押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
獲物が生餌に掛かった。その報告がなされたのは解放から僅か数時間後の事。
だが、獲物側からしてみれば掛かっても問題無い筈だったのだ。
何しろ彼らは槍を通さぬ象であり、銛を噛み砕く鯱であったのだから。
──唯一の誤算は、相対している狩人が全てを踏み潰す戦車であり、砲弾をも通さぬ戦艦であった事だろう。
──────
「現在の進捗は?」
「内部はほぼ制圧、現在は掃討作業に移行しています。拘束したのは魔法師が十、兵士が三十二、研究者が十五、その他二十名です」
やはり露出の高い和装を、そして腕には憲兵である事を示す菊の腕章がはめられている若い魔法師が紅葉に報告をする。
魔法師殺し──荒砂木賊が咲良を殺そうとし、捕まって解放されてから僅か三時間。
咲良と紅葉以下憲兵隊所属魔法師三個分隊九名は、木賊に口封じをしに来た『組織』所属の魔法師から得た情報をもとに『組織』の研究所を強襲していた。
憲兵隊三個分隊は、紅葉が学園内の憲兵隊の中で信頼できる者だけを集めて急遽編成した部隊だ。木賊の話からすれば、組織の手はどこまで伸びているか分からない。だからこそ個人的に交友があり信頼出来る者だけを集めたのだ。
「その中にシリエスの姿はあった?」
「いえ。ただし残されていた資料の中にシリエスの復活計画、そして延命計画の物がありました」
「延命?」
「はい。これがその資料になります」
紅葉は渡された資料に目を通す。
シリエスが復活した経緯などは概ね芽有の予想通りであり、まず融合させられていた神は『シュブ=ニグラス』。その神の力によって生命力を維持していたのだが、それが剥がされた事によって残りの寿命が三日程度になってしまう。
だが、そこで『組織』本部のエージェントから渡された仮称"K細胞"により、残り寿命を一週間にまで延ばす事に成功する。この時間を用い、より長い延命、及びシュブ=ニグラスの奪還を行う……
「この"K細胞"については書かれてなかった?」
「はい。朝露一回生による記憶抽出も行われましたが、それを持ってきたのが黒人の青年であるという情報以外は何も……その青年についても名前も何も分からない様でした。恐らく知っているであろう『博士』も今ここには居ない様で」
「……勘付かれたのか?」
「分かりません。しかし、これでシリエスの生存が確定的になりました。当局も動かざるを得ないでしょうし発見は時間の問題かと」
「……」
彼女の言葉に紅葉は渋い顔をする。
そう、今回の奇襲によってシリエスを捕まえる事は出来なかった。
咲良によって最初に研究所そのものを結界で覆い、内部の人間を全員気絶させた上で拘束したのだが、その中に奴の姿は無かったのである。逃げる事も不可能であろうから奇襲に感付いて先に逃げていたか、或いは偶然外出していたか。
先日シリエスが学園を襲撃した事件について、警察当局は彼女の生存を事実認定しなかった。それは咲良によって拘束され自死した為、公開すれば無駄に混乱を引き起こすだけだとした為である。
だが、今回の資料や監視カメラの映像があれば無視する訳にもいかなくなる。確実に生存しているであろう殺人鬼が日本国内を闊歩しているというのは悪夢に他ならない。
と、そこに別の魔法師が来る。
「紅葉様、警察庁より特別高等警察の増援が来ました」
「……そう。我々はある程度捜索を行ったら特高に現場を移譲する」
特別高等警察──以前咲良を不当逮捕した組織である。
その本来の任務は国内の不穏分子の摘発。こういったあまり表沙汰には出来ない特殊な捜査なども請け負うのだ。その為に権限が増大し、やがて明らかに無実の者まで逮捕、拷問する様になっていた。
咲良によって北海道の拘留施設を破壊された特高であるが、組織自体は健在である。だが柊霞未を始めとした者達が揃いも揃って無力化されてしまったが為にその活動は鳴りを潜め、こうした通常の警察には手に余る案件の対応の為に細々と残っていた。
そうして特高による捜査が行われたが紅葉らが得た物以上の成果は出なかった。
その後シリエス及び『博士』の国家指名手配が検討され、シリエスは手配される事となったが『博士』に関しては罪を犯していないとして手配も公開もしない事が決定されたのだった。
また、荒砂木賊に関しては本来であれば多数の殺人に関わったとして死刑になる所を、今回の件での功績が認められて減刑となり、終身刑になった。
