押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
勇者と魔女
「たのもーっ!!」
神聖暦2,195年2月11日、レインフォート、ヴィロリア浮遊大陸リココ村。そんな日の昼下がり、とある家にそんな大声で呼びかける青年がいた。
歳は十代後半から二十代前半くらいだろうか。中肉中背で黒髪黒目、身体はわざとらしい金色の鎧で包み、腰にはゴテゴテとした装飾が付いた剣を提げている──そんな青年だ。
一見すると大人しそうに見える彼は、今村はずれにある少し大きめの家に向けて叫んでいた。普通ならば咎められる行為だが最も近い近隣住民はここから50メートルは離れている。
「騒々しいですね……そんなに声を上げなくても聞こえていますよ」
ガチャリ、と扉が開き一人の女性が覗いて来る。
ミディアムショートでエメラルドグリーン色の美しく輝く髪、陶磁の様に美しい白い肌、ガーネットの様に紅く光る瞳。中性的な顔立ちに中性的な声をした彼女を見た男は大仰に恭しくその場に膝をつき胸に手をあてて言う。
「これは御無礼つかまつりました。私はカケル・スズキと申す者、貴女は刻神ディナ=ヴィロリア様で宜しいでしょうか?」
「ええ……貴方の事はレインから聞いています。勇者だとか」
「その通り! 私こそこの世界に永遠の平穏をもたらす者! 世界神様から直々にお伝えいただけるとは光栄の極みであります!」
「はあ」
女性──ヴィロリアはため息をつく。
数日前、彼女は自らの創造主──世界神レインフォートからある事を命令されていた。それは目の前の男、勇者カケルに同行する魔法使いを提供する事。
「貴方に同行させる魔法使いはこの子です──フェニシア、こっちにおいで」
ヴィロリアが手招きすると、家の奥から一人の少女が歩いて来る。
赤紫色の髪にマゼンタ色の瞳をしたその少女は恐らく十にも満たないであろう。こんな幼女を魔法使いだと言って紹介されれば普通の者が見れば騙されたと思い、怒って立ち去ってもおかしくはない。
「やあ! 君が僕と共に来てくれる魔法使いかな?」
だが彼は普通の人間ではなかった。
彼はヴィロリアの後ろに隠れるフェニシアに目線を合わせ話し始める。
「! ……は、はい。わたしは、フェニシア・フィレモスフィア、です」
「フェニシアか! 良い名前だ。僕はカケル・スズキ! この世界を救う勇者さ! そして君はいずれこの世界を救った"救世の魔女"になる少女という訳だ! 今から楽しみだね、そう思わないか?」
「?」
「随分と気が早いですね……」
まるで世界を救う事が既定路線であるかの様な彼の大言壮語をフェニシアは理解出来ず首を傾げ、ヴィロリアは白い目を向ける。
「そもそも貴方は"勇者の剣"すら抜けていないでしょう。私の愛娘を預けるのですから多少なりとも保障が無ければ安心出来ません」
「貴女は刻の神ですから先が見えているのでは?」
「貴方は異邦人でしょう。私はあくまでもこの世界の神、異邦人である貴方が関係した事象については観測し辛いのです」
「おや、そうなのですか。ですがご安心を」
彼はニヤリと笑うと自らの腰に提げていた剣を抜き、掲げる。鈍い刀身に日光が反射する。
「私にはこの剣がある! いずれこの剣は新たな勇者の剣として語り継がれていく事でしょう! それに私が剣を抜けなかったのはまだ"勇者"と認められる程の活躍を見せていないからでしょう。
「そういう物だったかしら……まあいいでしょう」
一通り聞いた後、ヴィロリアはフェニシアへ向く。
「フェニシア、私の愛しい娘。貴女は彼と同行しこの世界を救う魔女となるのです」
「お母様……わ、私、そんな事、出来るでしょうか……」
不安がる彼女にヴィロリアは優しく微笑みかける。
「大丈夫。貴女には隔絶した才覚がある。過去、未来、そして今──全ての刻を見通した私が言うのだから間違いありません」
ぎゅ、と抱き締める。それに強張っていた表情を緩めたフェニシアは、カケルの前に歩いていき、その顔を見上げて言った。
「カケル……さん」
「カケルでいいよ」
「……カケル。これからよろしくお願いします」
それは、栄光への旅路。
世界神に導かれし"勇者"が、初めての仲間と出会った日。幼き"魔女"は魔を悉く打ち滅ぼす頼もしき仲間となるであろう──
──そうある筈で、あったのに。
