押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「『参加者は大会において、自らの契約した妖魔を基とした魔法以外使ってはならない』……咲良、今回キミは"ショックカノン"も"プロテクション"も使ってはいけないよ」
紅葉寮長のその言葉に、咲良より先に私が反論する。
「な、なんなんすかそれ! あまりにも勝手過ぎるっすよ!」
「まあそう言いたくなる気持ちも分かるよ。当然の反応だ……ただ咲良、キミは強過ぎるんだ。部活対抗戦に限らずこの学園の大会は生徒同士を競わせて強くする為のもの。例年際立った強者ってのは出てくるものだけれど、キミはそんな次元にはいない」
「う……」
そう言われると言葉に詰まってしまう。
確かに咲良の圧倒的な強さがもたらすのは対抗心よりも諦念だ。アレに食らいついていこうとなれるのは快人みたいな向上心の権化だけ。
「言い出したのは他の寮長達さ。最初はキミを直々に殿堂入り……要するに出禁にしようと言っていたんだけれど、流石にそれは理不尽過ぎるって事でね。ほら、この前の魔法大会で快人相手に鳥高神の魔法だけを使って戦った事があっただろう? アレを例に出して何とか譲歩を引き出したのさ」
どうやら紅葉は寧ろ咲良が出場できる様に尽力してくれた立場らしい。もし彼女が出禁になっていたらサブカル同好会はそもそもエントリー出来なかった所だったのでそこは素直に感謝である。
確かに快人との試合はあまり理不尽さを感じさせる様な戦いではなかった。アレなら他の生徒が勝てる余地も生まれるだろう、他の寮長達もそう考えたのだろうか。
「……不愉快、ですね」
と、そこでようやく咲良が口を開く。
彼女は心底不機嫌そうな顔をしていた。
「ああ、まあ不当に制限されたらね「そこではない、です」え?」
予想が外れて目を丸くする紅葉に、彼女は言い放つ。
「こんな、ハンデだけで、私に……勝てると思ってる事が、です」
「え、そこ?」
どうやら彼女は、私が思っている以上に自信家らしい。
と、その言葉を聞いた炉欄先輩が高らかに笑う。
「ほっほっほっ、どうじゃ紅葉よ、我が新たな部員のなんと頼もしき事か!」
「……ああ、そうみたいだね。ごめんアタシ、キミの事を見くびってたみたいだ」
「そうじゃぞ。それに部活対抗戦は団体戦じゃ。咲良だけでない、雲雀や小冷もおる。この子らとて中々の強者達じゃぞ?」
ポン、と炉欄先輩が私と小冷の肩に手を乗せる。それに小冷は嬉しそうに鼻をこすり、私はといえば嬉しさ半分期待の重さに対する緊張半分といった所。
「はは、確かにそうだね……あ、でも最終戦は個人戦だよ。各部員ごとのタイイチ」
「「えっ」」
「む、そうだったかの。まあ何とかなるじゃろ」
紅葉の言葉に私と小冷が同時に声を出す。ちょっと待って、それは聞いてない。
部活対抗戦の最終戦まで来る様な相手は恐らく精鋭揃い。そんな者達に一対一で勝てるとは到底思えない。これは特訓、かなあ。
とまあそんな風に大会について話していた、そんな時だった。
「あら、紅葉。アンタも居たの」
「……やあ、
一人の少女が声をかけてくる。
その少女は桃色の髪をしており、顔立ちはどこか炉欄先輩と似ている。しかし、先輩が優しく穏やかな顔をしているのに対して、彼女はどこか人を見下した様な顔であった。
「絵良、何か用か」
「用? 別にお前には……いや、あったわね」
それに対して不機嫌そうに応えるのは炉欄先輩だ。
絵良は先輩達や私、そして咲良を見ると小馬鹿にした様な表情で笑う。
「風の噂で聞いたのよ、お前が部活対抗戦に出るってね? やめておきなさい、サブカル同好会、だっけ? こんな薄汚い部活に居る様な奴らがいくら集まった所で勝てる訳ないじゃない」
「なんじゃと……ワシなら兎も角、この子等を愚弄するのは許さんぞ……!!」
突然の暴言に炉欄先輩が静かに語気を強める。
「失礼な人、です……」
「こ、この人誰なんすか?」
その間、私達は小冷に目の前の人物の事を尋ねる。彼女は渋い顔をしながら言った。
