イーザク爺さんと合流してからの旅は刺激的だ。
サバンナには車が何度も往復することで自然と車道のようになっている場所もあるが、何もない場所はデコボコしているし、ぬかるみなどもある。四駆の大型車でもない限り走ることもままならいだろう。
川が流れている付近は動植物が多い。何日もシャワーを浴びていなかったので川で水浴びをすることにした。イザーク爺さんは「ワニに気をつけてな」と笑いながら言った。
イーザク爺さんはタライに川の水をいれて、川から離れたバオバブの木陰でエルザに水浴びをさせた。俺は川の方でバシャバシャと髪の毛洗う。泥がつくがそれでもだいぶさっぱりとする。スリランカではこんな感じの生活だったので抵抗はあまりない。
川は泥水でにごっていて、小さい川なのに底は見えない。川の反対側にはヌーと思われる黒い牛が水を静かに飲んでいる。
『ズドーンッ!』と轟音が後ろで響いて俺はビックリした。水しぶきが近くに上がった。
「ワニに気をつけろといっただろ」とイザーク爺さんが叫んだ。川が赤く滲んでいる。俺の直ぐそばにワニが近づいていたようだ。俺にはぜんぜんわからなかった。ぞっとする。
車に積んである鉤をつかってワニを川から引き上げた。2メートルほどの小型のワニだったが迫力がある。脳天がぶち抜かれているがまだピクピクと動いていた。
せっかくなので記念撮影をする。ワニが完全に死んだのを確認してから口を開けて歯も撮影した。豪快なアングルだ。それからワニに襲われたように片足を噛ませた感じにして写真も撮った。死体で遊ぶのは不謹慎だろうけど。
イザーク爺さんによるとワニも食べらられるらしい。そういえばアーガイルでも食べた。さっぱりとした鶏肉の味に近い。イザーク爺さんはワニをひっくり返して捌き始めた。背中の方は皮膚が硬くて刃は通らないようだ。
ワニを完全には解体しない。肉の一部を取るだけとって残りは放置していた。その場所でバーベキュー用の台を出して炭に火をつける。即席のワニ肉料理はシンプルな味わいで美味いかった。
残った死体がもったいないが、直ぐに鳥やハイエナがきて片付けていくらしい。実際空にはハゲタカが旋回を開始している。
俺はナイフを借りて、背中の皮を苦心しながら30㎝四方ぐらいで剝ぎ取った。記念になるし、ワニ革でドラゴンの盾とか作ってみたかった。
俺たちがワニから離れるとハゲワシがすぐにたかってきて、一羽、また一羽と集まってきていた。
いいお土産ができたと思う。
※ ※ ※
サバンナをときどきキャンプしながら北上した。途中、主要道路に戻りガソリンスタンドで給油をする。予備タンクにもガソリンをいれる。予備タンクを使用しないように行動するのが基本らしい。
ガススタの売店で新聞を買って情報を集める。ネットがつながらいので紙媒体の情報はとても貴重だ。エルザに関する記事は載っていなかった。イザーク爺さんは売店の若い人と会話していた。このあたりではエルザの情報は流れていないらしい。やはりマフィアはマハラビエ周辺で探しているのだろう。
とはいえ、誰に見られるともわからないからエルザは車の中に隠れたままだ。
現地のトウモコロシパンに何やら挟んだサンドイッチとコーラを買って車に戻った。味もなかなかいい。エルザもバクバクとしっかり一人前食べた。けっこう過酷な生活だと思うが楽しそうによく笑うし、よく食べて、よく寝た。
舗装された幹線道路は流石に走りやすい。日が沈んできたら、道から外れてまた一晩キャンプをして過ごした。少し道から外れるとあたりはサバンナになって人工物は何もない。
車の中からも動物は良く見えるが、インパラとかヌーなどの草食動物はすぐに見つかる。でも、人気のゾウとかライオンとかキリンなどの大型動物には出会えなかった。
外の景色も代り映えしないのでだんだんと飽きてくる。サファリパークみたいに動物だらけなら面白いだろうが、遠いところにインパラが走っていても面白くはないのだ。エルザも飽きてきているようで、以前のように目をキラキラさせて窓の外をみていない。
「ライオンとかゾウはこの辺にはいませんか?」と聞くと「もう少し緑が豊かなところでないと見つけにくい」と教えてくれた。
