押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
いやほんとごめんなさい。


地獄のオアシス

「はるこ……春子ないしんのう……春子内親王殿下!?」

 

 その名を聞いた彩芽が隣で身体を硬直させる。

 私も驚いた。まさかこんな所で出会うとは。

 

 愛宮春子内親王──原初の十一人の一人であり、天照大御神と契約した魔法師だ。

 この一ヶ月戦争においても様々な逸話が残っており、もし本当であればあと六日生き残るのも容易になる……のだが、目の前の少女からは魔力を感じない。当然であろう、彼女はまだ十三歳の誕生日を迎えていないのだから。

 彼女の誕生日は12月25日、未来では国民の祝日になっている。そして今日は19日だ。

 

 などと考察していると、呆けていた男二人が慌てた様子で私達と彼女の間に立ち塞がる。

 そして恐怖に満ちた顔で銃口を私へと向けた。

 

「う、動くな!! この化け物め!!」

「殿下から離れろ!!」

「ちょっ、何するんですか!?」

 

 突然の凶行。それに怒った彩芽が私の前に立つが、男達は彼女にすら銃口を向ける。

 

「何でこんな事を!!」

「う、うるさい! お前達もあの化け物共と同じなのだろう!!」

「違います!! 大体彼女は貴方達を助けたじゃないですか!!」

「黙れ黙れ!! 第一その手足と目は何だ!? どう見ても化け物のそれであろうがっ!!」

「それは……で、でも彼女は」

「お前達もあの化け物共と同じ様に私達を──」

 

「──落ち着きなさい!!」

 

 そこで春子が一喝する。

 

「まずは銃を下ろし、そしてこのお二人に謝罪するのです」

「し、しかし」

「しかしもヘチマもありません! 彼女らは私達を助けて下さったのですよ。もし殺すつもりならそもそも助ける必要など無いのです。少し落ち着きなさい」

 

 そう窘められ二人は渋々といった様子で銃を下ろす。

 そして彼女は私達の前に立ち、深々と頭を下げた。

 

「申し訳ございません。恩を仇で返す様な真似をしてしまいました。どうかお許しを、この二人も逃亡生活が長く続き気が立っていたのです」

「うぇ!? あ、頭を上げて下さい!!」

 

 皇族に頭を下げさせるという行為の意味が私が住んでいた時代と同じなのかは分からないが、彩芽の焦り様からして相当にマズイ行為である事に間違いはなさそうだ。

 まあ私としてはこの手足を隠さずにいった時点でこうなる事は覚悟していた。寧ろ彼女が極めて冷静である事に驚いた程だ。これも将来の"帝"たる器という事だろうか。

 

「私は構わない、です。仕方ない、でしょう……」

「ま、まあ魔女様がそう言うのなら……」

 

 依然として男性二人に憤慨していた彩芽も渋々と引き下がる。

 それに春子は顔を明るくさせる。

 

「感謝致します! 所で、お二人はこの先何処かへ行くご予定などあるのですか?」

「予定? 特にない、ですが」

 

 しいて言えば生き残る、というのが予定である。

 

「な、ならば私達と共に皇居へ行ってはいただけないでしょうか!!」

 

 彼女は話し始める。

 まず、東京にダンジョンが出現した当時彼女らは皇居の外に居たらしく、出現し魔物が溢れ出してからは身を潜めていたという。因みに男性二人は彼女の護衛として共に外に出ていた皇宮護衛官であり、最初はもっといたらしいが彼女を逃がす為に犠牲になった様だ。彼女は顔を曇らせながら言った。

 そうして身を潜めていた時、無線機に通信が入る。それは、皇居にて無数の民間人や自衛官らが籠城しているという物だった。

 東京から離れるか、皇居に行くか──彼女は後者を選択した。だが、護衛官が持っていた武器も通じない中で移動するのにも限界があり、魔物に捕まりそうになっていた所を私が助けたのだ。

 

「その無線機は、今でも通じる、ですか?」

「残念ながら既に充電が切れてしまいました。ですが通信自体は昨日も繋がっていまして、我々の救援に向かう余裕こそなくとも籠城自体は出来ている様子でした。ですのでそこに行く事さえ出来れば安全だと思ったのです」

「籠城自体は、出来ている……」

「あんな魔物達相手に……魔女様、もしかしてこれって……!!」

 

 どうやら彩芽は気付いた様だ。

 そう、魔物相手には通常兵器は極めて効きにくい。だというのにも関わらず昨日時点でも皇居は籠城を続けられている。立地的な条件もあるとはいえこれは考えられない事だ──そこに居る戦力が自衛隊だけならば。

 

「ええ……皇居には、いるかもしれません……魔法師が」

「ま、魔法師?」

 

 私達の会話についていけていない春子に簡単に魔法について説明する。

 話し終わった時彼女は釈然としない表情をしていた。まあ仕方のない事だ。

 

「魔法に魔力……信じられない事ですが、今は信じる他ないですね……」

「ともすると、先程あの高さから飛び降りてきたのもあのような大剣を振り回していとも容易く化け物共の肉体を切り刻んだのも魔法の力という訳か」

「いえ、それは私の素の力、です」

「何なんだ君は」

 

 兎も角、皇居には確実に魔法師がいる。そうでなければこの量の魔物相手に守り切れる筈がない。

 そしてそれは私達にとっても好都合だ。組織的抵抗が出来ている安全地帯(オアシス)は今の私達にとっては最も必要としていた物なのだから。

 

「所で……貴女方お二人は一体どういった関係なのですか?」

「私、は「私達は!」んーっ!?」

 

 春子の問いに私が答えようとした所で彩芽が割り込み、あっという間に私の口に口を重ねる。

 

