押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
──私が到着した時には、全てが終わっていた。
「これは……一体……?」
空気に触れ薄汚れた血の様に濁った色の空が、やけに静かな瓦礫の海を照らしていた。風もなく、燃え落ちた建物の影だけがうっすらと伸びている。
瓦礫は山の様に積み重なっているというのに、そこには傷一つない人々がまるで刻から取り残されたかのように整然と眠っている。どこからともなく微かな気配だけが漂い、彼ら彼女らを見下ろす紅い空が嗤っている様に見えた。
それはまるで奇怪な夢の様な──私の視界がぶれ、昂っていた戦意は冷水に浸される。
「輝夜!」
「──っあ、も、紅葉……」
「良かった、君が来てくれて……知っている人間が、来てくれて」
そんな私の意識は一人の少女の声で連れ戻される。
視界に意識を向けると、そこには青い髪が美しい少年然とした少女がいた。睡蓮家次期当主、睡蓮紅葉である。
彼女はよろよろと私に近付くと手を肩に置き体重を預ける。
「ちょ、ちょっと紅葉? 貴女、どうしたのよ」
「この爆発は事故じゃない、事件だ。犯人は、分かってる」
「はあ!?」
「すぐに分かる。けど、捕まえにいく必要は、ない」
「ちょっと、そんな急に」
「きっと彼女らはもう、この世にいないから」
衝撃的な発言の数々に私の理解が追い付かない。
元々は美里駐屯地で彩芽様と一緒に魔物と戦っていた所、突然この基地が爆発するのが見えたので彩芽様の命令で彼女を除く全員でここまで急ぎ撤退したのだ。ほぼ同じタイミングで魔物が再活性化したため、彩芽様だけが殿となって一人戦っている。
この基地は後方支援の要。ここが失われては美里駐屯地は孤立してしまう、だからこその全軍出撃……だったのだが。
来てみれば危惧していた魔物は一切おらず、代わりにここの基地要員や学生が眠っていた。
挙句に今の紅葉の発言である。もう意味が分からない──
「──厄災の魔女は、どうしようもなく優しい普通の人間だった」
「貴女、何を」
「力を持つだけの、ただの女の子なんだよ。親しい人が傷付けられたら治し、怒る。人として当たり前だ」
厄災の魔女といえば朝露咲良だ。私からしてみれば普通の人間だとは到底思えないが──
──違和感。
「……ちょっと待って、まさか、貴女たち」
「魔女を目覚めさせたのは、アタシたちだ」
「答えて紅葉、彼女はどこに行ったの!」
「それは……」
彼女が口を開こうとした瞬間だった。
「何? 何て言った!? 櫻島がどうしたってんだい!?」
近くにいた時雨大尉が伝令兵から何かの報告を受けていた。
私の胸騒ぎは最高潮に達し、抑えきれず彼女へ訊く。
「大尉、何か、あったのですか」
「む……ああ、あった」
そして彼女は口を開く。
──櫻島家が、壊滅した。現場は火に覆われ、無数の死骸が転がっているらしい。
全ての点が線で繋がった。
この爆発の犯人は櫻島家の者であり、自らの親しい者を傷付けられた──否、
これまで彼女は手足を消し飛ばしこそすれ命を奪う事はなかった。あの『白い殺人姫』ですらも収監に留めたのだ。
だが、そんな彼女が明確な殺意を持った。もしかすれば紅葉は目にしたのかもしれない。彼女が人を殺す瞬間を。だからこそ、彼女は言ったのだ──魔女が目覚めた、と。
それは余りにも悲しく、惨い目覚めだった。
結局の所厄災の魔女はある日突然訪れる"厄災"などではなく、人の愚かさによって生み出された悲しき復讐者であったのだから。
「かぐや……」
「ちょ、ちょっと紅葉、しっかりしなさい!」
「炉欄を、まもってあげて……あの子は、人の……」
そこで彼女は気を失った。
炉欄というのは確か……櫻島炉欄、だったか。今まさに潰された、櫻島家の一人。守れというのは朝露咲良からか? いや無理だが。
「ちょっと起きなさいよ。起きて私に説明しなさい! もみじーーーっ!!」
ああ、もう……意味が分からない。
──────
「──は?」
向かってきていた魔物を殲滅し、遅れて爆発現場に到着した私はそこで衝撃的な報告を受ける。
櫻島家、壊滅。犯人は不明。
だが、そんな事が出来るのは私を除けば一人しかいない。ではなぜそんな事をしたのか。
魔女様は残忍な殺戮者ではない。となると恐らく、この爆破自体の首謀者が櫻島家であったのだろう。しかしそこまでで推理は止まる。これ以上を求めるには新たな情報源が必要だ。
私は周囲を見渡し──
「──止まりなさい」
「ッ……」
──不審な揺れをする空間に手を伸ばす。
するとそこから二人の人影が現れた。
「白髪の少年と……部長」
「どうして、分かった」
白髪の少年が炉欄を抱え、怯えた様子でこちらを見る。
まあ確かに空間偽装はほぼ完璧に近かったが私に対してだとまだ甘い。
「バレバレですよ。それより……」
私は彼に切っ先を向ける。
「──彼女を放せ」
「誰が、離すもんか」
一触即発、その言葉が一番似合う状況になった。
「……はあ、やめです」
「な、なんでだ」
「私には貴方みたいな小さな男の子を張り倒す趣味はありませんよ」
「小さな……っ、しまった……」
私が言うと、彼は自らの姿を見下ろして慌てる。
彼の姿は今、十にも満たないであろう小さな少年の姿になっていた。つい先ほどまでは十代後半はありそうな青年であったのに、だ。
そして恐らく、こちらが彼の本当の姿。魔法を使っているのか、或いはそういう体質なのか。どちらにせよどう考えても訳ありだ。
「安心してください。貴方達を表に引き出すつもりは毛頭ありませんよ」
「信じられるか……!」
「信じるも信じないも自由ですが、ここで抵抗したとして敵わないことは分かりますよね? なら素直に従う方が賢明な判断でしょう?」
「ッ……」
彼は苦虫を嚙み潰したような表情になる。
その気になれば、私は彼の首を飛ばして炉欄を奪還できる。それはあちらも理解している様で、彼はおずおずと殺気を鎮める。
「さて、話してもらえますか。ここで何が起きたのか。貴方なら何か知っているのでしょう?」
「……一つだけ聞きたい」
「なんでしょう?」
「あんたと咲良は、どんな関係だ」
私にそれを聞くのか。
まあ話し始めたら一日じゃ終わらないので、一言で締めよう。
「魔女様……咲良は、私の恩人で、大切な方です」
「……そうか」
この答えで満足したのかは分からない。
ただ一つ言えるのは、その後彼がゆっくりと口を開いてくれたという事だ。
そして、私は知ってしまったのである──
本のタイトルどっちがいい?
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