押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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今回は最初は心愛視点、終盤は咲良視点でお送りします。


部活対抗戦 -サブカル同好会VS炎真陽流天照学園支部-

 ボクには生まれつき脚が無かった。正確にはあるにはあるが、骨は異常に細く脆く、そよ風が吹くだけで崩れてしまいそうな物が二つ付いているだけ。

 パパはこれが、先天的な障害だと言っていた。別にそれはいい、そういう人が稀に存在する事だって知っている。

 だがボクの場合、何か普通の人とは別の理由があるのではないか、何故かそう感じていた。お医者さんや研究者さん、パパがボクの身体の事を語る時、必ず何か含みがある様な顔をするのだ。そして未来の話になると必ず彼らは「人の役に立てる人間(・・)になりなさい」と。

 幼い頃を研究所で過ごしたボクにとって、人の役に立つ人間というのはアニメや特撮に出てくるヒーロー達だった。だからボクはヒーローを目指していた。

 

 それは漠然とした、ただ為されるがままに掲げられた、中空の目標だった。

 

 

──流石だ! 流石は最高傑作!──

 

 

 こんな形で、それに意味が付けられるだなんて、ボクは思ってもみなかった。

 

 ヒーローに、ならないと。正義の味方に、ならないと。

 

 

 誰かの役に、立たないと。

 

 

 

「やああああっ!!」

「あ、待ちたまえ心愛君!」

 

 試合開始の鐘が鳴り、ボクは地面を蹴り飛ばして相手陣地に突っ込んでいく。

 背後から師範(部長)の制止する声が聞こえてくるが関係ない。そもそもボクの戦闘スタイルは完全な超近距離型。近付かなければ戦う事など出来ないのだ。

 目指すは相手チームで最も強い者──咲良。以前魔法大会で一瞬対峙した時に感じたが、彼女はかなり強い。きっとボクよりも。

 

 でも、ボクだってあの時より遥かに強くなっている筈だ。師範からの教えだけじゃない、毎日夜に銀髪の女の子から特別な修行をつけてもらっているのだから。

 

「咲良ーーっ!! ボクと勝負しろーーっ!!」

 

 フィールドの中を駆けながらそう叫ぶ。

 試合では毎回何種類かの中からランダムでフィールドが選ばれる。今回は森であり、視界は極めて悪い。

 だがそれは相手も同じ。これだけの遮蔽物があれば遠距離攻撃は当て辛いだろう。なら相対的に近距離型が有利となる。

 そして、近距離戦闘ならボクはこの学園の誰にも負けない自信がある。要はどれだけ相手に近付けるか、それが今回の戦闘の鍵だ。

 

「っ!! そこかっ!!」

 

 と、草むらに気配を感じてそこに飛び込む。

 確かな手ごたえ。だがそれは人のものではなかった。

 

「……鶏?」

 

 ボクが仕留めたのは一羽の鶏。それはすぐに動かなくなり、泡となって消える。

 

 そして。

 

「"嘉卉香弁(かきこうべん)の道標"」

「なっ」

 

 どこからか声が聞こえてきたかと思えば、瞬間ボクの周囲を色鮮やかな草花の嵐が取り囲みただでさえ悪い視界が一寸先も見えない程になる。

 だが、それは即ち相手の攻撃が来たという事。この嵐にはそれ程の攻撃力はない。ボクはどこから攻撃が来てもいいように感覚を研ぎ澄ませ、カウンターの構えを取る。

 

「──きたっ!!」

 

 嵐の中をすり抜けてやってきたその攻撃を手ではたき落とす。

 それは太い蔦であり、一度目を迎撃した後も二度、三度と次々と向かってくる。それが文字通り全方位から来るのだから普通ならこれだけで負けているだろう。

 

「そっちがその気なら……やあっ!!」

 

 力を込めて空中に上段蹴りを放つ。

 それは嵐にも負けない程の猛烈な風を生み出し、草花の乱舞を消し飛ばす。蔦が来た時点であちらが中距離戦闘に持ち込みたいのは分かった。それにボクが付き合う道理はない!

 

「そこかぁ!!」

 

 本人は少し離れた場所に居た。

 ボクは勢いよく地面を蹴り、彼女が何かする前に飛び掛かる。そうして突き出した拳は、しかし彼女が抜いた刀で止められた。

 

「中々やる、ですね……」

「そっちこそ!」

 

 話も程々にボクは距離を詰め続ける。出来れば今回も魔装を破壊して終わりたいが、その為に不用意に腕を伸ばすと即座に斬られてしまいそうだ。

 だから拳や蹴りを繰り出し続けるが、それら全てが彼女の刀にいなされ中々思う様に戦えない。いや、戦えてはいるのだがボクの想定以上に咲良の近距離戦闘能力が高いのだ。

 

「"鳥高山の暴れ蔦"」

 

 更に彼女は鍔迫り合いをしている最中に魔法を発動させてくる。

 ここで下手に距離を取れば、再度詰めるのは難しいだろう。だが四方から向かってくる蔦に対処しない訳にもいかない……なら!!

