押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「ハハッ、お前面白ェ身体してんな」
"契約の間"──天照魔法学園に入学した者が、自らを見初めた神や妖魔と契りを交わす不思議な空間。そこで白髪の少女と神は初めて対峙する。
その神は帯、衣、褌を身に着け首に勾玉を巻いた正に神といった姿である。ただし胴体には鎧を、腰には剣を提げており武神の様な一面も見て取れる。
神の名は
少女は彼の言葉を受けて目をパチパチとさせ、自分の脚を見る。
「やっぱり神様には義足は珍しいの?」
「そうじゃねえよ……」
少女のその言葉は、彼にとっては予想外だった。無論義足には気付いていたが、そんな物がどうでもよくなる程の秘密が彼女の体にはあったのだ。
彼はジロジロと少女の顔を見つめ、言う。
「もしかしてお前、気付いてないのか?」
「気付く? なにに?」
彼女が首を傾げると、彼ははあ、と溜息をつく。
「折角面白れェ物が見れると思って出てきてやったってのに……これなら社で兄貴に急かされてる方がまだマシだったぞ」
「兄貴? お兄ちゃんがいるの?」
「月読の兄貴だよ。糞真面目でいっつも俺に指図しやがる……それなら引き篭もってる姉貴に言えってんだ」
「へえー、神様もたいへんなんだね」
「知ったような口をきくんじゃねェよ。っていうか何だ、お前俺の事を知らねェのか?」
彼は顔を顰めて訊くが、彼女は当然の様に首を縦に振る。
こんな事が有り得ていいのだろうか、彼は自らの額に皺を寄せて中指を当てる。だって最高神の弟だぞ? 非国民極まりないではないか。確かにまだ名前は言っていないが、日本国民ならば気配だけでひれ伏すべきである。彼はそう考えていた。
だが、そんな彼の考えを他所に少女はハツラツといった様子で言う。
「神様がボクと契約してくれるんだよね! ボクの名前は広野心愛! 皆のヒーローになる為に頑張ってるよっ! 神様は……あれ? 神様の名前ってなんだっけ?」
「はァー……俺は
「スサノオさん!」
「様を付けろよデカ女」
「スサノオさま!」
「はァーー…………もうそれでいい」
この無邪気の化身に彼は押され気味であった。
だからこそ、彼は少しでもマウントを取るべく少し思案し、やがてニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。
「じゃアまずは魔装だな」
そう言うと心愛の姿が変わる。彼女の着ていた制服が消え、両手両足に鎧、胴体を隠すのは眼帯ビキニと前張りのみというバカみたいな恰好。それも心愛のスタイルがやたらと良いが為にかなり煽情的で、到底齢13の少女に着せていい代物ではない。
「どうだ?」
ジロジロと出来る限りの下卑な視線を送りながら彼は訊く。
彼の想定であれば、こんな格好にされれば一瞬にして顔を茹蛸の如く紅潮させて変えてくれと懇願する筈であった。
だが、そんな彼の予想に反し。
「うん、動きやすくていいです! スサノオさま、ありがとうございます!」
「……」
心愛は満面の笑みでそう返す。
彼は頬をヒクヒクと動かし、次の手を打つ。
「言っておくがお前は魔法を使えねェ」
「ええっ、なんでですか?」
「俺がそう決めたからだ。その代わり身体強化の幅は普通の奴よりも大きくしてやる。そうだな……お前がその身体を使いこなせる時が来たら魔法を使わせてやるよ」
それは魔法師としては失格に等しい宣言であった。
別に何か体質が障壁となっている訳ではない。スサノオにかかれば多少の差異など乗り越えて魔法を使わせる事が出来るが、それはそれとして心愛に対して"格"の違いを教え込んでやりたかったのだ。
だが。
「わかりました!」
「……は?」
「ボク、がんばってスサノオさまが認めてくれるように身体を使いこなしてみせます!」
「いやいやちょっと待て……」
さしものスサノオといえども、魔法を使わせないという余りにも理不尽な言い分を素直に聞き入れるとは思っていなかったのだ。
しかし、奮起する心愛に対して今ここで先程の自分の放った言葉を撤回するというのは最早彼のプライドが許さない。
こうして、魔法の使えない魔法師が誕生したのである。
──────
───
─
「チッ、やっぱり毒は通じねェか!!」
「昔のボクなら通じたかも、ねっ!!」
幾度となく拳を交わす二人。
既に余波で採石場はボロボロになっており、仮に学園でこれだけの戦いが行われていれば壊滅的な被害を負っていた事だろう。山落としに比べれば遥かにマシだが。
