押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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実演

「取り敢えず……移動、しましょう」

「えっ、こ、ここじゃ駄目なんですか……?」

 

 私の言葉に彼女は露骨に嫌そうな顔をする。だが、ここで籠城は出来ない。

 

「血の臭いは、魔物を近付けます……一度嗅ぎ付かれた場所は、ずっとはいられない」

 

 魔物の感覚の鋭さを舐めてはいけない。奴等は200メートル先で死んだマイクロアルミラージ(ウサギ)の血の臭いすらも嗅ぎ分けるのだ。

 入口から入ってくる間はまだいいが、痺れを切らして壁を壊してきたら手の付けようがない。そうなって囲まれてから逃げるよりも最初から移動前提で動いている方がやりやすい。

 そしてこう言っている間にも入口から魔物が入ってきた音がした。ここはもう駄目らしい。

 

「わ……分かりました」

「なら、出ましょう。掴まっていて、くださいね」

「え? 階段から出るんじゃアアアアアッ!???」

 

 彼女を抱きかかえ窓から飛び出す。

 悲鳴を上げる彼女を他所に私はブーツの底に仕込んでいる刃を展開、地上に居た魔物の上に降り立って殺し、噴き出した血を囮にその場から走り去る。

 

 

「きゅうー……」

「ここまで来れば、大丈夫でしょう……彩芽さん、起きて下さい」

 

 暫く走り魔物が居ない場所で彼女を下ろす。道中で抱えたまま軽く戦ったのがよくなかったのだろうか、彼女は完全にのびてしまっていた。

 だが、こんな所で気絶させておく訳にはいかない。ここから生きていく為には幾つも覚えておかなければならない事があるのだから。

 

「うう……」

「起きた、ですか」

「は、はいぃ……ひっ!?」

 

 目覚めた彼女は軽く周囲を見渡すと小さく悲鳴を上げて私に抱き着く。彼女のすぐそばに食い荒らされた無数の軍人(自衛官)の死体があったからだ。

 別に私も彼女を虐めたくてこんな場所を選んだのではない。彩芽が怯える中、私はおもむろに死体を触る。

 

「ちょっ、な、何してるんですか!」

「今の貴女には……武器が必要、です」

 

 死体の腰であろう部分にあった拳銃を取り出し、軽く触る。うん、何とか使えそうだ。

 私がその黒光りする鉄の塊を渡し、震える手で彼女は受け取る。

 

「おもっ……」

「銃弾も、持っておいてください。使い方は分かる、です?」

「わっ、分かる訳ないじゃないですか! っていうか何で貴女は分かるんですか?」

「習った、ので……貸してください。教える、です」

 

 彼女から再度銃を受け取り、軽く弄ってみる。この銃は学園の兵器博物館で見た事がある。確かM1911とかそんな名前だった筈、この時代でも相当な骨董品の筈だが何故この兵士は持っていたのだろう……? まあ拳銃としてはそれなりに口径も大きくストッピング・パワーも高いのでまあいいだろう。

 

 因みに後になって分かった事だが、この拳銃は自衛隊の倉庫に眠っていた物が引っ張り出されたらしい。緊急出動するにあたり、相手が通常火器が効き辛いモンスターだと知り独断で現行の9mm拳銃よりも威力の高いM1911を持ち出した自衛官が居たらしいのだ。尤も、魔力が無ければ五十歩百歩なのだが。実際こうして死んでしまっている訳であるし。

 

 さて、そんな拳銃のマガジンを抜き、弾があるのを確認して戻す。安全装置を解除しスライドを引く。ガチャリ、と音がして弾が込められ、これでいつでも発射出来る状態になった訳だ。

 慣れた手つきで銃を触る光景はきっとこの時代の人間には馴染みの薄い物だろう。目をパチクリさせる彼女をおいて私は上空に銃口を向け、引き金に指をかける。

 

「きゃっ!?」

 

 そして発射。

 彩芽がびくりと身体を震わせて悲鳴を上げるのと共に乾いた破裂音が鳴り響き、放たれた銃弾は今まさに私達を襲おうとしていた鳥型の魔物に命中、小さく血を撒き散らせてグシャリと落下する。

 

「ちゃんと使える、ですね」

「う、撃つなら言ってくださいよぉ……」

「これからは、貴女が自分で判断して、撃つ、ですよ……これは貴女の身を守る為の物、ですから」

「うう……わ、分かりました……使えるかなあ……」

 

 安全装置を付け、ぽんと彼女の手に銃を乗せる。その他に兵士が持っていたマガジンを幾つか渡し、それらを彼女はポーチに入れた。ホルスターも欲しかったが噛み千切られてボロボロで使い物にならなかった。ライフルも同じだ。

 それは兎も角、今私がここで魔物を殺してしまったのでワラワラと魔物が集まってきている様だ。

 

「丁度いい、ので、練習する、です」

「れ、練習? それってまさか──」

 

 顔を強張らせた彼女がそう言いかけた瞬間、物陰から無数の魔物が飛び出してくる。

 

「──きゃああああっ!!?」

「ほら、銃を構えて。魔力を通すのを、忘れずに」

「そっ、そんな事言われたって」

「なら、貴女の身体を使ってみせるので、感覚を覚える、です」

 

 流石に実戦はまだ早かったか。彼女は腰が引けて手の震えも止まらない。これでは魔力を込める所かまともに弾を当てる事すら出来ないだろう。

 ならば。私は彼女の背後から彼女の手と共に銃を握り、私の魔力を少しだけ注ぐ。それを彼女の魔力を同期させる事で一時的に魔力操作権を奪い、彼女の魔力を操作して銃弾に注ぎ込む。

 

「わ、わあ……」

 

 彼女の手から溢れた光の粒子(魔力)が銃に纏わりつくのを見て感嘆と困惑の間くらいの声を出す。

 そしてそのまま引き金を引く。バン、と音が鳴り淡く光る銃弾が魔物の額に吸い込まれる様に命中、肉塊へと変える。まずは一匹。

 

「次」

 

 バン、ドカッ、バン、バン、ドカッ、ドカッ、グチャッ、バン。

 近付いてくる魔物を次々と撃ち抜き、偶に急接近してきた奴を蹴り飛ばし、また撃ち抜く。途中力み過ぎて蹴りで頭を吹き飛ばしてしまった時の彩芽の視線はまるで化け物でも見るかの様な物だった。失敬な。

 やがて。

 

 ガチン、ガチン。

 

「たっ、弾が」

 

 マガジンの弾を撃ち尽くし彼女の顔が青く染まる。安心して欲しい、弾には余裕がある……そういう事じゃないって?

 

「潮時、ですね。後は私がやります」

 

 そんな彼女を背後に庇い、私は剣を抜き早速飛び掛かってきた魔物をまず四つに断ち切り、こちらに降ってきた肉塊を剣で打ち返し奥の魔物にぶち当てる。

 それで相手が怯んでいる間に兵士が持っていたライフルのマガジンを拾い上げ、握り潰して銃弾だけを取り出し、軽く放り上げて五本の指先で雷管を刺激、空中で発射し魔物に当てる。緻密な調整のお陰で銃弾はそれぞれ正確に魔物の頭を貫通した。

 

「今のうちに行く、ですよ……何ですか、その目」

 

 それで魔物の壁が出来たので今のうちに離れようと振り向くと、彩芽はジトリとした目を向けていた。

 

「……本当に人間なんですか?」

「失礼な……」

 

 生まれてこの方人間でなかった時間など一秒も無いぞ、私は。少なくとも私はずっと自認人間だ。




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