押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

93 / 129
関西コミティア72、ありがとうございました!!
自分が思ってたよりも遥かに売れて滅茶苦茶嬉しいです!!


皇居攻防戦

「西方部隊配置完了!」

「南方、北方、共に配置完了!」

「十五(サンチ)臼砲、発射準備完了!」

「二十八(サンチ)榴弾砲、全門発射準備完了!」

「東方、遅れているぞ! 兵、援護急げ! 彼女らを犬死させるな!!」

 

 皇居守備司令部にて慌ただしく動き回る自衛隊員に向かって乃木が指示を飛ばす。

 彼が言っている"彼女ら"というのは咲良と彩芽の事だ。二人は今、民間人の配置が完了するまでの時間稼ぎとして最前線で戦っていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「姫星殿、大丈夫か? あまり無理はするな」

「だ、大丈夫、だし……」

 

 彼の傍らに控える姫星が脂汗を垂らしながら荒い息を吐く。

 自衛隊員や一部の民間人に配った数十丁の機関銃、その他の民間人に配った数千丁のボルトアクションライフル、そして後方支援の大型榴弾砲──自律機能を持たせていないとはいえ、これだけの量を同時に投影させるのは魔法を習得したての彼女にはかなりの負荷がかかっていた。

 時たま乃木の身体にもノイズが入る。彼がこうして指揮を執れているのも姫星自身が未だ健在であるからであり、その彼女の疲労が彼の具現にも影響を及ぼしているのである。

 

「姫星殿、二人の様子は分かるか?」

「う、うん……あやちが南で箒を飛ばして……まじょちが東の広場でなんか凄い動きしてる」

 

 姫星が眉間を押さえてそう言う。

 これは乃木由来の能力の一つであり、ある程度周辺の戦況を知る事が出来るのだ。尤も負荷がかかるのであまり使わないが。

 

「ふっ、流石だな」

 

 彼女からの報告を聞き、彼は哀愁を含めた笑みを浮かべる。

 今、襲い掛かる魔物を押しとどめているのはたった二人の少女なのだ。一騎当千の活躍──遠い昔に失われた魔術的な煌めきが今、真の意味での魔術を伴って復活した。

 同時に思う──もしこの力が120年前に存在していたら。或いはあれ程の犠牲を払わずとも済んだのではないか、とも。今更言っても詮無き事だが……

 

「……二度と、あの様な醜態は晒さん」

 

 軍帽を深く被り直し、彼は呟く。

 旅順要塞を奪った彼の事を国は祭り上げたが、それは遠き地に散った数万の将兵の魂を慰める事にはならない。だからこそ、彼は姫星に感謝している。自刃した己にもう一度、国家の為、陛下の為に戦う機会を与えられたのだ。

 

 なれば、あの時の様な惨劇は繰り返さない。何としてでも最小限の被害で守り抜いてみせる。

 

「東方部隊、配置完了!」

 

「発煙弾を上げろ──攻撃開始ィ!!」

 

 

──────

 

 

 今回の作戦自体は非常に単純だ。単純だからこそ難しい。

 要するに民間人の配置が完了するまでの間私や彩芽、僅かな自衛隊員が迫りくる魔物を足止めするだけだ。

 

「"パルスフェーザー"」

 

 箒で空を飛びながら地上に向けて短レーザーを撃ちまくる。後ろでは彩芽が乃木から受け取った機関銃をこれまた撃ちまくっている。魔物が蠢く地上に無数の土煙が上がり、色とりどりの血を噴き出して倒れていく。

 だが、百体が倒れようともその屍を踏みつけて魔物は一心不乱に皇居へと向かっていく。それに彩芽が顔を顰める。

 

「な、なんであいつら脇目もふらずに皇居を目指してるんでしょう……私達の事、気にも留めてない……」

「魔物は……人間の多く居る方に行く、ですから……ですが、流石に異常、ですね」

 

 如何に知性無き魔物といえどもここまでの執着を見せるのは中々珍しい。それに、自分達に攻撃してきている私達を無視するというのも不自然だ。

 何よりも、まるで示し合わせたかの様に数千もの個体が一斉に向かう──ほぼ確実に何者かの手が加わっている。

 

「真祖のせいかも、しれません……」

「し、真祖って、あの?」

「はい。吸血鬼には、魅了の力がある……それで襲わせて、いるのかも」

「私達が居る事がバレてるんでしょうか」

「多分……」

 

 以前の戦闘で負わせた魂への傷はまだ治癒出来ていない筈だ。ともすればこれは私達を消耗させるための策だろか。

 とはいえ、仮に本人が出てきた場合このままのペースで魔力を使っていてはまずい。ならば。

 

