押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話)   作:デュアン

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戦後のひと時

「この戦いを乗り越えられたのは偏に皆様の奮闘があった故にです。私から感謝を込め、今宵はひと時の安寧を存分に愉しんで頂ければ幸いです……乾杯!」

「「「かんぱーい!!」」」

 

 春子の言葉で集まった皆が杯を呷る。閉鎖空間の治安維持の為にこれまで飲酒は禁止されていたが、今日ばかりはガス抜きも兼ねて許可したのだ。

 酒は日本酒が殆どだ。これは儀式用に保管されていた物を放出したからである。それを口にした時の民衆の喜びようは一つの戦いが終わった事を象徴していた。

 

 音頭を終えジュースを飲んでいた春子の元へ姫星と乃木が近寄る。

 

「はるち~、楽しんでる~?」

「内親王殿下、お見事な音頭でした。これで皆もより一層鼓舞された事でしょう」

「姫星さんに乃木閣下。いえ、所詮私にはこれくらいしか出来ないのですから」

「そんなことないよ! ほら、何だっけ……そうだ、適材適所、っていうじゃん!」

「そうですぞ。これは殿下にしか為せない事なのです。陛下ご夫妻が負傷なされているのですから尚更です」

 

 二人が彼女を鼓舞する。姫星は余りよく分かっていないが、乃木はその心中を察している。

 彼女に圧し掛かった責任は、齢十二の少女が背負うには余りにも重い。現状皇居に動ける皇族が彼女しかおらず、避難民の心の支えとしての"象徴"の役割を果たせるのが彼女しか居ないのだ。

 

「貴女様はいずれ必ずや故睦人様(明治天皇)にも並び立つ為政者になられるでしょうな」

「そ、そんな……言い過ぎですよ」

「そんな事はございません」

 

 彼は姫星や、会場の一角で談笑している咲良と彩芽を見る。

 

「これから時代は変わります」

 

 あの様な少女達が活躍し英雄になる世界になったのだ。彼が生きていた頃には到底考えられない事だった。なれば、目の前の皇女が皇位につく可能性もある。

 神になってからそういった方面の勘が磨かれたのかもしれない……目の前の皇女からは、姫星達と同じ様な雰囲気を彼は感じていた。新時代の祖国を導いていくのは──

 

 

──────

 

 

「ま、魔女様……何歳なんですか?」

「13、です」

「じゃあお酒駄目ですよ!」

「か、数え方を変えれば、29なので……」

「数え年でも流石に二倍は盛れませんよ!? どんな数え方をすればそうなるんですか、水星にでも住んでるんですか!?」

 

 一方その頃、会場の一角では咲良と彩芽が談笑(?)していた。

 ナチュラルに日本酒の入った杯を取ろうとした咲良を彩芽が止める形である。成人年齢は18に引き下げられたがアルコールを飲めるのは20からである。彩芽は慌てて咲良から杯を取り上げ、通りかかった一般通過兵士に押し付ける。

 それを悲しそうに眺める咲良に彩芽は言う。

 

「幾ら魔女様が強いからって見過ごせませんよっ」

「で、でも、少しなら薬と、言う、ですし」

「確かに昔はそう言われてましたけどアレガセですから! 大体それが適用されるとしても中年からですよっ!」

「そんなぁ……久しぶりに、飲めると思った、のに……」

 

 彼女はレインフォート時代を思い出す。

 かつて勇者パーティーの一員として冒険していた頃にドルズにこっそり飲ませてもらったエール。子供の舌にはお世辞にも美味しくはなかったが、それはそれとしてあの噎せ返る様な苦味と仄かな甘みを感じるとあの頃を思い出す様になっていた。

 ドルズの故郷であるティアーラ島では子供でも普通に酒を飲んでいたので私に飲ませたらしいが、後日アリシアに露見した時にはキツイ折檻をされていた。まああの頃の私は正真正銘の8歳だったし残当ではある。

 

 

「あ、あの……」

 

 そんな彼女らに小さく声が掛けられる。

 二人がそちらを向くと、そこには咲良よりも一回り小さな背丈の少女が彼女らを上目遣いで見つめていた。

 

「お、お二人が魔法使いの方、ですよね? あたしずっと見てました、すっごくカッコよかったです!!」

「ええっ、そ、そうですか~? へへ……」

「……」

 

 直球に褒められて照れる彩芽を他所に、咲良は彼女を直視する事が出来なかった。

 その少女の容姿は、深紫色の髪に深紫色のどんよりとした瞳、そして見覚えのある白い花の髪飾り。ボロボロの制服を身に着け、顔や手には無数の絆創膏が貼り付けてある。

 咲良がとある人物の顔を思い出している最中、そんな事は少しも知らない彩芽が名前を訊く。

 

「貴女のお名前は?」

「あたし、柊花音っていいます! えへへっ、魔法使いさんに名前を覚えられるなんて光栄です!」

「……」

 

【挿絵表示】

 

 

 柊花音──その名前を咲良は授業で聞いた事があった。原初の十一人の一人にして、十華族筆頭たる柊家の初代当主だ。

 即ち、咲良は目の前で無邪気に自分達を褒め称える少女の子孫の家を間接的に潰してしまう事になる。後悔はしていないが、いざ本人を前にすると気まずかった。

 

「んんっ、と、所で……その怪我、大丈夫、です?」

 

 未来の事など目の前の少女は知る由もない。違和感を抱かれない様に咲良は無理くり話を作り出す。

 

「これは皇居に逃げてくる時に出来た傷です。絆創膏つけてますけど今は全然痛くないので大丈夫です!」

「そう、ですか」

 

 それで話は終わる。結局咲良は得も言えぬ気まずさから逃れる事は出来なかった。

 

──この時、花音の目を直視できなかった咲良は、傷について問われた時に彼女の顔が一瞬虚無になった事に気付かなかった。

 言葉の語気という表面的な物だけを受け取って、咲良は会話を何とか続ける。

 

「あ、貴女は今何歳、です?」

「12歳です! 23日に13歳になります!」

「そ、そうですか」

「魔女様、突然どうしたんですか?」

 

 彩芽が怪訝な顔をして言う。彼女からしてみれば、咲良は初対面の少女に突然年齢を聞いた不審者になってしまうのだ。

 

「魔法は、13歳になると使える様になる、です」

「えっそうなんですか……え、もしかして花音ちゃんも」

「はい。魔法を使える様になる、ですよ……か、勘、ですが」

「ええっ、あ、あたしも魔法使いになれるんですか?」

 

 咲良の言葉に花音が目を見開く。

 

「魔女様がそう言うのならきっとそうなんでしょうね。どんな魔法使いになるのか楽しみです」

「あ、あたしが魔法を……ふ、ふふふ……」

 

 花音は二人を見つめた後、自身の手を見て口角を上げる。

 その笑みが何を意味しているのか、この時の二人は知る由もなかったのだ。




柊花音ちゃんの全身絵(会長と比較)

【挿絵表示】


「数え方を変えれば29」っていうのは要するに前世の年齢も含めた歳っていう事です。
『フェニシア・フィレモスフィア』は享年16です。
酒を取り上げられてからは紅茶飲んでました。

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5…10秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。

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