押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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誰かのせいにしたいが自分の顔しか思い浮かばない


誰かさんのせいで章ボスが弱い

「──は?」

「──へ?」

 

 そんな間抜けな声がシリエスと心愛の両者から漏れる。

 何しろ、ショックカノン、という声が何処からか聞こえてきた瞬間、一筋の光が通ったかと思えば心愛の頭を踏み砕こうとしていたシリエスの脚が根本から消え去ったのである。

 

 それが一体何を意味しているのかをシリエスが理解した時にはもう遅かった。

 

「"魂縛の楔(セレスタリア)"」

「がっ、な、何だこれ」

 

 その声の主から一刻も早く逃げ出そうとした彼女に無数の光の楔が打ち込まれる。

 痛みはない。だが、彼女はその場に縫い付けられたかの様に動けなくなる。否、動かせないのではない。まるで自分の身体が今ここには無いかの如く動きようがない(・・・・・・・)のだ。

 

「"ハイネスヒール"」

「ワッ……あったかい……」

 

 次に淡い光が心愛を包み込み、彼女の傷が一瞬にして消え去ってしまう。

 身体を縛られたシリエスだが顔だけは動かせる。その唯一動く部位で不快感と僅かな恐怖を滲ませながら"その名"を呼ぶ。

 

 

「朝露、咲良ァ……!」

 

 

 視界に入れるだけで呪われそうなその顔と言葉も、しかし全く意に介する事なく咲良は呟く。

 

「"魂の解裂(グリア・レウ・グローレン)"」

「ギッ、ギャアアアアアアアッ!!!?」

 

 刹那、彼女の身体を凄まじい痛みが襲う。

 死ぬ事が許されないまま身体を縦に横に斜めに前後に引き裂かれるかの様な痛み。数日にも感じられる数秒が終わった頃、彼女の魔装は消えていた。

 残されたのは、動けない裸の無力な女一人。最早戦う事はおろか逃げる事も叶わない。

 

「以前、逃げられた、ですから……今回は魂を固定した、です」

「はァ、はァ……ンだよ、それ……」

 

 意味の分からない言葉を聞き、シリエスは未だ殺意を失わない視線を向けながら呟く。

 そこで漸く彼女は咲良の傍らに達磨にされて結界に閉じ込められている大鬼の姿を見つける。それは十三年前に彼女が行動を共にしていた喋る大鬼、ガイルであった。

 かつて通常の大鬼よりも遥かに強く賢くシリエスすらも惚れ込ませた彼も、今や無様な姿を晒している。

 

「おいガイル……お前何捕まってンだよ」

「し、仕方ねえだろ!? まだ力を取り戻し切ってない段階で無理矢理引き摺り出されたんだぞ!!」

 

 そのまま始まる口論。

 ガイルが呆気なく捕まっているのを責め立てるシリエスだが、既に捕まっている彼女が言えた立場ではない。

 

 

「咲良、こっちは終わったよ」

「それが、例の?」

「うん。これが"博士"で、この前の研究所から逃げ出したもう片方」

 

 と、そこで芽有が一人の男を引き摺って歩いて来る。

 身体のあちこちに水の槍を刺された彼は"博士"。シリエスを復活させた張本人であり、今まで物陰に隠れていた所を芽有が見つけて倒したのだ。

 原作においては本人も自らの身体を強化していたのだが、どうやらこの時点では単なる人のままらしく芽有程度でも易々と倒す事が出来たのだった。

 

「おい話が違うぞ!! 俺は人間の雌共で愉しめるって聞いたがッ」

 

 そんな彼を見てガイルが声を荒げるが、その言葉が最後まで発せられる前に咲良が口の中に剣の切っ先を突っ込み、冷たい顔で見下して言う。

 

「不快、ですね……」

「ひッ……」

 

 その顔と声色にガイルが震える。

 それは単に自らが殺されそうになっているからだけではなく、何か自らの本能に刻み込まれている様な気がしてならなかった。

 大鬼としてではない。魔族としての遺伝子の中に、彼女の事を恐怖する様定められている様な、そんな感覚。

 

 さて、そんなガイルを他所に瀕死の博士は咲良が持つ剣とシリエスに刺さっている光の楔を見て目を見開く。

 

「そ、それは……聖属性の、魔力……?」

「聖属性? ンだよそれ!」

「神が持ち操る魔力だ。決して人間が扱えるものではない、小娘、一体どうやっている!! それッ、それがあれば来たるべき"厄災"への対抗策も大きく前進するッ! そ、そうだ厄災だ!! 小娘、それだけの力を持っているのなら我等"組織"に力を貸せ!! それがこの世界に生きる人間の義務だ!!」

 

 彼が言ったその言葉への反応は主に三種類。

 シリエスとガイルは何を言っているのか理解出来ないといった様子。芽有は目元を押さえて首を小さく横に振り、そして咲良は。

 

