押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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大英帝国へようこそ!

「芽有がいないと寂しいよ〜!」と泣く佳奈。

「佳奈泣かないの……芽有、アンタならどこでもやってけるわ」と激励する千絵。

「名誉ある役目だな。頑張れよ」と八手部長。

「イギリスいいなー、かえってきたら感想教えてね!」と心愛。

「イギリス……聞いた事があるわぁ、不味いカップ麺があると。これ持ってきぃ」とオリジナルの即席麺を渡してくる美玖。

「お姉様、私、手帳と共に待ってますから!」と涙ぐむ文果。

「イギリスっすか……確か魔法至上主義が結構ヤバいんすよね……気を付けるっすよ」と雲雀。

 

 そして。

 

「咲良、お願いがあるんだけど」

「何、です?」

 

 送別会が終わり、誰もいない場所に私は咲良を呼び出す。

 それは、彼女にしか頼めない"ある事"を伝える為だ。

 

「もし涼介君を見る事があったら撮影して欲しいの……!!」

 

 そう、涼介君問題。イギリスに行っている間、私は今生の生き甲斐、生きる意味と言っても過言ではない彼を見る事すら叶わなくなる。正に死活問題。

 だが、咲良は少し首を傾げてから返す。

 

「涼介……ああ、炉欄先輩のお子さん、ですか……私に盗撮、しろと?」

「酷い言われ様ね……まあ事実だから仕方ないけど。でもまあ、そもそもが不法侵入者だし、監視のつもりで、ね? お願いっ! 咲良にしか頼めないんだよ〜……」

 

 靴を舐める勢いでその場に土下座し頼み込む。涼介君が定期的に不法侵入している事を知っている彼女にしか頼めない事なのだ。彼女に断られたらもう死ぬ気で分身魔法を習得するしかなくなってしまう。

 そんな私に彼女は暫くドン引きした顔を向けていたが、やがて諦めた様に溜息をつく。

 

「はあ……分かった、です。でも、その代わりに……帰ってきたら、一戦やる、ですよ」

「う……わ、分かったわよ」

「──あと」

 

 数カ月後の地獄を渋々了承した直後、彼女が何か思い出した様に訊いてくる。

 

「炉欄先輩の経緯(・・)について、ですが……やっぱり教えてくれない、です?」

「それは……」

 

 彼女が知りたがっているのは、炉欄と涼介君の関係の詳細について。咲良はまだ彼が彼女の息子である、という事しか知らないのだ。

 当然彼女は私に訊いてきた訳だが、私はその問いをはぐらかし続けてきた。

 

「……これは部外者が部外者に伝えていい事じゃないと思ってる。私はただ知ってしまっている(・・・・・・・・・)だけだから……もし咲良が知るとすれば、それは炉欄先輩か涼介君が言った時だけ。まあ、それでも知りたいというのなら私の頭を覗けばいいよ」

 

 これは二人の尊厳に関わる事なのだ。私は単に原作を読んで知っているだけで、二人に許可をもらっている訳でも、何か深い関係にある訳でもない。

 それにこれに関しては何か陰謀とかが絡んでいる訳でもなく、ただただ胸糞案件というだけ。恐らく炉欄先輩本人もこの件が広がる事は望んでいないだろうし、親しくしている後輩(咲良)が知って気を遣う事も望んではいない筈だ。

 だから私はこれを咲良に教えない。たとえ知ったとしても今更何が出来る訳でもないのだ。

 それに咲良は暫くジトっとした目をこちらに向けてくるが、やがて少し目を閉じて再度開く。どうやら諦めた様だった。

 

「……分かりました。イギリス留学、頑張る、です。期待してる、ですよ」

「ありがとう」

 

 かくして、私は学園を離れる事となったのである。

 

 

──────

 

 

「Hey! メアリにイノリ、これから三日間よろしくデース!」

「ん、よろしく」

「よろしくね、レフィナ、それと桃園さん」

「ん、祈里でいい。同い年だし」

 

 イギリスへの飛行機内で私は二人の少女と相対する。

 片方は金髪碧眼ナイスバデーの美女、レフィナ・クロスフォード。イギリスからの留学生でSISの諜報員。

 もう片方は濃桃色のショートボブをした透明感のある少女、桃園祈里。十華族『桃園家』の令嬢で諜報員としての訓練を受けているハイスペ生徒。

 