「ぷはっ、こういう関係です」

「あっ……そういう関係、なんですか。こ、これは不躾でしたね」

 

 顔を赤くした春子が引き下がる。

 何故かそういう事になってしまった。やっぱり急にグイグイ来すぎじゃないか、彩芽。

 

 

「と、取り敢えず……早速行く、ですか」

 

 それは兎も角、皇居という明確な目的地が出来た今こんな場所でのんびりしておく意味もない。

 

「ここから皇居となると大体四キロくらい……流石に箒はもう乗りたくないですしね……」

 

 彩芽はぶるりと身を震わせる。

 あの時攻撃を受けたのは雲に近寄りすぎたせいなのである程度の低空を飛ぶ程度なら問題はない筈だが、彼女の精神を考えるならばやめておくべきだろう。第一この人数は箒には乗せられない。

 だが、歩いていくというのも論外だ。ならばどうするか。

 

 私達は少し移動し、やがてライオンの頭に山羊の胴体、尻尾が蛇で出来ている大型魔物──キマイラを発見する。他の皆に緊張が走る中、私は魔法を発動させた。

 

「"魂縛の楔(セレスタリア)"」

 

 私が生み出した光の楔はキマイラの首筋に突き刺さりその動きを止める。

 皆が困惑している間に私はキマイラの背に乗り込み、楔を通して魂を掌握、自由自在に操れる様にして皆の元に乗って帰る。

 

「ひぃっ!?」

「ぎゃあああっ!?」

「うっ、う わ あ あ あ あ」

「そ、そんな事出来たんですか……」

 

 キマイラを見た春子以下三人は恐怖で固まり、彩芽は恐怖と感心半分といった所か。だいぶ慣れてきた様で何よりだ。

 

「さあ、乗って下さい……」

「の、乗るのですか!?」

「はい。この人数なら、歩くよりも安全、です」

「それ以前の問題に感じるのですが!?」

 

 確かに魔物に乗るのに抵抗があるのは分かるが、今はそんな事を言っている場合ではないので早くしてほしい。

 ほら、彩芽なんて少し困惑したもののいそいそと乗り込んで私の腰に手を回している。

 

「あ、彩芽さん!?」

「ま、まあ乗り心地は意外と良いですよ」

「そう、ですか……」

 

 彼女のその言葉に春子は少しの間目を泳がせ、やがて意を決して乗り込んだ。

 

「ひっ、ひっ、ひぃっ……」

「で、殿下!!」

「だ、大丈夫なのですか」

「だ、だ、だ、ダダダ大丈夫、で、ですよ。あ、あ、貴方達もの、乗りなさい」

 

 自らの護衛対象がそう言うのだから護衛たる彼らも乗るほかない。恐る恐る乗り込み、尾の蛇に掴まる。

 

「では、行きますよ。よく掴まっていて、くださいね……!」

 

 キマイラを操り街を駆けだす。道中にいた魔物を踏み潰し、斬り飛ばし、ピョンピョンと跳びながら突き進む。

 グシャリ、グシャリ、と嫌な音が鳴り響き、最初は聞こえていた後ろの悲鳴もいつの間にか聞こえなくなっていた。振り向くと掴まったまま三人は気絶しており、自分からガッシリと掴まっていた春子は兎も角、護衛の二人は彩芽が必死に掴んでいる有様である。

 

「えっ、止まった!?」

「キマイラは、ここまでです……あとは走るだけ」

 

 丁度日比谷公園まで来た辺りでキマイラが動きを止める。

 魂縛の楔(セレスタリア)による魔物操作の弱点はこれだ。割と雑に扱ってしまう事になるので魂が壊れてしまうのである。皇居は目と鼻の先、ここからなら走った方が早い。

 私は三人を叩き起こす。ここは見晴らしがいい。という事は魔物からもよく見える。現に周囲には大量の魔物が集まってきていた。

 

「彩芽は先導を、私は殿を務める、です」

「でもそれじゃ」

「いいから早く!!」

「っ……はい!」

 

 彩芽が辛そうな表情をしながら銃を片手に走り出す。それに後ろ髪を引かれる様な顔で付いていく春子達。

 そんな中、私は右手に剣、左手に杖を持ち箒に乗って四人の援護を開始する。

 

「"パルスフェーザー" "十二連装"」

 

 まずはパルスフェーザーで彩芽達の至近距離に居た魔物を排除、私に近付いてきた物達を一閃のもとに斬り伏せ、箒をかっ飛ばして鳥型魔物を賽の目斬りにした後にそれら破片を飛ばして空中に居た魔物を撃ち落とす。彩芽の方も銃を撃って行く先を塞いでいた小型の魔物を倒している。

 そんな事を繰り返しながら四人は何とか外苑の中ほどまで辿り着く。そこまで来たら私も降り立って彼女らと同行する事にし、彩芽がほっとした笑顔を浮かべる。安心するのはまだ早い。後ろには未だ多くの魔物が──

 

 

「──撃てェッ!!」

 

 

 パパパパパン、と乾いた音が皇居から連続で鳴り響く。

 当初それは私達に向けられた物だと錯覚し咄嗟に防御の構えを取った。だが、その音──無数の銃弾が私達を貫く事はなく、それらは私達を追っていた魔物を正確に穿つ(・・)。そう、穿ったのだ。

 

 結果としてその後も銃による皇居からの援護は続き、私達は無事に正門を潜る事が出来たのである。




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1/19にてインテックス大阪で行われる関西コミティアにて本作の一章部分を再構成し本にした物を出します。
サークル名は『近畿大学漫画研究会Nuclear!』でスペースはC-36です。
表紙はこれです。よろしくお願いします。

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5…10秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。

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