押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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《前回のあらすじ》
異世界レインフォートは文明の栄華を極め、惑星全土を支配した魔族は宇宙に飛び出す様になっていた。
そんな世界を支配する魔王ディスピアは、かつて厄災の魔女に殺された妻の事を思い出し、その苦い思い出と恐怖を忘れる為に古い付き合いの腹心と共に酒を酌み交わすのだった……

そんな中、突如として謎のさい強魔女が現れ、彼の意識を飲み込んでしまう。そして魔王たちの前に、見た目はオールマイトにそっくりだが真逆の信念を持つ敵・ダークマイトが立ちはだかる。



厄災と魔王

「──へえ、何を記念する、ですか?」

 

 

「──ッ!!?」

 

 その静かな声が聞こえてきた瞬間、我は反射的に剣を抜き振り下ろしていた。

 視界の隅に映るザイロンは未だ微かにも動いていない。超感覚によって無限にも引き延ばされた時の中、濃密な魔力を纏った超硬質アダマンタイトの刃が藤色の魔女の頭蓋を断つ──

 

 

「……魔王さっ「ザイロン!!」

 

 

 巻き起こる土煙の中、ようやく気付いたザイロンが発した言葉を遮り、我は叫ぶ。

 

対厄災防衛戦(ヴァレル・ディル・フェニシア)を──」

 

 それを聞いた彼が息をのむ。

 何しろそれはつまり、この世界にとって最悪の事態が発生したことを意味しているからだ。

 今、我が放った一撃は山をも断つ程の威力があった。この世に棲む如何なる生物であろうと防ぐことはできない、はずだ。

 だが、余りにも手ごたえが少ない。

 

 それもその筈。

 

 

──土煙が晴れたそこでは、振り下ろした剣先を軽々と摘まんで止めた魔女が、グキャリ、と音を立たせて剣先を握り潰していて。

 

 刹那、魔女の姿が掻き消える。

 前、右、左、上──下。時にして僅か数百分の一秒にも満たないであろう圧縮された時間の中、我が身じろぎする前に彼女の強烈な膝蹴りが鳩尾に直撃した。

 そのたった一撃で骨と臓器が砕け、天井を突き抜けて天まで吹き飛ばされる。

 

 雲を抜けてもその勢いは止まらず、気付いた時には目の前の世界は丸くなっていた(・・・・・・・)

 

「ば、かな……」

 

 我は治癒魔法で回復しながらたった今の出来事に絶望する。

 奴は、たった一撃の蹴りで我を宇宙まで飛ばしてみせたのだ。我の体重は魔導車程もあり、そんな物体を宇宙まで吹き飛ばす程のエネルギーとは一体どれほどの物なのか。

 

 一つだけ言えるのは──明らかに奴は、かつて我が戦った時よりも強い。

 我は精神を研ぎ澄ませ、体勢を立て直しいつの間にか目の前にふわりと立っている魔女へと向き直った。

 

 藤色の長い髪にマゼンタ色の瞳を持つ少女──厄災の魔女からぶわりと魔力が舞い上がる。

 それだけで我は奴が次、何をするかを看破した……否、敢えて看破させたのだ。奴は、まるで世界に見せつけるかの様に戦っている。

 

 そして我らは、同時に叫ぶ。

 

 

「"ショックカノン"──」

「"ライグレーディ"──」

 

 

「「──"100連装(ハンドレッドチェイン)"!!!」」

 

 

 世界が、光に包まれた。

 

 

──────

 

 

 天井が抜けた部屋に一人残されたザイロンは、何が起きたのかを全く把握できていなかった。

 魔女が現れて吹き飛ばすまでの一連の流れは合わせても三秒にも満たず、そのほとんどが土煙で満ちていた為彼は魔女の姿を視認できていない。

 だがしかし、吹き飛ばされる直前にディスピアが言った単語はしっかりと聞き取っていた。

 

