押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「よくぞ来られた、勇者御一行」
「いえ、お招き頂き誠に感謝致します。ヴェイガン・フォル・ソド・グロリアード陛下」
豪華絢爛な城の豪華絢爛な玉座の間。そこに鎮座する国王に私達は跪く。
神聖暦2199年10月8日、グロリアード浮遊大陸。
グロリアード王国の王都があるここに私達は招待された。王家が所有する浮遊絨毯で遥か空に飛び、煌びやかな都市を抜けた先の巨大な城まで案内される。
そうして謁見を済ませた私達は国王主宰の食事会へと進む。
「いやあ、何とも豪勢な食事だ。まるで王都の煌めきの様ですよ」
「ハハハハハ、そうだろう。この王都は我が国最高の芸術品だと自負している」
王都には平民はいない。ここに居るのは貴族だけだ。
地上に住まう平民から搾り取った財によってこの街は作られている。反旗を翻そうにも、そもそも平民にはこの天空都市まで来る事すら叶わない。今年は不作だった筈だが、そんな事などまるで感じさせない食事に私は内心で毒を吐く。
でも、今ここでそれを吐露する訳にはいかない。これ以上私達は敵を作る訳にはいかないのだ。ただでさえ帝国に追われているというのに。
カケルだって自身の無邪気な正義感を押し殺して国王と話し、飲み食いしている。
「所で、どうして陛下は我々を招待して下さったのですか?」
「ああ、それはだな……」
彼がそう言った瞬間だった。
「──なっ!?」
私は突如、紫色の膜に囲まれる。
それは私を閉じ込める結界。魔法解除を行おうとするが叶わない。これは明らかに人智を超えた力で作られており、解析にはかなりの時間を要するだろう。
「な、何を!?」
「そこの魔法使い……フェニシアといったか? 彼女が有するという特殊な魔力──"無限"に余は興味があるのだよ」
「フェニシアをはな、せ……っ……!?」
「かはっ……コ、コレハ……?」
国王に攻撃しようとしたカケルとドルズがその場に倒れ込む。
彼らの顔は苦しそうに歪み、額には大量の脂汗が滲んでいる。それでも何とか剣を抜こうとするが、駆け付けた衛兵によって押さえ込まれる。
「カケル! ドルズ! っ、"リグラ・グレンズ"!!」
「無駄だよ。その結界は我が王家に代々伝わりし『神器』によって展開された物。如何なる魔法であっても破れはしまい」
彼の言う通り、私が放った火はただ跳ね返って私自身を焼くだけだった。
「フェ、ニ、シア……」
もしこの場にアリシアが居たならば毒を解除出来たのだろう。
だが彼女は既に死に、私の魔法は結界の向こう側には届かない。
そうしているうちに彼の肌から血色が引いていく。命が、消えていく。彼が持っているらしい『転生特典』とやらもこの状況では役に立たない。
でも、今の私にはどうする事も出来ない。何しろ私の最高火力はリグラ・グレンズであり、それが通じなかった以上私が彼らをどうにかする事など叶わないのだ……
……いいや、方法は一つだけある。でもそれは──
フェニシア。
結界の外、倒れているカケルの口が動く。
声は聞こえない。出せないのだろう。でも私には彼が何を言っているのかすんなりと理解出来た。
彼は青白い顔をしながらも、いつもの様に気丈な笑みを浮かべている。
そして。
撃て。
「ッ、あああああああああ!!!!」
「ハハハ、は……な、何だこの魔力は……? 今すぐ止め──」
「"ショックカノン"!!!」
刹那、私の杖から青白い閃光が放たれる。
それはまるで紙を破るかの様に結界を貫き、そのまま床に着弾し凄まじい爆発を起こす。
──私が初めて放ったショックカノンは城をも貫き、大陸の分厚い岩盤を融解しながら突き進んだ。
そうして極大エネルギーの塊は中心部で破裂、浮遊大陸を粉々に砕く。その轟音は千里離れた場所からでも聞こえたという。
こうして、私は強力な魔法を手に入れた──多くの命と、勇者と、旅を引き換えにして。
──────
───
─
「……これで終わり、ですか」
私は、自分が今言った言葉に驚いた。
