押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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はじまりの唄(中編)

 その日、俺は群馬コロニーが一望できる場所で佇んでいた。

 何も目的もなくここにいるわけではない。記憶が正しければ今日、この夜。

 

──濃密な霧の結界の中、そして遠く離れた海の底。その二か所から膨大な量の魔力が放出されるのを感じる。

 それはかつて、自身も直面した崩壊の交響曲(シンフォニー)

 

「始まった……やはり俺の世界と同じ、か」

 

 比奈や雲雀が生きていたり、心愛が人間のままであったり、何故か菊花彩芽が学生になっていたりと大きく違う流れになっているこちらの世界だが、世界そのものの仕組みは何も変わらない。自然現象はやはり、こうして俺の知っている通りに動くのだ。

 少し残念ではあるが……これで俺の"計画"を次の段階へ進めることが出来るのも事実。止められないのならば精々利用させてもらおう。

 

「ここからだ……待っていろ、必ずお前を殺してみせる……」

 

 ただ一つを残し、俺の全てを奪い去った憎き存在。殺戮と破壊の権化。

 きっと俺のいた世界には、宇宙には、細菌の一片すらも残されていないのではないだろうか。

 

 奴は手始めに太陽と月を消した。光を失った星が急激に寒冷化する中、大陸が一つずつ消されていった。俺達は必死に戦ったが……結果として、無様にも別の世界線まで逃げる事しかできなかった。

 そして何よりも、たったそれだけで奴から逃げられたとは一切確信できていない。逃げる直前、奴は俺達を見て嗤っていたのだから。

 

 だが、その屈辱に塗れた恐怖もじきに終わる。

 

 

「厄災の魔女……お前だけは、必ず……!!」

 

 

──────

───

 

 

──時は少し遡る。

 

 私は炉欄先輩の記憶を覗き見た。

 刹那、後悔した。私は敬愛する先輩が恐らく最も隠したかったであろう過去を知ってしまったのだ。断じて許される事ではない。

 けれど、見ると決めたのは私自身だ。その責任を"彼"に擦り付けるわけにはいかない。

 

「分かったかい? 母さんがどれだけこの世界の歪みの中で生きてきたのか……」

「……お前はこれを、私に見せて……何をさせたい、ですか?」

「こうでもしないと君は本気になってくれないと思ってね」

 

 非常に不愉快だが、彼の取った手段は的確だった。私は今、すぐにでも飛んで行って奴等を殲滅したいと思ってしまっている……こいつの策に嵌っている様で不愉快だが。

 深呼吸して息を整える。感情を整理し、あらぬ手段(・・・・・)を取らない様に頭を冷やす──

 

 

──その時だった。

 

「……え」

「どうし……は?」

 

 不意に彼が硬直し、直後私の脳内に理解できない光景が届く。

 それは群馬に飛ばしていた偵察用のスズメからの映像──炉欄先輩達が泊まっている筈の基地が、大爆発を起こすという物。

 元々結界で隔てられている上、先輩直々に諸々断られてしまったので探知が遅れてしまった。

 

 理解するよりも先にテレポートしようとした瞬間、私の敵感知が警報を鳴らす。生半可な物ではない──いますぐに対応しなければならない存在が、すぐ、近くに。

 

「"ショックカノン"!」

「"トラペゾヘドロン"!!」

 

 私と彼はほぼ同時に動き、直後海面から船を挟む様に飛び出してきた巨大な()目掛けて攻撃を放つ。

 私はいつもの青白い光芒を。彼はどこからともなく取り出した白銀のショットガンから赤黒い光芒を。それらは容易くその口──『紀伊』を噛み砕こうとしたリヴァイアサンを消し飛ばす。

 

 だが、私の脳は未だ警鐘を鳴らし続けている。それが指し示す通り、海面からは次々と魔物が溢れ出てはこちらを狙ってくる。

 

「"ショックブラスト"」

 

 取り敢えず出てきた奴等を殲滅したが魔物は止まらない。少し探ってみると、どうやら海底に新たなダンジョンが現れた様だ。明らかに人為的なタイミング……しかも、呼応するようにハワイからも魔物が迫ってきている。

 私は片腕を切り落とし魔法をかけ、分身体にした後に腕を治癒する。ここの対応はこの分身に任せ、私は涼介の首根っこを掴みテレポートする。

 

 

 

──転移した先は、正しく地獄だった。

 燃え盛る基地だった物、大穴から這い出ては僅かに燃え残る死体に群がる魔物、独り戦う紅葉寮長を貪る醜い化物。

 

