押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
もしかすれば、私は早速歴史を変えてしまったのかもしれない。こんな状況の中たった一人で生き残っている少女がただの人間である筈がないとは思ったが、まさかこんな大物と出会う事になろうとは。
菊花彩芽──"原初の十一人"の内の一人であり菊花家初代当主。
私は困惑する彼女の顔をジロジロと見つめる。タイムスリップする直前まで会っていた伊織と比較する為だ。こうしてみると少し似ている様な……でも覇気が無いなあ。あっちはがっしりとした肉体で武士然とした雰囲気だが、こちらは自信も無さげでおどおどとしている。
「あ、あの……」
「ん、何、です?」
「い、いえ。ずっと私の顔を見てるので……何か付いてるのかな、って」
「ああ……別に何もない、ですよ。私の知人に似てた、ですので」
流石に見つめ過ぎた様だ。彩芽が怪訝な表情を浮かべてくるので軽く釈明する。
「所で、話の続き、ですが」
「あっ、そうでしたね。身体が軽くなった、ってやつ……」
彼女は顔を暗くする。何かあったのだろうか。
「何か、あったですか?」
「う……」
「貴女の悩みも、私なら……解決できるかも、です」
彼女の手を握った時に感知した限り、恐らくまだ彼女は魔法を使えてはいない。悩みというのはそれだろう、そう思っていたのだが。
「じ、実は……」
だが、彼女の口から告げられたのは全く異なる事実であった。
確かに彼女は私の言った通りほんの数日前、突如として身体が軽くなった感覚があったらしい。そして同時に、脳内に謎の声が聞こえてきた、とも。ただしその声は聞き取れない程に朧げですぐに消えてしまったらしいが。
それが起こったのは自身が通っていた中学校の帰り道。友人と町中を歩いていた彼女は突然先述した事が起き、直後に自身が持っていたカバンがフワリと浮かび上がるという何とも非現実的な現象が発生する。
その時にはまだ大して気に留めていなかったのだが、そこからまた暫く歩いていると突然黒服の男達に攫われ、何も分からぬまま飛行機に乗せられた。だがある程度飛んだ所で機体に強い衝撃が加えられ墜落。奇跡的に生存した彼女だったが、墜落した先はこの魔物蔓延る東京であり身一つで何とか生きてきたのだという。
「そんな事が……」
「は、はい……もう何が何だかわからなくて……っ」
これは衝撃的な話だった。
私の知識では「一ヶ月戦争では原初の十一人が活躍した」「菊花彩芽は数々の偉業を成し遂げた偉大な魔法師であった」といった物しか知らなかったのだ。まさかその彩芽が拉致されていたとは。
身体が軽くなったのは魔法体質が発現し、身体に魔力が行き渡り身体能力が向上したから。謎の声は恐らくどういう訳か契約されていた神のもの、カバンが浮かんだのは無意識下での魔法行使だろう。
そして彼女が攫われた理由だが……これは推測の域を出ないが、一部の人間には「魔法が出現する」という事実が予め知らされていたのではないだろうか。だからこそ魔法らしきものを行使した彩芽を発見、確保し研究用に連行していたが、東京上空で魔物に撃墜された……そんな流れであるような気がする。そうでなければ説明が付かない程動きが迅速だ。
「ううっ……エミちゃん、大丈夫かなあ……お母さん、お父さん……」
しくしくと泣いている彼女。まあこんな状況だ、友達や家族の事が心配になるのも分かる。
「彩芽は、どこに住んでいた、です?」
「きょ、京都です……だから東京の事なんて何も分からなくて」
「京都……なら多分、大丈夫、ですよ。この災害が起こってるのは東京、群馬、北海道と熊本、です。京都は、無事……」
「そっ、そうなんですか!? 良かった……何でそんな事知ってるんですか?」
「……物知り、ですから」
しまった。つい未来知識を曝け出してしまった。
ダンジョンの影響で通信も繋がらない中で外部の情報をこれだけ知っているのは明らかにおかしいだろう。
「そう、なんですか。まあ剣とか使ってますしね」
謎の理由で無理矢理納得させたらしい。まあこんな状況だ、少々怪しい点があっても生きる為には目を瞑るか。
