押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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芽有ちゃん独白会。情報開示の時間じゃー!


これでも原作に比べれば凄惨さは下がっているんです

「ひぇ……」

 

 観客席において、(芽有)は小さく悲鳴を上げる。

 今、目の前の試合では咲良と櫻島唯奈が戦っているのだが、そこで咲良は私の試合で使った山落としを早々に使ってきたのだ……が、その規模が余りにも違い過ぎた。

 私の時は一つだけ、今回は十五個。オーバーキルを超えたオーバーキル。しかもシレッと私の"神域で相手の処理能力を飽和させる"技も使ってるし。それを習得する為に一体私がどれほどの苦労を……

 

「わ、私達って結構頑張ったのね……」

「あんなのされたら~、一たまりもない~……」

 

 一瞬で試合が終わったのを見て両隣の千絵と佳奈が戦慄する。

 実際の所は咲良はかなり遊んでいたのだろうが、ほぼ確実に今回の大会の中では一番善戦したチームである事は間違いない。それは私の自尊心を回復させ、同時に平穏が遠ざかる事を意味した。よく考えてみたら頑張りすぎである。無駄に咲良(ラスボス)に気に入られて、あまつさえ強化させるなどあの時の私は一体何を考えていたのだ。

 

……まあ過ぎた事はもう仕方がない。これからは少しでも平穏を取り戻せる様に努力しよう。

 久しぶりに原作を振り返ってみようか。もうボロボロだからあんまり意味ないと思うけど。

 

 まず、今の時間軸としては四巻の中盤から終盤あたりだろう。原作では第三章と呼ばれる物で、心愛をヒロインとして進んでいく物語である。

 三章の流れとしてはシリエスが復活し、十四年前から更に強くなった彼女は誰も止められず日本は恐怖に包まれる。学園でも何人もの女子生徒が被害に遭い、相対して生き残ったのは心愛と快人のみ。その際にシリエスの言葉で心愛が自身について悩んでいく。

 部活対抗戦は丁度この辺り。原作ではトーナメント編成が異なっており、Aブロック決勝戦で心愛と快人が戦う事になり、結果は快人の辛勝。この戦闘で心愛が一瞬覚醒しかけ、それを快人が目撃。しかし(雲雀の件もあったので)それを見ても尚気味悪がらなかった彼に彼女は心を許す様になり、二人の距離が縮まっていく……因みに最終戦の相手は魔法剣道部、ここで漸く紅葉がマトモに描写される。

 

 さて、ここで問題なのは、原作においては魔法研究倶楽部などという部活は殆ど描写無く負けているという点。無論絵良が触手で凌辱する事もなく、紅葉が負ける事もない。

 ただ、夢想鍛錬所で公開凌辱という展開は、まだ先の話ではあるが原作にも幾つも存在する。何なら現実空間でも、というかそっちの方が多いくらいにはある。なので私は今のこの展開にあまり疑問を持っていなかった。

 言い訳がましくはなってしまうが、そもそも我が魔法混合遊戯部と魔法研究俱楽部はブロックが違い試合の時間も被っていたので実際に試合を見る事が出来ず、この異様な雰囲気を知る事ができなかったのだ。

 

 

「ひっ……」

「な、何あれ……」

 

 と、考え込んでいる内に炉欄と絵良の試合が始まっていた様だ。

 両隣の二人が顔を強張らせて絶句しているのを見て、私は一体何事かとフィールドに目を向け──

 

 

「ああああああああっ!!!??」

 

 

──そこで繰り広げられている公開出産ショーを目にしてしまった。

 フィールドで泣き喚く絵良、大きく膨らんだ腹、意に介さず琴を弾く炉欄。やがて絵良の股間から胎児の手が飛び出し、それを炉欄が勢いよく引き抜く。

 その余りにもスプラッタな光景に多くの観客が悲鳴を上げる中、私は別の事実に思い当たる。

 

「ちょっと待って、炉欄……って!?」

 

 思い……出した! などとふざけている場合ではない。

 そうだ。ああ、どうして私は忘れていたんだ。櫻島炉欄、彼女の事など彼のファンなら絶対に忘れてはいけない人物だというのに!

 一つ思い出せば芋蔓式に思い出す物で、例えば原作の現在(・・)において彼女がどんな状況になっているのかも思い出した。確か何かの部活に入っていたが、唯一の部員が雲雀の暴走で死に孤独になっていた時期である。その部活というのがサブカル同好会であり、唯一の部員というのが小冷なのだろう。

 だが今でも小冷は生きており、何なら咲良と雲雀という新入部員まで増えている。先日何故か巻き込まれたサブカル同好会の祝勝会でも炉欄は楽しそうだったし、取り敢えず私が危惧している状況は脱しているらしい。

 

 深呼吸をし、一先ず自身を落ち着かせてフィールドに再び目を向ける。

 そこでは一体の大鬼(オーガ)が何やら炉欄と話している……いやちょっと待てよ。何でアレ(・・)が今ここに居るんだよ。お前が出てくるのはもうちょっと後でしょう!?