「──ま、──さま!」
微睡みの中、誰かの声がする。
「魔女様!!」
「ん……」
身体を揺さぶられ、私は重い瞼を開ける。視界に飛び込んでくるのは菊の髪飾りをつけた黒髪の少女とボロボロのタイル天井。
そうだ。今は思い出の夢になど浸っている場合ではない。焦った様な表情の彼女を見て私は立ち上がり、立てかけていた
窓際、と言ったが、ガラスが割れ部屋を吹き曝しにしているこの開口部を窓と言っていいのだろうか。魔法学園の綺麗で頑丈な窓を見慣れた私からしてみれば少し疑問に思ってしまう。尤も、そんな事を言い出してしまえば今私達が居る街には"窓"は数えられる程しかない事になってしまうのだろうが。
──そこから見える景色は正に地獄そのものだった。
天高くそびえたつ摩天楼の荘厳さは今や見る影もなく、割れ、ひしゃげたそのカーテンウォールは燃え盛る炎と空に妖しく光る紅い月、そして無数の人間であったものによって紅く染め上げられている。
ほんの数日前までは自動車がひしめき合っていた道路は中型の魔物が我が物顔で跋扈し、人の賑わいに満ちていた繁華街は小型の魔物に食い散らかされ赤黒い肉塊があちらこちらに飛び散っている。
ひしゃげた戦車、食い破られた装甲車、突き刺さる戦闘機、防弾チョッキごと引き裂かれた無数の兵士……人類の健気な抵抗の痕跡は見る者を余計に不安にさせてくる。まあ、この状況で生きている民間人などそれこそ片手で数えられるだけしか居ないのかもしれない。少なくとも私はまだ彼女にしか会っていない。
さて、眼下で魔物がこちらに向かってきているのが見えた。恐らく彼女はこれに焦っていたのだろう。
「嗅ぎつけられた、ですね。場所を移す、ですか」
「そ、そうですね……徒歩で行きますか?」
「それだと……少ししんどそう、です」
私達が居る建物の入り口にはバリケードを作っている。今、そのバリケードを破らんと無数の魔物が蠢いており、またそれ以外にも大型のものがウヨウヨと居りアレを突破するには
などと考えていると一匹の魔物が壁をよじ登ってこちらに向かってきていた。細長く無貌の人間に六本脚を付けた様な異形はカサカサと素早い動きで三階であるここまで登り、窓から室内に飛び込んでくる。
「ひっ!?」
「……"ヴァナヤード"、ですか」
怯える少女を他所に私はその魔物の名を呼ぶ。
それはレインフォートに生息する魔物であり、かつて勇者パーティーに同行していた頃はその素早さにそれなりに苦戦させられたものだ。尤も今では──
「はぁっ!」
右手に握り締めた剣を振るい、飛び掛かってきたヴァナヤードを両断する。
断面から飛び散った緑色の体液が頬に付着する中、動かなくなった二つの肉体が室内に入ってくるのを蹴り飛ばして窓から外へ落とす。上部から落ちて来た死体に魔物が群がっていく。
「ふ、ふぇぇ……」
「こんなもの、ですか。彩芽、大丈夫、です?」
「は、はい……」
頬の血を指で拭い、部屋の隅に立てかけていた箒を持ちつつ腰を抜かした少女──
彼女の手を掴み、ぐい、と立ち上がらせ箒に跨らせる。
「行く、ですよ」
彩芽の手が私の腰に回された事を確認し、私は箒に魔力を通す。ふわり、と重力に逆らって箒が浮かび上がり、次の瞬間には凄まじい加速度で窓から外に飛び出していく。飛び出すと共に上から飛び掛かってきた魔物を剣で斬り裂きつつ更なる上空へと突き進む。
上空から見た街の姿は、やはり何度見ても痛ましい。
傾いた摩天楼、炎上する都市、跋扈する魔物、折れた
──時に西暦2023年、東京。
世界有数の大都市として名を馳せたそこは今、異界からの侵入者によって地獄へと造り替えられていた。
以前投稿した設定画と三章のイメージビジュアル
【挿絵表示】
【挿絵表示】
三章開幕です。ただ以前言った通り時間があんまないので暫く不定期投稿になると思います。
取り敢えずはこのプロローグで想像を膨らませておいてください。
何度でも宣伝
来年の1/19にインテックス大阪で行われる関西コミティア72に出店し、本作の一章部分を再構成して本にしたものを売ります。
現状デザイン無いキャラのデザインもこの本で公開出来ると思います。皆来てね。
本のタイトルどっちがいい?
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