 『対厄災防衛戦(ヴァレル・ディル・フェニシア)』──厄災の魔女が再び現れた時に備えて魔王軍が用意している作戦である。その名を叫んだという事は、即ち今魔王を吹き飛ばしたのは厄災の魔女だという事に他ならない。

 ザイロンは動悸を抑えながらテレパスにて統合作戦司令室へと連絡する。

 

「私だ!! 対厄災防衛戦(ヴァレル・ディル・フェニシア)を発動しろ!!」

『ザイロン様!? そ、それはつまり』

「詳しく説明している暇はない!! 早く艦隊を──っ、なんだ……!?」

 

 その時、彼は急な眩しさに目がくらむ。

 天井に空いた穴から空を見上げると──

 

 

「な、なんだこれは……」

 

 

──夜であるというのに、天上を埋め尽くさんと言わんばかりに無数の光球が現れ、世界を照らしていた。

 彼の視力では、その一つ一つが直径数キロにも及ぶ爆発であると気付くにはしばしの時を要した。

 

 

 

「ルグランジュ1宙域において魔王様と何者かが交戦中!!」

「何者かでは分からん!!」

「宙域の魔力濃度が高すぎて計器が機能しません!!」

 

 その頃、王都中心部にある統合作戦司令室は怒号で溢れていた。

 ゴブリン、オーク、オーガ、エルフにリザードマン……ここには様々な種族の者達がいたが、彼ら彼女らは誰一人として本当に厄災の魔女が蘇ってくるとは信じていなかったのである。

 

 だがそれでも、皆やれるだけのことはやった。

 

「防宙システム、4から9番はポイント7で砲撃準備! ヴァリエイター準備よろし!」

「第一艦隊出撃準備完了!!」

「全球狙撃大隊砲撃準備よし!!」

「甲宙竜騎兵団出撃準備完了!!」

 

 これまでレインフォートにて厄災の魔女の為だけに備えられてきた幾つもの防衛装備が起動しただ一人に向けて進撃する。

 

 防宙システムとは惑星レインフォートの衛星軌道上に配備された宇宙戦闘艦であり、艦首大型ライグレーディ1門、三連装無砲身式ライグレーディ砲塔3基を装備した無人戦闘艦『エイラックス』6隻を一個小隊としてシステムを構築している。

 それが六個小隊、更に今回はそれらを統率するために緊急出動した有人型戦闘艦『ヴァリエイター』が加わった計37隻の全砲門がたった一人の少女に向けられる。

 

 ヴァリエイターの艦橋にて指揮官のコボルトが遠き宇宙空間を見つめながら戦慄する。

 

「……本当にアレを人間が起こしているのか?」

 

 今、ルグランジュ1宙域──レインフォートと月の間にある重力均衡宙域は咲良とディスピアが起こした爆発で埋め尽くされていた。

 そのようなこと、到底人間……否、生物に起こせる現象ではない筈だ。だが、目の前に広がる爆発の中に宇宙戦艦の姿はない。まるで何もない所から光線が放たれ、爆発が起きている様にしか見えない。

 

「光学観測、厄災の魔女を識別しろ」

「第一艦隊を待ちますか?」

「いや、まずはこちらで先制をかける。こちらが放とうとしていることに魔王様も気付いてくださる筈だ……」

 

 既に魔力探知は使い物にならない為、光学的な観測をもってして魔女を感知する。

 レインフォートの技術力は高く、この爆発の中でも彼女の姿を捉えてみせた。

 

「エネルギー充填完了」

「あとは魔王様だ……『10秒後に撃て』……かしこまりました。10秒後に全主砲発射!!」

「カウントダウン開始」

 

 そこで彼のもとにテレパスが入り、それに従って主砲の発射態勢に移る。

 主砲の砲口に深紅の灯が灯り──

 

 

「発射!!」

 

 

 37隻、大小計374発ものライグレーディが一斉に放たれ、すかさずディスピアが短距離テレポートをすることでその矛先を咲良のみとする。

 果たして、その膨大な量の深紅の光芒は咲良のいた空間を呑み込み、巨大な爆光を生み出した。

 

