押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「え、何よこのトレーニングメニュー……」
「何って……フェニシア用の物だけど?」
アリシアが仲間になった翌日、私が行おうとしたトレーニング──腕立て伏せ・上体起こし・スクワット各100回、ランニング10キロ──を見て彼女は絶句する。
そして今にも腕立て伏せをやろうとしていた私を抱きかかえ、血相を変えてカケルを睨みつけて叫ぶ。
「バッッッッカじゃないの!!? こんな小さな子にこんなバカみたいなトレーニングなんてさせるんじゃないわよ!! 常識的に考えて発育に悪影響が出るでしょうが!!」
「でも魔法使いにこそ身体能力が必要なん「そんな来るかも分からない"もしも"に備えてこの子の将来を潰すつもり!? 嫁入り前の娘に何てことさせてるのよ!!」
「それに筋肉の付き方なんて個体差ありまくりなの! この子の身体を見なさいよ、こんなに華奢なんだからそんな過度なトレーニングをした所で成長に悪い影響があるだけで筋肉なんて殆ど付かないわ!」
「そ、そんなのやってみなきゃ分からないだろ!」
「分かるわよ! 僧侶は医者も兼ねてるのよ!?」
ギャアギャアと喧嘩を始める二人、オロオロとするしかない私。
結果として、最終的には「トレーニング内容の緩和」及び「トレーニング後の回復魔法」という条件を課す事で落ち着いたのだった。
これによって私は何とか齢13にして154cmという背丈を獲得した訳である……多少背が低くともその分胸に行ってくれてもよかったのに。
──尤も、後から考えてみれば技術的な面は兎も角、身体的な面ではこの特訓は殆ど意味がなかったのだが。
──────
───
─
「──"テレポート"」
魔女様がそう呟いた瞬間私の視点は暗転、気付けば全く別の場所に立っていた。
あれ程の戦闘があったのにも関わらず私は無傷……だが、魔女様は真逆だ。
「魔女様! 魔女様っ!!」
壁に寄りかかりズルズルと腰を落とした彼女に私は必死に声をかける。
右目、右腕、左足を無くし傷だらけで血塗れの彼女は何も応えない。生きている方がおかしい程の傷だった。
「ど、どうすれば……そうだ、魔力!」
これまで魔法を使ってきた彼女が自らの身体を治癒出来ないなんて事があるだろうか。それをしないのは恐らく魔力が無いからだ。
そして私には魔力がある……らしい。少し意識してみるとキラキラとした粒子が身体から湧き出てくる。これを送る事さえできれば……!
そう考え彼女の手を握り、自身の魔力を相手に流す事をイメージしてみるが、中々どうして上手くいかない。
「う、うう、なんで、なんで!」
武器へ付与する事はあの時の魔女様の簡単な特訓のお陰で自然と出来る様になってきたが、如何せん昨日まで概念すらなかった物を相手に渡すとなると難しい。
私の身体から漏れ出す粒はふよふよと漂うだけで彼女の元には全く行かない。風を送ってみたりもするが、どうも現実の物理法則は適用されない様で全く靡かない。
どうすれば。何か相手に無理矢理摂取させる、飲ませる様な方法でもあれば──そうだ。あるじゃないか。
「んっ」
私のファースト・キスは鉄の味がした。
舌を使って口を開かせ、自身のツバを彼女の口に流し込む。
元々この魔力とやら、自分の身体には意識するまでもなく含まれていたのだ。当然ツバにだって含まれている。
「……ん……」
「お、起きそう、もう少し……!」
レモンだの酢だのを想像してツバを出し、更に流し込む。
そうして唇を重ねる事数分、彼女は目を覚ます。どうやら作戦は成功したらしい。
「……お、おはよう、です」
「ああ、よかった……」
「えっ、えっと、何を……?」
彼女からしてみれば目を覚ましたら何故かキスされているという状況。困惑するのも無理はない。
私が魔力を移す為にやったと説明すると、彼女は手を自らの口にやり、僅かに頬を赤らめて目を逸らしながら小さく言った。
「そ、そうですか。あ、ありがとう、です……すみません、魔力供給のやり方を、教えておくべき、でしたね」
顔を背ける彼女の姿は、ここまで見てきた勇ましい物とは全くの別物で、この人にこんな一面があったんだ、と新鮮な気持ちになる。