「ゾウを探すか?」とイザーク爺さんが聞いてきた。俺は一刻も早くエルザを届けたかったが、その質問に「観たい!」とテンションがあがったのは後部座席でゴロゴロと退屈そうにしていたエルザだった。チャイルドシートなんてものはもちろんついていない。
当たりは暗くなって車のライトが照らす場所以外は何も見えなくなってきた。そろそろ新月で月を探すことも俺にはできない。車がライトを消すと真っ暗闇に包まれる。
「今日はこのあたりでキャンプをしよう」とイザーク爺さんが言った。ランタンを二つほど置いただけで、てきぱきとテントを貼った。俺にはほとんど何も見えない。
時刻はまだ20時なのに深夜のようだった。曇っているのか星空もあまり見えない。
※ ※ ※
ボツワナは国立公園がとても多い国だ。国土の17%が自然保護区だという。自然保護区では狩りが禁止どころか、人間の文明を徹底して排除している。そのため道路も舗装していないし、ガソリンスタンドなどもない。有名なのは中央部と北西部の塩湖のあたりだ。たくさんの国立公園があるが、公園というよりは原野らしい。遠くて不便なので観光に適さない場所も多く、しっかりとした準備やガイドが必要だ。
「タチーラ自然保護公園」は観光に適した場所にあった。フランシスタウンからも近くアクセスしやすい。川辺の湿地帯を含むこの公園は、緑がとても豊かで草食動物を探すのには苦労しない。車から窓を除けば鹿か牛かシマウマがいる。
イザーク爺さんの運転もゆっくりだ。ときどき停まって動物を探した。そんなにすぐに見つかるわけではないようだ。あまりにも広いという方が表現としてよいかもしれない。
川べりをゆっくり走りながらついに象の群れを発見した。
「でかいなっ」と俺はつぶやいた。スリランカにもアジアゾウがいてときどき働いているのをみかけた。アフリカゾウはその倍ぐらいの大きさがあるように思えた。ただ牙に関してはすべて切り取られている。その方が彼らの命の安全を脅かさないかららしい。やはり密猟は大きな問題になっていて、イザーク爺さんがいろいろと話してくれた。
エルザも窓を開けて体を乗り出して見ている。声を出して象に話かけていた。象がそれに応えたのか、「パオォーン」といなないた。けっこうな声量であり怖いぐらいだ。
都市部に近いせいか動物たちも人間を怖がっていないように思えた。象はたいへん賢こい動物だが安全な動物ではないらしい。草食動物とはいえ、陸上で最強の動物なのだ。密猟者の顔などは覚えていて人を襲うこともあるそうだ。
イザーク爺さんの解説を聞きながら探索をしていると、気分は冒険家である。こんなTシャツ姿でなくて、トレジャーハンター衣装に着替えたくなってきた。ときどき人間の車とすれ違う。情報を互いに交換してライオンの居場所を教えてもらった。
移動して探していると、木陰にライオンの群がいた。7頭の群だった。車を停めてしばらく観察した。といっても彼らは食事を終えたあとなのか飲んびり寝ているだけで、子供ライオンだけが無邪気に遊びまわっている。
大きい猫にしか見えない。あくびをして眠むそうにしている。
エルザは邪魔しないように黙ってみている。窓のを閉めてみているから、やはりライオンが怖いようだ。離れていても迫力がとてもある。
※ ※ ※
また日が沈み夕日の赤色にあたりが包まれる。フランシスタウンに急いでもいいが、スペンサー家が俺を見つけてくれているかわからない。街にはいってネットにつながれば直ぐにきてはくれるだろうが、それは最終手段でいいだろう。サバンナでうろうろしている分にはマフィアに見つかることはないのだから。
もう一泊だけキャンプで過ごすことにした。
大きな木の側に車を停めてテントを設営する。木の枝を集めて焚火を作れば完成だ。ハンモックなどがあれば最高だろう。
移動中に自然保護区の外側で仕留めたインパラの足を焚火でじっくりと焼いていく。これがなかなか豪快でいい。背肉のヒレ肉はすでに食べてしまっている。トウモロコシパンも火の近くで温める。
肉がじわぁと焼けていい香りが漂ってきた、ナイフでこそげとってパンにはさむ。ソースは何種類かあるので適当にかけてこれをかじる。これ至福なり。
