押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
チュンチュン、と雀の鳴く音がする。障子の隙間から差し込む陽光が美玖の頬を撫で、その温もりで目を覚ます。
ここは菊花寮、美玖と心愛の部屋。伝統を重んじる菊花家らしい漆喰壁に和紙貼りの障子、気品ある高級感溢れる桐の家具。美玖の側の本棚には彼女の宗教関連の本が一部と、後はラーメン関連の本がずらりと並ぶ。心愛の側にはヒーロー関連の物が並び、壁には某有名ヒーロー戦隊のポスターが貼られている。
そんな中で時計を確認した美玖は心愛の布団を見る。心愛は割と寝坊気味な所があるのでいつもこうして彼女が起こしている……のだが。
「……心愛ちゃん?」
同室の少女の布団には誰も居ない。
ただ、この時はまだそこまで深刻には捉えていなかった。別に心愛が先に起きたっていいのだから。
「あの、菊花寮長。心愛ちゃんを見ませんでしたか?」
「広野か?
寮の出入口に立っていた菊花伊織に訊くも、心愛の姿は見ていないという。
その後も寮内を探し回ったものの、何処にも彼女の姿はない。
ふと、昨日の事を思い出す。
昨日、心愛の額に小さな角が現れた。それに彼女は酷く取り乱し、美玖が付きっ切りで宥めて漸く落ち着いたのだ。
しかし、もしもあれが落ち着いたのではなく、全てを諦めたとかそういう類の反応だったとすれば。
「っ……!!」
彼女は最悪の想像をしてしまい、慌てて携帯端末を開いたのだった。
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───
─
『さあ、遂にこの日がやって参りました!! 数日に及ぶ部活対抗戦もいよいよ最後となります!!』
『いやあ短い様で長かったですね。どの試合も……いやまあ、一部は見ていられない物もありましたが、どれも見応えのある物でした。これまで何度も解説担当としてこの席に座ってきましたが、これ程の大会は無かったと言えるでしょう』
『ですね! では試合開始の前に決勝戦のルールを振り返らせて頂きます。部活対抗戦の決勝戦はこれまでのチーム戦とは異なり、それぞれのメンバーが一対一で戦う個人戦となります。部長は部長同士と戦い、それ以外は予め互いが選んでおいた順番で試合を行い、通常メンバーは1ポイント、部長戦は2ポイントとなり、先に3ポイント獲得した方の勝利となります』
『部長戦は最後になるので、理論上はそれまでを全勝していれば部長戦は無くなるという訳ですね。ただ私が見てきた限りではそんな事は無かった様に思います』
『その通りでございます! 両者共にここまで勝ち進んできた強者揃い! 実力差はそこまでないでしょう、恐らく熱い戦いが見られると思います! それではここからは各チームメンバーの紹介と参りましょう! まずはサブカル同好会の櫻島炉欄選手から──』
遂に決勝戦の日が訪れた。これを勝てばいよいよ私達の悲願、学園内へのアニマイト誘致が実現する。
昨日の試合では余りにも芽有が強くなってきて、しかもこちらに殊勝に向かってくるものだからつい楽しくなって奇襲を受け負けてしまったが、今日はそんなヘマはしない。昨日と違って個人戦だし、何より今日の相手は大して楽しめなさそうだ。
私怨もある。紅葉や快人がこれまでの試合で酷く辱められたのだ。ただ戦って勝つだけなら別に何とも思わないが……態々凌辱するなど意味が分からない。それをして一体何の意味があるというのだ。
あいつらのせいで紅葉は今酷く憔悴している。心に関しては回復魔法でもどうにもならない。記憶を消す事なら出来るが、それは本人に拒否された。これも貴重な経験だ、と彼女は言っていたが、そう語る彼女の手は震えていた。
「あ、試合の順番が出たっすよ」
と、そこで雲雀が端末の画面を指差す。
一回戦が秋空雲雀対山桜美咲、二回戦が鞍馬小冷対洲桃小宵、三回戦が
「やはり唯奈か……あ奴は……まあ、咲良なら大丈夫じゃろうて。油断さえせねばな」
「安心する、です……5秒で終わらせ、ます」
「小冷と雲雀は無理するでないぞ。やっておる事は兎も角、相手は魔法研究俱楽部の精鋭、櫻島の分家の令嬢として幼き頃から教育を受けてきた者達じゃ。後ろにはワシと咲良がおる。お主らが無理して辱めを受ける必要などない。少しでも兆候があれば自決すればよい」
「は、はいっす」
「りょ、了解したでござる」
自決──教育機関で出るには余りにも物騒な単語だ。だが現状試合に降伏は無く、強姦されても止められない以上こうする他ないのである。
こんな制度を考えた者は頭がどうかしている。これにゴーサインを出した十華族の者達は、例えば自分の子供が公衆の面前で凌辱されているのを見ても何も感じないという事なのだろうか。
