押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「──身体を、鍛えろ?」
「ああ、今の君は貧弱過ぎる。もっと鍛えて魔法無しでも戦える様にした方がいい」
ヴィロリアの許から離れ、"帝国"の領土へと向かっていた最中の野営中、スープをチビチビと飲む私を見て彼は言った。
だが、それに私は首を傾げる。だってそうだろう、彼は私を"魔法使い"として仲間に加えた筈だ。
「そういうのは、戦士とかの役目では……?」
「戦士や剣士が身体を鍛えるのは大前提さ。君は魔法使いには肉体は必要ないと思っているのかもしれないけれど、寧ろ魔法使いこそ肉弾戦に強くあるべきだと僕は思ってる。特に君は、他の魔法使いとは違うんだろう?」
「違う?」
「君には魔力回路が無く、魔力の供給源は神様から貰った"無限"のみ。バッテリーが壊れてるパソコンを充電プラグをくっつけて無理矢理動かしてるみたいなものだ。そんなものいつ外れるか分かったもんじゃない」
バッテリーだのパソコンだのという単語の意味は分からなかったが、彼が言いたい事は何となく理解出来た。
「それに、世界ではさっきの君みたいな認識の人が殆ど。"魔法使いなら肉弾戦に弱い筈だ"──そんな相手の意表をつく事だって出来る」
「なるほど……」
「ヴィロリア様に託されたからね。僕は何としても君を生き延びさせなきゃいけない。だから君にはこの"勇者"たる僕の仲間に相応しい魔女になってもらうよ」
「分かった……!」
私はスープを掻き込み、決意を新たに手を握る。それを柔和な笑みで見つめた彼は事無さげに言い放つ。
「じゃあこれから毎日腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、ランニング10キロだね」
「…………へ?」
──────
───
─
炎上し黒煙を噴き出す自動車、崩れ落ちている建物、遠方に見える高層ビル群ですら砕け燃えている。
グチャ、グチャ、と何かを咀嚼する様な音があちらこちらで鳴り響く。見ると魔物が群がっている場所があり、隙間からは痙攣する足が見えていた。恐らく、人間の死体を食べているのだろう。
「……」
おおよそ想像出来る限りの凄惨たる光景である。私が顔を顰めていると不意にこちらに気付いたらしい魔物が飛び掛かってくる。
角が生えた大型の兎、レインフォートでよく見かけるメガアルミラージだ。その脚力たるや凄まじく、飛び掛かってくる最高速度は実に時速300キロメートルを超える。
それを避け、すかさず剣を抜いて両断する。ぐちゃり、と兎の開きが道路に落ち、同時にその音に引かれた魔物が一斉にこちらを向く。
「……チッ」
私は地面を蹴り路地裏に飛び込む。僅かに遅れて無数の魔物が細い道にひしめき合う。
すかさず袖から杖を出し魔物が重なっている所に先端を向ける。
「"パルスフェーザー"」
刹那、深紅の細く短いレーザーが放たれ魔物達を貫く。丁度脳天を狙ったのでこの一発で大部分を処理する事が出来ただろう。
そうして死骸がバリケードとなっている間に路地を走り、ある程度行った所で跳躍し四階上の屋上に上がる。そこで街を見渡してみるが……
「ここって……帝都?」
遠方に見える高層ビル、その更に先に向こう側に折れている純白の電波塔の様な物が見えた。あれは元の時間軸にもあるスカイツリーだろう。となるとここは帝都東京という訳だ。
問題はいつの東京だという事だが……私はあまり歴史の勉強は真面目にやっていなかったので分からない。確か第二次世界大戦?で焼け野原になったとか、いやでもその頃には魔物もスカイツリーもないのか。まあその辺の店で確認する事にしよう。そもそも未来である可能性もあるのだ。
「確認出来そうな店……取り敢えずあそこに入るか」
付近を見回し、本屋があるのに気付く。本屋ならば時間以外の情報も手に入るだろう。
私は屋上から屋上へ飛び移り、本屋のある棟に行くとそこから飛び降り空中を蹴って二階に飛び込む。
中はそこまで荒れていなかった。幾つかの本棚が倒れ、本が少し散乱しているだけで歩く事は全然可能である。
「うっ……」
だが、魔物が来なかった訳ではないらしい。ちらほらと食い散らかされた死体が落ちており噎せ返る様な死臭が満ちている。
日本では確かこういう時手を合わせるのだったか。死体の前で手を合わせ、目を閉じて冥福を祈る。
「……兎に角、情報を集める、です」
そう自分に言い聞かせる。
元の時間軸については自室に私の右腕を置いており、何らかの影響で私が消えた際には自動的に分身が生成される様になっている。直前に感じた程度の力ならば分身体でも充分対処可能だろう。