火で肉の塊を炙りながら、焼きすぎず、レアすぎず、ピンク色になった部分が一番の食べごろだ。
「トーヤはなかなか肉を焼くのが上手いな」と言われた。肉の丸焼き動画を英梨々と見ていた時期もあるのだ。ここでは知識が役立った。
今夜はとても晴れたいた。満点の星空、焚火のパチパチと弾ける音、焔のゆらめき、肉の焼ける香ばしい香り。すべてが充実していた。遊び疲れたエルザは俺のもたれかかって、お腹が膨れたので眠たそうにしている。
イザーク爺さんは酒(瓶にはいった度数の高い酒)を飲んで、先祖の話とか、原住民の問題とか、移民問題とかを話してくれた。とてもワイルドな人だと思っていたが博識で頭も良かった。歴史や政治、環境問題などにも詳しい。すべてがつながっていて原因もよく分析できている。無駄に政治批判などもしない。
イザーク爺さんは元々は狩人だった。それが経済の発展から金の儲かる密猟者になり、それからNGOの団体に雇われることで密猟者から動物を守る仕事に変った。正反対の仕事だが密猟の知識が今度は逆に役立つのだ。安定した収入があって生活できるなら、何も密猟する必要はないのだ。そこの自然保護チームの人と過ごすことで知識が溜まっていったようだ。引退してからは観光ガイドをやりつつ静かに生活している。自然と文明の橋渡しみたいなことをしている人だった。十分に尊敬できる生き方だと思う。
家族については何も話さなかったので、俺も何も聞かないことにした。
エルザが眠りについたので、抱えて車に運び後部座席で寝かせた。車の中が一番安全である。イザーク爺さんも助手席を倒してそこで寝るという。俺は一人でテントの中で横になった。せっかくなので酒を少しだけ飲んでみたが、喉が焼けるような強い酒で、俺にはとうてい飲めなかった。
動物のこれだけ多い自然保護区でのキャンプは実に騒がしい。虫がずっと泣いているし、鳥の鳴き声も聴こえる。そこら中に動物がいるのがわかる。
眠りについた深夜。
「ガァオン・・・ゴフッゴフッ、ガアアアァオーーーン」という地響きのような大きな鳴き声が聴こえた。たぶんライオンだ。とても近い。テントの布が揺れている。かなり近いはずだ。テントのチャックを開けてこわごわと外を見てみるが、真っ暗闇でほとんど何も見えない。焚火の火はすでに消えていた。
それでも目が慣れるまでじぃーと見ていた。動物の目がときどきキラキラと光っている。十メートルぐらいだろうか。ライオンがうろうろしている。数頭いるようだ。焚火のところの肉の残りでも食べているのか、食べている音だけが聴こえる。
「あれ、俺やばくね?バカなの?死ぬの?」と自問自答してみる。この場合の正しい行動がわからない。
テントから出て走って車の中に駆け込むべきだろうか。それとも、ここに隠れていればいいのだろうか。テントの中は安全なのか?
ライオンも人間が怖いらしく、襲ってはこないらしい。特にこのような観光地で保護されている地域のライオンは大丈夫だとイザーク爺さんが言っていた。その言葉を信じたい。
『ブゥーーーー!!』とクラクションの高い音がなった。『ブッブー!』と何度も鳴らしている。イザーク爺さんが気が付いたのだろう。エンジンをかけてライトをつけライオンを追い払った。テントに車を近接させて、窓から顔を出して俺に乗れと言った。
俺は車の中へ急いで避難をする。
「危なかったな」と酒臭い口でいった。「危なかったのかよ!?」と日本語でツッコんでおく。イザーク爺さんはめっちゃ笑っているけど、どうなんだろう。「大丈夫」って言ったよね・・・
ワニの時に助けたもらったし、文句言うべきじゃないのかな。
※ ※ ※
翌日はキリンを探した。午前中にはキリンを見つける事ができた。流石プロの観光ガイドである。キリンはのんびりと草をはんでいた。
俺は大満足した。北西部の有名な自然公園も気になるが、だいたい有名な動物は見ることができたのだ、当初の目的は達成したことになる。エルザも大満足したようだ。彼女はよく笑っているけれど、内心は怖いだろうし、不安もたくさんあったはずだ。