「やったか!!」

 

 彼らはその光景に歓喜した──束の間。

 

 ドン。

 

「……は?」

 

 刹那、無数の青白い光線が爆発から飛び出し、それらは正確に全てのエイラックスを貫き爆沈させる。

 ヴァリエイターも例外ではなく、一撃のもとに全ての武装が削り取られ、あまつさえ機関部すらも消失する。今やこの艦は宇宙に浮かぶ巨大な棺桶でしかなかった。

 

「な……」

 

 彼が唖然とする中、突然艦の背後から巨大な光芒が伸び、それらは空中に現れた結界に反射し軌道を変えながら咲良へと向かっていく。

 

 

 

「第一射命中!」

「続けて第二射用意! 急いで!」

 

 王都郊外に設置された大型ライグレーディ──通称"全球狙撃砲"にて、銃座に座るエルフの女が指示を出す。

 彼女はエメラダ・ロング・マルガトロイド。現在の魔王軍において四天王の一角を務めており、狙撃を専門とする"全球狙撃大隊"の隊長である。

 エルフ族は元来弓術を得意とする種族である。だがエメラダにはエルフの使う強靭な長弓を扱える程の筋力が無かった。

 そうして里で爪弾き者にされていた彼女に、手を差し伸べたのが魔王だった。彼は彼女に、銃という新たな狙撃方法を与えたのだ。

 

 この全球狙撃砲は、地上設置型の大型リアクターから供給される莫大な魔力によってエイラックスの艦首砲をも超える威力のライグレーディを放つ。

 特筆すべきは、試験装備された魔力偏向結界遠隔発生装置によって遠方に結界を発動、それに放ったライグレーディを"反射"させる事で疑似的に追尾機能を備えていること。しかしこれには高度な操作が必要となり、現状扱えるのはエメラダただ一人となっている。

 

「エネルギー充填完了!」

「第二しゃ──」

 

 そうして彼女が狙おうとモニターに目をやった刹那。

 

「──全員逃げて!!」

 

 直後、全球狙撃砲に隕石が落ちる。咲良が落とした鳥高山であった。

 これにて全球狙撃大隊は壊滅した。

 

 

 

「全球狙撃大隊、壊滅!」

「防宙システムダウン!」

「全艦隊、射程圏内まであと一分!!」

 

 一方その頃、ルグランジュ3宙域に存在する宇宙基地『ネオ・レインフォート』から五十隻に及ぶ艦艇が出撃していた。

 レインフォート最大級の宇宙艦隊、第一艦隊である。

 艦隊司令は四天王が一角、獄炎竜(ゴードレッドドラゴン)のレグウェル・アグ・ゴルレッド。かの"大進出"を生き残った歴戦の猛者であり、ディスピアからの信頼も厚い老将である。

 

「ど、どうなさいますか」

 

 部下が顔を蒼白にさせながら訊く。

 このような反応になるのも無理はない。彼らは伝聞でしか厄災の魔女について知らないのだ。その伝聞は時代を経るごとに膨れ上がり──そして今、それを超える本物が現実として現れた。

 

「エエイ、狼狽えるな! 数こそが力なり! 敵はたかが人間一匹だ、数で圧しつぶ──」

 

 と、彼が指示を飛ばした瞬間だった。

 

 

 ガクン、と艦が何かにぶつかる。

 宙を塞ぐ紫色の透明な壁──それが厄災の魔女の使う魔力障壁であると気付くのにそう時間は必要なかった。

 だが、気付いた所で何ができる訳でもなく。艦隊は必死に主砲を放つがやはり壁の表面を波立たせる事しかできなかった。

 そして、その壁は艦隊を取り囲む様に球形に展開されていた。

 

「ぜッ、全艦防御結界を展開しろ!!」

 

 彼がそう指示した直後、球形結界が勢いよく収縮していく。

 中の艦は結界に押され、他の艦と衝突しながら一か所にまとめられていく。

 やがて収縮が止まったが、そのころには一切の身動きも取れない状態になっていた……

 

