押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「朧、次の予定は?」
「次は一二〇〇より花弁亭にて藤原葉月内務事務次官との会食です」
都内某所の建物の中を私、そして朧が歩く。
柊家を崩壊に導いた会見をしてから二週間程が経過した。
あの日、私は
その為、私はほぼ全方位から憎まれている。完全な味方といえるのは朧と今でも文通している紅葉くらいか。
そんな中で私は誰も傷付ける事なく各所と交渉や取引を行わなければならない。柊や特高に被害を受けた者への賠償問題、それに関する朧達の責任問題、特高が力を失った事による国内外の犯罪組織の活性化への対処、今回の件で倒産した柊家関連企業の社員の雇用問題、エトセトラエトセトラ……
"人を傷付けられない呪い"を掻い潜る方法を私は探したが、どうもこの呪いはかなり高度な物らしい。
例えば睡眠魔法なら相手にかける事は出来るが、寝た結果その相手が崖から落ちて死ぬ、といった可能性があればかける事は出来ない。要するにこの呪いは「魔法そのもの」を見ているのではなく「魔法を使った結果」を見ているのだ。
即ち、簡易的な未来予知。この様な高度な呪いを瞬時にかけてしまう様な相手に私は喧嘩を売っていた訳である……今思えば、何と馬鹿な事をしていたのだろうか。
パチン、と自身の頬を叩く。昔の自分への恨み言を言っていても仕方がない。兎に角私は政財界で戦うのみだ──
「──っ、お久ぶりですね、咲良さん」
「ええ……久しぶり、です」
──そんな私の前に、突然咲良が現れる。テレポートだ。
「朝露さくr」
「止めなさい朧。咲良さん、何か御用ですか?」
彼女を見た朧が血相を変えて叫ぼうとするのを手で止め、あくまでも平常心を保ちながら訊く。
朝露咲良、我々が長らく恐れてきた厄災の魔女。一見すると至って普通の少女にしか見えないが、その実彼女がその気になれば日本どころか世界が危ういのだ。
そして、そんな彼女が今何やら複雑な表情をしている。後悔、自責、そして怒り。彼女をそうさせる程の"何か"があり、恐らくそれをどうにかするのに私が必要なのだろう。
「少し、来てください。そこまで時間は要らない、です」
「分かりました。朧、先に向かっておきなさい、私も用が終わったらすぐに行くわ」
「ッ、姉様……かしこまりました」
悔しそうな表情をした朧を背に、私は咲良へと足を進めた。
──────
「比奈、大丈夫か?」
「うう……べ、別に自分で想像しちゃった訳じゃないんだからね……」
「え、そっち?」
「ふ、普段のアレとかコレとか大丈夫かしら……」
歴史ある部活対抗戦の決勝戦で片方の選手が大鬼を出産する──そんな大珍事件によって会場内を異様な雰囲気が包む中、隣で比奈が顔を青褪めさせていた。俺が気遣うと、どうも彼女は自身を絵良に重ねてしまったらしい。
どういう事かと一瞬思ったが、よく考えてみれば彼女と俺は毎日の様に……いやちゃんと避妊はしてるから大丈夫だと思うのだが、ヤバイ、何だか不安になってきた。
脳裏に比奈の両親の激怒した顔が浮かぶのを振り払い、俺はフィールドに視線を戻す。
見ると引き摺り出された大鬼は一瞬で師匠に四肢を飛ばされ、芽有と共に何処かへテレポートしていってしまった。そして残された炉欄先輩が新聞部の少女が持ってきたマイクで今回の事件について説明している。
要約すると、突如として櫻島寮に現れたあの大鬼が絵良やそのチームメイトに襲い掛かり、
そしてその大鬼を送ってきたのは──何と、櫻島家本家からだという。
もしそれが本当なら大問題だ。十華族の一角が学園内に魔物の侵入を手引きし、あまつさえ自寮の生徒を襲わせたのである。生々しい分先日の柊家の件よりも嫌悪感が凄まじい。
しかも、だ。
『あの大鬼は……我の居た世界の者じゃな』
「えっ」
脳内でメリィが話しかける。
『あ奴個人の事は知らんが、我の見立てだと……あの強化幅は生徒四人では到底足りんぞ』
「そ、それって……」
『推定百人弱……恐らく、櫻島寮のほぼ全員が苗床にされていたに違いない。あの炉欄とやらは配慮して言わんかった様じゃがな』
「ひゃ、ひゃく……」
俺はその言葉が信じられなかった。
この学園に居る生徒数が千人強なのだ。つまりその一割があの大鬼に犯されており……もし今回の試合が起こらなければ、或いは師匠が居なければ学園は大変な事になっていたのではないだろうか。
と、背筋に冷や汗が走る中、漸く混乱から立ち直ったらしい教師や憲兵らが炉欄に近付く。
