押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
通販は一週間くらいで開設しますので暫くお待ちください
「──という訳で、だ。皆仲良くするように」
「ちょ、ちょっと待ってください! 香里奈さん投げやり過ぎませんか!?」
死んだ目で言う香里奈に比奈は慌てて立ち上がる。
「あ、彩芽って……あの菊花彩芽、ですか!? 確かに教科書で見た通りの顔ですけど……何で若返ってるんですか!? それでなんで普通に一回生として編入してくるんですか!?」
「私も知らん。もう何も知らん。休み時間にでも本人に直接訊いてくれ。じゃあ朝礼始めるぞー」
「え、ちょっ」
「席は……丁度朝露の後ろが空いてるな」
「はーい。後ろ失礼しますね、魔女様♡」
比奈の言葉を軽く流し、投げやりに言う香里奈に彩芽は笑顔で返答し咲良の後ろの席に座る。朝一で追加した席である。そもそも編入など考えられないシステムなので偶然席が空いているなど有り得る筈もない。
そうして座った彼女は満面の笑みで背後から咲良の耳元に顔を近付け囁き、吐息を浴びせられた彼女はゾクリと身を震わせる。
「ひゃんっ!?」
「ふふ、来ちゃいました♡ 魔女様が悪いんですよ? 貴女が無責任に若返らせたんですから最後まで責任、とってくださいね?」
目を細めて言うその姿は、ある意味このクラスに居る誰も醸し出せない妖艶さを放っていた。そして、勝手に若返らせたのは事実である為咲良は何も言い返す事が出来ない──それに危機感を覚えたのが彼女の隣に座っていた枯草色の髪をした少女である。
彼女──雲雀は勢いよく立ち上がり、焦りを滲ませた顔で言う。
「な、何なんすかあなた! と、突然来てそんな……咲良とどんな関係なんすか!?」
「貴女は確か秋空雲雀さんですね。どういう関係かと言われたら……んっ」
「ん!?」
そんな彼女に対して彩芽は咲良の顔に手をやり、その唇に自らの唇を合わせる。
ズキュウウウウウウン、とでも鳴りそうなその光景に皆が唖然とする。
「なっ!?」
「んー……ぷはっ。こんな関係です♡」
シュウ、と顔を赤く染めて目を回す咲良、互いの口同士を繋ぐ白く光る糸。それを見た雲雀はやはり顔を赤く染め、わなわなと身を震わせる。タイムスリップの折には極限状態であった為に耐えられたそれも、緩みに緩んでいる上に130年の積み重ねがある状態では耐えられなかった。
他の者達も概ねそんな反応である。比奈と快人は驚いた様に手を口にやりそっと快人に視線を送る。楓は慌てて手で目を隠し指の隙間から覗き、香里奈は口をあんぐりと開けて目を丸くする。唯一心愛だけはあまり状況を理解出来ずに首を傾げていた。
雲雀は目の前の少女(?)の偉大さはよく理解している。彼女が生まれ育った孤児院は菊花家が運営しており、彩芽という人物に関しては嫌と言う程学んだからだ。
念の為言っておくが、菊花は柊の例の実験には関与していない。孤児院はかつて彩芽が掲げた『ア式臣民増加計画』に基づいて設立された物であり、柊家がそこから適当に素質のありそうな者を引き取って実験に使っていただけである。
それはそれとして、雲雀は咲良が彼女に取られそうな事に焦っていた。幾ら相手が元勲だろうが偉人だろうが関係ない。
雲雀は未だ目を回している咲良の顔を自身の方に向け、顔を近付ける。
「わ、私だって……」
そっと顔を近付けていくが、やがて咲良の吐息が直に感じられる程の距離まで接近すると今度は雲雀の目が回り始めた。
「や、やっぱり」
「ほれっ」
「「ん!?」」
そうして羞恥が限界に達した彼女が顔を離そうとした瞬間、彩芽が咲良の顔を押して二人は半ば無理矢理キスする様な形となってしまう。
それに彩芽は高らかに笑う。
