押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「──ここは」
気付けば、私は見知らぬ場所に立っていた。
上も下もない、明るくも暗い場所。ここが夢なのか現実なのか、それすらも分からない奇妙で妖しい高揚と浮遊感。
そして。
「……遅くなってすまぬな」
私の目の前には純白の服を纏った老人が立っている。
もっさりとした髪、深く蓄えた髭、彫りの深い顔。その肌に皺は多いものの圧倒的な活力に満ち溢れている。
全く見た事も無い顔と聞いた事もない声。でもどういう訳か、彼がどういった存在であるかは直感的に理解出来た。
「貴方が、私の契約神ですか?」
「そうだ。其方の働きは見ておった……よくぞここまで努力した事だ。改めて儂は確信したぞ、やはり其方こそ我が力を与えるに相応しいと」
「そうですか」
中々嬉しい事を言ってくれる。普段なら照れる所だが今はそんな事をしている暇はない。
互いの目が合う。彼には私の思考は全て分かっているのだろう、彼はこちらに手をかざし、言う。
「菊花彩芽。現世に戻り彼の者を倒し、日ノ本を導くのだ──」
私の視界が光に包まれる。
「──この
──────
───
─
喉元まで上げられた刃が止まる。
否、止められたのだ──瞬間的に移動してきた彩芽の太刀によって。彼女はそのままレイピアを粉々に砕き咲良を抱き寄せる。
突如として力を増した彼女に真祖と彼女自身も目を見開く。前者は焦り、後者は歓喜だ。
「何……!?」
「こ、これは……?」
彩芽は自身の恰好を見る。
若干和服のテイストを残した衣装に短めのケープを載せている。服の前面は大きく開いており、胸と腹部が露出している。一見すると健全に見える衣装なので良いのではないだろうか、咲良は心愛を思い出しながら心の中でそう呟く。
彼女は自分が今どういった状態にあるのかを即座に理解した様で、咲良の傷に手を当てると淡い光が包み込み瞬時に治癒していく。
その隙に、と思ったのだろう。真祖は二人に向かって飛び掛かり──
「──邪魔しないでください」
「ガッ!?」
直後、どこからともなく現れた巨大な柱が彼を吹き飛ばす。
それだけではない。治療を終えた彼女が立ち上がると手をひと振りし、たったのそれだけで吹き飛ばされている途中の彼の周囲に無数の柱が現れ、それらが一斉に彼を圧し潰さんと突進する。
だが、それでやられる彼ではない。回転しながらそれらの柱を全て斬り裂いてみせ、剣先から赤黒い炎を出そうとする。
「"主神之大権"」
「何ッ!?」
彼女がそう呟いた途端炎が立ち消え、彼は困惑と共にその場に膝を突く。
範囲内の相手の魔力を乱しその自由を奪う──如何に吸血鬼の祖といえどもその予想外の攻撃には対応出来なかった。
そして、その隙を彼女は逃さない。
「"
光の縄が彼の身体に突き刺さりその動きを止める。縄は物理的に縛っているのではなく、中の魂を縛っていた。
魂を防御しているのなら縛って動きを止めてしまえばいい──私の"魂縛の鎖"と同じ思想だ。そうして身動きが取れない真祖を彼女が勢いよく蹴り飛ばす。
「──"
彼女が手を振り上げると周囲の地面や建物がバラバラに分解され大小様々な剣となって彼へと絶え間なく向かっていく。そして突き刺さった剣は破裂し、砕け散った破片すらも剣へと再構成され再度突き進む。
動けぬ彼に止める術はない。その身を斬り裂かれ、血肉を飛び散らせ、表皮を埋め尽くす程突き刺さる。人間ならば星の数程死んでいるであろうその攻撃──
だが。
「決め手に、欠ける……」
真祖は未だ死んでいない。
斬り裂かれ爆発したそばから修復され、その目は依然として私達を睨み続けている。奴を倒すには魂を完全に破壊するかその身を余す事なく消し飛ばすほかない。だが、前者は今の私達の攻撃力では不可能であり、後者は彩芽にはそれが出来るだけの火力がない。
「っ、はあ、はあ……!!」
彩芽が脂汗を垂らしている。
