押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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進水式

「わー、凄い人っすねー!」

「今日の艦は"戦艦"……軍艦の中でも最も人気のある艦やからね」

 

 雲雀が目を輝かせながら言い、パパがそれに答える。

 睡蓮重工業、神戸造船所。普段は社員のみが入る事の許されるここだが、こと今日に関しては一般人も大勢入っていた。今日は戦艦の進水式、予約さえすれば誰でも入る事が出来るのだ。

 

 今、私達が居るのは今回の主役たる艦が居るすぐ足元。そのコンクリートの広場には所狭しと人が詰めている。

 両親と瑞希、雲雀、紅葉、そして私。元々予約は五人分しかとっていなかったらしいが、そこは次期当主、顔パスで入る事が出来た。というか紅葉に関しては来賓席を案内されかけていたが断っていた。

 

 巨大なえんじ色のバルバスバウがこちらに向かって突き出しており、その上部構造物は余りの大きさに下からは窺う事が出来ない。飛べば余裕だが絶対にやめろと言われている。

 だが進水式の魅力は何も艦の全貌を知る事ではない、パパはそう言った。だから私達はもう少し前へと進み──

 

「──?」

 

 ふと、何かを感じた。肌を刺す様なこの感覚……前世で何度も感じた事がある。

 私は不可視の感知結界を広げる。対象は魔法だけでなく、科学で作られた各種兵器も含める。魔法が使われているのならば会社の敷地に入る前に気付く筈だ、だからきっとこの感覚は。

 

「……」

 

 見つけた。私は紅葉へ近付き、囁く。

 

「爆弾がある、です」

「へーそう、爆弾があるんだ。珍しいね」

 

 

「は?」

 

 

 ワンテンポ遅れ、彼女の頭は真っ白になった。

 本当に突然の事であったのだ。平和な式になると思っていたらいきなり爆弾がある、などと言われても理解出来ないのは当然であろう。

 

「ば、え、ちょ、え?」

「艦の中十か所。二つは機関部にある、です」

「き、機関部、って……」

 

 彼女の顔が青く染まる。

 

『それではこれより、進水式を開始します。まずは命名式です』

 

 広場上部に設置された舞台に船主が上がり、名前を読み上げる。紀伊型戦艦、一番艦『紀伊』らしい。

 その後諸元が説明されるが、そんな音は最早今の紅葉には聞こえていなかった。

 

「きっ、紀伊の機関は五一年式天照核融合汽関……今はまだ起動してないけど、それでも不安定な事には変わりないし……そんなのが爆発したら……!」

「取り敢えず……無効化した、ですが……」

「咲良ちゃん、なんとかでき──え、もう?」

 

 彼女が硬直し、肩の角度が下がる。

 爆弾なんていつ爆発するか分からない。だからこそ私は見つけた瞬間に取り敢えず爆弾その物の時間を止めて無力化しておいた。

 私は戦艦をスキャンした3Dホログラムを投影し、そこに爆弾の位置を光点で指し示す。ペンダントを創り出してそのホログラムをインストールし、紅葉に渡す。彼女の顔はかなり渋かった。

 

全部精密に映ってる……機密が……ま、まあありがとう。アタシは警備に伝えに行くけど、出来れば咲良ちゃんも来て欲しいな」

「はい」

 

 私は雲雀達に少し離れる事を伝え、紅葉と共に近くに居た警備兵の元へ行く。

 戦艦の進水式ともなれば警備も厳重らしく、警備兵は露出の高い和装に刀を提げた女性──魔法師であった。大体この前の特高所属の魔法師よりも少し弱いくらいだろうか。

 

「そこの君、ちょっといいかな」

「何だとつぜ……も、紅葉お嬢さモゴ」

 

 警備兵は当初面倒そうにあしらいかけたが、他ならぬ紅葉の姿を見て声を上げようとした所を彼女の手で塞がれる。

 その後事情を説明し、水面下で爆弾除去作業と犯人捜査が開始される。あくまでも観客には秘匿されて。今会場は満員、こんな状況で爆弾が仕掛けられているなどと知られれば何が起こるか分かったものではない。

 その間にも進水式は予定通り進められる。諸元の説明が終わり進水作業も終盤に差し掛かり、いよいよ艦に繋がる一本のロープ──支鋼の切断が行われようとしている。

 私達は警備兵と共に艦の中に入り、爆弾の除去作業や操作を手伝う事にした。その最中の事である。

 

「……! 紅葉、さん」

「ああ。何かが来たね、行こう」

 

 爆弾がバレたとなれば妨害もしてくるのは当然であろう。何者かがテレポートしてきた事を察知し、私はすぐさまそこへテレポートする。

 

 テレポート先は艦の心臓、機関室。もしここが爆破されれば、戦艦はおろかこの神戸造船所自体が吹き飛んでしまう可能性すら孕んでいる。

 

「う……」

「……」

 

 テレポートした私達の目にまず飛び込んできたのは大量の血を流して倒れる二人の女性。両方共魔装をズタズタに引き裂かれ、片方は呻き声を上げ、もう片方はピクピクと痙攣するのみ。

