押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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(シリエスが)最大のピンチ!ラスボスあらわる!

「さて……」

「は? オイオイオイ……え?」

 

 あっという間に四肢を消し飛ばされ無力化されたシリエスへと咲良が近付く。

 魔装による物理防御も、魔力による防御力上昇も何も効果をなさなかった。あるのはただ、何らかの攻撃によって自らの四肢が消された、という揺るがぬ事実のみ。傷口は焼け爛れている事から、恐らくは熱線の様な攻撃であったのだろう──それしか分からない。

 そうして動けぬ彼女へ近付く咲良の姿はまるで悪魔の様で。

 

(オイオイオイオイオイ!! どういう事だ、こんなの聞いてねェぞ!!)

 

 シリエスは引き攣った表情を浮かべて、何とか身体を治癒しようとする。しかしさしもの彼女であっても根本から消し飛ばされた手足を一瞬で生やす事は出来ない。

 それならば、とシュブ=ニグラスの能力で触手を代わりに生やす。しかし、生えた傍から切り落とされる。

 

 彼女のこれまでの人生において、彼女は常に捕食者の側だった。

 一般人は勿論、警察も、軍も、魔法師だって彼女を殺す事は出来なかった。最後に殺されたのも結局は()()()()()()であったのだから。

 だからこそ、今自分が何も出来ずに無力化されたのが全く理解出来なかった。否、理解()()()()()()()

 

 彼女はバーサーカー的気質を持っている。

 確かに強い相手と戦いたいし、自分より強い者も大歓迎だ。だが、そこで求めているのはあくまでも『戦い』──こんな一方的な、言葉の通り何も出来ずに終わるなんて物は求めていなかった。

 

……彼女に殺された多くの一般人は何も出来ずに殺されているのだが、そんな事を考えられる程の良心は彼女は持ち合わせていない。

 

「……ッ!?」

 

 モゾモゾと芋虫の様に動いていた彼女の身体が硬直する。見れば、自らの身体に全体をピッチリと覆う形で結界が展開され、触手を生やすどころか一切動けなくなってしまった。

 魔法の()()()を一切感じ取れなかった。あまりにも熟練した──到底学生とは思えない……否、到底人間とは思えない程の魔力操作。何故そんな者がこんな学園の一学生という地位に甘んじているのか、やはりシリエスには理解出来ない。

 

「お、おいテメェ! そんな実力がありながらなんで大人しくしてやがる!?」

 

 シリエスは、自らが圧倒的な力を持っていたからこそ暴れまわった。止める者は数知れず居たが、その度に嬲り殺しにした。

 強さこそ正義、強い者は何をしてもいい。それが彼女の根本的な精神構造。それに従えば、目の前の少女は世界を征服している筈だった。

 

 だが、そんな問いかけに彼女は答えず、ただ杖を握り締めて虚空を見つめる。その目はシリエスを映してはいない。

 

「……良かった。どうやら無事、ですね……適切な治療、です」

「はあ?」

 

 彼女はそう呟いた。

 今咲良がしていたのはシリエスによる被害者の状況確認だ。黒髪の水使い──芽有が死んでいないか心配だったのだが、彼女の感知には気絶しているだけ、と出ていた。もう一人の天狗女(?)も同様だ。近くに居た学生が治療をしたらしい。彼女は安堵した。

 

「……クソッタレ」

 

 片や半ば放置されたシリエスはといえば少しも安堵など出来ない。何やらしている確認が終われば自分は捕らえられる事が確定しているし、それにこれまで呆然としていた紅葉と雲雀も用心しつつシリエスを監視している。

 最早彼女の生殺与奪は完全に握られている状況。だからこそ、彼女が選んだ選択肢は──

 

 

──────

───

 

 

「っ……あれ、私……」

「起きたかぁ? どっか痛い所は?」

「い、いえ」

 

 目覚めた私を迎えたのはそんな若干気が抜ける声。

 見ると、私の隣に座っていたのは金色を基調として所々に赤や青、緑がちりばめられた様な何とも奇特な髪色をした少女にして、私が治療の()()にしていた──仲山美玖。どうやら想定通り、私は彼女に助けられたらしい。

 

 私は自分の記憶を掘り起こす。

 確か私はシリエスと戦って、毒を抜く為に腕を落として、その後に神域を展開されて、ぶっつけ本番で神域を展開して……

 

「……そっか、私心愛に助けられたんだ」

 

 彼女の身体能力は高い。きっと戦いの音が聞こえたのだろう。

 美玖に聞くと、戦いの音を聞いた心愛は真っ先にその方向へ向かい、その途中で自分を拾い、そしてそこで展開されていた神域の結界を叩き割った。

 そして一度だけ拳と爪を打ち合わせ、シリエスはどこかへ行ってしまった……それで普通は終わりなのだが、その後偶然にも帰ってきた咲良一行と会い、あっさりと捕まったらしい。流石はラスボスとしか言いようがない。

 因みにシリエスが居た事については箝口令が敷かれた様だ。下手に日本を混乱させたくないのだろう。

 

──だが、これで終わりではないだろう。私の原作知識がそう言っている。

 

 シリエスは組織により、クトゥルフの邪神の力で冥界より呼び戻され復活した。その肉体は、当時の死体から作り上げたクローンである。これはそう何度も出来る物ではなく、事実組織はこれをするのに十年を要している。

 では何故終わりではないと言えるのか。その理由はシリエスの身体に施されたとある細工にある。

 培養されたシリエスのクローン体には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()機構が施されているのだ。なので、クローン体が残っている以上彼女は事実上の不死なのである。まあそのクローン体は作るのに莫大なコストがかかるのでそう多くはないのだが。

 

 つまり何が言いたいかといえば、シリエスはきっと獄中で自害する。今すぐにでも教えた方がいいのだが、多分もう手遅れだろう。なので私に出来る事といえば、それとなく咲良達に「あの『白い殺人姫(ホワイト・マーダー)』がこんなに簡単に終わる訳がない」と伝えるくらいだ。

 

 

「ん……ううん」

 

 思考を巡らせていると、ふと隣から寝言の様な物が聞こえてくる。

 見ると、隣のベッドでは姫川文果がスヤスヤと寝ていた。どうやら死ななかったらしい。

 

……原作においては、彼女は雲雀の事件の直後に死ぬ。雲雀の暴走、それに伴う数々の破壊行為をジャーナリスト魂で探り、その裏に居た柊家に行きつこうとした瞬間に学園に潜んでいた特別高等警察によって拉致される。

 そして苛烈な拷問を受け、特高お得意の親族殺しという精神的拷問も受け、探り当てた情報を外部に漏らしていないという事を確認してから口封じに殺されたのだ。

 

 でも、もうこの世界には特高は居ない。世界の修正力の様にシリエスと遭遇し殺されかけたものの、それも防いだ、私が。

 本来死ぬ筈だった一人の少女の命を守る事が出来た。私は、今はただ、それを噛みしめる事にした。

 

 

 付け加えておくと、原作においてシリエスを最終的に倒すのは主人公たる快人ではなく、章ヒロインとなる心愛だ。

 心愛はシリエスと深い因縁があり、だからこそ章ヒロインにもなるし章ボスを倒すという大役も務めたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みにシリエスは心愛の実の母親だ。




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