「あはははは! 女同士のキスなんて遊び程度に考えていればいいのですよ。そんなに深く考える必要はありません……」
彼女としては思いがけぬキスをしてしまった雲雀が慌てて離れると思っていた。「ちょっと、何するんすか~!」とでも言うのだろう、と。
「……ちょっと、そろそろ二人とも離れたらどうですか」
だが、実際はといえば雲雀は最初こそ驚いたもののやがて光悦とした表情に変わり、彩芽が言ってもいつまでも止めようとしない。
痺れを切らした彩芽が慌てて二人を引き剥がす。雲雀はうっとりとした目で惜しむ様な顔をする。
「んあっ……ああー……」
「ああー、じゃありませんよ! こんな所で盛らないでください! 学園でガチキスは恥ずかしい事なんですよ!」
「それ貴女が言います?」
彩芽の言葉に比奈が突っ込みクラス内で笑いが巻き起こる。まあ色々とあったが、ここまでガチガチに固まっていたクラス内の空気はこれでほぐれた訳である。
「おーい、朝礼……」
そんな中、ただ一人香里奈だけはその奇妙な青春(?)についていけず、発した言葉は虚しく喧騒に溶けていった。
†
「──という訳で戦闘訓練の時間だ」
将来の軍人を育てる魔法学園においては、大体一日に一回は戦闘訓練の時間がとられている。場所はいつもの如く夢想鍛錬所、教師は香里奈のまま。
本来であればここからまた様々な魔法技術について教えていくのだが……彼女は彩芽の方を向き、言う。
「彩芽様、"貴煌の魔女"たる貴女の戦い方を是非ともこの生徒達にご教授して頂きたいのです」
「様はやめて下さい。貴女は教師で私は生徒でしょう……それに、このクラスには私なんかよりも余程強い"魔女"が居る筈ですよ?」
そう言うと彼女は咲良に目を向ける。
咲良が彩芽より強いかは兎も角、彼女が隔絶した強さをもっている事は香里奈とて理解している。だが──
「……彼女の戦い方は生徒の参考にはなりませんので」
「そうですか?」
咲良に対する二人の評価には差がある。
香里奈は圧倒的な力をもってして捻り潰してくる咲良しか知らないが、彩芽は魔力が制限された状態で彼女の"見本"となる様な戦い方をする咲良を知っている。前者は普通の魔法師にとってはほぼ役に立たないが、後者は魔法師の基礎とも言える優れた魔力操作や肉体操作技術を見て学ぶ事が出来るのだ。
という訳で若干不服であった彩芽だったが。
「……まあ、今回に限ってはやぶさかでもありません。私としてもこの姿で戦ってみたいと思っていた所ですから」
「おお!」
その言葉で期待の目を向ける香里奈を他所に、彩芽は明後日の方向を見て言う。
「居るのでしょう? 伊織会長」
「っ……バレていましたか」
「そんなお粗末な魔力隠蔽で隠れられているつもりだったのですか?」
彼女の言葉で物陰から伊織が出てくる。一般生徒に紛れる彩芽の事が気になって隠れて監視していたのだが、彼女の前では赤子にも等しかった。
そんな伊織に対する厳しい視線と言葉に香里奈やクラスメート達は胃が締め付けられる様な感覚に襲われる。見た目こそ中学二年生だが中身は年齢と立場相応であった。
「まあいいでしょう。取り敢えず伊織会長、私と決闘をしてください」
「決闘、ですか」
突然の決闘宣言に伊織は困惑すると共に複雑な気持ちになる。
まずは圧倒的なまでの強さの差。伊織とて生徒会長に相応しい実力は持っていると自負しているが、彩芽はかつての英雄である。正直言って勝てるとは思えなかった。加えて、相手は偉大な元勲であり……それに刃を向けられる程彼女は無神経ではない。
なので彼女は断ろうとしたが──次に彩芽が言った言葉でそんな遠慮は吹き飛んでしまう。
「ああ、そうでした。決闘ですが……私は魔法を使いません」
「──はい?」
彼女は今、何と言った?