連行される際の彼の顔は、限りなく穏やかな物であったという。
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───
─
「遂にこの時が……」
「去年までは出られませんでしたが、今年の所属部員は四人。規定ギリギリではあるでござるが参加申請をする事が出来ますな」
咲良暗殺未遂事件、その後の組織研究所奇襲があった翌日、私達は何事もなかったかの様に授業を受け、部活に赴いた。
私──雲雀は暗殺未遂の後は特に何もやる事がなかったが、咲良に関しては夜通し捜査協力とか取り調べとか受けていた筈なのだが、そんな様子は一切見うけられない。
眠くないのか、と私が訊くと「ハイネスヒールで身体の調子も全回復させてる」と言っていた。まあ確かにそれでいいのかもしれないが、精神衛生上はあまりよろしくなさそうなので普通に寝て欲しいものである。
それは兎も角、私達が部室に入るとまたも先輩方が何やら話していた。
「先輩、どうしたんすか?」
「おお雲雀に咲良。実はの、もうすぐ部活対抗戦があるんじゃがな、それにワシらも出ようと思うんじゃよ」
「「部活対抗戦?」」
如何にも嬉しそうな炉欄先輩の言葉に、私と咲良の声が被る。
「部活対抗戦というのは、その名の通り各部活の部員同士が争う戦闘演習大会の事じゃよ」
「これのエントリーには部員が四人必要なのでござるが、去年までは二人しかいなかったので出場出来なかったのですよ」
「じゃが今年は其方らが入ってくれたお陰で出場が出来る! これで先日の雪辱を果たすのじゃ!!」
この学園はあくまでも軍人扱いの魔法師を養成する場。なので決闘制度といい各種の魔法大会といい生徒同士を戦わせる催しが数多く存在する。これもその一つなのだろう。
私としては別にどちらでもいいのだが、何故先輩方はこれ程執心なのだろうか。
「それは……出ると、何か良い事がある、です?」
「咲良よ、良い質問じゃ。この大会を優勝した部活動には……なんと"学園側にどんな要望でも通させる権利"が与えられる!」
「「!?」」
「先日の映画の件を思い出してみてくだされ。拙者らの「放映してくれ」という要望は無下にされ、結果として朝露氏の力を借りざるを得ませんでした」
「それにこの学園内にはワシらの聖地──アニマイトが無い!! こちらも何度要望を出しても一向に設置されぬのじゃ!!」
二人の語気が強まる。彼女らの言葉には積年の恨みつらみが込められていた。
因みにアニマイトというのは世界最大級のアニメショップの事である。漫画ラノベは勿論、各種グッズや円盤、画材、果ては同人誌まで取り揃えており、彼女が言う通り正にオタクにとっての"聖地"である。
当然若干オタクに対する当たりが強いこの学園にはそんなものはなく、グッズ等を買おうと思えば通販か、或いは数少ない外出日に直接赴くしかなかったのだ。
だが、この大会で優勝すれば……成程、ここまで歓喜するのも無理はない。
「何としてでも優勝し、学園内に池袋店*1を超える規模のアニマイトを建てさせるんじゃ!! 皆の衆、覚悟はええか!!」
「勿論ですとも!!」
「はい……!!」
「頑張るっす!!」
「──失礼するよ」
と、私達が奮起している所に聞き覚えのある凛とした声が走る。
「おお、紅葉か。珍しいではないか、どうかしたのか?」
炉欄先輩が言う。
来たのは紅葉寮長であった。彼女は化粧でも隠し切れない程に目の下に隈を作っていた。
「やっぱり君達も部活対抗戦に出るんだね。アタシが来てよかったよ」
「なんじゃあ? もしや、其方もこの部活にはい「違うよ」そうか……」
「アタシが用があるのは……咲良、キミだ」
「私、です?」
彼女は首を傾げる。
今朝の件で何か伝え忘れていた事でもあったのだろうか、と私は予想したが、彼女から出た言葉は全く異なっていた。
「今回の部活対抗戦から新たなルールが制定された」
「『参加者は大会において、自らの契約した妖魔を基とした魔法以外使ってはならない』……咲良、今回キミは"ショックカノン"も"プロテクション"も使ってはいけないよ」
この部室自体がトラウマになっているので若干近付くのが怖かった紅葉先輩。
五秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。
次回投稿は10/28です。
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