 

「っ、幽星辰流奥義"飛廉翔"!!」

 

 ボクは少し左右に揺れ、一気に跳び上がる。これはあの女の子に教えてもらった技の一つであり、自分の姿を二つにぼやけさせ、本体は上部から急襲するという物だ。

 向かっていた蔦は空振りし、がら空きの上部をボクは狙う──

 

 

 彼女の目が、こちらを見据えた。

 

「──ッ!?」

「神域"鳥高山"」

 

 瞬間、ボクの眼前に鳥居が落下し、咲良へ向かっていたボクは止まらずにその中にするりと入り込む。入った先は鬱蒼とした山の中。

 

『ハハッ、やられたな。これでお前も終わりだな』

「あ、スサノオさま。こういう時ってどうすればいいんだっけ」

『あァ? 神域に対抗できるのは神域だけだ。とはいってもお前は使えねェがな』

 

 ふと頭の中に男の人の声が聞こえてくる。

 粗暴気味なこの人はスサノオさま。最高神の弟で凄い神らしい。

 彼はボクに魔法は与えてくれなかったが、その代わりに身体を強化してくれた。元々ボクは身体能力が異常に高いらしいが、それに加えてこの強化によって魔法師相手にも体術一つで戦えているのだ。

 彼には感謝している……これを伝えると、スサノオさまは微妙な顔をしていた。どうしてだろう?

 

「おっと」

 

 と、そこで突然襲い掛かってきた樹木を避ける。 

 だが攻撃は終わらない。そこらの花やタイル、手摺なんかが全てこちらに向かって攻撃してくる。

 

『空間そのものが攻撃となるタイプの神域だな。芸がねェ、土着らしい雑な神域なこった』

「なるほど……つまり」

 

 ボクは襲い掛かってくる物全てを悉く迎撃しつつ走り出す。

 樹木を引き千切り、石を蹴り砕き、風の刃は吹き飛ばす。確かこの前の芽有ちゃんと文果ちゃんを襲っていた神域はボクが結界を叩き割って解放したんだ。ならこれも、襲ってくる物全てを迎撃しながら結界を壊せば出られる筈。

 

「見つけた!! はぁッ、幽星辰流奥義"界貫拳"!!」

 

 やがて発見出来た結界の縁に走ってきた勢いそのままに掌底を叩き込む。

 瞬間、空間にヒビが入り、景色がバラバラと砕け散る──

 

 

「え」

 

 景色が崩れたその先は、しかし先程と同じ光景が広がっていた。

 どういう事だろうか、確かにボクは結界を壊した筈だ──だが、その理由を考える間もなく、ボクの第六感が背後に注意する様囁いた。

 

「さ、咲良っ、なんでっ」

 

 慌ててボクが仰け反りながら振り向くと、そこには今にもこちらに刀を届かせんとする咲良が居た。彼女の切っ先がボクの鼻先を斬り裂き、そのまま彼女の蹴りが腹に入る。

 その小さい身体からは考えられない程の力でボクはくの字になり吹き飛ばされ、その隙に神域の攻撃効果がボクの身体を食い荒らす。必死に体勢を立て直し迎撃を再開するも、既にボクは満身創痍だった。

 

「はあ、はあ……」

『面白ェ……コイツ、神域を二重に展開してやがった上で一枚目を囮にしやがったのか。一体どんな頭脳と魔力回路してたらンな作戦思いつくんだ』

「神域を、二重に……」

 

 かつて授業で聞いた事を思い出す。

 神域は神格との契約者の魔法の最高到達点。だからこそ発動した時の効果は強力であり、同時に莫大な魔力を消費する。また、契約による魔法発動の際には人間側の頭脳の処理能力によって限度が決まるが、神域はその処理能力の大半を使ってしまう。

 要するに神域の重複発動は不可能……である筈なのだが。

 

『ハハッ、ンだよコイツ、とんでもなくつえェ……面白れェ女だ……!!』

 

 何だかスサノオさまが喜んでいるが、それが何故かを訊く余裕はもうボクには残されていなかった。

 身体のあちらこちらを蔦と枝で貫かれ、動物に噛み千切られ、石に打撲された身体は既に悲鳴すらも上げていない。義足を隠している生体フィルムも破れて中の機械が露出している。

