押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
宮司&巫女「ダメです」
「っ……!!」
これまで鉛の様に重く動かなかった瞼が動き、私の意識が海底から浮かび上がる。
瞬間、勢いよく目を開き、まず周囲を見渡す。どうやらここは医務室の様だ。
「輝夜……!!」
私は親友──
魔法大会決勝戦、目の前で特高によって咲良が連行され、それを助けに行こうとした私は彼女によって気絶させられたのだ。結局咲良はどうなったのか? 本物の楓は無事なのか? 色々な思考が噴出するが、兎も角今私がやるべきは自らの状態確認だ。
周囲を更に見渡す。
形状から見てここは敷地僻地にある医務室だ。気絶させられた後に適当な理由を吹いてここに寝かせていたのだろう。
窓からは心地よい風と共に太陽の光が入ってきており、半透明のカーテンがひらひらと舞っている。
ベッドの隣に設置された机には私の制服が丁寧に畳まれ、また端末も置かれている。
──眠っていて、全てが終わるその時まで……
私が気絶する直前、彼女はそんな事を呟いていた。彼女ならば目覚める時間を調整するくらい訳ないだろうし……即ち、既にその"何か"は終わってしまっているのだろう。
それが咲良か、はたまたそれ以外の何かは知らないけれど……以前の試合で雲雀が何らかの暴走をしていた、それ関係かもしれない。
何はともあれ急がなければ、私は端末を開き、そこで硬直する。
『紅葉へ。目が覚めたら中央講堂に来てください』
「……講堂?」
それは輝夜からのメッセージだった。送信されたのはつい先程。
今の時刻は午前七時四十八分、ここからなら八時までには着くだろうが……一体何故? 彼女は何を考えている?
一瞬頭をよぎった"暗殺"の二文字。しかしそれならばわざわざそんな人目のある場所ではなく私が寝ている間にすればいい。
「……とにかく行ってみようか」
私は制服を着た上で魔装を身に着け窓から飛び出す。
一度高く飛び学園全体の様子を見るが、特に変わった様子は無い。ただ、何人かの生徒が何やら慌てた様子で走っているのが見え、そしてその方向にあるのは──
「やあ君。ちょっといいかな」
「わっ!? も、紅葉寮長!?」
私はその中の寮生の前に降り立つ。女子生徒は驚き私に訊いた。
「りょ、寮長急病で面会謝絶の筈じゃ!?」
「ちょっとした手違いでね。そんな事より今どういう状況なんだい?」
「え、いやー、実は突然今日朝会をやるらしくて、それに遅れそうなんですよ」
「講堂で、かい?」
「はい!」
朝会。あのメッセージの意味は、つまり朝会で何か重要な事を伝えるつもりなのだろう。
考え込む私に、彼女はおずおずと言ってくる。
「あ、あのそろそろ……」
「ああ、そうだったね。呼び止めてごめん、お詫びに送るよ」
「え、ええっ!?」
私は彼女を横抱きに抱える。
女子生徒は突然の事に顔を真っ赤に染めて目を見開く。
「舌噛まないようにね!」
「ひゃああぁぁぁ……」
そう言って彼女へウィンクし、いざ講堂へと飛び立った。
お姫様抱っこで飛ぶ事数分、私達は講堂前に降り立つ。周囲の生徒達は突然来た私──しかも魔装を着て──に驚いて硬直し、抱き抱えていた女子生徒は茹でダコの様に湯気を吹いて目を回していた。
そんな彼女を近くの生徒に託し、私は講堂の中に入る。入学式などで使用する講堂、映画館の様な上質な座席に所狭しと少女達が座り、ソワソワと横の生徒と話している。
その最前列、寮長や生徒会専用の席に私は向かう。
「……お? こりゃ驚いた。アンタは確か急病じゃなかったのかい、紅葉?」
「色々あったんだよ、皐月」
薄緑色のロングヘアの少女──竹園寮寮長、皐月の隣に座る。
「それを伝えたのは柊輝夜だ。どうせ奴に何かされたのだろう?」
「まあ後々教えるよ」