「あの人は櫻島絵良……炉欄先輩の姉妹で櫻島家の次期当主候補でござる。ご覧の通り仲は険悪……偶にこうして嫌がらせをしに来るのですよ」
「暇、です……?」
小冷の言葉に咲良はそう呟く。私も同感だ。
しかし、炉欄先輩は以前自分を「櫻島家の落ちこぼれ」と卑下していた事がある。それに加えて普段自分の事を「櫻島先輩」ではなく「炉欄先輩」と呼ばせる様にしていた。
アレは家から勘当されたからだと思っていたが……そもそも彼女自身、櫻島と呼ばれたくなかったのだろう。絵良を見ていたら理解出来る。
さて、炉欄と短くも長い口論を繰り広げた絵良は気が済んだとばかりに咲良の方を向く。
「アンタが噂の朝露咲良ね?」
「……はい」
「アンタに良い話があるの。我が魔法研究倶楽部に勧誘してあげるわ!」
彼女は自信満々に言い放つ。
「魔法研究俱楽部は魔導研究部にも勝るとも劣らない歴史と実力を持つ部活動。こんな埃臭い場所なんかよりも余程良い環境が与えられ「お断りする、です」るわ……って、今、何て?」
だが、そんな言葉を遮る様に食い気味に咲良は勧誘を蹴る。
そんな事をされるとは夢にも思っていなかったのだろう、絵良は一瞬硬直し、訊き返す。
「私は、この部を辞めるつもりはない、です」
しかし、何度聞いても咲良の答えは変わらない。
「……は、はあ!? アンタ正気? この十華族が一角、櫻島絵良が直々に勧誘してあげてるのよ!? 魔法研究俱楽部に入ればアンタの魔法は更なる進化を迎える筈、それでも!?」
「自分より……弱い、人の所で……何が学べる、と?」
「~~~ッ!!」
さも当然と言わんばかりに言い捨てた咲良の言葉は、誰がどう見ても絵良を怒らせるのには充分だった。
やがて顔を真っ赤にさせた彼女は、ビシっと人差し指で咲良を指し。
「朝露咲良!! お前に決闘を申し入れる!!」
地獄への片道切符をわざわざ買い叩こうとする。
それに咲良も割と乗り気ではあったのだが、それを遮ったのは紅葉であった。
彼女は咲良と絵良の間に割り込むと言う。
「ちょっと待った、絵良。咲良とやる前にアタシとやろうよ」
「はあ? これは私とそいつの問題よ。アンタは黙ってなさいよ」
「咲良はアタシの寮生だよ、与り知らぬ所なら兎も角、目の前で厄介事に巻き込まれてたら庇う責務があるからね。それとも何、平民の一回生相手には喧嘩を売れるけど同じ十華族相手だと怖いのかい?」
その言葉で絵良の怒りは最高潮に達した様で、彼女は顔を茹で蛸の如く真紅に染めて言い捨てる。
「ええ、ええ、分かったわよ!! 先にアンタを倒してからゆっくりとそっちの一回生に灸を据えてあげるわ!!」
「それがいいよ。アタシに勝てない様じゃ咲良相手なんて到底無理だからね」
「〜〜〜ッ!!」
彼女が最後に付け足した事は純然たる事実なのだが、絵良は完全な煽りと受け取ったのだろう。彼女は身体をプルプルと震わせて部屋を飛び出していった。
「ふう」
「別に……私が戦ってもよかった、ですが」
「そこらの生徒なら兎も角相手は次期当主候補だよ? キミが手加減するとも思わないし……決闘制度は平等に与えられてるとはいえ、身分は平等じゃないんだ。あんまり派手な事はしない方がいい。ま、キミからしてみれば今更だろうけどね」
「そう、です?」
咲良はあまりピンと来ていない様子だった。
そういえば彼女はかつて楓と決闘しかけた事があると聞いた事がある。あんまり身分とかそういうのは気にしていないのだろう。彼女の力であればそんな物簡単に覆せるのだろうし。
「次期当主候補同士なら大した問題には……まあキミに殲滅されるよりは大丈夫だよ」
「紅葉、すまんのう」
「いいよ。それに……」
彼女は不敵な笑みを浮かべ、意地悪そうに言う。
「アタシだって一応、強いんだよ?」
次期当主候補同士の決闘は割と家の格に関わってきます。絵良はハッキリ言って当主としては失格の部類に入る
炉欄先輩は櫻島寮に入れないので部室で寝泊まりしてます。なのでサブカル同好会部室には古いソファーベッドと小さな調理場があります。
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