 さて、そんな祈里が私の顔をじっと見つめてくる。

 

「な、何かついてる?」

「ん、何もついてないよ。そうじゃなくて、私は貴女を尊敬してる」

「えっ」

 

 そして繰り出される畏敬宣言。私は彼女に何かした覚えがあるどころかそもそも初対面なのだが。

 

「あの朝露咲良を倒した、それだけで尊敬に値する」

「ああ、そういう事……」

「Oh! 確かにあの試合は凄かったデース! まるで若き日の女王陛下の決闘を見ているようデシた!」

 

 まあ確かに一般生徒からすれば咲良は得体のしれない最強魔女で、私はそれを倒したのだ。二人がこう思うのも仕方ないのかもしれない。

 だが、私としては複雑な思いである。

 

「あの試合は咲良もバカみたいなハンデ食らってたし、その上結構舐めプもしてたから殆ど勝ちを譲られた様な物だよ。本当の勝利じゃない」

「でも勝ったのは事実。私じゃ無理。ん、誇るべき」

「そ、そう。ありがとう」

 

 ここまで直球に褒められるとちょっと気恥ずかしい。というかそんなに咲良警戒(マーク)されてるのか……いや当然か。

 っていうか、こうなると私も結構危ないのでは? クッ、こんな筈では……本来なら気配を殺しつつ涼介君を悠々と観察出来てた筈なのに。

 

 さて、そんな会話をしつつ暫くフライトを楽しむ。

 魔法師の護送という事で機体は学園保有の専用機、座席は無論ファーストクラスだ。出てくる料理も高級料亭並みで囲いもついておりまるで小さなホテルの一室の様だ。勿論私は前世合わせて初めての体験である。

 

 そうして満喫する事八時間弱、機体はロンドン・シティ空港に着陸、そこから馬車(・・)に揺られること数分、私達は目的地に到着する。

 場所はグリニッジ。テムズ川沿いにそそり立つ城壁に囲まれた荘厳な城──英国の魔法学園『王立マーリン魔法学園』である。

 

 私達が馬車から降り立つやいなや、レッドカーペットが敷かれ儀仗兵が整列する。原作では本来快人が受ける筈だった歓待だ。そして恐らく、この後に来るのは──

 

 

「Hello! ようこそ日本の同士達! 我らが女王陛下の国、大英帝国へ!」

 

 レッドカーペットの先で一人の少女が陽気ながらも威厳を微かに感じさせる声で迎える。

 

「私は王立マーリン魔法学園の生徒会長、エルーブルー・オフィーリア・ターナー! さあ皆讃えよ、メアリーにイノリ、今この瞬間から二人は我らの同胞となったんだ!」

 

 その声で周囲の金管楽器が鳴り響き空気を揺らす。

 海をそのまま溶かしこんだ様な髪、サファイアを埋め込んだ様な瞳、白い肌はまさしく白磁の如く、触れただけで壊れてしまいそうなしなやかな肢体には、しかし『生徒会長』という肩書に相応しい力を秘めている……原作の記述通りの人物が今、目の前にいる。

 

 だが、今の私にはそんな事に感動している暇はなかった。何しろ──

 

 

(──私、今からあの服着なきゃいけないの?)

 

 

──イギリスの制服は、際どい。日本のそれよりも、ずっと。




マーリン魔法学園の制服(モデル:レフィナ)

【挿絵表示】


来年の1/19にインテックス大阪で行われる関西コミティア72に出店する事になりました。
本作の一章部分を本にしたものを出します。
表紙挿絵はデュアンが描き、内容を再構成して文庫サイズ386ページの物を1000~1500円くらいで売る予定です。
再構成の内容としては、ハーメルンのそのまま本にすると視点がぐっちゃぐちゃになって読みづらいのでそこらへんを整理したりしています。なので多少読みやすくなってる(はず)です。
無配とかも作るかもしれないのでよければ来てください。サークル配置とかは決まり次第また連絡します。
あと、本のタイトルは現状の『バッドエンドの〜』ではなく『押してダメなら吹き飛ばせ』になると思います。長すぎて文庫サイズだと色々無理が出てくるので短くしました

本のタイトルどっちがいい?

  • 押して駄目なら吹き飛ばせ
  • 押してダメなら吹き飛ばせ
  • 押して駄目ならぶっ飛ばせ
  • 押してダメならぶっ飛ばせ
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