「私は、降ります」

「はい……えっ、ち、地上で戦うんですか!?」

 

 私は地上へと箒を下ろし、背負っていた剣を抜く。

 

「魔力を節約、する為です。彩芽、操縦できる、ですね?」

「む、無理ですy「いえ、出来ます。貴女なら」

 

 彩芽の魔力操作技術の成長は著しい。快人や芽有をも超えるレベルだ。そんな彼女であれば箒を乗りこなすくらい訳はないだろう。

 彼女は泣きそうな顔になりながらも姿勢を変え、恐る恐るといった様子で箒に自らの魔力を伸ばす。光の粒子が箒を包み込み、ふわりと浮かぶ。それを見た私は笑みを浮かべ、踵を返して近付いてきた魔物を斬る。

 

「彩芽は、他の方面の応援に。外苑は、私が引き受ける、です……!!」

「ま、魔女様……分かりました。絶対に生きていて下さいよっ!!」

 

 そう言うと彼女は箒で南へと飛んでいく。初めてとは思えない操りっぷりだ。私の見立ては間違ってはいなかった。

 さて、あちらは良さそうなので私はこちらに集中しよう。早速突進してきた牛型の魔物を数歩ステップを踏んで避け、すれ違いざまに三枚おろしにしてやる。出てきた骨を砕き、剣で弾き飛ばして散弾の様に他の魔物を蜂の巣にする。

 トントンっと地面を数回蹴り高速移動しつつ斬る。直下に気配を感じたので飛び上がり、地面から飛び出してきたサンドワームを降りながら輪切りにする。ヘルハウンドが火を吐いてきたので剣で火ごと斬り飛ばす。マンティコアが飛ばしてきた無数の毒針を弾いて上空の魔物を一掃しつつやはり両断する。

 そんな事を続けていたら皇居本陣から煙弾が上がる。準備が完了したのだろう。彼らの攻撃の邪魔にならない様に地面を蹴り飛ばして堀近くまで一気に引く。すぐ後ろの壁の上で銃を構えていた民間人がこちらを見て目を見開いたまま硬直しているが、攻撃の方に集中して欲しい。

 

 次の瞬間。

 

「攻撃開始ィ!!」

 

 どこからかそんな言葉が聞こえたかと思えば、一斉に銃が放たれる。姫星の魔法で形成された銃弾は魔物の表皮を貫通し血をぶちまけながら斃れていく。

 それだけではない。後方から重低音が鳴ったと思えば空気を切り裂く音が響き、魔物達の群れで幾つもの爆発が起き、無数の肉片と化して飛び散る。

 私は少し首を動かす。ヒィン、と私のすぐ傍を銃弾が通り抜ける。多分誤射だろう、ここに居たら邪魔になるだろうからと思い私は一度中へと跳び戻る。

 

「魔女様! 良かった……」

「彩芽、そっちも無事でよかった、です」

 

 そこに箒を大事そうに抱えた彩芽が駆け寄ってくる。彼女の方は多少服が乱れているものの目立った怪我はなさそうだった。

 また、来たのは彼女だけではない。

 

「二人共、無事で何よりだ。皆を代表して礼を言いたい」

「まじょちにあやち、ありがとう~! しばらく休憩してていいって乃木おじが言ってたよ」

「うむ。防戦も軌道に乗った。あとは魔物共が諦めるのを待つのみだろう」

 

 姫星と乃木が私達に話しかける。

 二人はどうやら最前線を見にきたらしく、少し危ない気もするが乃木の信条らしい。

 如何にこれまで苦しめられてきた魔物といえども、その強さの大半を占めるのは表皮の硬さだ。姫星の魔法によってそれを貫ける様になった今、民間人の寄せ集めとはいえ寄ってくるのを防げない相手ではない。

 

「乃木、さん……一つ、気になる、事が」

「何だ?」

 

 私はここに来る前の事について話し、この魔物達が何者かによって操られている可能性について述べる。

 

「これだけの量を、直接操るのは非現実的……中継地点となる、魔物が居るかもしれない、です」

「ふむ……それが本当だとすれば、その個体を倒せば魔物共は統制を失い散る可能性もあるか」

「はい」

「ともすればそれが何処にいるか、だが……」

「やっぱり一番多い所にいるんじゃない? 広場の方とか」

 

 姫星の言葉に、私は高い場所に上り双眼鏡で軽く見渡してみる。それらしき個体はすぐに見つかった。

 

「いた、です」

「どれだ?」

「東京タワーが見える方向……傾いたビルの上、ダークゴーレム、です」

「東京タワー……よく気付いたな、あのような小さな個体。まあいい。榴弾砲部隊に通達!!」

 

