押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
『Aブロック決勝戦、両選手入場!!』
嗚呼、外から実況の声が聞こえてくる。それは正しく地獄への道が舗装されているのと同義であろう。
今日、私は咲良と戦う事になる。我が魔法混合遊戯部は見事決勝戦まで勝ち抜いたのだ。これを勝てば、Bブロックの優勝部と戦う事になる。
私はここまで二回戦ったが、特に面白かったというか特筆すべき相手は『真の皇道を進む会』とかいうかなり危ない名前をした部活だろう。部長は一回生の隈澤帝華、南北朝時代の南朝の天皇の末裔を自称し、自分こそが真の帝と主張する少女。なんと原作キャラである。
彼女は八幡神の契約者であり、しかも神とやたらと仲が良く下手を打つと今の帝が道鏡の二の舞になってしまいかねないという事で特高も迂闊に手を出せず放置されているというキャラクターだ。全国で信仰を集めているだけあって八幡神の力は凄まじい──が、帝華本人の実力がカスなので結構楽に勝てた。
それは兎も角、今考えるべきは相手の事だ。
メンバーは四人。部長の櫻島炉欄は十華族の令嬢だが家とは絶縁状態。契約しているのは信仰を失った名も無き神、攻撃能力は皆無で固有兵装の琴を弾きバフやデバフをばら撒く。原作に居た様な気がするけどあんまり覚えていない。
鞍馬小冷の契約神は
秋空雲雀はバリバリ原作キャラだがその特性は全く異なっている。契約妖魔は鴉天狗のままだが、デウス・エクス・マキナの特性も残り銃をメインに戦う中遠距離型の魔法師となっている。
そして朝露咲良。推定
『まずはサブカル同好会!! ここまで一度も脱落者を出していない隠れた実力派です!!』
先にあちらが入場してくる。いよいよだ、私は溜まっていた唾を飲み込む。
『続いて魔法混合遊戯部!! こちらは二回戦で姉上の部活を破っている実力派!! 姉上を破ったのならそのまま勝ち進んでくれないと許しませんよ!!』
実況の声で私達もフィールドに入る。部長の
実況が言っているのは一戦前──魔法総合球技部との事だろう。あの時は私以外全員やられてしまい何とか鈴蘭親和先輩相手に粘り勝ちしたのである。
今回のフィールドは起伏の激しい荒野。森林程も視界は悪くないが遮蔽物は多い。
「良い試合にしようぞ。じゃが、勝つのはワシらじゃ」
「いいや私達という事になっている。ま、お互い頑張ろう」
部長同士が握手と軽い応酬を交わし、それぞれのメンバーが配置に付く。
制服が消失し魔装へと変わる。その形状は変わらず紫のリボンが付いた帽子と紫と青を基調とした和装。ただし腰には鉄扇と共に刀が一本提げられている。態々申請して持ち込んだ武器だ。
八手は千絵と共に後方へ、私は佳奈と共に身を隠せる場所にいる。理由は後程説明しよう。
──カーン。
試合開始の鐘が鳴ると同時に佳奈が祝詞を紡ぎながら踊り始める。
彼女の魔装は上半身は辛うじて胸が隠れている程度の布と首回りをフワフワと漂う羽衣、下半身はこれまた辛うじて股間が隠れている程度の前掛け、足元は裸足といった、正に踊り子といった風の衣装である。
彼女の契約神は
そしてその効果は──
「──陽光の楔が今、解き放たれん事を……!」
「……っ」
私の身体の奥底が熱くなる。
彼女の魔法は対象の能力の底上げだ。踊らなくても出来るが、踊りと祝詞という面倒な手順を踏む事で最大限のバフをかける事が出来る。
「芽有~、頑張ってね~」
「ありがと、佳奈。部長の方に行ってあげて」
「分かった~……うう、やっぱり恥ずかしいよ、これぇ……」
踊り終わった佳奈が顔を真っ赤に染めつつ、自らの身体を隠す様に抱き締めてのんびりした口調でそう言ってその場を離れる。私はそれに礼を言うと相手の領域へと向き直り自らの感覚を研ぎ澄ませる。
今の私はさしずめ身体能力、魔力量、魔力操作技術が通常の二倍といった所だろうか。驚く程に頭が冴えている。どんな事でも出来そうな万能感に包まれるが、相手は暫定ラスボスの厄災の魔女だ。油断して勝てる相手ではない。
両手を自分の前方に伸ばし上下に合わせ、そこに魔力を集めていく。丸い水滴がポツ、ポツ、と浮かんでいく。
『芽有、十時の方向距離200! そっちに向かっていってる! 凄く速い!』
「流石咲良、もう気付くんですか。事前の作戦通り彼女は私が相手するから千絵達は他をお願い」
パタパタ、と一羽の鴉が私の耳元でそう五月蠅く囁く。
これは千絵の物だ。彼女は八咫烏の契約者であり、上空から見た情報をこうして眷属を通して伝えてくれているのである。
