押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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お天道サマー☆ストライク

「──茉莉様、間も無くです……しかし本当に残られるのですか」

「何度も言っているでしょう。私の能力は後方で指揮して活かせるものではありません」

「おお……!」

「何と勇猛果敢な御方だ……!」

 

 女性の言葉に室内の者達が沸き立つ。何しろ彼女はこの国でも最高位に近い権力者の一人なのだから。

 彼女の名は睡蓮茉莉。睡蓮家の現当主であり海軍卿──即ち、帝国海軍の事実上の最高権力者である。では、そんな彼女が今いる場所は何処かと言えば。

 

「……全艦、第一種戦闘配備!」

「了解。全艦、第一種戦闘配備!!」

 

 彼女の指示が通信士の手によって他の艦へと送られていく。

 

 帝都沖合200浬(370km)の海域、絶対国防圏よりも100浬程下がったこの位置に帝国海軍最大にして最強の艦隊、第一親衛艦隊は待機していた。

 最新鋭戦艦『紀伊』を旗艦とし、長門型戦艦『長門』以下巡洋艦三隻、駆逐艦十二隻、航空母艦一隻、潜水戦艦二隻を抱えるこの艦隊は今、ハワイコロニーにて発生した魔物燐動の日本到達を防ぐべく展開している。

 そして、その旗艦には本来戦場になど出てこない筈の茉莉も居る。通常であれば現場を知らない最高指揮官が出て来た所で邪魔になるだけだが、彼女という魔法師であれば話は別だ。

 

 

「──"神域『海璧照覧』"」

 

 

 彼女が旧式の軍服めいた魔装を身に着け、腰に提げられた軍刀を振り上げる。

 直後、各艦が淡く輝きだす。彼女の神域はやや特殊であり、結界によって内外を分断しない。それを制約とする事で目視圏内の任意の物全てに彼女の魔力が尽きるまで強化を付与する事が出来る様になる。

 

「装着、"装填"」

 

 彼女が呟くと、艦の輝きが一瞬増し、そして収まる。これで強化は完了した。

 今、この艦隊の攻撃は全て魔法師のそれと同じ効率で魔物に通じる様になっている。

 

 彼女の契約神は東郷平八郎──原初の十一人が一人、睡蓮真弓と同じ。だからこそ、彼女はこうして陣頭指揮をとらなければ本領を発揮出来ない。

 後方で縮こまっていてこの艦隊が突破されでもしたら、その時彼女に魔物に対抗する力はほぼ皆無。犬死するくらいなら前線に立った方がマシだ。

 

 睡蓮茉莉、政界に染まってもその武心は健在であった。

 

「Z旗を掲げなさい」

 

 彼女のその声で紀伊のマストに国際信号旗の一つであるZ旗が掲げられる。

 これは本来「引き船を求める」「投網中」といった意味であるが、東郷平八郎の契約者である彼女が使った時に限って別の意味を持ってくる。彼女は通信機に向けて話し始める。

 

『全艦に通達……我々は1020に接敵する予定である。皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ──』

 

 

『──イワト作戦を開始する!!』

 

 

 

「第一陣着弾まで残り3、2、1……今!」

 

 参謀が懐中時計を握り締めながら言ったその言葉と同時に水平線の彼方で幾つもの光が瞬く。

 魔物が発する瘴気にあてられて澱んだ空に幾つものキノコ雲が上がる。

 何もかも消してしまいそうな爆発──だが、それに茉莉は不満げに訊く。

 

「着弾数は」

「二十基の内八基の起爆を確認」

「想定より少ない、どうなっているのです」

「最も早い物は成層圏で迎撃されています。その高度を感知出来るとなると……」

「……深淵祖龍(エンシェントドラゴン)が出張ってきましたか」

 

 彼女の言葉に艦内がひりつく。

 帝都防衛作戦──イワト作戦の第一段階、長距離弾道弾によるロングレンジ攻撃。それらには全て核をも超える『電子励起爆弾』が搭載されており、魔物相手であっても破格の破壊力を保持する。

 本来であれば超空から音速の十数倍の速度で飛来する弾道弾の迎撃など不可能に近い。が、今回の魔物は特別だった。

 

「敵群との距離約500!」

「マズイですな……敵の進軍速度が想定よりも遥かに速い。これですと恐らく接敵は1000……0950になりますぞ」

「チッ、第二陣はまだか!」

「間も無くです!!」

 

 そう言った直後、二度目の光が炸裂する。その光は先程よりも更に少なかった。

 