「とっ、所でなんであんなに簡単に奴等を倒せたんですか? 途中で自衛隊の人達や警察が戦ってるのを何度か見ましたけど、その銃は殆ど効いてなかったんですが……」
「魔物は……常に魔力を纏っている、ですから、通常の攻撃は効きづらい、です」
「魔物? 魔力?」
「魔物はあのモンスターの総称で、魔力は……未知のエネルギー、とでも思ってください」
魔力を纏わせた物体は通常の物理衝撃に対して著しい耐性を獲得する。サツマイモくらいの大きさの小型魔物であってもこの時代の警察が使っている様なリボルバーではノックバックすら与えられないだろう。それこそ重機関銃でも持ってこなければ傷一つ与えられない。
ではそいつらを倒すにはどうすればいいのか。
「この剣には、魔力が込められている、です」
「へえー、おもちゃみたいな見た目してるけど凄いんですね」
「はい……魔力に魔力を当てて中和する事で、魔力による耐性を消せば……普通の攻撃でも通る、です」
私の持っている剣はカケルがかつて使っていた物だ。彼が数年間使い続けたこれには彼の魔力が染み付いており、私が魔力を通さずとも魔物に対して攻撃が容易に通る様になる。
「貴女も出来る筈、ですよ」
「えっ……」
私が言うと、彼女は一瞬硬直しすぐに慌てて首を横に振る。
「むっ、無理無理! 無理ですよ!」
「貴女の身体が軽くなったのは、貴女の身体に魔力が通ったから、です。つまり貴女はもう、魔法使い……」
「魔法って、そんな漫画みたいな……いやでもこの状況が既にそんな感じか……でっ、でも! 飛行機に乗ってる時とか逃げ回ってる時だって結局手から火が出る事も空を飛ぶ事も出来ませんでしたし」
「それは、貴女の身体に問題がある、から……」
私は彼女に説明する。
先程手を握った際、彼女にとある疾患があるのに気が付いた。
『先天性魔力律動変換不全』──これに罹っていると体内の魔力を魔法へと変換できなくなってしまう。彼女が最初の一度だけしか魔法を発動出来ず、契約神と交信できないのもそのせいだ。契約神との脳内交信も一種の魔法なのである。
これはレインフォートでは割とよく見られる疾患であり、魔力操作を続けていれば自然と治る為にあまり問題にはされない。ただ、それはあくまでも魔力という存在が身近なレインフォートでの話。ここではそもそも魔力という概念すらなかったのだから、それを操作し続けろと言われても不可能だろう。
「体内の魔力、分かる、ですか?」
「魔力……すみません、全然分からないです」
「そうですか……なら、分かりやすく、しましょう」
私は彼女の頭を手繰り寄せ額同士をそっと当てる。
「ええっ!? ちょっ、な、何ですか……」
それに彼女は驚いて顔を赤らめるが、気にせずとある魔法を発動させる。
「"
「わふっ!?」
次の瞬間、金色の淡い光が足元から彩芽を包み込む。それが消えると、彼女の身体から金色の粒子がちらほらと漏れ出していた。
「こ、これは……」
「その粒子が、貴女の魔力、です。目に見えるなら、扱いやすい筈」
これは対象の魔力に色を付けて可視化させる魔法。レインフォートでは魔力の扱いに慣れていない子供などに教え込む際に使われる物である。
貴重な魔力を使ってしまう事になるが……こんな状況だ、一人でも戦力に出来るならば回り回って得だろう。それに彼女は将来的に偉大な魔法師と呼ばれる事になる菊花彩芽なのだから。
……ここまで未来への影響をあまり考えていないが、まあ余程派手な真似でもしない限りは大丈夫だろうと割り切る事にする。影響とか考えだすとそもそもここで彩芽を助けた事自体厳密にはアウトなのだから。
【定期】
1/19にインテックス大阪にて行われる関西コミティアで本作の一章を再構成した本を出します。
表紙とか挿絵とか描くので来てネ
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本のタイトルどっちがいい?
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