問題は
「西暦2023年……」
置いてあった雑誌にはそう書いてある。西暦が使われているという事は過去であるのは確定だが、具体的に何年前かは分からない。何しろ私達の時代には皇紀が使われている。元の時間は皇紀2813年である。
困った。もっと魔法以外の事も真面目に勉強しとくんだった……どうしよう……
あっ、そうだ。
「これは……!」
私が向かったのは女児向け雑誌コーナー。そこで表紙を飾っているミラフィアは水色のツインテール──『スーパースカイ!ミラフィア』の主人公、フィアスカイであった。
このミラフィアは20周年記念作品。そして皇紀2813年はミラフィア150周年、つまり今は130年前──即ち、この惨状は。
「『一ヶ月戦争』……!!」
一ヶ月戦争──それは、この地球に魔法が出現した事に端を発する戦争の事である。ただし戦争といっても相手は人だけではなく、寧ろメインは魔物であった。
世界に魔法師が出現した時、同時に世界各地に未知の大穴が出現した。それは後の世で"ダンジョン"と呼ばれる物であり、そこから無限に這い出てくる魔物の対処に各国は苦戦した。何しろダンジョンは政府機能が置かれている様な大都市に数多く出現し、完全に初撃を取られてしまったのだから。
そして魔物には通常兵器は通用し辛い。魔法師が完全に戦力となるまでダンジョンとは正に地獄の釜であったのだ。
東京もその例に漏れず、現在では魔法学園の練習用となってしまっているダンジョンから大量の魔物が現れ大虐殺が行われたのだ。
「130年、となると……一週間」
そして、無限が私に追い付くまで大体一週間程度かかる。つまり私は今身体に溜めている常人以下の魔力で一週間もの間この地獄を生き抜かなければならないのだ。
選択肢としては三つ。
一つはどこかの建物内に立てこもる事。だがこれは魔物の感覚の鋭さから結局定期的に移動せざるを得なくなるだろう。
次に東京脱出。これに関しては先程の案よりも現実的な選択肢だ。地上を移動する事は難しくとも空ならば難易度は下がる……筈だ。断言できないのはここの空棲魔物がどの程度のレベルなのかが分からないからだ。仮にドラゴンなどが居た場合箒で逃げるのは至難の業になる。短時間なら兎も角、長時間となると……地上を移動した方が良い程度には。
最後に東京内を転々としつつ一週間を耐え抜く。もしかすれば東京のどこかに魔物が寄り付きづらい安全地帯や、或いはこの時代の魔法師が頑張っている場所なんかがあるかもしれないのだ。
「──!」
などと、思考に耽っていると、ふと足音が近づいているのに気付く。
耳を澄ます。この建物内、二階につながる階段を上がる人間の物が一つ、それを追っているであろう魔物の物が四つ。
「はあっ、はあっ……えっ!?」
数秒後、階段を上がってきた人間──黒髪で菊の髪飾りを着けた制服姿の少女と目があう。
彼女はこちらを見るやいなや、叫ぶ。
「にっ、逃げてっ!!」
次の瞬間、彼女に四体の魔物が襲い掛かる。
少女がぎゅっと目を瞑るのと同時に私は地面を蹴り飛ばし、魔物に急接近し剣を抜く。その一閃で四体は全て両断され、ぐちゃりと嫌な音を立てて死骸が落ちる。
「……え、は、ええっ!?」
「大丈夫、です?」
死を覚悟していたのだろう、暫く頭を抱えて震えていた少女は、数秒経っても死なない事に疑問を抱き振り向く。
彼女の目に飛び込んだのはあれ程恐ろしかったモンスターが動かぬ肉塊となっている姿と、それをやったのであろう
「え、え、ええ……? あ、ありがとう……?」
私が差し出した手を困惑しつつ握り、立ち上がる少女。
「よく生きてた、ですね」
「それはこっちの台詞ですけど……」
困惑と呆れが混じった様な声を出す彼女の手を介して少し調査をする。常人がこの地獄で生き残れる訳がないのだ。
そしてどうやら、私の勘は的中していた様だ。私は彼女に少し確認する。
「貴女、数日前から……身体が軽くなったりした、です?」
「えっ、何で知ってるんですか?」
「やっぱり……名前を教えて、もらっても?」
「い、いいですけど……」
そうして、彼女は"その名"を呼んだ。
「──菊花彩芽、それが私の名前です」
【定期】
1/19にインテックス大阪にて行われる関西コミティアで本作の一章を再構成した本を出します。
表紙とか挿絵とか描くので来てネ
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本のタイトルどっちがいい?
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