押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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うばわれた思い出を守れ! 明かされるアキラのヒミツ

「昨日不審者が現れたらしいですぞ」

「また、ですか……」

 

 小冷の言葉に咲良はうんざりとした表情を浮かべる。

 一体これで何度目だというのだろう。四月の襲撃事件、シリエスの侵入、カケル擬き、そして度重なる先輩のお子さん(涼介)の侵入……日本が誇る魔法学園の名が泣くだろう。

 学園を覆う結界に勝手に手を加えて文句を言われたり誤作動を起こしたりするのが嫌なので大した事はしていなかったのだが、それもそろそろ考え直す時期なのだろうか、そんな事を彼女が考えていると部室の扉が開いて炉欄と雲雀が入ってくる。雲雀は咲良の顔を見ると驚く。

 

「あれ、咲良? ハワイ沖に行ってたんじゃないんすか?」

「別に、帰ってこようと思えばいつでも帰れる、ですから……」

「まあ咲良じゃしな」

「確かにそうっすね」

 

 ハワイから溢れ出した魔物の群れは殲滅したが、それはそれとして警戒態勢が解除された訳ではない。未だ第一親衛艦隊はハワイ沖に展開し、咲良も一時的に艦隊所属の魔法師として登録されていた。

 まあそれはそれとして自由時間がない訳ではない。本来であれば距離的に艦の中で過ごすしかない訳だが、テレポートが使える彼女にとって距離は何の枷にもならない。コンビニに行くよりも気軽に数百キロ離れた部室に来る事など朝飯前である。

 

「お疲れ様でーす! 今日も元気、に……」

 

 その時少し遅れて新入部員の睡蓮銀杏が入ってきて元気に挨拶をしたかと思えば、咲良の顔を見て凍り付く。

 

「え、なんで、ここに」

「銀杏よ、この程度で驚いておっては体がもたんぞ」

「そ、そうなんですか……」

 

 炉欄に窘められ銀杏は困惑しながら化け物を見るような目で咲良を見る。

 一か月程前、部活対抗戦の後に入ってきた彼女ではあるが、その間咲良は大して派手な動きもしていなかったので耐性がついていなかったのだ。

 

 それはそれとして、今日の部活が始まる。少し広くなった部室の机に皆が座る。

 席の数は六つ、座るのは五人。一人は今欠席中である。まあ()()の身分を考えると寧ろ学園生活を送っている方がイレギュラーなのだろうが。

 

「彩芽がおらんから少し寂しいが、今日も始めるかの。今日の題材は無論昨日の話についてじゃ。小冷、頼む」

 

 炉欄の言葉で小冷がボロボロの液晶スクリーンを下げ、手元の端末を操作する。するとスクリーンに映像が映る。

 

『みんなー! キラキラキャッチ☆ミラフィア、始まるよー!』

 

 映し出されたのは現行のミラフィア。主人公であるフィアフォレストがやたらボリュームの大きい緑色の髪を揺らしながら開幕を告げアバンが始まる。

 それを真剣な表情で見る部員一同。昨日の朝八時半にわざわざ早起きして観ているというのにこうして噛り付く様に観る理由は、その話の内容にあった。

 

 画面の中では今、フィアフォレスト──主人公である森咲ひかりが敵であるインベイダーによって異空間に隔離され、孤独な闘いを強いられていた。

 彼女の背後には一人の少年の姿。彼の名は銀月(あきら)、ひかりの幼馴染であり、偶々街を共に歩いている所を襲撃され共に閉じ込められてしまったのだ。

 

 本来残り三人のミラフィアと力を合わせて戦うべき相手。彼女ただ一人ではどうやっても力不足であり、大ダメージを受けたフォレストの変身は解除され傷だらけの"ひかり"となって彰のもとに倒れこむ。

 

『ここまでだな、ミラフィア』

『ッ、やめろ!!』

『なんだァ、てめェ……?』

『あ、きら……ダメ……』

 

 戦えなくなったひかりを庇う様に彰が立つ。それにインベイダーは冷酷にも自らの操る怪物に指示を出す。

 

『やれ』

 

 そうして彼は無残にも叩き潰される──

 

 

『──変身』

 

 

──かと思われた。

 

 

「うおおおお!!!!」

「彰^~~~!!!」

 

 

 知性を感じさせない歓声が鑑賞陣から流れる中、彰は一つの端末を取り出すと直後彼の体が光に包まれる。

 それが収まったとき、そこにいたのは。

 

『無限に広がる大宇宙──フィアマゼラン……!』

『なッ、お前は!?』

『え……彰が、マゼラン……?』

 

