押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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Cパートあります


朝露咲良、鑑賞の流儀

 忘れている方も多いかもしれないが、この学園では原則全員が何かしらの部活動に参加しなければならないというルールが存在する。かくいう私──秋空雲雀も色々ありすぎて忘れていた。

 部活動は多種多様な物が存在するが、その実に半分が魔法関連の物だ。中でも最も人気なのが『魔導研究部』であり、志願者の多さから入部の際には選抜試験が設けられている程である。

 その内容は至極単純であり、魔法の技術を極めようという物。咲良ならばきっとそれに惹かれて入るだろうと思っていた。

 

 それが間違いだと知ったのは、入部申請日の前日の夜の事だった。

 

「咲良は何の部活に入るんすか? やっぱり魔導研究部?」

「私は……この、サブカル同好会、という物に……入る、ですね」

「へえやっぱり……えっ」

「? 何かおかしい、ですか」

 

 と、彼女が部屋の内装に視線を泳がせる。

 ミラフィアのミニフィギュア、映画のポスターにタペストリー。本棚には漫画がズラリと並び、隅に申し訳程度に魔法関連の本が立てかけられている……

 

「あ、何もおかしくないっすね」

 

 私はあっけらかんにそう言った。

 思えば、毎週日曜日の朝にはわざわざ起きて彼女につられてミラフィアを見ているのだし、そうでなくとも深夜アニメやらなんやらを配信サイトで見ているのだ。

 寧ろこの部屋の様相で魔導研究部に入っていると言われる方が信じられないかもしれない──

 

 

 

「ここが大阪、拙者の故郷!」

「ワシは昔に一度だけ来た事があるかの」

「私も……あまり、来た事がない、ですね」

 

 という訳でやってきたのは大阪難波。

 目的は映画鑑賞であるが、何故態々遠い西の地まで来たのかといえば、東京だとワンチャン学校関係者に出会ってしまうかもしれないからだ。

 そして何故その中でも難波なのかといえば……

 

「見てくだされ、周囲の人の姿を。拙者らと同じにおいがしてござらんか?」

「まあ確かに。西の秋葉原っていうのもあながち間違いじゃないんすね」

 

 小冷曰く「梅田は表の街、難波はオタクの町」らしい。

 ミラフィアのメインターゲット層はあくまでも女児。表の街で見ると家族連れに囲まれて気まずい雰囲気になってしまうかもしれないが……成程、確かに大きなお友達ばかりである。

 

 

「それにしても、咲良の魔法は凄いのう。それ程までにするには一体どれ程の鍛錬が必要であろうか……」

 

 炉欄先輩が咲良に微笑みながら言う。

 私達が学園から出た方法は極めて単純であり、咲良のテレポートで一気にここまで来たのである。学園には様々な防犯設備が備えられてはいるが咲良にかかれば全てスキップで終了なのだ。

 と、咲良は炉欄先輩の何かを見据えて返す。

 

「炉欄先輩も……凄い、ですよ」

「ほほほ、世辞が上手いのう」

「本気、ですが……」

 

 割と真面目な顔をして言っている彼女。

 彼女の目は魔法に関しては大体の事を見通している。きっと彼女のお眼鏡にかなう何かが先輩の中にあったのだろう。

 彼女の言葉を受けた先輩は少し考え込む様な素振りをし、やがて何かに気付く。

 

「そうじゃ、そろそろ映画の時間じゃろうて。はよう行かねば」

「確かに、そうですね……!」

「発表から九カ月! 楽しみですぞ!」

「そうっすね~! 私としてはクロフィア*1の活躍がどれくらいあるか気になるっす」

「拙者はミラミス*2でござるな~」

「私は当然、キラフィア、です……!」

「ワシは初代が今回はどんな活躍をするのかが楽しみじゃなあ」

 

 などと他愛もない会話をしつつ映画館に入る。

 ここは難波駅近くにある『難波公園映画館』。中に入れば、そこにはミラフィア限定ポップコーンバケットを持った大きなお友達で一杯であった。男女比は女:男で6:4程度だろうか、私達も一応制服から私服に着替えているので紛れ込めそうで良かった。

 今日は休日、女子校生なども割と見に来ている様子である。一部女児も居て絶賛発売中らしいなりきり衣装を着ていた。

 

 

「取り敢えずポップコーンとジュースを買うかのう。まあここはワシに……」

 

 と、売店に行ってメニュー表を見た先輩が固まる。

 ここに来たとなれば当然ポップコーンバケットは買うべきだ。だがその値段……1500円。ジュースはSサイズで400円。先輩は奢ってくれようとしたのだろうが流石にキツイ事に気付いたのだろう。先輩は実家と絶縁状態、学園に通う事で支給される金とバイト代で生活しているのである。

 学園内で使える貨幣と円との交換は(咲良によって)済んでいるが、それはそれとして財布にはきつかった。

 

「ふっふっふっ、ここは拙者にお任せを!」

 

 そう言うと小冷が財布を取り出してすいすいと会計を済ませていく。

 計7600円(税込)、流石に申し訳ないので払わせてくれと私や咲良が言うが、彼女は「炉欄先輩には普段からお世話になっておりますし、二人には先輩としての威厳を見せたいですからな! ここは奢らせてくだされ」といって聞かなかった。

 

 その後パンフレットや各自好みのグッズを買い、いよいよ入場という所で問題が発覚する。

 上映十分前になり、ぞろぞろと入場を始めていく。スタッフがなりきり衣装を着た幼女に入場者特典のマジカルライトを渡し……私達はチケットをスキャンするだけだった。

 