その更に隣に座っていた茶色のボブカットの少女──鈴蘭寮寮長、
鈴蘭家は歴史的に柊家を敵対視している、まあ当然そう思うよね。ご明察、その通りだよ。
でも今教えたら何が起こるか分からない。柊家の次期当主候補が同じく十華族の次期当主候補を攻撃したなど大事件だ。下手をすれば内紛の芽にすらなりかねない。まあ、こんな私の性格を分かってるから攻撃したのかもしれないけれど。なんかちょっとムカつくな。
「……で、この朝会何?」
「「知らん」」
二人の言葉がシンクロする。
「ええ……皐月はともかく親和は生徒会書記でしょ?」
「生徒会関連ではない。つい先程輝夜が突然やると言い出したのだ、伊織も知らんと言っていた」
菊花伊織──十華族が一つ、菊花家の次期当主候補であり副生徒会長である。
今この場には居ない様だが、そんな彼女ですら知らないとなると……いよいよ輝夜が独断で決めたようだ。
『──これより、柊輝夜生徒会長による演説を行う』
と、そこで当の伊織の声が講堂内に響き渡る。スピーカー越しでも伝わる程、彼女のそれからは不機嫌さが漏れ出ていた。
そして壇上に輝夜が出てくる。会場内はシン、と静まり彼女に視線が集まる。
(……何か、変わった?)
彼女に抱いた第一印象はそれだった。
いつものミステリアスさではない。どこか憑き物が落ちた様な、爽やかな雰囲気。
ふと感じた、不思議な魔力。それは私だけではないようで皐月と親和も同じく振り向いていた。
「あれは……?」
「カメラ、か? だがこの異様な魔力は……?」
そこにあったのは一台のテレビカメラ。だがそれからは普通感じる事のない謎の魔力があり──そして私には心当たりがあった。
(これ、咲良ちゃんの?)
そう、その魔力は咲良の物とよく似ていた。
それがテレビカメラにどのような影響を及ぼしているのかは巧妙に隠されて分からない。でもなんだか、物凄く何か起きそうな予感がする。
『皆さん、突然呼び付けてすみませんでした』
輝夜の凛とした声が響き渡る。
あれ、そういえばわざわざマイク使うんだ。いつもなら魔法で直に伝えるのに。
『今日、私は
国民の皆様?
となると、あのカメラの先は地上波なのか。でもそれだけなら魔力なんて……
などと考えていた矢先、輝夜はそんな思考が一気に吹き飛ぶ衝撃的な言葉を発する。
『これから伝えるのは──柊家の抱え行ってきた"闇"についてです』
「──え」
私は一瞬、彼女の言葉の意味が分からなかった。
「な、何言ってるんだ?」
「……奴は頭でも打ったのか?」
皐月と親和も同じ感想らしい。
ザワ、ザワ、と会場が騒然となる。当然だ、輝夜は次期当主──彼女から"闇"という言葉が出てくるのは大事件なのだから。
"公然の秘密"と"純然たる事実"は似ているようで違う。公的に声明が出されるという事は、それが全く誤魔化しの効かなくなるという事に他ならない。
『まず最初に述べておきたいのは、皆さんの記憶にも新しいでしょう……特別高等警察が乗り込み本校の生徒を逮捕した事についてです』
咲良の事だ。私はそれを止めようとして輝夜に気絶させられた。
『あれは柊家が差し向けたものであり、当該生徒は完全に無罪である事をここに明言いたします』
ざわめきが大きくなる。
咲良が無罪であったのはともかく、柊家が自らの非を認めたのである。そんな事をすれば柊の十華族の中での地位がどう揺らぐか分かった物ではないというのに。
だが、そんな物はまだまだ序の口であった。
彼女は次々と暗部を暴露していく。
柊家が行ってきた非道な人体実験。無数の胎児を犠牲にし、あまつさえ
特別高等警察との癒着、政敵の罪の捏造。無実の者を幾度となく逮捕し、その全てを拷問し殺してきた……
それらを聞いている最中、私はテレビカメラに感じた謎の魔力の目的を察した。察してしまった。