と、そこで私は重要な事を思い出す。
「そっ、そうだ! 傷、傷を治さない、と……あれ?」
「傷……安心する、ですよ。魔力さえあれば問題ない、ですから……」
私が彼女の肌に目を向けると、そこら中にあった細かな傷は既に消えていた。
そして閉じられた右目や手足からは何やらシュウシュウと音を立てて白い煙が上がっている。
「出来ればやりたくなかった、ですが……こんな状況なら、仕方が、ない……」
彼女の顔には影が差し、自嘲する様な声で呟く。
シュウシュウという音はジュクジュクといった湿った音に変わり、やがて切り口から新たな手足が生えてくる。だが、それは元あったそれとはかけ離れた物であった。
右手は褐色で指が四本しかなく鋭い爪が生えており、左足は無数の紫色の触手が束になった様な集合体恐怖症には悪夢であろう代物となっている。そして右目は普通の白い眼球だが、緑色と赤色、二つの瞳が斜めに並んでいる──
「ひっ……」
そんな悍ましい姿に私は思わず声を上げてしまう。
彼女は表情を曇らせつつ話し始める。
「私には……身体の才能はなかった、です。そんな私が、強くなる為には……普通じゃない方法しか、無かった」
「普通じゃない、方法……」
「魔物や魔族の一部を、移植する……物理的にではなく、魂を、ですが」
鍛えても限界があった身体を強くする為に魔物や魔族の魂を切り分けて自身の魂と融合させ、それらの特性を取り込む事で無理矢理強くする──それが彼女がとった選択であったらしい。
その恩恵たるや凄まじく、回復魔法であれば莫大な魔力を消費する『欠損の治癒』を僅かな魔力のみで行える程。だがその代償として、生えてくる物は取り込んだ魔物のそれになってしまう……そしてこれを続ければ、いつか人間としての意思は消え、自分は完全に魔の物と化してしまうだろう、彼女はそう言った。
だからこそ使いたくはなかったが、先述した通り欠損を治す為には自身に貯められる全ての魔力を使う程消費してしまうし、かといって欠損したままでは到底この地獄は生き残れない。苦肉の選択であった。
「貴女を放り出したりはしない、ですが……安全な場所を見つけたら、そこで別れましょう……」
「……えっ、え、な、なんで」
「彩芽
「──離れたい、でしょ「ふざけないで下さい!!」
私は彼女の右腕を取り両手で強く握る。
「……ここまで私、色々な事を経験してきました。大勢の人が死んで、そこら中を魔物が跋扈して、空には悍ましい龍が飛んでるんです」
彼女の目を見据える。三つの瞳が困惑した様に揺れ動く。
「そんな中で助けてくれたのが貴女です。貴女のお陰で私はここまで生きてこれて、魔物に対抗できる力まで手に入れました。銃なんて、仮に生き残っていても触ろうと思わなかったでしょうし、魔力の存在なんて知る事もないまま最期には食い散らかされて死んでた筈です」
戻ってきた手の温もりが伝わってくる。
「それなのに、多少姿かたちが変わったくらいで気味悪がって離れる様な人間に見えますか!? 見くびらないで下さいよ……!!」
そう言うと、私は再び彼女の唇に唇を重ねる。
ほんのりと温かな感触、残る僅かな鉄の味。彼女は目を見開き、やがて力を抜いた。
「──ぷはっ……魔物だろうと人間だろうと、魔女様が命の恩人である事に変わりはないんですから」
「……そう、ですか」
彼女は暫く自身の口に手を当てた後、少し微笑む。
「……ありがとう、ございます」
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1/19にてインテックス大阪で行われる関西コミティアにて本作の一章部分を再構成し本にした物を出します。
サークル名は『近畿大学漫画研究会Nuclear!』でスペースはC-36です。
表紙はこれです。よろしくお願いします。
【挿絵表示】
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本のタイトルどっちがいい?
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