押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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時系列としては一章と二章の間くらいです。


組織の蠢き(前編)

『──"本部"は何をしているのか!?』

 

 暗い部屋に幾つかのモニターが輝き、その全てから怒号が飛ぶ。

 

『厄災の復活は間近に迫っているというのだ!』

『厄災を恐れる必要などない! これは万物に課せられた運命、それを拒む権利などない!』

『運命など存在しない! 滅びが訪れるというのであれば何を犠牲にしてでも立ち向かうのみよ!!』

 

 対立構造──滅びを受け入れし者と抗う者。

 

 そして。

 

「……」

『……いつまで黙っているつもりだ』

『そうだ! 貴様の様な若造では話にならん、ボスを出せ!』

 

 モニターの中央に立つ白髪の少年が、一人。

 罵声の矛先が向く中、彼はただ沈黙を保つのみ。

 

『我等"組織"の理念をボスはお忘れになられたのか?』

『ボスもお認めになったという訳だ! 我等"寛迎派"こそが真に人類を救う者であるとな!』

『馬鹿げた事を言わないで! "救世派"こそ組織の理念を真に体現しているのよ!!』

 

 再び各々が各々を罵り合う。

 そんな中、少年は小さく溜息をつくだけだった。

 

 

   ☨

 

 

 "彼"の事を理解出来ている者などあの場には誰もいない。相変わらずそう思い知らされる時間だった。

 はあ、と溜息をもらしながら僕は黒樫の扉を叩く。

 

「ネモ、入るよ」

 

 キイ、と軋む音を立てて開いた扉の奥には然程広くない部屋があり、そこに鎮座するパイプベッドには一人の老人が横たわる。

 白い髭を生やし、こけた片頬には二つの痛々しい裂傷の痕が走り、光を失った右目を隠す様に黒いモノクルをかけている。かつて僕を迎えに来た時に見せていた分厚い身体は今や見る影もなく、まるで死にかけの病人の様に薄く漂う。

 彼は僕が入ってくるのを知っていたかの様に、特段これといった反応はせずゆっくりとこちらを見る。

 

「涼介。十一条協議はどうだったのかな」

「意地が悪いな。分かってるだろう?」

「まあ、そうだろうね。相変わらず"本部"は孤立、寛迎派と救世派の対立は深まる一方……か。フフ、これでは道化だね」

 

 彼は自嘲する。

 

 さて、ここいらで今の僕らの状況を説明しておこう。

 まず、ここは"組織"、その本部である。とはいえ、ここまでを見てもらえれば分かる通りその求心力は無に等しく、本部以外の拠点はその全てが造反し主に二つの派閥に分かれて好き勝手に動いている。

 

 一つは"救世派"。こちらは比較的"組織"本来の目的に沿っている派閥であり、"研究所"などが属している。

 その目的は『如何なる手段を用いても"厄災の魔女"を倒す』こと。厄災の魔女とはいずれこの世界を滅ぼさんと訪れる破壊の権化の名であり、"組織"はこれを倒し世界を救う為に創立された。その為一見すると救世派は組織の理念に従っている様に見える。

 だが、彼らは現実を見ており、ボス──ネモはひたすらに理想を見ている。彼の抱く理念とは『限りなく少ない犠牲をもって世界を救う』ことであるのだから。

 

 そしてもう一つは"寛迎派"。こちらは最早"組織"の目的と正反対の行動を起こしている派閥だ。

 此奴らは『"厄災の魔女"を受け入れ忠誠を誓う』ことを主張している。即ち、世界を滅ぼそうとしているのだ。最早何故組織の看板を引っ提げているのか分からない。

 以前学園を襲撃したり、新型戦艦の進水式を爆破しようとしたのも此奴らである。此奴らは厄災の魔女の障害になりそうなものを悉く破壊しようとしているのだ。

 

 ネモが床に臥せた途端に此奴らは現れ、これ見よがしに造反した。元々ネモのカリスマだけで荒くれものや裏社会の者共を強引に纏め上げていた様な組織である。こうなるのは運命だったのかもしれない。

 今は僕が彼の代理を務めているが……本部の者達がついてきてくれているだけでもありがたいと思うしかない。

 

「そういえば涼介、君宛てに手紙が届いているよ」

 

 彼はそう言うと一通の封筒を僕に差し出す。差出人は──

 

「──母さん!」

 

 その名──櫻島炉欄の文字列を見た僕は急いで封を開ける。

 僕はこの瞬間が大好きだ。彼女からの愛と言葉を交わせるこの時間が何よりも。

 

「へえ~、母さんの部活に新入生が入ったのか。珍しいな……」

 

