押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「……」
「……」
気まずい。
今、私達は魔力供給の練習をしている。
魔力供給には主に二種類の方法が存在する。一つは普段私が使っている『非接触型』で自らの魔力を放出し対象に送り込むのだ。これの習得には高度な技術を要する為、今の彩芽には難しいだろう。
なので練習しているのはもう一つの『接触型』であり、こちらは文字通り身体を触れ合わせる事で魔力を送り込む方法だ。彼女が私に行った口づけなどは技術がまだ確立していなかった魔法黎明期に行われていた方法であり、粘膜接触を介する事でお互いの身体の同化を行い、魔力を送るイメージをしやすくする。
口づけの他には性行為などもあったらしいが……それは置いておこう。
だが、この先魔力供給する度に口づけをしていてはなんかこう色々とマズイので手を握る事で送る方法を教えている。
そんな訳でニギニギと手を握り合っている訳だが、これが何とも気まずいのだ。先程何の理由もなくキスを
彩芽も同じ様で彼女の頬は紅潮し、目は逸らし、触れる手の温度は上昇の一途を辿り、伝わってくる鼓動も速くなっている。ただ──
「う、上手い、ですね」
「そっ、そうですか?」
「は、はい。初めてで……ここまで、上手に送れるのは、中々いません」
こんな状況にあっても、彼女からは細々と魔力が送られてくる。彼女の丹田──魔力回路から生み出された光の粒子が私にふわふわと漂って来て皮膚に吸い込まれていく。
本来であれば単に接触するだけの魔力供給ですら習得には一週間から一ヶ月程かかる。それを魔法すら未だ使えない少女が僅かながらも行っているのだ。『原初の十一人』の名は伊達ではないという事だろう。
何か話していないと落ち着かないのだろう、彩芽が思い出した様に話し出す。
「そっ、そうだ……ここって一体どのあたりなんですか? 吸血鬼は倒せたとはいっても……」
「さっきの地点から、500メートル程度しか離れていない、でしょう。それ以上は魔力が足りない、ですね」
「500メートル……って事は、渋谷の何処かでしょうか」
「あと……真祖ですが、多分死んでない、ですね」
「……えっ、えええっ!? あ、あれだけ滅多切りにして凄そうな魔法まで使ってたのに!?」
私が最後に使った
それでもある程度のダメージは与えられた筈。少なくとも今私達を襲ってくる程の余裕は無い。マーキングもしておいた、今は探知出来ないが無限を取り戻したらいの一番に殺す。
レインフォートにおいて、ショックカノンを使える様になった後私は奴を探したが遂に見つける事は出来なかったのだが……まさか地球に来ていたとは。見つからない訳だ。
さて、そんな事を話している内にある程度魔力が貯まったが、見たところ彩芽の魔力は殆ど減っていない。稀に見る量を誇る芽有よりも多い。磨けば磨くだけ光るタイプだ……その最終形を見る事が出来ないのが心惜しい。
「ここら辺で、終わりましょうか」
「そっ、そうですか……もう少し握っていたかったな」
「……この建物で、寝ましょうか。もう夜でしょう」
今いるのは偶然にもビジネスホテルの廊下だ。私がタイムスリップしてからどの程度の時間が経ったか分からないが、まとまった休息をとるには最適な場所だろう。
ここへはテレポートでやってきた。つまり直接的な痕跡は残しておらず、魔物が襲ってくる可能性は低い。
「寝るって……一緒のベッドで? 私は良いですけど」
「危ないから、片方は起きておく、ですよ」
「そうですか……」
「寝ている間に、魔力供給をお願いする、です。満タンにしておきたい、ですので」
「……! 分かりました!」
何だか少し性格変わっていないか? 最初会った時はこんなのだったっけ?
まあこの状況に慣れてきたという事なのだろうか、或いは恐怖を紛らわせる為か。まあ落ち込んでいるよりはマシか。
「"
「わあーっ、ホテルだあー! フカフカのベッド~♪」
そうして適当に選んだ部屋に入り魔法で灯りを付ける。少し黒っぽいが闇属性魔法であれば魔物にも気付かれ辛い。
魔物には荒らされていない様で普通に綺麗であり、彩芽が嬉しそうにベッドに飛び込んでいく。
彩芽が東京に放り出されてからどんな生活を送ってきたのかは分からないが、この反応を見る限りロクな生活を送れなかったのだろう。ならばちゃんとした寝具で寝る事も必要だ。
そういえば。
「彩芽、一つ言わなければいけない事がある、です」
「何ですか~?」
「これからは、ヘソを出して下さい」
「ヘソ? ……何でですか?」
「魔力を作る為、です」
突然の露出強要に彼女は怪訝な表情をするが、これはとても重要な事だ。
これまでは銃弾に通す程度だったので魔力も殆ど減らなかったが、この先は私に供給したりでどんどん減っていくだろう。ならば魔素を補給しておかなければならない。
人間は肌から空気中の魔素を吸収し、体内の魔力回路で魔力へと変換する。幸いにも彼女の魔素補給効率は高く、現状の消費スピードであればヘソを出すだけで充分だろう。そう説明するが彼女はまだ納得がいかないらしい。
「で、でも魔女様は全然肌出してないじゃないですか」
「私は、魔力回路がない、ですので……肌を出しても、意味がない、です」
魔族の魂を移植して体質を変える事は出来ても、何故かこの点だけは治す事は不可能だった。だからこそ私は常日頃から全身に魔力を貯め、いざという時は身体の一部を魔力に変換する事も考えていたのだ。
