押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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就職したので初投稿です


閑章 戦乱前夜はいつも静か
胃痛のもと


「奴吾は廊下で待っておく。そういう指示だからな……くれぐれも粗相はするなよ」

 

 奴吾──菊花伊織がそう言うと朝露咲良は部屋に入っていく。襖は閉じられ、中で何が行われているのか窺い知る事は一切出来なくなってしまう。一見すると単なる襖の様に見えるそれは、しかし最新技術で作られた断熱・防音・防弾襖なのである。

 中に居るのは菊花家初代当主にして"元勲を超えた元勲"、菊花彩芽。数々の功績を残し、現在日本の礎を築いた偉人だ。現役時代はその光り輝く特殊な魔力から『貴煌の魔女』とも呼ばれ、寝たきりになった今もなお帝国軍統括元帥として陸海空、三軍の間をとりなしている。

 普通であればそんな御方と一般生徒を二人きりになどしないのだが、今回は別だ。何しろ、彩芽様がこればかりは、と厳命なされたのだから。

 

「何故彩芽様は朝露と……」

 

 奴吾は襖に背を向け立ったまま思案する。

 恐らく彩芽様が彼女について知ったのは『特務機関』を通してだろう。奴吾も詳しくは知らない、彩芽様直轄の諜報部隊……学園の生徒の中にも紛れ込んでいるらしいそれならば咲良の異常性はすぐに知る事となる筈だ。

 だが、それにしても一人で会うというのは何とも不可解である。かつてたった一人で北海道で発生した魔物燐動を抑え込んだ彼女といえども、百歳を超えた今では寝たきりの老人に過ぎない。余りにも危険だ。

 

「……或いは、最初から知っていた?」

 

 つい先程学園の門で起きた出来事を思い返す。

 まず、奴吾は彩芽様の命令で朝露を迎えに行った。その時、彼女は彩芽様についてさして興味もない、といった様子でありそれは奴吾が予想していた反応だ。

 その後『鈴木翔』と名乗る男と会い、ほんの一瞬だけ彼女は消される。そして再び現れた時、彼女は消える直前とは全く異なる表情を浮かべており、その男を殺し、その背後に居た"組織"の施設を潰した後すぐさま彩芽様の元へ向かおうとし、実際にテレポートで飛んできたのだ。当初は全く興味を示していなかったというのに。

 

 つまり、消えていた間に何かがあった。それが何なのかは分からないが、少なくとも彩芽様に関わる事なのだろう。

 荒唐無稽な予想でしかないが……彼女は男に消された後に何らかの形で彩芽様と会ったのではないか? それも現代のではなく、過去の。

 

「いや、有り得ないか。そんな──」

 

 そう首を振った時だった。

 

 

「きゃあああああああっ!!!!?」

 

「なっ!?」

 

──防音をも貫く女性の声。奴吾はすぐさま魔装を身に纏い襖を開ける。

 

「何があっ、た……?」

 

 入り、まず目に入ったのは布団の傍に尻もちをつく朝露の姿。それはまあいい。

 次にそこにあったのは、布団に入ったまま背を起こし目を見開いて自身の手を見つめる少女の姿。だがそこに寝ているのは本来彩芽様の筈だ。

 そしてその少女の顔は何処かで見た事があって。

 

「え……え……?」

 

 奴吾の視線は少女の顔と壁に飾ってある写真を交互する。その写真は彩芽様の若い頃の物である。

 少し髪が伸びてはいるが、その顔は写真のそれと全く同じもので。

 奴吾が立ち尽くす間、謎の少女は目を閉じて立ち上がり、言う。

 

「……魔女様、正座」

「はい……」

 

 たったそれだけの言葉で、学園屈指の強さを誇る紫の魔女は縮こまりその場にちょこんと正座する事になったのである。

 

 

 

「ええ、ええ。確かに若返る事は悪い事ではありませんよ。これまで漠然と感じていた体の重さが一切消えましたし、これなら政務もスムーズに進められるでしょうね」

「そ、それなら……」

「でもそれはそれとして人の命は勝手に弄んでいい物ではありません。それに私はもう143歳なのです、同じ人間が長く生き続けるのはあまり好ましい事ではありません」

「はい……」

 

 謎の少女──何故か若返った彩芽様が今、その下手人らしい朝露を問い詰めている。

 

「大体私は貴女に再び会えた時点で満足していたのです。もうこの世に未練など無かったですのに」

「でも……私は、もう二度と大切な人を……失いたくなかった、です」

「た、大切な人……も、もう、魔女様ったら……♡」

 

 朝露の言葉に彩芽様が頬を染める。

 天祖母と後輩がいちゃついている。一体奴吾は何を見せられているのだ。

 

「こ、こほん。取り敢えずこの事を千歳に報告します。魔女様には色々と訊きたい事がありますが……取り敢えず先に学園へ帰っておいてください。それから伊織」

「はっ、はい!」

「貴女は私と共に来てください。貴女には私が私である事の証人になってもらいます」

 

 そう言って、彼女は服を軍服に替え部屋から出ていく。奴吾は慌ててそれを追いかけ、朝露はしゅんとした背中で消えるのだった。

 

 

   †

 

 

「母上。伊織です」

「入りなさい」

 

 菊花家屋敷、当主の部屋。

 十華族の取り纏め役と呼ばれる菊花家、その中でも最も重要なその部屋に伊織は訪れ、それを見た今代当主である千歳は怪訝な表情を浮かべる。

 

