押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

128 / 129
八色星団会戦

「何が、起きた……魔王様は一体どこに……」

 

 先程まで激しい戦闘が起きていたにも関わらず、突然魔王ディスピアと厄災の魔女は消えた。

 恐らくテレポートなのだろうが、ザイロンを始めとするレインフォートに住む殆どの者がその行先を知る事は出来なかった。

 

 被害は甚大だ。

 防宙システム、全球狙撃大隊、そして精鋭の第一航宙艦隊が壊滅した。最新の研究においては厄災の魔女に対しても過剰戦力であると非難の的にすらなっていたこれらが、一瞬で。

 レインフォートに住む魔族達は恐怖に包まれ、ただ魔王に縋る事しかできない。

 

──そんな折。

 

「……!? な、なんだ」

 

 ザイロンが困惑する。

 彼だけではない。星に住む全ての者が突然起きた"それ"に困惑した。

 

「う、浮いた……?」

 

 そう──彼らは一斉に、僅かだが浮遊した。

 その理由を知るのは、少し先の話になる。

 

 

──────

 

 

「──っ、何だ、何が起きた」

 

 魔女が何かしらの魔法を使った、それだけは理解出来た。

 だが、それだけだ。奴が何かした瞬間、我はこの暗黒の空間に囚われていた。

 周囲を見渡すと、1箇所だけぼんやりと青色の光がある。奴の何かしらの領域に取り込まれたのか? だが、そんな事をするには何かしらの結界を展開する必要がある筈だ。つまり、そういった類のものでは無い。

 ならば死んだのか? 地獄がこんな無の空間であると知れたら世の宗教家達は憤慨するだろうが、今はそんな仮定は無意味だろう。

 

 では一体どんな、どのような魔法を奴は使った?

 我は今の状況に対して脳内の知識を総動員し──

 

「……!! マズイッ!? "テレポート"!!」

 

──刹那、青い光に向かってテレポートを行う。

 一回で何かが変わる訳でもない。何度も、何度もテレポートをする度にその光はやがて鮮明に、圧縮された()()であると分かるようになってくる。

 

 その後、何度転移したか分からない。だが、ともかく。

 

 

「……へえ、脱出できた、ですか」

「ハァッ、ハアッ……まさか、ブラックホールを生み出すとはな……」

 

 我は涼しい顔で佇む魔女へそう呟く。

 振り返ると、そこには一切の光を感じさせぬ暗黒の空間が広がっている。

 

 そう、我は奴が生成したブラックホールに囚われていたのだ。

 巨大な質量が一箇所に存在する事で巨大な重力を発生させ、周囲の物質を全て吸い込んでしまうブラックホール──レインフォートにおいても既に観測されている。

 そして、以前学者が余興で語っていた話を我は覚えていた。ブラックホールに吸い込まれたらどうなるのか……その状況が、正に先程の物と酷似していたのだ。

 

 光すらも逃さぬ暗黒の檻……それから逃れる為には光をも超える──すなわち、テレポートを行うしかない。

 今、我がその檻から逃れ続けられているのも、常にテレポートを行い続けているからだ。

 だが、魔女はそんな素振りを一切見せずただそこに在り続けている。それは魔法なのか、はたまた()()()()()()()()()()()()()()()()()だけなのか。

 尤も、今はそんな事を考えても仕方がない。重要なのは、我は今からこの異常空間で奴と戦わなければならないという点だ。

 既に恒星系の星は無く、ブラックホールは新たな犠牲者を今か今かと牙を研いでいる。

 

「"ライグレーディ"、"100連装"、"収束"、"追尾"!!」

「"ショックカノン"、"100連装"、"追尾"」

 

 我らは同時に攻撃を放つ。

 

 そこで不思議な事が起きた。

 我の放った極大ビームは、しかし放った瞬間に明後日の方向に曲がってしまったのだ。

 理由は分かっている──ブラックホールに吸い込まれているのだ。我がライグレーディに付与した"追尾"よりもその引力の方が強いというだけの話である。

 それを見越しての100連装収束であったのだが無駄だったらしい。

 そして、あちらの攻撃はその1本1本が正確にこちらに向かってきている。どうやら影響を受けないのは本人だけではないようだ。

 

 つまり、あちらはこちらに対して自由に攻撃が出来るが、こちらからは超重力に阻まれてしまうという訳だ。

 

「グ……そもそもこのブラックホールは一体どれ程の質量があるのだ……"ステータス"……駄目か」

 

 "ステータス"──対象のスペックを知る事が出来る魔法である。

 その対象を拡張してブラックホールの質量を知ろうと考えたのだが、奇妙な事に魔法が反応しない。どうやらその本来質量がない開示魔法の判定すらも吸い込んでしまっているらしい。

 

 ここまで来ると攻撃手段はかなり限られる──だが、ない訳ではない。これまで幾度となく試し、一度たりとて成功したことの無い"奥の手"がまだある。

 それを成功させ、命中させるには大きな隙を作る必要がある。

 

 と、いう訳で。

 

「……ほう? "ショックカノン"」

 

 魔女の困惑する声が聞こえてくる。

 当然だろう。ここまでの生命線であった連続テレポートの回数を減らしたのだから。

 途端に襲いかかる超重力……だが、来ると分かっていれば対処はそう難しくはない。というか、今やろうとしている事にはある意味でこの重力に()()()()()事が必要なのだ。

 

 我はそのままブラックホールを掠めるように動いていく。すると指数関数的に速度が増大し、背後から迫っていた蒼白の光線を引き離す。

 