 ツンとした鉄の臭いが鼻腔を突き、濃密な死の気配が部屋の中を支配していた。

 

「何だ、いきなり現れたな。透明化……いや、テレポートか。まさか我等以外にも使いこなす者が居るとはな」

 

 そして、そんな二人を倒した下手人であろう女が一人。血がべっとりと付いた鉈を握り、テレポートで現れた私達を見て首を傾げる。

 

「君が、今回の騒動の犯人かい?」

「そうだ。そう言う貴様の顔は見覚えがある。睡蓮紅葉だな、ここに来ているという情報は得ていないが──」

 

 瞬間、刃と刃がぶつかり合う甲高い金属音が鳴り響く。紅葉の直刀と女の鉈が鍔迫り合う音であった。

 

「──ここで殺すのだから問題は無いな」

「随分と余裕だ……ねっ!」

「ぬうっ」

 

 紅葉が力を入れて刀を振り抜き女を吹き飛ばす。飛んでいる最中にも紅葉は追撃を加えるが、その刃が肌に届く事はない。

 そのまま空中で何度か刃を交え、二人は一度距離を取る。

 

「流石だな、子供でも次期当主に選ばれるだけはある。だがいいのかな? 私と戦うのはいいが貴様の大事な部下は……ん?」

 

 女は自らの足元を見てそんな声を出す。

 彼女が今いるのは先程まで二人の警備兵が倒れ伏していた場所。恐らくは人質にでもしようとしたのだろうが……

 

「"ハイネスヒール"」

 

 その二人は既に回収済み。私は自らの足元に転移させた二人に向かってヒールを使う。二人の身体を淡い光が包み込み、時間を逆行するかの様に傷が塞がっていき蒼白であった顔色にも暖かみが戻る。

 それを見た女は戦慄する。

 

「(馬鹿な……片方はほぼ死んでいたんだぞ。それを一瞬の内に治癒するなど……!)」

 

 さて、治療も終わった事だし私も参戦しよう。

 私はこちらを見て険しい表情を浮かべている彼女に杖を向け、彼女の持つ鉈を消す(・・)

 

「なっ」

 

 それさえすれば、あとは彼女(・・)がやってくれるだろう。

 

──刹那、一瞬硬直した女の懐に刀を構えた紅葉が飛び込み、一太刀で四肢を斬り落とす。

 それでも尚何かしようとした彼女の首に峰を叩き込み気絶させる。0.1秒にも満たない攻勢、あっさりと"不届き者"は捕縛された。

 

 

「あ、戻ってきた。何してたんすか? 酒かけ始まる所だったっすよ……ってあれ? 紅葉先輩は?」

「ごめん、です。トイレが、混んでて……紅葉さんは、自分に構わず先に見てて、と」

 

 適当な嘘をつき、私は艦へ視線を戻す。

 今この場に紅葉は居ない。次期当主としてこの事件の後処理をしなければならないのだという。

 

 パリン。紐に括り付けられた日本酒が艦首に当たって割れる。

 全長350メートル、51cm三連装電磁加速砲を三基搭載した世界最大の戦艦が今、進水を果たした。

 

 

 その後、私達は軽く神戸を観光し、行きと同じくリニアモーターカーにて帰路につく事となった。

 観光中に何とか後処理を終わらせた紅葉も取り敢えず学園に戻るらしく、今向かい側の席で眠りについている。一体どんなハードワークをこなしたのだろうか。

 

 だが、そんな安眠は突然の着信によって妨げられる事となる。

 

「……はっ、で、電話か……もしもし、睡蓮紅葉です」

 

 如何にも眠そうな目、眠そうな声で端末を耳に当てる。

 そして十数秒話を聞き、彼女のそんな顔は一瞬にして覚醒し、通話が終わると深刻な表情でこちらを見る。

 

「……咲良ちゃん、学園までテレポートお願いできる?」

「いい、ですが……そちらはいい、ですか?」

 

 元々電車で往復しろと言ったのは紅葉である。私にはテレポートを使う事に対して何も含みはない。

 

「ああ。急に帰らなくちゃいけない用事が出来た。とても信じられないんだけど──」

 

 

 

「──学園に白い殺人姫(ホワイト・マーダー)が現れた」




5……10秒で終わるので高評価ブックマークよろしくお願いします

【紀伊型戦艦 一番艦『紀伊』】
基準排水量:92,800トン
全長:350m
全幅:52.2m
最高速:35ノット
武装
・五二年式51cm三連装電磁加速砲 3基
・四四年式15.5cm単装電磁加速速射砲 6基
・三六年式垂直発射装置 64+64+128セル
・一一年式71.1cm四連装長魚雷発射管 6基
・一二年式32.4cm四連装短魚雷発射管 4基
・二二年式十六連装対空噴進弾発射装置 6基
・一五年式40mm六連装対空回転機銃 4基
・12.7mm単装機銃 10基
機関:五一年式天照核融合汽関

本のタイトルどっちがいい?

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