「そ、それはどういう」
「今の貴女には魔法を使うまでもない、そう聞こえませんでしたか?」
「──ッ!?」
伊織の顔に熱がこもる。
確かに彩芽は強い。かつて北海道で起きた魔物燐動において、当時61歳であり魔法が使えなくなっていた彼女が魔力操作だけで大量の魔物を殲滅したのは有名な話だ。
だが、例えそうだとしても魔法師相手に魔法を使わずに戦うなど侮辱もいい話である。
「ッ、分かりました! その決闘お受けします。奴吾の力、その目に焼き付けてご覧に入れましょう!」
「ふふ……では早速始めましょうか」
勢いで魔装に着替え、立ち向かう宣言をした伊織に彼女は微笑む。
その様子に皆は震えあがっていたが、ただ一人。
「彩芽……私とは、戦ってくれない、ですか?」
咲良だけは不満げであった。彼女としては是非とも成長した彩芽と戦ってみたかったのである。
「魔女様はその次に戦いましょう。魔法の授業で魔法を使わずに終えるなんて有り得ないですからね──」
「三年、菊花伊織!
「一年、菊花彩芽。我が力をもって荘厳たる決着を」
「「我等の勇姿を見届けたまえ!」」
口上を終えた二人が互いの目を見つめる。伊織の服装は正に武神に相応しくエメラルドグリーンと黄色の混じった鎧の様な魔装だが、彩芽は対照的に至って普通の制服姿である。因みにその制服は魔法学園のそれではなく、かつて魔法事変の折に着ていたものであった。伊織が真剣な表情をし冷や汗を垂らしている反面、彩芽は極めてリラックスしており咲良の方へ笑顔で手を振っていた。
決闘開始の鐘が鳴る。刹那、伊織は勢いよく地面を蹴り飛ばし彩芽に接近するが、一方の彼女は極めて冷静に銃弾を確認しスライドを引いて弾を送り込む。
「じゅ、銃?」
「何であんな物……?」
魔法師に対して、銃。ハッキリ言って舐めているとしか思えないその装備に皆が困惑する中、咲良だけは気付く。
「あの銃……あの時、渡したやつ……」
そう、今彩芽が持っている銃は彼女と出逢った直後に自衛官の遺体を漁って渡した物であった。130年もの間持ち続けていたのである。咲良は若干引いた。
因みに後程聞いた所「貴女からの数少ない贈り物なんですよ! 捨てる訳ないじゃないですか!」らしい。
「ハァッ!!」
さて、伊織が雷撃の如く振るった刀を少し体を捻るだけで避け続ける。彼女が体を動かす度に黄金の粒子が微かに漏れていく──これこそが彼女を『貴煌の魔女』と言わしめる所以、特殊な輝く魔力である。
しかしその実態は単に魔力の流れを分かりやすい様に咲良がかけた魔法がそのまま残されているだけ。本来であれば魔力操作が上達すれば自然と消える筈なのだが、彼女は卓越した魔力操作能力によってその輝きを保たせていた。この輝く魔力も咲良からの贈り物だから、らしい。
伊織が放つ斬撃は、しかし彼女の肌どころか髪の先にすらも掠らない。しかもその場から一歩も動かずにただ上体を動かすのみで避け続けている。
「ッ……!」
それに伊織は焦る。相手は魔装すらも纏っていないというのにここまでも差があるというのか!