魔力にはまだ余裕があるが、彼女の処理能力が悲鳴を上げている。当然だろう、彼女が魔法を発現してからまだ数分しか経っておらず、それでここまで多くの魔法を使いこなしているのだ。如何に魔力操作技術が熟練していたとしても、それと魔法はまた別の話。使い続けるには"慣れ"が必要だ。
幸い私の傷は先程治癒してもらったお陰で完治している。このまま奴の魂に攻撃を続け、何とかその防御を打ち砕く、それしか現状の打開策はない──
「……調子に乗るなよ、下衆が」
斬撃と爆発の嵐の中で不意に真祖が呟く。
それと同時に膨大な量の魔力が溢れ出す。先程の魔力放出とはまた違う、高威力の魔法を使おうとしている証だ。恐らく攻撃を耐え忍んでいる間に魂の拘束を緩めたのだろう。
「"主神之大──」
「──!! 彩芽っ、駄目!!」
「えっ!?」
彩芽は先程と同じく魔力を乱そうと手をかざす。
私は血相を変えて彼女をグイ、と引っ張り私の後ろにやる。
奴がしようとしている事は膨大な魔力を爆縮、放出する物。奴は攻撃を耐え忍ぶ陰で密かに爆縮を済ませており、この段階で魔力を乱したとしてもその『魔法』は不完全な形で発動されてしまう。それでは無意味な上、予測が付かない形での発動は防御する上で非常に不利だ。
その魔法を、レインフォートでは『
見る限り威力は予想通り戦術核並み。今私が扱える『プロティレイル』や彩芽の扱えるらしい防御魔法も役に立たない。
恐らく発動されれば真祖自身も大きなダメージを喰らう事になるが、最早なりふり構っている余裕はなくなったという事なのだろう。そしてこれ程の近距離では私達が生き残る事はほぼ不可能だ。
何かを察した彩芽が魂の拘束を再度行おうとするが、間に合わない。私の攻撃も同じ。
もしこれが発動されれば私達のみならず皇居にいる皆も何も分からずに蒸発するだろう。これまで命を懸けて守ってきたモノが全て、消える。
私は右手を奴に向けた。
奴はそれに勝ち誇った様な顔を向け、呟く。
「──"
膨大な魔力が爆縮から解き放たれる。
それは莫大な熱に変わり、この世の全てを焼き尽くさんと突き進む。
──この力を、私はあまり使いたくなかった。何しろ私はまだこれを
それはここまで意地でも使わなかった『奥の手』。魔力を消費する事はなく、今の私でも使う事自体は出来る技。しかし抑え込む為の魔力が無い状態で使い、仮に失敗すれば東京どころかこの星、否太陽系そのものが一瞬で消え去る可能性すらある危険な技。故にここまで私は使わなかった。
でも今、私には守りたい物が沢山ある。そして守る為には、これを使わなければ不可能だ。
だから私は、私の深淵を一粒掬い取る。
「──"グレートアトラクター"」
「……は?」
「ッ……え、あれ? 私、生きて……」
爆発は起こらなかった。
あの規模の魔力放出が一瞬で消え去り、残されたのは目を見開いて呆ける真祖と困惑する彩芽、そして──
「──魔女様っ!? う、腕が……!!」
右腕を無くした、私のみ。でもこの爆発を消せたのならば安い物だ。
それは兎も角、幸か不幸かこれで条件が整った。
「"リグラ・グレンズ"」
私は呆けている真祖を黒い炎で包み、その間に背後の彩芽の手を引っ張りその顔を見つめる。それで私の思惑が分かったのだろう、私達はその場で口づけする。
唇の柔らかな感触、ほんのりと温かい息遣い、合わせた手から伝わる鼓動。それらと共に送られてきた魔力は私が
私は彼女にただ一言だけ伝える。
「──彩芽、10秒だけ、命をください」
これで、全てが終わる……終わらせるのだ。
どうやって爆裂魔法を消したのかは次回説明します。
yaya riverさんの文字化け風フォントを使用させていただきました。ありがとうございます。
あと5/25の関西コミティア73に申し込みました。
多分二章の書籍版を出せると思います。
今原稿作ってますがネット版から滅茶苦茶変わると思います。具体的には一部キャラの設定とかラストの展開とかです。
本のタイトルどっちがいい?
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