「しまった、です……」

「拙者も失念しておりました……」

「そうっすよね、マジカルライトは……小人限定……」

 

 ミラフィア映画では『マジカルライト』という小さなペンライトを振って応援するシーンがある。

 それは入場時に配られるのだが、その対象はあくまでも子供。中学生枠で入場している私達には渡される事はない。

 

「く、こうなったら、私が……「安心せい」

 

 だが、通夜モードになっていた私達へと炉欄先輩が、何かを言いかけた咲良を遮って言う。

 そして自らのポーチに手を入れ、そこから四本の桃色のペンライトを取り出す──それはまさしく、マジカルライトであった。

 

「こんな事もあろうかと部屋から持ってきておったのじゃ。ワシは昔から映画館で貰っておったからのう」

「そうなん、ですか……私はあまり、映画館に行った事がなかった、ですので……」

 

 そういえば咲良は引き篭もり状態であったと聞く。マジカルライトを手に入れる手段もなかったのだろう。

 私に至ってはそもそもミラフィアを見始めたのが最近である。

 

「……あ、あれ?」

 

 と、一本ずつ光らせていた先輩がそんな声を出す。見ると、一本のライトがボタンを押しても光らない。

 これを手に入れたのは相当昔だろう、ならば電池が切れていたり壊れていても不思議ではない。機械……あ、そうだ。

 

「先輩、それちょっと貸してくださいっす」

「む、じゃが……」

「私に良い考えがあるんすよ」

 

 そうしてライトを持ったままトイレの個室に入り、魔装を身に着ける。

 私の魔装はあの事件から大きく変化した。以前は普通の天狗装束だったのが、片翼が機械仕掛けになったり一部がドレス風になったりと機械要素が入ったのである。

 これは咲良曰く、デウス・エクス・マキナの"色"が残っているかららしく、身体には影響はない。だが、私が使う魔法には変化があった。

 

「ふっ……!」

 

 私の掌に載せたライトに魔力を込める。するとライト全体が淡い光に包まれ、やがて収まる。

 ボタンを押すと、まるで新品の様に煌々と輝きだした。

 

「おお、機械に干渉する魔法とは」

「秋空氏、珍しい魔法を持っているのですな」

「雲雀、ナイスです……!」

「へへへ、最近ようやくものに出来てきたので直せるかなって思ったんすよ」

 

 笑ってはみたものの、無事に直せる保証はなかった。もし間違えて壊したりすれば咲良に泣きつかざるを得なかっただろう。

 

 まあ何はともあれ、これで万事解決だ。

 

「さあ皆の衆、上映じゃぞ。スマホの電源は落としたか?」

「はい!」

「はい……」

「はいっす」

「では、いざゆかん──」

 

 そうして、私達はシアターの中へと入っていった──

 

 

──────

───

 

 

「咲良ちゃんと雲雀ちゃんは……サブカル同好会、炉欄の所か」

 

 咲良達が映画を享受している頃、紅葉は部室棟を訪れていた。

 彼女は館内図を見てその部室の位置を確認し、階段を上がっていく。

 サブカル同好会は階段を上がったすぐそこにある。ギシ、ギシ、と音を立てる古ぼけた木製の階段を上がり──

 

「紅葉先輩どうしたんですか? こんな所に来て……」

「あ、咲良、丁度よかっ──」

 

 紅葉を聞き慣れた声が出迎える。

 彼女は一瞬それを聞き流し、要件を伝えようとする。だが抱いた僅かな違和感。彼女は顔を上げ、階段上に立っていたその少女を見て、訊く。

 

 

「──キミは、誰だ?」

 

 

 彼女がそう言うと、立っていた"朝露咲良"はニヤリと笑い、言った。

 

 

 

「──キッショ、何で分かるんだよ」

*1
二世代前の『クロックマシナリー◇ミラフィア!』の略称。咲良にシリーズの各作品を勧められている時に気になって視聴を始めてハマった。

*2
四世代前の『ミラフィア!ミィス』の略称




サブカル同好会関係なのでパロネタ多め
次回投稿は10/23です。

【唐突なキャラクター紹介コーナー4】
[櫻島炉欄(ろうらん)]
【挿絵表示】

三回生。身長154cm、スリーサイズはそれぞれ83、50、72。
サブカル同好会部長。契約妖魔は群馬の山奥に祀られているらしいとある土着神で固有兵装は琴。ただし群馬は今『龍の籠』とかいう魔物だらけの魔窟になっているので会いに行く事はあまり出来ない。あと信仰が途絶えて久しいので神としての力もほぼ無いらしい。
十華族が一角、櫻島家の令嬢ではあるが、不義の子である為に幼い頃から虐待を受けていた。彼女が縋れるのは人目を忍んで観ていたアニメだけであり、その影響もあって入学してからたった一人でサブカル同好会を立ち上げた。
おばあちゃんみたいな話し方をする。また、櫻島という苗字には良い印象は持っておらず、基本炉欄と呼ばせている。
原作においては雲雀の暴走によって唯一の部員だった小冷が死亡し、またも彼女は孤独になる。

[鞍馬小冷(これい)]
【挿絵表示】

二回生。身長164cm、スリーサイズはそれぞれ82、54、76。
サブカル同好会副部長。契約妖魔は天若日子(アメノワカヒコ)で、固有兵装は弓。
昔からアニメや漫画が大好きで、学園に入学してからこの部活の存在を知りすぐに飛び込んだ。その為炉欄の事は尊敬している。
原作においては名前だけ登場し、雲雀暴走の際に出て来たロボットに部屋を襲撃されて死亡する。

本のタイトルどっちがいい?

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