 

 前を見ると、咲良が刀を構えてこちらに飛んできている。既に意識も朦朧としているボクにはもう何も、出来ない……

 

 

 

 バキリ。

 

 

 

「……!」

 

 咲良が振るった刀は、しかし心愛の首には届かなかった。

 代わりに当たったのは彼女の口元。先程までは可愛らしい少女の口であったそこには鋭い牙が生え、咲良の振るった刀を噛み砕いたのだ。

 そしていつの間にか目が青く妖しく燃えている心愛は間髪入れずに咲良へ拳を叩き込もうとする。その速度はこれまでの何よりも速く鋭い。

 刀を噛み砕かれるという予想外の出来事、そして何より急激に向上した身体能力。さしもの咲良でさえ、この攻撃は無防備に食らってしまう……

 

 

「ふっ」

 

 

 確かに刀を噛み砕かれた時咲良は動揺した。だが、武器が破壊されるなど大したダメージでもない──自分の固有兵装なので鳥高は悲鳴を上げていたが──と彼女は割り切っている。咲良は前方へ急加速、噛み砕かれた刀身を口の中に更に押し込みそれを軸として一気に心愛の背後へと回り込む。

 そして使い物にならなくなった刀を離し、代わりに異空間から古ぼけた西洋剣を取り出して逆手に持ち、拳を振りぬいた心愛の首に滑らせた。

 剣は容易く首を通り抜け、少し遅れて首に細い赤い筋が通って滑る様に落ち、プシュウ、という空気が抜ける音と共に泡となって消えた。

 

 咲良の勝利である。

 

 試合はまだ続いている。彼女は剣の血を振り落とすとある方向に向かって投げ、同時に神域を消失させる。

 

 

「くっ、心愛はまだ……なっ、はあっ!? がっ」

 

 咲良が投げた剣は雲雀、小冷、炉欄の三人と戦っていた部長の黒田の頭に突き刺さり、彼女が泡となると同時に試合終了の鐘が鳴り響く。

 黒田と心愛以外の炎真陽流の部員だが、まず一人は心愛が咲良と遭遇する前の一瞬で咲良によって倒され、あとの一人は咲良が戦っている間に炉欄達が束になってかかる事で倒していたのだ。

 そして心愛を倒した際にまだ黒田が生き残っている事を把握した咲良は剣を投擲。神域の中では咲良の身体能力が僅かに向上する為、敢えて投げてから解除したのである。

 

 それは兎も角。

 

 

『そこまで!! Aブロック一回戦勝者は……サブカル同好会!!』

 

 

 咲良達は、勝利したのである。

 

 

──────

 

 

『動きが素早くて私には何が起こっているのかあまり分からなかったのですが、解説の竹園さん、お願いします』

『ええ……まず神域を二重に展開する、この時点で既に規格外です。その様な絶技を学生、それも一回生の内に実現させてしまうとは……彼女は本当に一回生なんですか?』

『その筈です』

『そしてその後の近接戦闘。最後に彼女は固有兵装の刀を折られていましたね。私はあそこで朝露さんの敗北を予見したのですが、まさか避けてしまうとは。驚きました。最後に剣を取り出して首を刎ねる一連の動きも非常に実戦的な形に洗練されており、私の目には何年も戦場に居た様に思えました……彼女は本当に一回生なんですか?』

『その筈……です』

『何はともあれ、彼女はこの試合中に一度も傷を負っていません。試合展開は拮抗している様に見えてその実彼女の勝利は必然であったという事ですね。これからの活躍に目が離せません』

『そうですか。いやあ、一回戦から実に面白い試合を見る事が出来ました! 以上、実況は鈴蘭澪、解説は竹園陽炎氏でお送りしました!』




ピンチになり内なる力が覚醒した心愛(勝利フラグ)──だが、咲良はその莫大な技量でそれをカバーしていた(skn構文)

因みに異空間から剣を取り出した件ですが(激ウマギャグ)、ルール的にどうなんだと思うかもしれません。
以前の「参加者は大会において、自らの契約した妖魔を基とした魔法以外使ってはならない」というルールはあくまでも参加者の「魔法」に関するルールであり、武器には適用されません。武器まで縛ると固有兵装に殺傷力が無い参加者やそもそも固有兵装が無い参加者(快人)が不利になるからです。
そして固有兵装以外の剣を試合中に使いたい時には事前の申請が必要ですが、その辺は慎重な咲良なので事前に申請していました。大会本部もまあ武器くらいはええやろの精神でスルーしました。
あと取り出した剣は咲良が異世界で使っていた物です。バックボーンはそのうち語られると思います。

5秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。

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