そこまで言って、彼女は漸く渋々といった様子でペラリと制服をめくる……泳ぐ視線と紅い頬が相まって何か……駄目だな、これは。
「今はいい、です……明日からで、いい」
「でも今は十二月です、風邪ひいちゃいますよ」
「魔力を纏えば、大丈夫、です。身体が強化される、ですので……明日はその特訓を、しましょう」
「わ、分かりました……」
そうして、私達は漸く腰を据える事が出来たのである。
アメニティで部屋着があったので、逃避行でドロドロになった服を脱ぐ。そこで身体や服が滅茶苦茶臭くなっている事に気付いたのでシャワーを浴びる事になった。
いやこの状況でシャワーなんて出ないだろ、とも思ったのだが蛇口をひねると普通に出てきた。どうやらビルなどでは一度水を屋上の貯水槽に溜めてから重力で各階に給水する方式が採用されている事が多いらしく、動力が無くなっても水が出る事があるらしい。彩芽が得意げに語っていた。
ジャー、とシャワーを二人で浴びる。髪が汚れ過ぎて一度のシャンプーでは中々泡立たない。
そんなこんなで苦戦していると、彼女がジロジロと身体を眺めてくる。
「……何、ですか?」
「え? いやあ、華奢だなあって」
確かに彩芽と比べれば細いだろうけれども。私は彼女の身体に視線を沿わせる。
背丈は私より少し大きい程度だというのに、その身体の凹凸は比べるまでもなく出るべき所が出ている。雲雀もだけれど、この差は一体何だというのだろうか。変な
冷水シャワーではあったがこの状況ではそれなりに気持ちが良かった。
清潔な部屋着を着て、汚れた服を簡単に手洗いし干しておく。ぐう、とお腹が鳴ったので自販機スペースにあったカップ麺の自販機から少しばかり拝借し、魔法で湯を沸かして食べる。
温かい物を食べると心も体も休まる物だ。うつら、うつら、と彩芽が眠そうにしていたのでベッドに運び、布団を被せる。
重い瞼に必死に抗う様にして、彼女が私の顔を見る。
「まじょさま……」
「はい、私はここに居る、ですよ」
その表情はどこか不安そうだ。きっとここまでの恐怖が抜けきらないのだろう。
私は彼女の手にそっと手を添え、穏やかな声で言った。
「おやすみなさい、彩芽」
──────
───
─
パン、パン、パン。そんな破裂音で私は目を覚ます。
慌てて身体を起こした私に魔女様は制服を投げてくる。彼女はとっくの昔に着替え終わり、剣を握っていた。
そこで私はある事に気付き顔を青褪めさせる。この夜、私は一度も目覚める事がなかったのだ。本来であれば交代で眠る筈だったのに。
「あっ、す、すみません!! 私ずっと寝てて」
「それはいい、です。それよりも──」
私が着替える傍ら、彼女は窓の外から下をじっと見つめる。
「──いた。生存者です」
「せっ、生存者!? なっ、なら助けに行かないと!」
「はい。行ってくる、です」
「えっ、ちょっと待っ」
そう言うと彼女は飛び降りていく。
直後に着替え終わるが、既に彼女は地面に降り立っていた。
「……私にも」
彼女は言っていた。魔力を纏えば身体が強化されると。
昨日の魔力供給の感覚を思い出す。要するにあれの応用、寧ろ他人の体に送らなければならないアレよりも自分の体の中だけで動かすこちらの方が遥かに簡単だろう。
魔女様の計らいで一晩ぐっすりと眠る事が出来た。昨日よりも遥かに感覚は冴え渡っている──
「──ええい!!」
ピストルの弾は既に交換されていた。私はそれを構え、ポーチを持って窓から飛び降りる。
丹田の辺りから放出された光の粒子が私の体に纏わりついていく。
刹那、世界が遅くなった。それが魔力による物なのか、はたまた火事場の馬鹿力の類なのかは分からないが、兎に角私は無我夢中で身体を動かす。
直接足から落ちればただでは済まなそうだったので壁面に手をやる。ガリガリと音が立つが不思議と手はそこまで痛くない。やがて地面に近付くと足で壁を蹴り、落下速度を抑えて転がる様に地面に落ちる──直前、華奢な両手が私の胴体を受け止めた。
「イテテ……はっ、生存者は!!」
「あ、彩芽……あんまり、危ない事は……やめて、ください」
「す、すみません……」
目を開けると、顔を蒼白にした魔女様が割と本気で怒っていた。それに素直に謝り、生存者の方を見る。
そこに居たのは顔をぽかんとさせた一人の少女と銃を握った黒服の男性二人。男性は兎も角、少女の方は少しだけ見覚えがあった。周囲には魔物の死体が多数転がっている。
やがて、一足早く我に返った少女が立ち上がる。
次に酷く緊張した様子で、しかし慣れた作法で感謝の言葉を告げる。
「た、助けて頂いた事感謝致します……私は──」
そして彼女は自らの素性を告げた。
「──
大丈夫かなこれ
愛宮(御称号)"春子"内親王なので決して現実におられる殿下ではありません
△本作はフィクションであり現実の人物・団体は一切関係ありません!△
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1/19にてインテックス大阪で行われる関西コミティアにて本作の一章部分を再構成し本にした物を出します。
サークル名は『近畿大学漫画研究会Nuclear!』でスペースはC-36です。
表紙はこれです。よろしくお願いします。
【挿絵表示】
5…10秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。
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