「その"厄災"とは……"厄災の魔女"の事、です?」

「そこまで知っているのなら話は早い!! ああそうだ、いずれ現れ世界を滅ぼすとされている"厄災の魔女"、その対処を「それ私、です……」

 

 彼の言葉に割り込む様に彼女は言う。

 

「……は?」

「だから……"厄災の魔女"は私らしい、です」

 

 一瞬、彼は咲良が何を言っているのか理解出来なかった。

 だってそうだろう。"組織"のそもそもの発足理由である"厄災の魔女"討伐──その張本人がまさかこんな一介の少女などと一体誰が考え至るだろう。

 

 だが、彼女が厄災の魔女であると証明した、してしまったのはガイルであった。

 彼は咲良の言葉を聞き一瞬思考が止まり、やがて顔を青褪めさせる。

 

「そッ……その杖……」

 

 彼の視線の先にあるのは、咲良の右手に握られている大きな杖。普段から咲良が使っている物であり、木製のそれに深紅の宝石があしらわれている──

 

「ガイル、何か知ってンのか」

「おッ、俺の元居た世界には博物館があった……俺がこっちに来る直前くらいにそこで展示されてたとある展示品が忽然と消えたんだ……」

「お前の元居た世界って確か……"レインフォート"だったか?」

 

 シリエスが言ったその単語に咲良の眉がピクリと動く。

 

「その展示品は、かつて世界を滅ぼしかけた人間──"厄災の魔女"の杖……材質は」

「材質はファウルスリネリトの木とヴェルスルビー、です、よね?」

「そ、そうだ……そうです……」

 

 この世界の人間は絶対に知る事のない情報をスラスラと述べる咲良、その正体をこの時点でガイルは確信してしまっており、先程から青かった顔を更に青く染める。冷や汗は既に止まり、歯をガチガチと鳴らす。

 それに彼女は酷く冷たい視線を送りながら言葉を続ける。

 

「博物館に展示されてた、ですね……道理で綺麗だと思ってた、です」

「なっ、なんで、生きて……だって、まおうさま、が」

「この世界で生き返っただけ、です。そして、あちらの世界に、置いたままの道具を、取り寄せた……それだけ」

 

 取り寄せた。彼女は簡単に言うがそれは即ち世界の壁を越えたという事に他ならない。

 その事実を初耳だったのは芽有もであり、彼女も目を見開いて冷や汗を垂らしている──やはり彼女はこの物語のラスボス、厄災の魔女なのだと改めて思い知らされる。

 

 そして。

 

 

「や、やくさいの、まじょ……?」

 

 

 恐怖したのはガイルだけではない。

 ここまで対策を練ってきた博士も、いきなりその対象が目の前に現れた、その事実に震えていた。無論感激や武者震いではなく、完全な恐怖からである。

 

 だが、咲良はそんな事は最早どうでもよかった。

 

「取り敢えず、戻る、です……先輩方が、待ってる……」

 

 そう言った彼女は今、後悔と自責の念が入り交じった複雑な感情を顔に滲ませていた。




【唐突な魔法紹介コーナー】
魂縛の楔(セレスタリア)
聖なる楔を打ち込み相手の魂をその場に縛る魔法。
本来、レインフォートにおいても神に仕える聖女や司祭しか使えないが、咲良の魔力は神から与えられた聖属性の魔力であり、尚且つ自身の育て親の神が使っているのを見ていたので使える様になった。
地球においては魔法の研究がレインフォートと比べてもまだ未熟である為にオーパーツ。
因みに咲良はあまり聖属性の魔法は使いたくないらしい。

【唐突な"現時点での"作中強さtier表】
厄災の魔女:朝露咲良(フルパワー)
ーー作中最強の壁ーー
SSS+:朝露咲良(分身)
SSS:魔王(祖父) フェニシア(死にかけ)
ーーショックカノンの壁ーー
SS+:朝露咲良(ハンデ有) 朝露咲良(無限無し)
ーー朝露咲良の壁ーー
SS:シリエス(シュブニグラスあり)
S+:織主芽有 柊輝夜(一章時点) シリエス(シュブニグラス無し) ガイル
S:睡蓮紅葉 菊花伊織 広野心愛 藤堂快人 櫻島絵良(大鬼あり)
A+:レフィナ・クロスフォード 櫻島絵良(大鬼無し) 竹園皐月 鈴蘭親和 仲山美玖
A:若草比奈 睡蓮楓 柊朧
B:櫻島炉欄 秋空雲雀
C:鞍馬小冷 姫川文果 友田千絵
D:穏矢佳奈

炉欄先輩が作中の活躍に反して低いですが、先輩の出産魔法は長々とした詠唱を相手に聴き入らせなければ効果を発揮せず、それ以外は基本奇襲でしか戦えないので正面からの戦いだと普通に弱いです。
追記:一部キャラ追加
追記2:ティア表の横軸に関しては、右に行けば行くほど弱いとかそういう意味ではないです。

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