……まあ、圧し潰されて鉄塊にされなかっただけマシなのだが、今の彼らには何の慰めにもならないだろう。

 

 

──────

 

 

「……見せるのは、これくらいでいい、ですか」

「何をッ、言っている……ッ!!」

 

 これほどの差があるのか──我は心の中で毒づく。

 我が130年かけて用意した対魔女戦力は、その悉くが我との戦闘の片手間で処理された。高度な無人防衛システムも、あらゆる宙域を狙撃可能な大砲も、整備した大艦隊も。その全てが無駄だったのだ。

 

 こちらが放つライグレーディは、あちらが息をするように放つ青白い光よりも威力が低いらしい。ライグレーディ二発とショックカノン一発がトントンといった所だろうか。

 両者共に"無限(ヴィルリティ)"を持っているが、単純にかかる労力はこちらが二倍。しかも恐らく、いやほぼ確実にあちらの方が無限から魔力を汲み上げる効率が高い。このままでは間違いなく負ける──そんな時に呟いた魔女の声は、不思議とこちらの耳にまで届いていた。真空の宇宙空間であるというのに、だ。

 

 刹那、魔女は我に近付く。

 

「移動、しましょうか」

「なっ」

 

 剣を振るう間もなくその手が触れた瞬間、周辺の景色が一変する。

 これまでは暗く冷たい宇宙の中、ぽつんと浮かぶ惑星レインフォートとその月があったのが、今は白く輝く空の中、鮮やかな幾つかの惑星が浮かんでいる。

 そして、厄災の魔女に対抗する為宇宙の知識を深めていた我には、この光景に見覚えがあった──

 

「ここは──白色星雲か!」

 

 それは宇宙に存在する星雲の名であり、構成する恒星の放つ光が強くまるで宇宙そのものが輝いている様にすら感じてしまうとされる宙域だ。

 そして──ここは、レインフォートより約40万光年離れている。光の速さでも40万年、我らの最新鋭深宇宙探査船であっても数百年単位でかかるであろう空間に今、我はいる。目の前の魔女が瞬きする間に連れてきたのだ。

 

 意図が見えない、一体何をする気だ……そう思っていた矢先、魔女の声が耳に直接届く。

 

「──魔力には、それぞれ固有の……"色"が、ある」

「何を言って……」

 

 ここまで異次元の行動をした張本人は、紫色のガス惑星を背にフワフワと漂っている。

 

「この力の事を、魔法か、そうじゃないか……これまでは、分からなかった」

「ッ、"ライグレーディ"、"爆裂(エクスプロージョン)"!!」

「けれど、地球とレインフォートの……両方で学んで、ようやく、分かった」

 

 我が放った無数の紅い光線が爆発を伴って魔女へ向かう──が、効果なし。

 魔女はただそこに佇み、不気味な笑みを浮かべているだけ。

 

「……何故、笑っている……!?」

「ふふ……嬉しい、ですから」

 

 魔女は杖を振り上げる。

 

「魔力がない、と……ずっと、思っていた……私も、彼女も、皆……」

 

 杖の先端に付いている紅い水晶が黒い輝きを放っていく。

 我は本能的に攻撃を仕掛けるが、放った魔法は全て魔女から外れ黒い輝きの足しにされるのみ。

 

「でも……見えてない、だけだった……それに気付いて、くれたのは……彼だけ、だった」

「クソ──」

()()()()()()()()()()──だから、これは、魔法……」

 

 ブツブツと愉しげに話す魔女を前に、我は逃げる事を選択する。

 

 だが、遅かった。

 

()()使()()()()()()()()()()()()()()──厄災の魔女に相応しい、奪い壊す事しかできない、私だけの魔力──」

 

 

「──"光奪の檻(グレートアトラクター)"」




Q.グレートアトラクターって何だよ(困惑)
A.簡単に言えば宇宙のどっかにあるクソデカ質量の何か。個人的にはクソデカブラックホールだと思っている。

本のタイトルどっちがいい?

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