(……なるほど、本気だね)
「え、何これ……」
「酷い……」
とある家庭のテレビに映り。
「おいおい何だよアレ」
「柊マジ?」
街頭テレビに映り。
「な、なんですかこの放送は!! 今すぐ止めさせなさい!!」
「そ、それがどの放送局も行っていないらしく……魔法学園から直接送り込まれている様で」
「馬鹿な、そんな事出来る訳がないでしょう!!」
柊家の本家に設置されたテレビにも映っていた。
どのチャンネルを回しても、電源を切っても勝手について輝夜の演説が映されるのだ。
これが単なる一般人の物だったならば大して気にしなかっただろう。だが、今映り話しているのは柊輝夜、次期当主。
一般市民にも有名なその顔の威力は高かった。あまりにも高すぎた。柊家の存続すらも危ぶまれるその演説に、柊家現当主は怒り慌てる。
「だったら学園に乗り込んで力ずくで止めさせなさい!!」
「し、しようとしているのですが……現在講堂の出入口に結界が張られているらしく侵入も通信も出来ないのです」
「通信……ならこの放送は何なのですか!?」
「わ、私にも分かりかねます」
当主はバン、と拳を机に叩きつける。
そして怒りに顔を歪ませ、声を滲ませる。
「かっ、ぐやぁぁ……あの謀反人めぇ……!!」
「輝夜!」
「……紅葉」
演説が終わり、明らかに困惑し焦った様子の伊織の声で朝会が終えられる。
我に返った生徒達から次々と野次が飛び、あたふたと右往左往する中で私は輝夜の元に辿り着いていた。
彼女は今、校門に居た。そこから学園の外に出ようとしていた所を呼び止めたのだ。
「色々と聞きたい事や言いたい事はあるんだけど」
「何でも答えるわよ。人体実験とか暗殺とか」
「いや、もういいよそれは……アタシが聞きたいのは君の事だ」
彼女は柊家の闇を全て暴露した。それは即ち、柊家にたった一人で喧嘩を売った事になる。
「これからどうするんだい? だってこのままじゃ、君は」
「家族と戦う事になる、でしょ? そんな事分からない私じゃないわ」
ふふ、と軽く笑みを浮かべる。
どうして、どうしてそんな顔をしていられるんだ。一体何が君をそこまで駆り立てるんだ。
そんな私の思考を読んだのかは分からないが、彼女は一言呟いた。
「……私は、"厄災の魔女"に呪いをかけられてしまったから」
「え?」
「この先何があろうとも、私は止まる訳にはいかない。進んで進んで進み続ける、それしかないのよ」
それは覚悟の様な、或いは単なる自暴自棄だったのかもしれない。
ただ、何も言えなくなった私に彼女は言った。
「……貴女は今のままで生きたらいいわ」
その日、柊輝夜生徒会長を初めとした柊家生徒らは全員、退学した。
この一連の事件は『輝夜事件』と呼ばれる事となるのだが──
「へっくちゅんっ」
「咲良、風邪っすか?」
「うう……そんな事は、ない筈ですが……」
──その原因を作ったのがたった一人の女子生徒だという事を知る者は、殆ど居ない。
勝ったッッ、第一部完ッッ!!
という訳でこれで第一章「凍える空に桜吹雪を」完結となります。別に作品自体は終わらずヌルッと第二章に移るのでご安心を
という訳で毎度恒例ですが
5……10秒で終わるので下の評価から高評価とブックマークよろしくお願いします
【宣伝】
コミティアで出した書籍(一章部分を本にしたもの)をboothでも販売開始しました。イベントに来れなかった方はこちらで買ってください。(送料とか手数料とかの関係でイベント価格よりも高くなっています。ご了承ください)
https://asyurycrosford.booth.pm/items/6596070
本のタイトルどっちがいい?
-
押して駄目なら吹き飛ばせ
-
押してダメなら吹き飛ばせ
-
押して駄目ならぶっ飛ばせ
-
押してダメならぶっ飛ばせ