「どうかしたのですか? そういえば今日は彩芽様絡みの要件がありましたね、そちらはどうしたのです?」

「その件なのですが……その、彩芽様をこちらにお連れしました」

「え? ちょ、伊織貴女彩芽様に何て無茶をさせているのです! 呼んでくださればこちらから赴いたというのに」

 

 伊織の言葉に千歳は慌てる。何しろ彩芽は御年143歳、既に歩く事はおろか喋る事すらままならない様な状態なのだ。そんな相手をここまで移動させた? 馬鹿げている。彼女は伊織を叱責しようとして──

 

「──やめてあげなさい、千歳。伊織は私を案内してくれただけですよ」

「しかしですね、次代の当主として他者を思いやる心持ちというもの、を……?」

 

──彼女の背後から現れた少女を見て硬直する。

 

「直に会うのは随分と久しぶりですね」

「え……? だ、誰……?」

「あら、高祖母の顔を忘れてしまったのですか? 少し悲しいですよ」

「えっ、えっ、えっ……」

 

 わざとらしく言う彩芽に千歳は困惑し、伊織は気まずそうに目を逸らす。

 意地悪し過ぎたかな、と彩芽が軽く笑い事情を説明する──とはいっても咲良が若返らせた、などと馬鹿正直には言わずにあくまでも『何故か突然若返った。自分も原因は分からない』という事にしておく。

 

「り、理由は分からないって……」

「神のみぞ知る、といった所でしょうか。まあもしかすれば……これは天命なのかもしれません」

「天命?」

「ええ──"厄災の魔女"へ対抗せよ、とね」

 

 その言葉で千歳の顔が引き締まる。厄災の魔女、その言葉の威力は絶大であった。いずれ世界に厄災をもたらすとされる最強の魔女──それに対抗する為ならばなるほど、確かに国家の元勲を蘇らせる程度の事はするかもしれない、そう思わせるくらいには。

 なお実際にはそもそも蘇らせた張本人こそがその魔女である。しかしこの時彩芽はその事を知らず、ただ便利な言葉として使っただけであった。後に真相を知り爆笑する事になるのだが……それはまた別の話。

 

 

「それで彩芽様、これからどうなさるおつもりですか? 太政大臣の席ならばいつでもお譲り致しますが」

「その必要はありません。千歳、伊織。私はかねてよりの"夢"を叶える事としました」

「夢、ですか?」

 

 二人が首を傾げる中、彼女は軍服から再度姿を変える。

 これは魔装着用のメカニズムを応用した服装変更技術であり、特務機関の構成員が使う高等魔法……それを使用して、彩芽は魔法学園の特徴的な腹出し制服を身に着けたのだ。

 

「そう、私は魔法学園に入学します!」

「駄目です!!」

 

 彩芽の言葉を千歳は即座に否定する。

 

「何故ですか!」

「制服を着た時から嫌な予感はしていましたけれども、貴女程の人間が魔法学園に入るなど大混乱になりますよ!? そんな事よりも政務に復帰して頂きたいのですが」

「同じ人間が長く権力を握り続けるのは社会にとって悪影響しかありません。私はこれまで通り予備役総監(おかざり)だけで充分です。それに……これまで学園で大きな事件が幾つも起きています。ならばその対処の為に私が赴いても不思議ではありません」

「そういう問題では……はあ、分かりました」

 

 そこで彼女は諦めた様に溜息をつく。そもそも立場として千歳は彩芽に勝てる所に居ないのだ、これ以上何を言おうが彼女の考えは変わらないだろう。

 それに、だ。千歳にとっても彩芽が何をやりたいのかは理解出来る。彼女は13歳で魔法師となり前線で戦い続け、戦争が終わった後は政治の世界でひたすらに働き続けたのだ。事件の対処の為に、などと言ってはいるが要するに彼女は"青春"を味わいたいのだろう。

 確かにここまで国の為に身を粉にして働いてきた相手にこれ以上働けというのも酷かもしれない。千歳はそう考えとある所に電話をかける。

 

「……ええ、千歳です。如月さん、一つお願いがありまして……一人、学園に編入させたい方がいます」

 

 電話の相手は竹園如月──竹園家現当主であり、現文部卿であると共に魔法学園学園長でもある女だ。

 そうして数分間話した後、彼女は疲れた様な表情で彩芽を見る。

 

「はあ……手続きは竹園がしてくれるそうです。これであなたは正式に魔法学園一回生となります」

「ありがとう、千歳。さて伊織、明日からよろしくね」

「え、あ、彩芽様は生徒会長には」

「ならないですよ」

「で、ですよね……やり辛い……」

 

 伊織の胃がキリリと痛む。彼女はこれから偉大なる元勲に対して先輩として接しなければならないのだ。

 

「頑張りなさい。貴女はこの先菊花家当主となるのですからね」

「は、はい……」

「ああ、そうでした──」

 

 そこで彼女は思い出したかの様に言う。

 

「明日からよろしくお願いします。伊織会長」

「や、やめてください……!」




イオリンの胃はもうボロボロ

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1巻は以前頒布した、1章を書籍様に再構成した物です。
新刊である2巻は2章を再構成という名のリメイクを行った物となります。
最後の記憶消去展開を無くすべく2章全体の2/3くらい一から書きました。
色々な設定とか展開とか滅茶苦茶変わってるのでぜひ来てください!

因みに設定変更の例としてはガイルの種族が変わってたり炉欄先輩の悲しき過去…が出てたり絵良との決着が変わってたりと色々です。

本のタイトルどっちがいい?

  • 押して駄目なら吹き飛ばせ
  • 押してダメなら吹き飛ばせ
  • 押して駄目ならぶっ飛ばせ
  • 押してダメならぶっ飛ばせ
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