でも、このサバンナでの冒険はきっと楽しい思い出になってくれたと思う。
フランシスタウンに近づくとインタネーットがやっとつながった。スマホに大量の着信がつく。メールやSNSが多数更新されている。チェックしていると海部さんから着信があった。
「ご無事ですか」
「はい。無事です。マイクロSDチップは届きました?」
「ええ届きました。フランシスタウンですね?」
「はい。もう着くと思います。どこか向かった方がいい場所はありますか?このまま車で潜伏しててもいいですが」
「大丈夫です。GPSですでに場所は確認しました。部隊を向かわせています。その辺に停まっててください」
「了解」
もう少し車を走らせて郊外のレストランの駐車場に車を停めた。轟音がしてヘリコプターが直ぐに目の前に停まった。さすがスペンサー家だ仕事が早い。
「イザークおじさん。ありがとうございました」
「大丈夫なのか?あれは軍隊だぞ・・・」
「大丈夫です。あれはボツワナや南アフリカの軍隊ではないので」
軍用ヘリはアメリカ国旗のものである。あまり詳しくないけど、これがかの有名なブラックホークなのかな?と思った。
ヘリから銃を構えた軍服の兵士と、ポロシャツの上に防弾チョッキを着ただけのスォロさんが降りてきた。懐かしい顔で最初はわからなかった。
イザーク爺さんが銃を構えて警戒している。
「大丈夫知り合いです。俺が降ります」
ドアを開けて車から降りた。相手は銃を構えているので念のため両手をあげておく。
「トモヤ、ひさしぶり」とスォロが言った。
「どうしてここまで?」と聞いたら、「日当が100ドルだったからだよ」と言って笑っていた、それから堅い握手をした。彼が腕利きのエージェントなのは知っている。ようやく俺は安心して溜息をついた。
ここでイザーク爺さんも交えて話合いが行われた。俺とエルザはヘリで移動することになる。イザーク爺さんとはここでお別れだ。成功報酬というわけでないが1000ドルの報酬を渡す約束をした。彼はいらないと断った。そうもいかない。
「俺が立て替えておこう」
スォロは無造作にポケットにツッコんでいたドルを取り出して数え始めた。それからイザーク爺さんと会話をしてお金を渡した。
「トーヤ、楽しい旅だった。また遊びに来たらガイドさせてくれ」と言った。今度は英梨々を連れてこようと思う。
ンポトさんはいい加減な人だと言ったけれど、そんなことはぜんぜんなかった。都合によっては思うように動けない日もあるのかもしれない。
「じゃあなエルザ。幸せに」
そういってエルザをギュッと抱きしめた。エルザも今では懐いている。
俺はリュックを車から降ろして、ワニ革をいれたビニール袋手に持った。
「なんだそれ?」とスォロは言った。「ワニ皮。戦利品なんだ」といったら、ヘリで運ぶことも了承してくれた。実は少し匂うのだ・・・
ヘリで空港まではあっという間についた。ヘリから降りて、軍用輸送機にすぐに乗り換える。何のチェックもなかったが、軍人さんは俺のアニメTシャツをみて笑っていた。それからワニ皮をみて、もう一度笑った。
「服を着替えてくれ」とスォロ言われた。俺はなぜか用意されていた米軍の制服をきた。サイズもみったりで帽子まである。誰が用意したのだろうか。
「いいかトモヤ。これからはスペンサー家のシナリオに従ってもらう。君はすでに英雄なんだ。もう少し自覚を持った方がいい」とスォロが説明してくれる。
「英雄?誰が?なんで?」
「君は何もわかってないな。このエルザを取り巻く事件は南アフリカとボツワナを巻き込んだ大事件だ。米軍も捜査に協力している。何しろダイヤモンド業界のお嬢様だから」
「そうみたいだけど。それで俺がなんで英雄になるんだ?」
「これだけ注目されている事件の少女を救ったんだ。大注目さ。さすがにあのTシャツではまずいだろう。日本人であることは伏せる。これはトモヤに逆恨みがいかないようにするためだ。米軍に所属する日系アメリカ人のエージェントととして宣伝に使わせてもらう」
「俺承諾してないだが!?」
「素性がばれるよりはいいだろう。スペンサー家も一枚噛んでいるしな。断れない」
「だろうなぁ・・・」