 レインフォートでもあまり見ないレアモンスター、ダークゴーレム。手足が二つと顔が一つ。通常の人間の二倍ほどの背丈に光沢のある漆黒の身体、深紅の目。今見るとSFに出てきそうなロボットにも見えるそれは、魔物達の群れには加わらず戦場を俯瞰している。

 それを倒すべく、乃木が二十八糎榴弾砲部隊へと指示を飛ばす。測距儀で距離を測り、仰角と向きを調整する。そうして発射された砲弾は正確にダークゴーレムの居る場所を破壊した──だが。

 

「……ダメ、ですね」

「何と俊敏で硬き魔物か……」

「ダークゴーレムは……中型魔物でも、随一の硬度がある、です」

 

 レインフォートではアレの表皮を使った武器や防具が高価で取引されている程である。

 ここからパルスフェーザーを撃ってもいいが通用するかは分からない。ならば。

 

「私が倒してくる、です」

「かたじけない」

 

 ショックカノンが使えない今、アレを倒すには直接中心部のコアを破壊するしかない。私が彩芽から箒を受け取ろうとすると彼女は言った。

 

「私も行きます」

「いえ、彩芽は「私も行きます! 一人じゃ危険です!」

 

 彼女は自身のガバメントが動くかを確認し、支給されたホルスターに仕舞う。どうやら止める事は出来なさそうだ。

 

「……分かりました」

 

 そうして箒の後ろに彼女を乗せ、私達は飛ぶ。

 鳥型魔物を倒しつつダークゴーレムが居る場所へと近付くと、相手が両方の掌をこちらに向け、そこにある孔から深紅の光線を放ってくる。

 それを避け、箒から飛び降りて空中を蹴って加速、剣でゴーレムを左右に一刀両断する。バチバチと断面から火花を散らすゴーレム──その手が微かに動き、こちらに向ける。

 

「チッ」

 

 それに反応して今度は手を切ろうとした瞬間、銃声が鳴り響き奴の手の孔に銃弾が撃ち込まれる。

 どうやらやったのは彩芽らしく、依然として箒に乗ったまま拳銃を撃ったらしい彼女自身が命中した事に驚いていた。

 如何に表皮が固くとも弱点はある。掌の孔もその一つであり、光線を撃てなくなったその隙に両腕を斬り飛ばし、断面から覗かせていたコアを砕く。それでゴーレムは動かなくなった。

 

「やった! やりましたね魔女様!」

「ええ……ありがとう、です。彩芽」

「私もまさか当たるとは思いませんでした……ッ!?」

 

 と、地上に降りた彩芽と話していると、突然彼女が顔を強張らせ拳銃をあらぬ方向に向ける。

 

「どうし……なるほど」

 

 私がそちらを向くと、中層ビルの屋上から真祖がこちらを見下ろしていた。

 奴は暫くこちらを睨み付けた後、踵を返し何処かへと消え去ってしまう。

 

「真祖が……やっぱり、アイツが関わってたんですね……」

「そう、ですね……しかしどうやら、今回は諦めたみたい、です」

 

 もし襲うなら私がゴーレムと戦っている間に来ていただろう。それをやらなかったという事はつまりそういう事だ。相手の傷は、未だ癒えていない。

 箒に乗り皇居へと帰る。地上を見ると魔物の動きが目に見えて悪くなっており、一部は逃げ出している物もいた。どうやら、私達はこの戦いを乗り越えられたらしい。

 

 

 第一次皇居攻防戦。

 

 その戦いは後世において、民間人相手に魔法師の有用性を初めて示した戦いと言われており、鈴蘭姫星、ひいては乃木希典神の巧みな戦闘指揮、そして菊花彩芽単独(・・)での敵陣での時間稼ぎ、そしてダークゴーレム討伐が勝因であったと評価されている。




コミティアで出した書籍をboothでも販売開始しました。イベントに来れなかった方はこちらで買ってください。(送料とか手数料とかの関係でイベント価格よりも高くなっています。ご了承ください)
https://asyurycrosford.booth.pm/items/6596070

以下キャラ設定画です
鈴蘭姫星
【挿絵表示】

楓、銀杏、紅葉の睡蓮三人組の魔装
【挿絵表示】

サブカル同好会四人組
【挿絵表示】

櫻島炉欄(一回生ver)
【挿絵表示】

広野心愛
【挿絵表示】

穏矢佳奈
【挿絵表示】

人物紹介も順次更新しているので暇な時にでも覗いてください

本のタイトルどっちがいい?

  • 押して駄目なら吹き飛ばせ
  • 押してダメなら吹き飛ばせ
  • 押して駄目ならぶっ飛ばせ
  • 押してダメならぶっ飛ばせ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。