──ブラックホールを利用したスイングバイ。一発勝負であったが、どうやら走り出しは成功したらしい。まあ、ここからの維持も大変なのだが……事象の地平面を超えないようにしなければ、今度こそ逃げられるかどうか分からない。

 

(それにしても……)

 

 回りながら思考する。

 先程脱出に要したテレポートの回数、今進んでいる位置と速度などから考察するに、このブラックホールの質量は我々が観測している如何なるブラックホールよりも大きいだろう。

 これ程の重力であれば空間を酷く歪めてしまう筈だ。たかが40万光年程度離れただけのレインフォートも、何かしらの影響を受けている可能性は高い。

 

──事実、この時レインフォート全域で僅かに浮遊感を感じるという事態が発生していた。

 それだけではない、惑星レインフォートそのものの軌道も僅かだが歪んでしまっていたのである。

 

 

(兎に角、奴を倒すのが先決だ)

 

 スイングバイをしながら、我は異空間から青い双円錐の物を八つ取り出し、魔力バイパスで自身と繋げる。

 これらは魔力の外部供給コアであり、人造無限接続装置より汲み上げられた莫大な魔力を我に供給する。

 それと同時に、コアに備えられた自動詠唱装置が多重同時詠唱を開始。今回は我自身も詠唱し精度を高めていく。

 

「"囚われし尖兵の蒼き鳥よ、楽園の名のもとに全世を統べよ"……」

 

 それは我の知る中で最も威力の高い魔法。

 レインフォートにおいて、数々の魔導師が様々な角度からアプローチをかけたものの、誰一人として成功した者はいない。

 

 現時点において最も可能性が高いのが今我がやっている方法。

 八つの魔力供給コアより魔力を汲み上げ、それに我自身の魔力を足し必要な量を補う。加えて多重詠唱により精度を高め、今回は我自身も詠唱を行っている。

 

 身体の前に魔力が充填されていく。

 今回は何故か、成功するという確信があった。

 

「──"遍く者に救済を……我が名はディスピア・ヴェル・ドム・ヴィルリッタ"!!」

 

 

「"ディア・ヴィロリア(ヴェル・ダールバム)"!!!」

 

 

 それは、かつて我の右腕と月の一部を永遠に奪い去った魔女の光芒。

 最新の研究により、この魔法が対象を空間ごと削り取る事により、過去未来共に"存在しなかった"事にするという末恐ろしい魔法である事が分かっている。だからこそいくら治癒魔法をかけても右腕が再生しなかったのだ。

 そして、その特性上この魔法は如何なる方法であっても防ぐことはできない。それは魔女であっても同様であろう。

 

「消えろォッ!! 忌々しい記憶と共にッ!!」

 

 我の放った紅黒い光芒の濁流は一直線に魔女へと向かう。

 この魔法を他者が使った事に驚いているのだろう。魔女は目を丸くしその場から動こうとしない。

 

 違和感。だが、当たるならばそれでいい。

 

 そうして魔女はこの世から永遠に消滅する──

 

 

──刹那、魔女の周辺を銀色の膜が囲む。

 我の渾身の魔法はそれに当たるや否や()()し、我の傍らを掠める。気付けば我の左腕は消滅していた。

 そうして動けずいた我に魔女が近づき、笑う。

 

「はは、は。面白い、ですね。まさか……それを使える、なんて」

「馬鹿な……何故、防げたのだ」

 

 訊くと、魔女は不思議そうに首を傾げ少し杖を振る。すると先ほど発動させた銀色の結界が再度展開される。

 

「"マグネトロンメッキ"──自分の魔法への、対処法は……用意しておく、ものでしょう?」

「……クソ」

「ですが……面白いものを、見せてくれたお礼、です……」

 

 魔女は杖の先端をこちらに向ける。

 

「良い物を、見せてあげる……!」

 

 杖の先端に六つの魔法陣が展開され、そこに莫大な魔力が集まっていく。

 それら一つ一つは我が先ほど放ったものよりも少し多い程度。だが、それを同時に六つ発生させようとしている事実に我はただ見ている事しか出来なかった。

 

 結局の所、どうやっても勝てる見込みなど無かったのだ。

 我が必死の覚悟のもと一度放つそれを、奴は軽々と同時に放つ事が出来るのだから。

 130年前のあの時一度勝てたからといって多少の慢心があったのかもしれない。恐らく、あの時戦ったアレは何かの搾りかすの様なものだったのだろう。

 

 そうして我のそれよりも遥かに速く充填を終えたそれを、魔女は更なる細工を施す。

 

「"ディア・ヴィロリア"、"六連装"──"収束(トランジッション)"」

 

 六つの魔法陣が重なり、一つの巨大な陣へと変わる。

 

「──発射」

 

 そして、そこから一本の巨大な蒼白の光芒が放たれ──しかし、それは我に当たる事はない。

 

「どこを狙って……ッ!?」

 

 最初は狙いを外したのだと思っていた。

 だが──すぐにそれは間違いであると思い知る。

 

 その光芒の行く先には、未だとめどなく空間を歪ませ続けるブラックホールの本体があった。

 光芒はそれに寸分たがわず命中すると、刹那暗黒が青白い波動と共に崩壊を始める。

 

 

 そして最後、魔女は呟く。

 

 

「──"爆裂(エクスプロージョン)"」

 

 

 瞬間、世界が光に包まれた。




ブラックホールには六連同時発射、常識です。

本のタイトルどっちがいい?

  • 押して駄目なら吹き飛ばせ
  • 押してダメなら吹き飛ばせ
  • 押して駄目ならぶっ飛ばせ
  • 押してダメならぶっ飛ばせ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。