スォロはけっこう多弁だった。コロンビアではほとんど口をきかなかったが、役割がかわれば話しもするのだろう。
「ヨハネスブルグにつけばインタビューの嵐だ。けれど何も答えなくていい。正式発表は米軍からする」
「助かる」
その後、取り調べのように俺はたくさんの質問を米軍士官から受けた。彼らは経緯をもって俺に接してくれ、とても丁寧な対応だった。ケータイの画像を確認しつつ、できるだけ詳細に時系列で話した。
ヨハネスブルクにはすぐに着いた。あんなに日数をかけて移動したのに飛行機ならすぐだった。
飛行機を降りて空港内にはいると、すさまじい数の記者がいてカメラのフラッシュを焚かれた。気が付くと周りは迷彩服の軍人とか制服組とかで囲まれている。俺の隣にエルザがいて手をつないでいた。エルザの服はボロボロだった。俺もボロボロの方がかっこいいと思うけれど、今は米軍士官の制服だ。
エルザの両親も空港に着ていて母親がエルザに駆け寄った。エルザも俺の手を離して走って母親に抱き着いた。それからやっと緊張が解けたのか泣きはじめた。感動の再会シーンである。カメラがたくさん撮影している。その後に父親とも抱擁していた。
エルザは俺の方をちらちとみて、舌を少しだした。どうやら演技らしい。空気をものすごく読む子だ。
「はじめまして。トーヤ。大変感謝する。深くお礼を言いたい」
そういって父親が握手してきた。バリバリの高級ブランドスーツに全身を包んでいる。革靴などは俺が映りこんで反射しそうなぐらいピカピカである。
「無事にお嬢さんをお渡しできて光栄です」と応えておいた。口だけのお礼はいい。成功報酬をくれ。金持ちなのだから100万円ぐらいくれるだろうか。もう一桁上も目指したい。スペンサー家の方で交渉してくれんかな?
そのあと記者から多数の質問が飛んだ。俺はハリウッドスターのように笑顔で手を振って応じるだけにしておいた。何もしゃべるなと言われている。
囲み取材を軍人が道を切り開きつつ、駐車場の車で移動して高級車に乗りこんだ。隣はスォロである。頼りになる人だ。知った顔がいるだけで安心感がある。
「これから俺はどうなるんだ?」
「しばらくは身を預けてくれればいい」
「それしかないみたいだなぁ・・・」
騒動に巻き込まれたのか、巻き込んだのか。俺としては助けてもらった義理を果たすだけだ。
※ ※ ※
場所が変ってヨハネスブルクの高級ホテル。ここで正式な記者会見が行われた。俺は米軍が用意していた原稿を読むだけだ。質疑応答も事前に決まっていたようで、質問にあった回答をして笑顔で応じる。
この短時間に俺の話は整理されて原稿になっていた。米軍の広報は仕事が早い。
ホテルのスイートが予約されていて、そこでやっと息抜きができた。スォロが相部屋でである。護衛を兼ねているらしい。もう日が沈んで夜になっていた。しかし大都会なので窓の外は明るい。
レストランで食事をとって、ひさびさに米料理を喰った。従業員やお客からサインを求められるので適当に応じた。すっかりスター気取りである。
腹を満たした後は、部屋に戻って風呂にゆっくりと浸かった。新しい服も用意されている。ジーンズ一着とアニメTシャツ2枚だけの生活は終りを告げたようだ。
やっとケータイをゆっくり確認できる。俺は日本のみんなに今日あったことを一斉メールで送って謝った。
「はぁ?あんたバカじゃないの?何が英雄よ」
英梨々が信じてくれない。俺はワニに片足をかじらている写真を送った。
「ワニ園で観光してんじゃないわよ。どこにいるのよ。いつ帰ってくるのよ」
ぜんぜん信じてもらえなかった。
「よくわからん。米軍との仕事が終わったら帰る。成田のホテルの件・・・覚えてる?」
「バカ」
「覚えないならしょうがないな・・・」
「別に覚えてないなんていってないでしょ。いつかわからなかったら予約とれないじゃない」
「まぁそうだよな」
東京に戻ったら成田のホテルで英梨々と過ごす約束をしている。とりあえず抱いてから考えたい。そうしないと話したいことが多すぎてよくわからない。英梨々だって同じだろう。
快適でふかふかのベッドで英梨々と会話をしながら俺は寝オチした。
(了)