニーたちからも愛想を尽かされる可能性だってゼロではない。

 

 もしそうなったら、僕はまた1人ぼっちになってしまう。大好きな家族も友達も、全て幻となってしまうのだ。

 

(はぁっ、はっ……)

 

 少し考えるだけでも不安と恐怖に苛まれ、身体が震えて呼吸も荒くなり、暑くもないのに汗をかき、挙げ句の果てに勝手に涙まで出てくる始末である。

 

 ウルが僕に取り憑いていてさえこれなのだ。もし、影も形も存在していなかったとしたら……うん、考えるのはやめにしよう。

 

「えっ。ちょっと、私が対応間違えたせいでトラウマが……リリー! サニーたちの居場所知らないかしら!?」

「人里に遊びに行ってる! 当分帰って来ないと思う!」

「ええい! こんな時に何て間の悪さなの、私!」

 

 案の定、レミリアが変な誤解をした上で慌てふためき、リリーもリリーで背中をさすったり、サニーたちがやってくれるように頭を撫でて、落ち着かせようとしてくれていた。

 

 言うまでもないけど、レミリアの対応には何の問題もない。たまたまそのタイミングで、僕が1人で勝手にしたネガティブな想像により、1人で勝手に追い詰められているだけなのだから。

 

 ただ、頑張ってそう伝えようとしても、言葉が全く出てこない。水道が元から塞がれているかのように、いくら力を込めてもそれは変わることがない。

 

 心が落ち着いてくれるまで、致し方ないけど待ち続けることとしようか。

 

「ふぅ、ふぅ、うぅ……お願い……僕のお友達、辞めないでぇ……」

「大丈夫。この程度でメノウと友達を辞めるなんてあり得ないわ。絶対にね」

「……すぅ、はぁ……ごめんね、2人とも」

「大丈夫よ。本当、落ち着いてくれて良かった」

「私もレミリアと同じだよー、メノ。これからもずっと、私と友達で居ようね」

「うん……!」

 

 それから25分、心優しき友達2人の最高の気遣いによって、僕は何とか落ち着きを取り戻すことに成功する。

 

 たまにある発作的なこれ、発生したら必ず皆に心配かけてしまうから、どうにかして抑えたいのはやまやまなんだけど、どうにもならないのだ。僕自身の力と努力と注意不足が、これ程憎たらしいと思うことはない。

 

 できる限り早く心を治して、レミリアとリリーのみならず他の大切に思っている友達、唯一無二の家族のサニーたちに対して、心配をかけてしまうことのないようにしなければ。

 

「さてと、話は変わるのだけど……メノウにリリー。弾幕ごっこイベントの話は覚えてる?」

「うん、覚えてる。サニーたちとかチルノ一行に攻撃するのはあれだけど、皆が楽しみにしてるみたいだから、やる気はあるよ」

「勿論だよー。メノとの弾幕ごっこ、その後のパーティーも楽しみだねー」

「あれの開催日、お泊まり会終了の前日にするって決めたわ。最後の大一番で盛り上がって楽しみたいから」

 

 心の中でそう決意を固めていると、誰も幸せにならない辛気臭い話をレミリアが別の話題、弾幕ごっことパーティーを内包したイベントの話へと方向を転換してきた。

 

 曰く、開催日はお泊まり会の終盤も終盤と決め、会場は非常に広い紅魔館のエントランスでする予定らしい。

 

 更に、冬の妖精お泊まり会と銘打っているこの1ヵ月ではあったけれど、この日だけは紅魔館および僕を含めた妖精たちと親しい関係にある博麗神社の2人、魔理沙やアリス、霖さんも招待しようと決めたとのこと。

 

(……えへへっ)

 

 僕の大切な友達が全員一堂に会し、弾幕ごっこはやらずともその後に始まるパーティーにて、美味しい食べ物に会話に賑やかな雰囲気を味わえる。

 

 勿論、気分だとか予定があるとかで一部ないし、全員が来ない可能性だってあり得るけど、少し考えるだけでも楽しくなってきた。

 

 さっきまでの不安に苛まれていた時との差が激しくて、情緒不安定も良いところである。

 

「ねえ。皆を誘いに行く時に、良ければ僕も連れてって」

「ええ、別に良いけど……よっぽど誘いたいのね」

「うん。レミリアとリリーと同じで、皆僕の大切な友達なの。優しくて、一緒に居ると心が暖かく楽しくなって……どんなに辛い時でも、幸せになれるから」

「ふふっ。メノウがそこまで熱意を以て誘うならば、きっと皆来てくれるわ」

 

 だからこそ、少しでも来てくれる確率を上げるため、招待状を渡しに行く時にレミリアと一緒に僕も行く。そして、誠心誠意お願いをすれば、レミリアが言うようにきっと来てくれると信じられる。

 

(来てくれると良いなぁ……でも、皆の都合とか気分の方が優先だもんね)

 

 言わずもがな、断られたからと言ってその後の友達関係を悪い方に変えることは、絶対にしない。

 

 もし実行したとすれば、それは大切な友達や家族同然の存在(魔理沙)を、自分から手放すどころか乱雑に放り投げるが如き所業であり、誰も幸せにならない最悪の結末を迎えることとなるのだから。

 

「それでさ、いつ招待状を渡しに行くの?」

「確か、後10日くらいでお泊まり会も終わるよね。そう考えると、すぐの方が良いかもー」

「そうね。招待状自体はもう出来上がっているから、今すぐにでも行きましょ――」

「レミリアさまー! あっ、しろちゃんとリリーちゃんも居る!」

「「「ん??」」」

 

 なんてことを考えながら、レミリアやリリーと招待状云々の話をして歩いていた時、モリオンの声が後ろから聞こえてくる。

 

 振り向いたところ、モリオンだけでなく少し様相の違うメイド服を着用した桜髪の妖精さん、もといシャーネットもそこに立っていたことに気づく。

 

 レミリアが、咲夜に対してメイド服の仕立てをしてとお願いするのと並行し、服飾担当の妖精さんやアリスと人形さんたちの力を借りに行ったことを考慮に入れても、4日しか経っていないのだ。

 

 基本素材として普通のメイド服を使っているにしたって、完成するのが早すぎるような気がするのだけど、その手のプロフェッショナルが一堂に会したのであれば、まあおかしな話ではないのかもしれない。

 

(今日からお仕事……うん、楽しそうだね)

 

 ちなみに、名付け親はフランとのこと。レミリアが「つけてあげたら喜ぶわよ」と言ったことで、命名権を得たとのこと。

 

 なお、その時の喜び様はまるで輝く太陽みたいだったらしく、さしものレミリアとフランも高ぶったシャーネットを落ち着かせるのに、相当苦労したと言う。

 

 あの短時間で懐いた相手であるフランから、シャーネットは特別な贈り物をもらえたのだ。僕にとってのサニーたちと同等と考えれば、納得でしかない。

 

「あら、2人とも。今日のお仕事は終わったの?」

「終わったよ!」

「みんなのおかげで、わたしもきょうはおしまい! だからいま、モリオンちゃんとあそんでるんだ!」

「なるほどね……じゃあ、気晴らしに私たちと一緒に出かけない?」

 

 するとその時、2人が今日やるべき仕事をこなしたと確認したレミリアが、2人を自分たちと一緒にお出かけ……招待状渡しにいかないかと、そう提案を投げかけた。

光の三妖精+オリ主以外で出番多めにして欲しい妖精キャラに関して

  • チルノ&大妖精
  • エタニティラルバ
  • クラウンピース
  • リリーホワイト
  • 全員
  • 作者にお任せ
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