『一回戦、秋空雲雀選手の入場です!』
「じゃ、じゃあ行ってくるっす!」
「頑張って、です」
「頑張るでござるよ!」
「ファイトじゃぞー!」
憤る私を他所に時間は進んでいく。
司会の声で雲雀がフィールドに出る。相対するは不気味なオーラを纏う女子生徒……この感覚、何処かで感じた覚えがある様な気がする。とてもおぞましく、悼ましい感覚。
どうやら同じような感想を炉欄先輩も抱いた様で、彼女はそっと私に
果たして、試合結果はまあ先んじて予想していた通りであった。
一回戦においては銃使いの雲雀と肉弾戦特化の山桜。距離を取って戦うも相手が理外の動きで接近してきた為に近接戦闘を余儀なくされ、最終的には心臓を潰されて敗北。
二回戦では小冷と洲桃、同じ弓使い同士の試合であった。当初の予測では狙撃合戦となる筈だったのだが、裏をかいて洲桃が接近戦に持ち込んだ為にこれまた敗北。
まあ二人とも凌辱されなかっただけマシであろうし、それに何も一瞬でやられた訳ではなくある程度は善戦していたのだ。これには司会実況も興奮し声を張り上げていた。
だが、負けは負け。一応これでサブカル同好会はゼロ点、魔法研究俱楽部は二点と優勝に王手をかけた事になる。
『三回戦、朝露咲良選手対櫻島唯奈選手!! サブカル同好会はここで勝たなくては最終戦を待たずして敗北が決定してしまいます!!』
皆の声援を背にフィールドに上がる。視線の先に立つのは桃色の髪を若干黒く染め上げた様な少女──炉欄先輩の血縁上の妹、櫻島唯奈。
彼女は妖しく光る虚ろな目でこちらを見ると、妖艶な笑みを浮かべて目を細める。
「貴女が朝露咲良ね? 本来ならお姉さま直々に殺したかったのでしょうけれど……まあ、ルールなら仕方ないわねえ。代わりにこの私が貴女を骨の髄まで辱めてあげるわあ」
「……」
「何か言いなさいよ」
「……無駄な事は、しない主義、です。さっさと……始めましょう」
私がそう言うと、彼女は頬を引きつらせて怒りに震える。どうやら強くはなっても煽り耐性は無いようだ。
「フン!! いつまでその飄々とした態度が続けられるかしらね!! 私はあのお方によって強くなった、以前までの私はもう居ない!!」
「……」
あのお方。どうもこの嫌な雰囲気の正体はそれらしい。
今すぐにソイツを引き摺り出してやってもいいが、今回は炉欄先輩の策に乗ろう。今ここで私が手を下してしまっては……弟子や紅葉の仇が討てなくなる。
兎も角ここでの私の役目は、目の前の相手をなるべく素早く潰す事だ。
『それでは試合開始!!』
カーン、と鐘が鳴り響き。
「"神域『鳥高山』"」
私は早速神域を発動、相手を結界の中に入れる。
それに相手は焦る事なく、寧ろ笑みを増して言い放つ。
「フフ、予想通り! こっちもしんい……き?」
だが、その言葉はすぐに尻すぼみになる。
彼女は何が何だか分からないといった様子で取り乱し、汚く唾を飛ばしながらこちらに向かって叫ぶ。
「あ、アンタ何をしたのよ!? なんで、なんで魔法が、使えないのよお!?」
そう、彼女は魔法が使えない事に動揺しているのだ。
これは先の試合で芽有が使っていた技である。神域を相手の神域に浸透させて一時的に処理能力を飽和させる──それを少し改良し、相手を結界内部に入れるだけで飽和させられる様にした。これであと二十時間くらいは魔法を使えなくなった筈だ。
何と素晴らしく複雑な技であろうか、やはり彼女はいつも良い意味で私の予想を裏切ってくれる。
後はもう消化試合だが、油断は禁物。念には念を入れて潰しておこう。
「"『鳥高山』
「ちょっ──」
彼女の言葉が最後まで紡がれる事はなかった。
フィールド上部に実サイズの鳥高山を十五個出現させ、立て続けに落下させたのだ。それら全て落とし終わった時点でカンカン、と慌てた様に試合終了の鐘が鳴らされる。
それを聞き、私ははあ、と溜息をつき、呟いた。
「……なんて、つまらない試合」
十五連装(迫真)。観客席の芽有ちゃん顔面蒼白。
舐めプしなければ大体これで終わるという事実。やろうと思えば心愛戦も芽有戦も最初から連続山落としで秒殺出来ていたのである。でもそれだと面白くないのでマトモに戦いました。
因みに別案として鳥高山を直径1メートルくらいにまで圧縮して超高密度岩球にしてぶん回して戦うみたいな物もあったんですが、なんやかんやで禁断の"鳥高山"十五度打ちになりました。
更にちなむと芽有戦の山落としは普通にこれで終わると思ってたので芽有ちゃんが生存して自分を殺してきた時にはガチで興奮してました。
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