押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
事の始まりは芽有がイギリスへと旅立った数日後。いつもの様に授業を終え寮へ帰ろうとしていた私を呼び止めた声があった。
「朝露咲良、少しいいか」
声の方を見てみると、そこに立っていたのは黒髪の先輩──臨時で生徒会長をやっている菊花伊織。彼女は腕を組みながら、どこか釈然としない様な表情を浮かべていた。
呼び止めておきながらその顔は何だとも思ったが、取り敢えず返事をしておく。
「はい……?」
「急ぎの用なのだ。付いてきてくれ、続きは歩きながら話す」
「はあ……」
何か私しただろうか。心当たりに関してはまあ多いが、しかしそれならそれでこの場で簡潔に言ってくれてもいいと思うのだが。
まあ何かあれば
「原初の十一人、という存在は知っているな?」
「ええ、まあ……日本で最初の魔法師、ですね」
「その通りだ。その子孫が今の十華族と皇族である訳だが、その中の一人、『貴煌の魔女』とも呼ばれた、菊花家初代当主である菊花彩芽……私の高祖母にあたる御方はまだご存命なのだ」
「それがどうかした、です?」
以前授業で習ったそのままの内容を復唱した彼女に私は怪訝な目を送る。
「その彩芽様がお前を呼んでいる。理由は分からんが……兎に角今からお前は私と共に菊花家本家に行ってもらう」
だが次に言われたのは、どういう訳か私が呼ばれている、という内容。
菊花彩芽、その名前を知ったのすらつい最近だというのに一体何故彼女は私を呼んでいるのだろうか。国家の元勲として危険そうな人物と面会しておきたいとか? それなら納得だが。
そうして正門付近に辿り着いた時、守衛の女性が私の方に駆け寄ってくる。
「朝露一回生、丁度いい所に……って、菊花伊織様!? ど、どうされたのですか」
「それはこちらの台詞だ。朝露に何か用か? 余程の物でなければこちらの用を優先させたいのだが」
「そ、そうですか。実は朝露一回生に来客がありまして」
「来客? お前、何か心当たりは?」
「いえ……」
私は外部にあまり知り合いがいない。宅配便とかは寮に届く様になっているし、客が来るとすれば家族くらいか、それでも来る前に手紙の一つでも寄越す筈だ。
「その者の名は? 聞けば何の用か分かるかもしれぬ」
「はい。名前は──」
多分大した事でもないだろう、守衛の話を軽く聞き流そうとした。
「──『鈴木
──だが、次に彼女が発した名前を聞き、私は無視する事が出来なくなってしまった。
「誰だ? 知っているか?」
「ッ……すみません、先にそちらに会ってもいい、です?」
「えっ、し、しかし……」
私のこの反応は想定していなかったのだろう、伊織が苦い顔をする。
だが、もしその名前が本物だったのならば──私は彼に、言わなければならない事が沢山ある。私は伊織の目を見据えて頼み込む。
「お願い、します」
「そ、そうか……十分程度にしてくれ」
「はい。守衛さん、お願いします」
そうして私は『鈴木翔』が待っているらしい場所に向かう。
「おお、随分と大きくなったね」
「──っ……」
果たして、そこに居たのはかつて共に旅をした青年だった。
中肉中背で黒髪黒目、日本であればどこにでもいそうなその姿は"異邦人"の証。彼の顔を見た途端に前世での数々の思い出が蘇ってくる。
そんな彼は優しい笑顔で、しかし軽い雰囲気で話しかけてくる。
「今は何歳なんだい? 生憎僕は十歳の頃のお前しか知らないからね」
「っ……今は、十三歳、です」
「そうか。三年分……そう考えるとあんまり変わってない?」
「よ、余計な一言、ですよ」
ひらひらと手を振って身長の違いを指し示してくる。確かに私は周囲の女性と比べると発育は悪かったがそう易々と女子相手に言う事ではない。
そして、そんな若干ノンデリ気味な所もまた、かつての彼と同じだった。私の目尻に涙が溜まってくる。
「な、なんでこの世界に」
「なんでって……フェニシアと同じさ」
「私、と……!」
私はかつてレインフォートで死に、この世界に生まれ変わった。転生という現象が何故私一人にだけ起こると思っていたのか。そもそも元々の彼だって異世界で死にレインフォートに生まれ落ちたのだ。二度目があってもおかしくはないというのに!
ああ、もうこれは間違いない。彼はレインフォートで私のパーティーリーダーでもあり──同時に私の憧れの存在でもあった"勇者"そのものだ。ポロ、ポロ、と涙が零れて地面に染みを作っていく。
「お前は朝露とどういった関係だ? というかフェニシアとは何だ?」
そこで背後で控えていた伊織が割り込んでくる。
「ああ、私は彼女の所謂兄貴分? 親代わり? そんな感じですよ。フェニシアはニックネームみたいなものです」
「そうか……(朝露もこんな反応するんだな……)」
良い感じの言い訳で伊織は引き下がり、空気を読んで外に出ていく。これでこの部屋には私と彼の二人きりになった。
「私、私……貴方に、謝らなきゃいけない、事が……!」
「大袈裟だなあ、何を謝るっていうんだい? アリシアの事? ヴェリッシュの事? それともグロリアードの事かい?」
彼が言った物は全て私が後悔している事ばかり。単語の一つ一つがグサリ、グサリ、と胸に深く突き刺さる。
「ハハハ、こっちにおいで」
「ぅ……」
私は彼に誘われるがままに近寄る。
そうして彼の手が頭に乗せられ──
「──え」
魔力が熾る。明らかに危険なそれが。手が頭に乗った時点でもまだ対処は出来ただろう。
その魔力はカケルの物でも、組織が使うクトゥルフでもない──しかし、私がよく知っている物であり。
「しまっ──」
「さようなら、朝露咲良」
刹那、私の視界は暗転する。
そして、明るくなったそこは。
「……どこ、ここ……?」
そこは薄暗い路地裏。所々ひび割れた中層の建物に挟まれ、クーラーの室外機やゴミなんかが放置されている細く汚い道。
空は先程までの澄んだ青空ではなく、分厚く赤黒い雲に覆われたどんよりとした不気味な物となっている。一体私はアイツに何をされた? 今がいつか分からない、とにもかくにも確認を──ッ!!??