そして心愛、シリエス共に多くの傷が付き血が流れ出している。本来であればファフニールの契約者であるシリエスの武器に傷付けられれば毒が入り短時間の内に死に至るのだが、シリエスと大鬼の血が流れる心愛には効きが悪かった。
肉弾戦では分が悪い、そう考えたシリエスは一旦距離を取る。
「"
「だから効かな、うわっ!?」
そうして吐き出した紫色の息。当初単なる毒だと思っていた心愛は、しかし息を浴びた石がドロリと溶けるのを見て慌てて避ける。
その隙を見逃すシリエスではない。彼女はその吐息の中を突っ切り心愛の腹を勢いよく蹴り飛ばす。くの字になって吹き飛ばされる彼女に対して更に追撃の毒弾を放ち、シリエスは勝ちを確信する。
「オイオイ、魔法を使うのは魔法師の常識だろ?」
心愛は魔法を使えない。それはこれまでに得た情報から明らかである。
確かに彼女の身体能力は脅威だが、肉弾戦だけで熟練魔法師に勝つのは不可能だ。
「ッ、はあ、はあ……」
毒弾をモロに浴びた彼女の肌は溶け、鮮やかな赤い筋肉が、一部では骨まで見えていた。
本来であれば浴びた時点で骨まで残さず溶けていなければおかしいのだが、まあ予想範囲内である。
「そもそもお前何で魔法を使わないんだ? 確かスサノオとかいう高位の神と契約してるんだろ?」
「はあ、はあ……魔法を使わない分、身体を強化してもらってる、から……」
「はあ? 馬鹿だろ、お前。魔法が使えない魔法師に何の意味があるんだよ」
全く意味が分からないといった様子でシリエスは彼女を見る。
「ボクは、約束したからね……」
「ああ……?」
と、そこで心愛が拳を振り上げ、左脚に力を込める。
何をする気だ、シリエスはいつでもその場を離れられる様に最大限に警戒する。もし心愛がこちらに突撃してきたとしても、距離を保てば何ら怖くはない──
「──ぐぅッ!!?」
──心愛がその場を動く事はなく、彼女はただ何もない場所を殴りつけるだけ。
ただそれだけの動作をした直後、シリエスは自らの胸元を貫通するかの如き衝撃に襲われる。彼女はその場から吹き飛ばされ、激しく血を吐く。
それだけでは終わらない。想定外の衝撃に体勢を崩した彼女へ心愛は一気に接近し更なる追撃を加える。
されるがままに目にも止まらぬパンチを受け続ける中、シリエスは先程の攻撃について考察する。
「(今、何が起こった!? コイツは魔法を使えない筈……まさか、
彼女の戦闘の才能が、今自らが受けた攻撃について正確に言い当てる。
正にその通りであり、心愛がやったのは"空間を殴りつけその衝撃を損失無しに遠距離まで届かせる"という技であり、魔法の類ではない。
だがそれは通常であればどうやっても不可能であろう代物であり、今この瞬間広野心愛という少女は世界でいちば……二番目に肉弾戦が強い人間であっただろう。
そんな彼女に殴られ続けているシリエスは最早動けず、このまま敗北するかと思われた。
「──っ、!?」
だが、突如として心愛の腕が止まる。彼女は目を見開き、過呼吸になりながらその場に倒れる。
それを見たシリエスはニヤリ、とここ一番の邪悪な笑みを浮かべる。
「ハハ……単純な強さならもうお前には敵わないが……"殺し"の才能なら負けねえぞ」
「な、にを……」
「確かにお前に普段俺様が使ってる毒は通じねぇ……だが俺が何年ファフニールと付き合ってきてると思ってるんだ。お前個人によく効く毒くらいすぐに作れる。まあ、間に合うかどうかは賭けだったがな」
彼女は普段の毒が通じないと見るや戦闘の最中に心愛専用の毒を調合していたのである。
だが、毒の調合にはそれなりに時間がかかる。それが完了するのが先か、シリエスが戦闘不能になるのが先か……その賭けの結果は今この光景が示している。
「さあて、最後のチャンスだ。今ここで誓え、俺様に従うと」
「……」
身体が痺れる。視界がぼやけ、指一本動かせない──そんな状況にあっても、心愛はただシリエスを睨み付けるのみ。そこに諦めや絶望は存在しない。
「そうか。なら死ね」
そうして、シリエスが彼女の頭を踏み潰す──
「"ショックカノン"」
次回、死闘
ヤンキー男と純粋少女のコンビは鉄板ですよね。原作ではもっと絡みあると思います。
あと心愛の最後の技の元ネタは某格闘漫画で日下部のガキッの実父が当主やってる古武術の奥義です。
五秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。
本のタイトルどっちがいい?
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