「五基の起爆を確認!!」

「対応してきましたか……」

「敵群の概数を捕捉!! 残存数約ご、500万!!」

「何だと!?」

 

 レーダー員の言葉に参謀は目を見開く。

 事前に立てられた目測ではこの時点で100万を切っている筈だった。敵の進軍速度の速さに弾道弾の修正が追い付かず、中心部より後方にズレた位置で起爆したのだ。

 

「第三陣の修正を急がせろ!」

「──第三陣以降の攻撃は中止させなさい」

 

 参謀の言葉を茉莉が遮る。

 

「な、何故です!?」

「このままだと第三陣の被害予測範囲に艦隊が、致命的衝撃波の範囲に帝都が入ります。我々は兎も角帝都に被害を出す訳にはいきません」

「ッ……!! 第五陣以降の攻撃は中止、現在飛翔中の物は全て自爆させろ!!」

 

 電子励起爆弾は強力な分周辺への被害も大きくなる。核の様に汚染する訳ではなく単純に威力が大きすぎるからだが。迂闊に日本の近くで起爆させる訳にはいかないのだ。

 

「全艦、砲雷撃戦用意!! 魔法師は白兵戦用意!!」

「了解、全艦砲雷撃戦用意」

「距離400!」

「艦対艦誘導弾発射用意!」

「魔導擲弾小隊、騎空兵小隊、配置につきました」

「装甲展伸兵、装甲強化用意!」

 

 その声で慌ただしく海兵達が動き回る。

 ここまでは弾道ミサイルが着弾するのを見守るのみだった彼らが、ここからは戦闘の主役となるのだ。尤も当人達にとってしてみれば永遠に主役になどなりたくなかっただろうが。

 

 『紀伊』に搭載された三基の三連装主砲がターレットの軋む音を響かせながらゆっくりと旋回する。弾薬庫から砲弾が引き揚げられ装填されると共に砲身が上がる。仰角43度──空気抵抗を考えた場合、砲弾が最も遠方まで飛ぶ角度である。

 

 そして。

 

「主砲露号弾、射程に入りました」

「よろしい──撃てェ!!」

 

 爆発とはまた違った轟音と共に主砲が発射される。煙は無い──紀伊の51cm三連装電磁加速砲は一切の炎も煙も吐き出さず、そのエネルギーの全てを弾に込めて放つ。

 飛び出た弾は音の十数倍もの速度で空間を貫き、やがて空にたむろする魔物の群れに飛び込んだ。

 

 刹那、起爆する。

 放たれたのは紀伊専用に開発された一二式露号弾──時限信管で起爆すると空中に莫大な量の燃焼材を散布、瞬時に爆発させる。その加害範囲は半径800メートル、その範囲内に居る者は気化した燃料の燃焼に巻き込まれて炭化するしかない。

 果たして、海兵と技術者達の希望を乗せた砲弾は発破し、無数の魔物を炎の渦に包み込む。少なくない数の魔物が炭となって空に溶けていったが、全体から見ればごくわずかなものである。

 

 その後、各艦から次々とミサイルが放たれていく。鳴り止まぬ発射音、羽虫の如く墜ちていく魔物──されども勢いは全く衰えない。

 

 

 悪夢は連鎖する。

 

 

「こ、この影は……」

「どうした、はっきり言え!」

「はっ! 前方20に浮上してくる物体あり! 全長凡そ30キロ!」

 

 ソナー員の言葉に一同はさらに深い絶望に襲われる。

 この世界の海においてそのレベルの大きさの生物といえば一つしかいない──

 

「まさか……リヴァイアサンも動いているのですか!?」

 

 リヴァイアサン──ハワイコロニーを支配するもう一体の"龍"。

 その全長は未だ判明していないが、少なくとも全長数十キロは超えていることだけは確かだった。

 ただでさえエンシェントドラゴンが動いているというのに、それに加えてリヴァイアサンまで出てこられてしまってはいよいよ人類側の勝ち目はなくなってしまう。

 

「し、司令……」

「ッ……」

 

 茉莉は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。

 逃げることはできない。ここで引いたところで後に遺るのは廃墟と化した日本だけだ。

 

「……我々は最後の一兵になるまで戦い、皇国の未来の礎となろう! 砲撃を続けなさい! 同時に機関臨界用意!」

「り、りんかい」

「司令、それは……」

「敵群に包囲されたのち、本艦は自爆する!」

 