「ちょっ、な、何で……っ!?」
と、そこで気付く──私が全裸になっている事に。私の顔は瞬時に赤く染まり、慌ててその場にへたり込んで恥部を隠す。
ほんの数秒前まで私が身に着けていた物が全て消えているのだ。制服上下にストッキング、靴に至るまで、全て。それに加えてどういう訳か自分が常時展開させていた各種感知魔法も消えている。そんな余りにも屈辱的な姿にされた訳だが、これで自分が何をされたのか分かった。
「これは……時空間魔法……!?」
対象を遥か過去や未来に飛ばす魔法。神やそれに等しい力を持つ者にしか扱えない超高等魔法である筈のそれを、どういう訳かあのカケル擬きは私に使ってみせたのだ。
否、普通に使われるだけなら、普通に不意打ちをされただけならばまだ対処も出来た。だが、奴が使ったアレは──
「ヴィロリア……っ、もう何が、何だか……」
そう、あの魔力は私の育ての親であり刻の神でもあるヴィロリアの物と酷似していた。その予想外の方向性からの不意打ちに私の反応は酷く遅れ、あの様な無様を晒してしまった訳である。
クソッタレ、私は冷静じゃなかった。死んだ人間が記憶を持ったまま"丸っきり同じ姿"で別の世界に転生するなんて有り得ない事なのだ。
そして何よりも悔しいのは、アレが偽物であった事に気付けなかった事に対してだ。結局の所私は彼に憧れるばかりで何一つ理解出来ていなかったのだ。
兎も角、今すぐにでも元の時間軸に帰りあの
私が自分から時空間魔法を使い時間移動をした場合には問題にならないのだが、他人からそれが無理矢理行われた場合にとある障害が発生する──私の中の"無限"を置き去りにしてしまうのだ。
簡単に言えば、"無限"は
そして、私が常時展開している魔法はその全てが無限に結びついている。無限が無い今、それらは全て解除され──即ち今、私はあらゆる意味で丸裸なのだ。
私には魔力回路がない──つまり、体内で魔力を作り出す事が出来ない。私がこの先無限が到着するまで使える魔力は体内に貯蓄している分だけ。それですら現状の快人にすら遠く及ばない量である。普通は魔力回路に魔力を溜めておけるのだ。それが無い私は、どれだけ頑張ったとしても常人以下しか魔力を使う事が出来ず、それに加えて時間経過で回復もしない。
無限が戻ってくるまでの時間は時間移動した時間量に比例する。今私が確かめるべき事は今がいつであるか、という事。
「と、取り敢えず……」
移動するにしても服は必要だ。私は周囲を警戒しつつ異空間への扉を開く。
私が物を保管するのに使っている異空間。その空間の維持自体には魔力を使わないが、こうして物を取り出す為に扉を開く時に魔力を消費する。普段であれば全く気にする必要のないそれが、今の私にはかなり致命的な量であった。必要な物は今全て取り出しておく必要があるだろう。
まずは服。これに関しては異空間に前世で使っていた物があったのでそれを着る事にする。濃藍のケープに紫色の丈の短めのワンピース、茶色のタイツとロングブーツ。
それらを一通り身に着けるとああ、何だか久しぶりの感覚だ。外でヘソを出していないのが何とも新鮮に感じる。これも全てあんな変態制服が悪いのだ。*1
次に道具。取り敢えず魔法を使う時に使う杖だが、普段使っている大きな物ではなく昔使っていた小さい物を取り出す。普段の物は「魔力消費が増える代わりに威力を増大する」という効果がある。無限があればノーリスクなのだがこと今においては産廃同然だ。
また、何があるか分からないので剣も取り出す。わざとらしい位の装飾が付いた古ぼけた西洋剣。以前も試合で使ったので使い方は思い出している。
あとは空を飛ぶ為の箒。普段は靴の裏に仕込んでいるのだがそれも元の時間に置いてきてしまった。
これは以前雲雀を医務室から連れ出した時に使った物だ。フェリーマクルの木で作られたこれは魔力を通すと収縮する特性がある。私は爪楊枝よりも小さくして耳の中に放り込む。
その他にいくつか使えそうな物を取り出し、扉を閉じる。取り敢えず準備はこれでいいだろう。剣は腰に提げ、杖は袖の中に仕込んでおく。
そうして路地から抜け出したそこに広がっていたのは──
「……何、これ」
──ボロボロの街に魔物が跋扈している、地獄の様な光景だった。
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