さて、まだ魔力を溜め始めたばかりなのにもう咲良は感知した様だ。
でもまあ予想通り。だからこそ佳奈をここから移動させたのだ。
──私の身体は無数の蔦に貫かれた。
「……来た」
それは転生特典の未来予知。五秒後に死ぬ未来があればそれを幻視するという物。つまり、私はあと五秒で死ぬ。
だがそれは私が何もしなかった場合だ。残り三秒になった所で私は一気に後ずさり、前方へ両手を向けて叫ぶ。
「"
刹那、周囲に漂っていた水滴が手の周囲を回転、指先に集中し、一瞬巨大な水泡が膨らんだかと思えば細い水線となって目にもとまらぬ速さで空間を突き進む。
それは私が元居た場所を貫いた咲良の蔦や弾き飛んだ岩を引き裂き、巻き込んで更に進む。
ウォーターカッターのあの切れ味は水だけでは完全には発揮されず、実際には研磨剤を混ぜる事で金属の加工にも利用できる様にしているのだ。そして、私の予想通り、咲良の蔦は彼女の膨大な魔力によって植物とは思えない程に硬化されている──
「──いっけえええええッ!!」
「ッ……!」
音速すらも超えて進むその水に、剣を構えて突っ込んできていた咲良はほんの僅か対応が遅れた。
だが、それだけ。普段から光速の攻撃を制御している彼女だ。一瞬驚いた様な顔をしつつも持っていた剣で水流を受け流す──それも想定内。確かに彼女は水流そのものは防げたものの、その中に入っていた蔦や岩の破片を身体に受けてしまう。
それすらも彼女は僅かな動作で殆ど避けてしまうのだが、数片は皮膚に細かな傷を作り出す。これがこの大会で彼女が初めて受けた傷だった。
そして。
「"神域『月華龍宮』"!!」
水線を発射したと同時に走り出していた私は、彼女に近付くと同時にそう叫ぶ。
一瞬、周囲の景色が変わる。魚が踊り狂う海が現れ、そこに色鮮やかな中華風の城が鎮座している──私の神域だ。
だが、それが効果を発揮する事はない。頬に一本の紅い筋を作った咲良は周囲の魚が牙を剝く寸前に呟いた。
「"神域『鳥高山』"」
すぐに海は山に塗り替えられる。
魔力操作技術は未だ咲良の方が圧倒している。神域同士の押し合いになれば敗北するのは目に見えていた。先に展開したのは咲良に神域を展開させる為である。
「"水擁連星"」
それは幾つもの水滴を自分の周囲に高速で回転させる魔法。
彼女の神域は私と同じ空間攻撃型。この魔法はそれら攻撃を叩き落とす為の物だ。
「ッ……」
「"高神の瀧"、"嘉卉香弁の道標"」
「!? それは聞いて、ないッ!!」
完全ではないものの私が神域の攻撃を防ぎながら自分に近付いて来るのを見て、彼女は笑みを浮かべて追加の攻撃を行ってくる。
まず彼女が発してきた水流が私の水滴を吸収して押し流し、その後に色鮮やかな花弁が取り囲む様に襲い掛かる。流石にこんな形で防御を取り払われるとは思っていなかったので私は慌てて鉄扇を抜き身を捻らせて攻撃を受け、躱していく。
既に身体中は傷だらけ。あまりにも血が流れるものだから傷を水で塞ぎ、足りなくなった血を海水と純水を混ぜて急造した生理食塩水で補う。軽い貧血で頭がクラクラするが死ぬよりはマシだ。
「うっ」
だが、そんな虚勢も長くは続かない。
動きが鈍った所を彼女が見逃す訳もなく、私の腹を蔦が貫通する。これだけの攻撃だ、未来予知は既に飽和しており役に立たないのでオフにしている。
そうして私はその場に縫い留められ、すかさず他の攻撃が一斉に襲い掛かる──
戦闘序盤に私は神域を発動させた。
あれは咲良に
その実、たとえ私が何もせずとも彼女は神域を展開させただろう。端から神域で彼女を仕留める事など私は期待していない。私にとって最も重要であったのは『相手よりも先に神域を展開する』事であったのだ。
「──!!」
どうやら気付いたのだろう。私の目の前にいる彼女が目を丸くする。
「──いい、でしょう……乗ってあげる、ですよ」
「──化け物め」
彼女の言葉に私は毒を吐く。
次の瞬間、咲良の神域は崩壊し、彼女が発動させていた魔法は全て消失する。
私を貫いていた蔦も、今まさに貫かんとしていた蔦や草木も全て消え去り、晴れて私は自由の身となる。
絶体絶命の窮地に追い込まれた朝露咲良──
──彼女は今、見た事もない様な満面の笑みを浮かべていた。
厄災の魔女ウキウキで草
5秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。
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