 彼女のその言葉に対する反応は様々だった。

 奮起する者、絶望する者……何はともあれ、皆に共通しているのは"ここで死ぬこと"だけである。

 

 だが、その空奮起も現実は容易く打ち砕く。

 

「!! 海中に影が──」

 

 ソナー員がそう言った直後、紀伊のすぐ前方に巨大な水柱が立つ。

 それを割って出てきたのは黒い影。

 

「リヴァ──」

 

 茉莉はその名を呼ぼうとするが、最後まで言い切る前にその巨大な影──リヴァイアサンは口を開けて紀伊を吞み込もうとする──

 

 

 

「──ッ……い、生きてる……?」

 

 彼女は目を開ける。そこは先ほどまでと全く変わらない艦橋の中。ただ一つ違うのは、先ほどまで眼前に迫っていたリヴァイアサンが消えているということ。代わりに黒い塵のようなものが舞っている。

 

 一体何が起きたのだろう。彼女は必死に記憶を呼び起こす。

 リヴァイアサンに呑み込まれようとした刹那、眩い光が辺りを包み込んだのだ。それが消えると同時に魔物の姿も消えていた……電子励起爆弾でも起爆したのか? だがそれにしては紀伊や艦隊が無傷なのはおかしい。

 

 

「──あの」

「!? な、なんですかあなたは」

 

 と、その時ふいに彼女に声がかけられる。茉莉が声のしたほうを見ると、そこには紫色の長髪をした陰気そうな少女がいた。

 どこか引っかかるその容姿に、しかし茉莉は思い出すことができなかった。だからこそ彼女は言う。

 

「その見た目だと学生ですね。どこから来た、というか間違って乗り込んだのですか? よくわからりませんがさっさと連絡機に乗って本土へ帰りなさい。ここは子供の遊び場ではありません」

「司令本部から聞いてない、ですか?」

「はあ?」

 

 少女のその言葉に彼女は記憶の隅を探る。

 ああ、そういえばこの作戦が始まる前に本部から「援軍として学生一人を送る」といった通達が来ていたのを思い出す。馬鹿げているとして突っぱねたが……どうやら伝わっていなかったらしい。

 

「チッ……いいから帰りなさい。学生一人増えたところで何も変わりません……聞いているのですか?」

「おい、学生! 閣下の言葉を……おい、どこに行く!」

 

 彼女らの言葉にも耳を貸さず、少女は艦橋の外に出て塵の降る艦の前方に浮遊する。

 そのまま彼女は持っていた杖を迫りくる魔物の群れにおもむろに向けた。

 

 そして。

 

 

「"ショックカノン"」

 

 

 刹那、放たれた青白い閃光が水平線を薙ぎ払う。作戦の序盤に起こった電子励起爆弾のそれよりも遥かに巨大な爆発が連鎖するように巻き起こる。その規模の爆発であるというのに、不思議と一切の爆風も衝撃波も艦隊は浴びず、ただ画面越しに見るかの如く爆発という現象を目に焼き付けさせられるのみだった。

 

「ま、魔物……九割を殲滅」

「な、なんだと!? ば、化け物か」

 

 レーダー員の言葉に参謀が驚愕する。

 だがまだ全滅したわけではない。その証左に爆発をかき分けて巨大な細長い影が顔をだす。それはまさしくエンシェントドラゴンであり、その場にいた全員に再度緊張感が走る。

 あの少女の攻撃はすさまじいものであったが、あれほどの威力、連射できるはずがない、そう思い込んでしまったからだ。

 

 だが。

 

「"ショックカノン"」

 

 間髪入れずもう一射。

 放たれた光の濁流はエンシェントドラゴンを真正面からぶち抜き、爆散させる。

 

 そこで全員が思い知る。先ほどのリヴァイアサンから助かったのが何故なのか。

 

 そして茉莉は思い出す。あの少女の正体を。

 

 

──既に来ているからですよ。柊はその逆鱗に触れた、だから輝夜はあんな真似をしたんですよ。

 

 

 かつて彼女に紅葉が語った言葉。

 

 それは世界を滅ぼすといわれる存在。この世の全てを破壊し、無に帰す災厄の権化──

 

 

「……厄災の、魔女」




※本来は艦隊壊滅の上日本本土をめちゃくちゃにします


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・ディナ=ヴィロリア
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レインフォートで咲良(フェニシア)を拾って育てた神。
最高神レインフォートのもと、下界を統べる『三執神』の一柱であり、『刻』を司る。要するに滅茶苦茶格の高い神。
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