ずっと望んでいた事じゃないか。無限を取り戻した今、私はすぐにでも自分が生きていた未来に戻る事が出来る。そしてカケルの姿をとった不届き者に裁きを下すのだ。
東京の魔物は一掃したし、怪我人だって治癒させた。ここまで出た死者は蘇らせる事は出来ないが……それでも、随分マシな状況にはなった筈だ。良いじゃないか。私が居なくなったって彩芽がいる。魔法に覚醒した今の彼女ならばこの世界に居る魔物相手になど負ける筈もない。
私がこのまま帰った所で、彼女らは大丈夫だ……
「魔女様……力を取り戻したんですね」
「……ええ」
「凄かったです! これまで話で聞いていただけでしたけれど……こんなに強いだなんて。ふふ、あのドラゴンも一瞬で倒しちゃいましたし、あの時交わした約束、すぐに叶えてくれましたね」
エンシェントドラゴンは私が倒す、彼女にそう言っていたのだ。
「これからも一緒に、よろしくお願いします!!」
「……」
笑顔でそう言う彼女に、私はただ黙り込む事しか出来なかった。
彼女と一緒に居る事は出来ない。次に会うのは、私にとっては一瞬の後だが彼女にとっては130年も先の話になってしまうのだ。
「……本当に、帰ってしまうんですか」
「……」
「は、はは……そう、ですよね。魔女様の世界……
「!! 気付いていた、ですか」
「気付かない訳ないじゃないですか。ここまで貴女がくれたヒント……未来から来たと仮定すれば全て辻褄が合います」
どうやら全てお見通しだったらしい。
彼女は涙をこらえる様な表情で言う。
「貴女の未来にある歴史に、貴女の姿はあるんですか?」
「……いえ」
「って事は、貴女がこれからするのは……貴女の存在を消して、本来の歴史に戻す事、なんですよね」
「……彩芽は頭がいい、ですね」
これから私がしようとしていた事──記憶消去も、彼女は分かっていた。
自分がこれからされるであろう非道な行為を理解した上で、彼女は言う。
「いいですよ。やって下さい」
「彩芽……」
私は杖を握り締め、天に掲げる。
以前やった事と同じだ。なのにどうして、こんなにも胸が痛むのだろう。
これから私は、私と関わった人物の記憶から私の存在だけを消す。
それだけを聞けば色々と矛盾が出てきて混乱のもとになってしまうだろうと思うかもしれないが、人の脳とは器用なもので、矛盾があればそれをどうにかして埋めてしまう。
私がやった事は、私と共にいた彩芽の功績に。
春子内親王を助けたのも、二度の皇居襲撃で活躍し防衛したのも、東京湾で真弓を助けたのも、エンシェントドラゴンを倒したのも、東京の魔物を全滅させたのも、全て。でも今の彼女ならば、その功績からの期待にも充分応えられるだろう。それだけの力が彼女にはある。
彩芽の記憶を消すのは私の自己満足だ。
130年もの年月を居ない人物への憧憬で消費せず自分自身の人生を歩んで欲しいという、自己中心的な慈悲。一応、記憶消去には第三者の記憶が一つでも残っていれば破綻しやすくなる、という理由もあるにはあるが、そこは彩芽が口を噤めばいいだけの話だし、実際私が頼めば彼女は口を噤み続けるだろう。
「──でも、これだけは覚えておいてください」
私が準備をしていると、彼女が私の目を見つめて言った。
その目からはぽろぽろと涙を零しながらも確かな自信に満ちている。
「私は貴女の事、絶対に、絶対に、絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に!!! 忘れませんから!!! きっといつか、貴女と会ってみせますから!!! だから──」
──ああ、どうやら私は。
「──その時は絶対に、私と
「……ええ、必ず」
彼女の事を、見くびっていた様だ。
カケルの転生特典は「10秒後に死ぬ未来があった時に未来予知をする」です。
次回は彩芽チャンのwikiを投稿し、その次の話で第三部完です。
5…10秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。
本のタイトルどっちがいい?
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