 

「ああ、そうか……!」

 

 絵良達の異様なパワーアップに嗜虐性。それは全てあの大鬼の仕業だったという訳だ。原作での出番は遥か先なのでそもそもの選択肢から外れてしまっていた。

 あの大鬼──ガイルは旧群馬の『龍の籠』から出てきた知性を持つ魔物、所謂『特定外来有知生物』の一種。十数年前にこの世界に現れたそれは何の因果かシリエスに会い、少しの間協力関係を築いた後に組織に身を寄せる。

 原作においては三章時点では少し出てくるのみ、本格的な登場は五章になってからである。そこではとある理由から学園の生徒達が各地の軍に一時の間所属する事になるのだが、その中の一つを襲撃、そこに居た生徒達や魔法師を傀儡とすると共に自らのパワーアップの為の苗床としたのだ。

 アイツが人間の女を孕ませると一時的にその女に大鬼としてのエネルギーが流れ込み強大な力を得るが狂暴性が増す。その間に胎の中の子供は苗床の養分を吸い続け、やがて干からびた死骸から一体の大鬼が生まれてくる。それを吸収する事でガイルは更なるパワーアップを遂げる……いや本当にスプラッタだな、原作。よくアニメ放送出来たなこれ。

 

 それは兎も角今は三章。

 原作四巻では部活対抗戦の後に再び学園に侵入したシリエスと心愛、快人の対戦があり、心愛が本格的に覚醒──角や牙を生やす事で辛くも撃退に成功。

 以前心愛はシリエスの実子だと言ったが、その父親は先述したガイルなのである。本来大鬼が人間を孕ませても生まれてくるのは純粋な大鬼なのだが、ガイルと出会ったシリエスが大鬼と人間のハーフという物に興味を持ち、何度か実験を繰り返した末に「自分という"強い"存在ならば大鬼の遺伝子にも負けないのではないか」という結論に至り、ガイルと性交した結果生まれたのが心愛なのだ。

 大鬼の子供という事で当初は研究所に送られ、保護観察という形を取られていたが、やがて暴走の可能性が無いという判断のもと広野直哉が引き取る形で解放される。

 

 だが、心愛は角や牙という大鬼の身体的特徴を発現させてしまった。そして不幸な事に、それは監視カメラに収められており彼女やそれを庇う快人は特別高等警察に追われる事となり、二人きりでの逃走劇が開始。最終的には輝夜が庇う事で終結する……

 

 ちなみに現状、特別高等警察は咲良によって壊滅、柊家も崩壊状態。シリエスも犠牲者を一人も出さないまま超弱体化され、ついでと言わんばかりに五章で登場予定の『魔法師殺し』も収監、"組織"の研究所も壊滅。そしてたった今、目の前でガイルが四肢をもがれて拘束中……うん。

 因みに研究所が壊滅したというのは咲良から教えてもらった。一応私も一連の事件の関係者だからだ。一応研究所の壊滅は原作でも三章終盤である事だ。だがそれは、中の研究者らが殆ど移動した後の抜け殻を壊したにすぎず、防壁で覆って逃げられない様にしてから一網打尽などという事では断じてない。

 こうなるといよいよこの先どうなるか想像もつかないのだが、まあそれは良いだろう。確実に犠牲者は減るし、涼介君も良い方向に進んでくれそうだ。

 

 ともすると注視すべきは未だ捕まっていないシリエス、そして研究所所属の"博士"の行方である。

 尤も、研究所を壊滅させてしまったせいで既に組織からは見放されているだろうし、然程気にする事でもないだろうが──

 

 

「……?」

 

 と、そこで端末に電話がかかってくる。画面に記されている名前は『仲山美玖』、まあ同寮ではあるが、一体どうしたのだろう。かかってきたものを拒否する様な因縁も持ち合わせていないので素直に出る。

 

『芽有ちゃん! 心愛ちゃんが脱柵したぁ事を咲良ちゃんに伝えてくれんか!?』

「だ、脱柵?」

 

 脱柵、学園を無断で抜け出す事である。

 一応学生は軍人という扱いになる為、無断での脱走は軍紀違反という事になり厳重な処罰の対象となる。

 それを心愛がやった? 一体何故──

 

 

「──まさか」

 

 

 そこで、私はある一つの結論に辿り着く。

 三章ラスト──五巻終盤では涼介君がシリエスの場所を伝えそこで最終決戦が行われるのだが、そこは学園外にある採石場なのである。

 美玖の話を詳しく聞くと、朝目覚めたら心愛がおらず、慌てて自分の友達(信者)と協力して行方を捜していた所早朝に学園の外へ出ていく所を見た者がいた。その方角は先述した採石場のそれと同じだったのでほぼ確定と見ていいだろう。

 本来であれば憲兵に伝えるべきなのだがそうなると厳罰を受ける事になってしまう。心愛は負けた日からずっと自らの身体の異常に悩んでいる様だったので恐らく今回の脱柵もそれ関連であろう事は間違いなく、そこに追撃する様な真似はしたくない。

 そこで咲良に頼ろうと思ったのだが如何せん面識が殆どなく連絡先を交換していなかった。なので仲が良さそうな芽有にとりなしてもらおうと思った、という事情らしい。

 

 咲良と仲が良いと思われるのは非常に遺憾ではあるが、まあ彼女の選択は間違っていない。きっと咲良なら何とかしてくれることだろう。

 私は電話を切り、混乱続く観客席からフィールドに向かって飛び降りつつ思った。

 

 

 展開が……展開が早い……!!




【悲報】心愛に関する重要情報、大体芽有ちゃんの地の文でシレっと開示されてしまう

一部修正しました

5秒で終わっていたので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。

本のタイトルどっちがいい?

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