 メカメカしいディティールを持つピンク色の衣装を身に着けた少女の姿が、そこにはあった。

 そしてそれは、作中で度々ミラフィア達を助けていた謎のミラフィアその人であったのだ。

 

 そうしてフィアマゼランは自身の武器であるライトサーベルで怪物を切り裂いたのち、ひかりの制止も聞かずにその場から姿を消したのだった……

 

 

「……まさか、マゼランの正体が彰だった、とは……私はてっきり、おばあちゃん、だと……」

「私の人工フィア説もなかったっすね……クロフィアみたいな事をしてくれるのかと思ってたんすけどね」

「ふう、拙者のクラスメイトのことりちゃん説もはずれだったでござるね……」

「ひかりちゃんの子供説もはずれでしたね。でも先輩は確か……」

「ウム、ワシは最初から分かっておったぞ!」

 

 次回予告まで観終わったのち、感想戦が始まる。

 謎のミラフィアの正体については前々からサブカル同好会の一大テーマにもなっていた。各自が各々の自説を持っていたのだが、その中で炉欄のみが彰説を唱えていた。その洞察力の高さに皆が畏敬の目を向け、炉欄は得意げな表情を浮かべる。

 因みに彩芽はインベイダーの裏切り者説を唱えていた。大外れである。

 

 

 と、まあそんな風に他愛もない活動を続けているとふいに咲良が何かに気づく。

 

「……あ、誰かがノックしてる、です」

「ノック? 誰も来てないっすけど」

()()()の話、です。少し、行ってきます」

 

 そういうと彼女は姿を消す。どうやら艦隊の自室に客が来ていたらしい。

 そうしてまた少し静かになった部室で皆が帰宅の準備をする。いつの間にか時刻は19時、切り上げるには丁度いい時間だった。

 炉欄は部室が自室である。いつもはいそいそと食事の準備でもしている所を何故か荷造りをする彼女に雲雀が疑問を抱く。

 

「あれ? どうしたんすか?」

「む? いや何、明後日から前線演習じゃからな。準備は早め早めにやっておかねば」

「「前線演習?」」

「拙者が説明致しましょう!」

 

 炉欄の言葉に雲雀と銀杏が揃って首を傾げ、そこに小冷が割り込む様に得意げに説明し始める。

 

「前線演習とはズバリ、我々学生が前線へ赴き実戦形式の演習を行うものなのですぞ!」

「そのまんまじゃないすか」

「ま、まあそれはそうでござるが。キモはそこではござらんのです。この演習は三回生は必修ですが二回生は優秀な生徒が選抜される……なんと今回、拙者もその中に選ばれたのでござる!!」

 

 ふんす、と胸を張りながら鼻を鳴らす。

 なるほど、確かにそれは得意げになるのも当然かもしれない。つまりこれは、彼女が二回生の中でも特に秀でていると学園に認められたという事に他ならないからだ。尤も、対抗戦で優勝した補正がかなりかかっている気もするが。

 

「今回はどこに行くんですか?」

 

 銀杏が尋ねる。

 

「群馬じゃよ。とはいっても最前線からはかなり離れておるし、彩芽が王山龍を倒したお陰でかなり魔物も沈静化しておるから演習になるかはわからんがの」

 

 龍の籠はほとんどその土地を治める"龍"によって支えられているといっても過言ではない。その龍が倒された今、日本最大級であった群馬コロニーも徐々に縮小していくことだろう。まあそうでもなければこんな慌ただしい時代に前線演習などやらない。

 そうは分かっていてもやはり前線に赴くというのは不安が残る。心配そうな視線を送る雲雀と銀杏に炉欄は穏やかな笑みのまま言う。

 

「ま、ちょっとした旅行だと思っておればよい」

「そうですぞ! それに拙者らの手に負えぬ事が起きても睡蓮先輩や菊花先輩がおりますし、拙者らよりもさらに前線に彩芽殿がおりますからな! この程度で音は上げておれません!」

 

 小冷が気合を入れる。

 現在彩芽は群馬コロニー内部にある前線基地にて魔物燐動残党の掃討作戦の指揮を執っている。正直なところ、演習で赴く場所まで魔物が辿り着けるとは考えづらかった。だからこそ二人は彼女らの言う通り旅行や遠足でも行く程度の感覚でいた。

 

 

──実際、それは間違ってはいなかった。

 長らく人類を苦しめてきた魔の坩堝が彼女らに危害を加える事はほぼ不可能であったのだ。

 

 

 だが──




迫真のフラグ乱立


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