 内容は至って普通の近況報告。母さんの創設したサブカル同好会に新入生が入ったという微笑ましい話。

 入ったのは二人。その名前が問題だった。

 

「秋空雲雀と……朝露咲良」

 

 前者は柊家が進めていたデウス・エクス・マキナ計画の被験体。僕からしてみれば少し親近感を抱く境遇の少女であり、本来であれば十三歳になってすぐに死ぬ筈であった。

 だが彼女は今も生きている。その原因については組織でも調査中だ。

 問題は後者。

 

「朝露咲良……確か寛迎派が起こした例の事件をほぼ一人で解決したという少女か」

 

 期待のニュービー。先程の会議でも寛迎派がその件で喚いていた。

 別に奴等の戦力が減るのはいい。あんなモノいるだけで世界の癌だ。学園を守り、何よりも母さんが信じているのなら別にその善性を疑う余地はない……のだが。

 

 

「アイナ、アディール。君達に任務を与える」

「はあ」

「えらく急ね」

 

 僕の言葉に目の前の二人の女性は気の抜けた返事をする。

 やはり子供心にどうしても心配してしまうものである。

 

「朝露咲良という少女の身辺調査をしてもらいたい。君達は本部付けの数少ないA級エージェント、この任務も達成できるだろう」

「身辺調査……? え、あたしたちに頼む事がそれですか?」

「馬鹿じゃないの? そこらへんの探偵にでも頼めばいいじゃない」

「そもそも代理君(涼介)確か女の子になれませんでしたっけ? 学園でも何でもいけますよ」

 

 二人は怪訝な表情を浮かべながら言う。

 まあ彼女らの言う事はもっともだ。身辺調査など秘密結社の魔法師がやることではなく、そもそも僕は自由自在に姿を変える事ができる。魔法学園にだって何度も侵入しているしこの任務に最も適している人材は僕だろう。

 

「普通に最近色々と忙しいんだよ……寛迎派はやらかすし柊家はとんでもない事になってるし救世派はまた妙な事を考えてるみたいだし……」

「ああ……」

 

 遠い目をしながら言う僕にアディールが同情する様な目を向ける。

 僕は一応ボスの代理を行っている。組織に入ってからまだ三年くらいしか経っていないが、それでも本部付けの魔法師の中では僕が一番強く、面倒な業務など誰もやりたがらないのでこういう事になっている。

 そして、救世派はどうやらかの『白い殺人姫(シリエス)』を復活させようとしているらしい。小耳に挟んだだけだが、どうやらシリエスを組織と繋がっている櫻島家経由で学園に侵入させ、快人君の成長の糧としようとしている様だ。

 だがどう考えてもシリエスがそれだけする筈がない。必ず学園の生徒達を虐殺しだすだろう。何とかしないといけないが……"研究所"の戦力は侮れない。はあ、面倒だ。

 

「朝露咲良は恐らく君達よりも遥かに強い、調査してることを悟られないようにね。あと、特高が消えた影響で特務機関の動きが活発になってるらしいからそっちにも注意した方がいい」

「分かりました」

「はいこれ、二人の制服」

「えっ……生徒として侵入させるつもりなの?」

「当然だろう? ゴミを隠すならゴミの中、生徒を隠すなら生徒の中さ。あとこれはスクロール、脱出出来ない様な事態に陥った時に念じたら自動的に発動するから、常に身に着けておいてね」

 

 僕が制服と小さな巻物を渡すと二人は信じられないものを見る様な目を向ける。

 まあ二人の歳を考えれば躊躇するのも分かるけど。

 

「スゴイシツレイな波動を感じました……」

「何か凄い失礼な事考えてない?」

「別に。じゃあ任務頑張ってね」




ちょっとした"組織"の掘り下げ回。


【唐突な登場人物紹介コーナー(復活編)】
・アイナ
組織の"本部"付けA級エージェント。年齢は28歳。
組織の任務に対してはあまり熱意がなく基本定時退社する。基本誰に対しても敬語を使う。
サハリンというペンネームで同人活動をしているらしい。最近修羅場らしく常に目の下に隈を作っている。

・アディール
組織の"本部"付けA級エージェント。年齢は30歳。
組織のメンバーの中では結構な古参であり、ボスの事を慕っている。涼介に対してはそのボスが認めているので一応認め従っている……が、敬語は使わない。

・ネモ
組織のボスにして創立者。涼介と同じく神を自らに融合させて魔法師になった男。
現在は病で床に臥せている。
実は二巻で先行登場して挿絵もある。


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本のタイトルどっちがいい?

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