その光景は、かつて師匠が試合中に特高に捕まった事を想起させた。それは雲雀も同じだったようで、彼女や小冷が魔装に着替えてフィールドに出て炉欄を庇う様に前に出る。
俺は隣で今度は顔を赤くしてぶつぶつと何か喋っている比奈を横目に言う。
「……俺も行く」
「名前は一文字ずつ取って快奈とかかしら……えっ、え、何処に!? ご、ごめん聞いてなかったわ」
「炉欄先輩を守ってくる。事実がどうであれ、今先輩がやってるのは櫻島家を敵に回す行為だ。何が起こってもおかしくない」
「た、確かに……私も行くわ」
「いいのか?」
「アンタだけ矢面に立たせる訳ないでしょ! それに私は竹園家に連なる若草家、その長女よ。多少何かあった所で何とかなるわよ」
そう言い放つ彼女の何と頼もしき事か……そんな所に俺は惚れたのだ。
彼女は魔装に着替えながら、俺は刀──は持っていないのでズボンに仕込んでいる比較的小さな杖を握りながら靴に仕込んでいる超小型魔女の箒に魔力を込め、飛翔しながらフィールドに飛び降りる。因みに杖も靴も師匠から貰った物だ。
魔法使いならば如何なる状況も想定すべき──師匠のその言葉通り持ってきておいてよかった。
っていうか、今気づいたがいつの間にか夢想鍛錬所の効果が解除されている。つまり、ここは現実空間だ。
「比奈、気付いてるか?」
「ええ。多分タイミング的には部長戦が始まった時くらいなんでしょうけど……やっぱり咲良かしら」
俺達に気付かれずに夢想鍛錬所を解除してしまうとは、やはり師匠は凄い。改めてそう思った。
それは兎も角、フィールドに降り立った俺達は憲兵と炉欄先輩の間に立ちはだかる。
「なっ、藤堂一回生に若草一回生まで!?」
「炉欄先輩をどうするつもりですか!!」
「下手な憶測を語るのを止めるだけだ! 櫻島炉欄三回生、今すぐに発言を止めろ!」
「今更止めた所で何になるというのじゃ? それとも本家の指示でワシの口封じにでも来たか?」
「今のお前は櫻島家の名誉を著しく棄損している!」
「櫻島に守る程の名誉などないわ!!」
語気を荒げる先輩を何とか庇う俺達。
そんなこんなで収拾が付かなくなってきた頃。
「……遅くなった、です」
「師匠! ……か、輝夜、先輩」
「咲良! 良かったっすー……ぴぃ」
「おお、戻ってきたか……何か増えておらんか?」
そこに戻ってきた
正直言って俺達は彼女の事が今でも苦手である。何やら頑張っているらしいとだけは聞いていたが、結局印象は彼女が退学した時から変わっていないのだから。それは雲雀も同じ様で、輝夜の顔を見るや否や小さく悲鳴を上げる。
「お久ぶりですね、快人君に比奈さん、雲雀さん、心愛さん、鞍馬さん、それに炉欄」
「せ、拙者の事も知っておられるのですね……」
「ええ。生徒の事を把握するのは生徒会長の義務ですからね……もう違いますけど」
彼女の様相は、最後に見た時から随分変わっていた。
前はミステリアスで何を考えているのか分からない、といった若干人間味の薄い感じだったのが、今では化粧で隠してはいるものの肌はやつれ、目の下には隈が出来、髪も若干パサついており苦労人といった印象しか受けない。
まあこれはこれで人間味には溢れているので、俺としてはこちらの方でいてくれた方が良いかもしれない。
「所で師匠、今から何をするんですか?」
「取り敢えず……」
「ちょ、ひんっ」
おもむろに師匠が掌を輝夜に向け、そこから光の鎖を放ち彼女に突き刺さる。
彼女が頬を若干赤らめて艶めかしい声を出す中、師匠は魔法を使う。
「"月夜廻廊-片割月-"」
「あっ」
そして師匠の腹辺りから伸びてくる金色の触手。
それは俺の方に向かってきており、以前の経験からこれから何が起こるか察してしまった。
「ぎゃああっ、ま、またか!?」
瞬間、俺の身体の中から放り出されるメリィ。
雲雀の暴走を止めた後もこれをやった。あの時はただメリィと喋る為だったが、一体今回は何を……そういえばメリィ、あの大鬼が「自分と同じ世界に居た者」とか言ってたような……
果たして、俺の予感は的中する。
放り出されたメリィは尻もちをつき、姿勢を正す間もなくその顔に師匠の杖が突き付けられたのである。
◇次回、メリィの運命は…?
追記:心愛を書き足しました。
すぐに終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。
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