「"ショックカノン" "拡散(スペイズ)" "追尾(ホーミング)"」

 

 空に昇る雷の如く、はたまた天高く茂る大樹の様に、青白く細い閃光が正確に空中にいた魔物を一匹残らず貫く。

 燃え残る輝く塵がキラキラと舞う中、私は紅葉寮長を抱きとめた。彼女の酷く傷ついたその姿に思わず顔を顰める。

 

「さく、ら……」

「……」

 

 ヒールをかけ、彼女の身体を治癒する。傷一つない真っ新な身体に戻るが、精神までは治せない。極度の緊張状態にあったのだろう、彼女はそのまま眠るように気を失った。

 

……間に合ったのは彼女だけだった。生命反応を探ってみるが、この凄惨な現場には私と彼女、そして彼以外の人間はいない。

 

 

 だから。

 

 

「──かあ、さん……?」

 

 

 燃え盛る瓦礫の中、彼は呆然と独り跪く。

 自失し見つめるその先には炭化した死体が一つ。焼けたにしても細すぎる手足や腰。頭部と思われる場所には煤で汚れて分かりづらいが、黒みがかった桃色の髪が、耳と思われる場所にはへし曲がった小さなイアリングがついている。

 私の知る限り、その特徴を持つ人間は一人しか知らない。

 

「あ、ああ、そんな、やだ、いやだよ」

 

 彼が自らの頭を掻き毟る。ぼろぼろと涙を零し、絞り出すような声で泣き喚く。

 その姿にノイズが走り、取り繕っていた青年の貌が剥がれ落ちる。

 

 

「まま……ぼくを、おいていかないで……」

 

 

 そこにはただ、母親の遺体に縋り付く小さな子供がいるのみだった。

 

 彼の本当の姿なのだろう。先ほど見た記憶が正しいのなら、彼はまだ八歳にもなっていない筈だ。普段は契約神の能力で変身しているのだろう。

 ふと傍に目をやると、砕けひしゃげたメガネが落ちていた。その形や色には見覚えがある──小冷先輩の物だ。

 

 

 

『──何をしようとしているの』

 

 

 不意に声がかけられる。

 見ると、白い霊衣を纏った女性がそこに立っていた。だがその声は鼓膜を通してではなく直接脳に届いている。そこにいて、そこにいない様に。

 周囲の景色は凍り付いている。燃え盛る炎も泣き叫ぶ少年もそれら全ての動きが止まり、色を失っている。ここはどうやら、対話の為だけに彼女が作り出した領域らしい。

 

 日本の死を司る神──イザナミが、私を戒める為に。

 

「……さあ、何だと思う、です?」

『それは許されざる事。死した命は──「なら」

 

 私は彼女へ杖を向けた。

 

「ここで、戦う、です?」

『……』

 

 そう言うと彼女は何も言わずに消えていった。

 

「安心する、ですよ」

 

 私は虚空に向けて話しかける。

 

 

「すぐに……代わりを送ります、から」

 

 

「──"遠き双子の片割れよ、慈悲深き救済の手を差し伸べよ"」

 

 ふわり、と私の身体から魔力が舞い上がる。

 それにあてられた涼介はゆっくりとこちらを振り向く。

 

「なに、してるの……?」

「"金色の使者から旧き箱舟へ、青く新緑の双眸を打ち崩す"」

 

 舞い上がった魔力の光は赤黒く変色し、空気中を侵食するかの如く根を伸ばす。

 大気中に含まれる魔力を塗り替え、どろりと地を這って行く。その様子に彼が小さく悲鳴を上げる。

 

「"深紅の異形、腥い灯台、大海の銀狼、毒と酸に侵された逆さの故郷"」

 

 空気を塗り替えながら這う魔力はやがて、彼が呆然と寄り添っていた炭に辿り着く。

 それだけではない。あちらこちらに散乱している炭や肉片、骨片、髪。それらに触手を伸ばし、自らの糧にせんとばかりに呑み込んでいく。

 無論、本当に糧にするわけではない。これは"地図"であり"設計図"だ。

 

「"水晶の大地より齎されし白き恩寵よ、我が世に蔓延る諦念の霧を振り払え──"」

 

 

 

「──"治魂の吐息(グリア・イス・カンディル)"」

 

 

 

──ここにいる皆を、蘇らせるための。




>三分以内ならノーリスクで蘇生できる

それはそうと敬愛する先輩方を殺されて今世一ブチ切れ状態の咲良さん。
蘇生は禁忌なのでイザナミさんが警告しに来ましたがお構いなしです。

本のタイトルどっちがいい?

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