押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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取材と暴露

「……」

 

 学園内が良くも悪くも部活対抗戦で盛り上がっている頃、紅葉は自室で座っていた。それだけなら別に珍しくも何ともない。

 だが、彼女の髪は酷く乱れ、肌は荒れ、深い隈ができ、虚ろな目の焦点は合っていない──普段の飄々としつつもキリリと洒落ている彼女からは到底想像出来ない姿であった。

 

 コンコン、扉が叩かれる。それにビクリと肩を震わせるも、何とか彼女は息を振り絞って声を出す。

 

「だ、誰だい?」

「私です、姉様」

「か、楓か……入っていいよ」

「失礼します」

 

 キイ、と木の軋む音を立てて楓が中に入る。彼女は持ってきていた果物を棚に置くと、辛そうに唇を噛んで自らの姉を見る。

 魔法研究俱楽部との試合以来、紅葉はあまり外出しない様になった。あの時触手に犯された記憶が脳裏にこびりつき、その感覚は彼女を掴んで離さない。咲良に記憶を消そうかと提案された際には「貴重な経験だから」と拒んだが、それは寮長として、そして睡蓮家次期当主としてあくまでも毅然とした態度を取らなければならなかったからだ。

 しかしながら、如何なる教育と訓練を受けてきたとはいえ彼女はまだ16歳の少女である。その恥辱と暴力は心に深い傷を刻み込み、未だ彼女はロープにすらも恐怖する始末だ。

 

「……っ」

 

 そんな彼女の様子を見て、楓は深い自責の念に襲われる。

 そもそも紅葉は最初は試合を有利に進めていたのだ。だがしかし、楓が僅かな隙を晒してしまった所を彼女が庇い、囚われてしまった紅葉はそのまま楓に見せつける様に嬲られた。

 そして楓自身は触手には絡め取られたものの散々姉の痴態を見せつけられ、しかし凌辱に進む前に紅葉が敢えて殺してリタイアさせたのだ。だから、剣道部の中で彼女だけは凌辱されていない──楓にはそれが耐えられない。自分だけ苦痛から逃げたというその事実が。

 

「あっ……と」

 

 果物を取り食べようとする紅葉。だが震える手ではまともに口まで持っていく事すら出来ずに取り落とす。

 そんな限界状態であっても毅然と振舞おうとする姉の姿を、楓は直視する事に耐えられなかった。

 

「っ!!」

「あ、楓……」

 

 彼女は部屋から飛び出し、ある者の場所へと向かうのだった。

 

 

──────

───

 

 

「それにしても喋る大鬼とは……何と面妖な」

 

 未だ混乱続く会場内にて、捕まえた大鬼を眺めながら炉欄先輩は呟く。だがそれに私は首を傾げた。

 

「そう、です?」

「む? そうじゃろう、大鬼といえば意思疎通の叶わぬ狂暴な化け物じゃ」

「そんな事は……まあ、ある、かも?」

 

 私は前世の事を口走りそうになって慌てて取り繕う。

 前世において私が生きていた世界──レインフォート。そこでは大鬼(オーガ)は魔物ではなく"魔族"と分類され、知能も高く魔王軍では小隊長クラスを務めている事が多かった。

 そもそもレインフォートでは大鬼だけでなくオークやゴブリン、スライムですら稀に喋る個体も居た。寧ろ地球に生まれてそれら生物が魔物と判定され無知性の生物と化していると知った時は酷く驚いたものである。

 そして、私が死ぬ直前くらいに戦っていた魔王軍のオーガと比べれば目の前のコイツなど大した存在ではない……ただ、コイツが絵良や櫻島寮の生徒を襲い、その結果紅葉達があんな目に遭う事になったのは事実なので調査は必要だ。

 

「ややっ、一体何事ですかこの状況は」

「咲良! 少し伝えたい事が」

「芽有お姉さまぁ♡!」

「何じゃ何じゃ騒々しい」

 

 と、そこに二人の少女が飛び込んでくる。

 片方は黒い翼を生やし新聞部の腕章をつけている少女──確か名前は、姫川文果。もう片方は少し慌てた様子の芽有。

 文果は手帳片手に根掘り葉掘り聞く気満々といった様子だったが、芽有が来るやいなや猫撫で声を出し、色々と混沌とした状況に炉欄先輩が苦言を呈す。

 

「炉欄先輩は、文果さんの相手を……私は、芽有を聞く、です」

「う、うむ」

「コホン! これはとんでもないスクープの臭いがしますよっ。炉欄先輩、取材よろしいですか!?」

「あ、ああ。マイクはあるか?」

「こちらにありますよっ!」

 

 一先ず文果を先輩に押し付け、私は芽有に向き直る。

 

「それで芽有……何かあった、です?」

「単刀直入に言うと、多分心愛が一人でシリエスの所に向かったから私と一緒に助けに行ってあげて欲しい」

「シンプル、ですね」

 

 何だか色々な事情が隠されていそうだが、彼女の焦り様からしてあまり詳しく説明している暇はないのだろう。

 彼女に頼られるのは桜井涼介との初邂逅以来である。私の試合で見せた、あれ程の力を持っていながら態々頼ってくるという事は余程の事に違いない。

 

「今から行く、です?」

「お願い」

 

 以前の試合の時に把握していた心愛の魔力波長を探知する。場所はここから30キロ程離れた場所にある採石場。

 

「あとできればそれ(・・)も持って行ってもらえると」

 

 芽有が未だ囚われたままの大鬼を指差す。

 

「これ、ですか……」

「それ、一応心愛の父親なので。生物学上の」

「!!? ……分かった、です」

 

 そして、マイクに拾われない程度の声で唐突にぶち込まれる重要情報。まあ心愛が大鬼とのハーフである事は何となく予想はついていたが、ここまでアッサリと言われてしまうと流石に驚いてしまう。

 何故知っているのか、は聞かない事にする。以前も桜井涼介について色々と口走っていたし、恐らく彼女には五秒後の未来予知だけでなくそれ以上の大局的な未来予知か何かが備わっているのだろう。他人の秘密はあまり暴かない方だ。私にだって隠している事の一つや二つあるし。

 

『──先程見た通り、この大鬼が絵良らの体に巣食い此度の悍ましい出来事を起こしていたのじゃ』

『なるほど、ではこの大鬼は何処から来たのでしょうか!?』

『それについては──』

 

 炉欄先輩の方を見ると、先輩と文果は態々マイクを使って会場内の全員に聞こえる様に取材を受けていた。

 否、寧ろ聞かせる事が主目的なのだろう。普通は要らないマイクを持ってきているという事は予め炉欄先輩が仕込んでおいたのかもしれない──この事件の全貌を衆目の下に晒す為に。

 出来る事なら私もそこに参加するべきなのだろうが、今は心愛の方が優先である。

 

「先輩、その大鬼、少しの間持っていってもいい、ですか?」

「ぬ? しかし、大丈夫かの?」

 

 彼女が心配しているのは、大鬼が逃げ出さないか、或いはこの場での真相を解き明かせなくなる事か。

 だが安心して欲しい。

 

「多分……そこまで時間はかからない、です」

「ふむ、分かった。ならば帰ってくるまで場を繋いでおく事としよう」

 

 それだけ交わし、私と芽有は心愛の元へテレポートした。




五秒で終わらせるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。

11/11追記:炉欄のマイクシーンを修正しました。

本のタイトルどっちがいい?

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