そんな彼女に対して彩芽は言う。
「伊織、魔法師同士の戦いで神域を使わないのは自分の技術に自信がないと言っている様なものですよ?」
「ッ、しかし……!」
「まさか──」
何やら逡巡する伊織に対し彩芽は不意に銃口を彼女へ向け、躊躇なく引き金を引く。
放たれた銃弾は光の粒子の尾を曳きながら空間を突き進み伊織の頬を掠めて紅い筋を作る。
「っ!?」
「──この期に及んでまだ舐めているのですか?」
「ああもう、分かりましたよ! "神域"!」
ヤケクソ気味にそう叫びながら地面に勢いよく刀を突き立てる。
「"『
瞬間、その場が黄昏時の荒野に包まれる。一見すると何の変哲も無い風景だが、突如として彩芽の足元の地面が盛り上がりそこから巨大なナマズが大口を開けて飛び出してくる。
抵抗出来ずに呑み込まれるかと思われたが、彼女は空中を蹴り口から外れると銃口をナマズに向け、大量の魔力を込めた銃弾を放つ。半ば光線と化したそれはナマズの脳天を貫き、光の泡となって消えていく。
だがそれでは終わらない。滞空する彼女に対して無数の稲妻が、ナマズが、そして伊織本人が飛び掛かる。
絶体絶命のピンチ──そんな状況にあってもなお彼女は極めて冷静だった。
彼女は静かに頭上に銃口を向け、引き金を引く。
破裂音と共に放たれた一発の銃弾は神域の結界のある一点に命中し──
「──なっ」
「魔力操作が粗すぎます。そのせいで結界の弱点も分かりやすい」
──刹那、結界は崩壊する。稲妻やナマズは消失し、神域崩壊のあおりを受けた伊織は一瞬動きを止める。
それは彩芽にとって余りにも大きすぎる隙だった。
パン、パン。二度銃声が鳴り響き、額と胸に穴を空けた伊織は目を見開いたまま光の泡となって消えていった。
「い、今何が起きたんすか?」
観客席で見ていた雲雀は咲良へ訊く。その疑問は観戦していたほぼ全ての人間が抱いていた物だった。
神域とは魔法の神髄だ。たった一発の銃弾で神域を崩壊させる──そんな事が可能だとはとても思えなかったのだ。
「結界の強度は、ムラがある……そのムラの量は、魔力操作技術に依存する、です。会長もそこそこ上手かった、ですが……彩芽相手は、荷が重かった、ですね」
「は、はえー……」
つまり彩芽はあの一瞬で結界の弱点を見抜き、その一点を正確に撃ち抜く事で崩壊させたのだ。そこらの魔法師ではとてもではないが出来ない技である。第一これが出来るのならば「神域への対抗手段は神域のみ」などと言われたりはしない。
因みに咲良の結界には一切ムラがない。全方位完全強度、当然である。
それは兎も角、咲良は今とてもワクワクしていた。
何を隠そう、夢想鍛錬所という安全な場で戦うのが咲良はとても好きなのだ。そして今目の前で勝利した少女は以前会った130年前から途轍もなく成長しているらしい。
咲良は魔装を纏い伊織が消えたフィールドに降り立つ。それに対し、彩芽も嬉しそうに笑みを浮かべて魔装を身に着ける──
「──さあ魔女様、思う存分やりあいましょう!!」
「──望むところ、です……!!」
次回、死闘
【休み時間の一幕】
佳奈「あ、あの~……」
彩芽「おや、貴女は穏矢佳奈さんですか?」
佳奈「お、覚えてくれていたんですか~?」
彩芽「当然です。この前の大河で私の幼少期を演じてくれた子ですからね。素晴らしい演技でしたよ」
佳奈「は、はわわ~! こ、光栄です~!!」
※佳奈は子役経験がある(page:菊花彩芽を参照)
Q.佳奈って誰だよ
A.芽有の友達B
彩芽チャンの制服姿
【挿絵表示】
本のタイトルどっちがいい?
-
押して駄目なら吹き飛ばせ
-
押してダメなら吹き飛ばせ
-
押して駄目ならぶっ飛ばせ
-
押してダメならぶっ飛ばせ