押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
「見えた……本当にいる、ですね」
「そうですね。でも一隻だけでよく……」
「つまり、乃木さんの予想通り、という訳、です」
「新しい魔法使いが……!」
皇居攻防戦の二日後、私は彩芽を連れて東京の空を飛んでいた。目指す先は東京湾だ。
事の発端は昨日の夜、皇居にとある通信が入った事である。
その日は大した襲撃が来たわけでもなく、久々にリラックスした一日を過ごしていた。そうして風呂に入る準備をしていた頃に乃木に呼び出されたのである。
「二人ともよく来てくれた。早速だがこれを聞いて欲しい」
彼がそう言うと山南がレコーダーのボタンを押し、録音された音声が流れ出す。
『こ…ら、第……衛隊所属……この通信を聞いて……者は…………東京湾……』
その音は音質が悪く殆ど聞き取れなかったが、どうやら東京湾に何者かが居るらしい。
それに彩芽は何かを思い出した様な顔をし、言う。
「そういえば三日前の夜に遠くで何かが爆発するみたいな音がしてたんです。それで外を見てみたら少しですけど光が見えて……確か東京湾の方でした。その時に近くの自衛官の人に言ったんですけど……」
「そんな報告は受けていないな……この様な非常時に報告を疎かにするとは、規律が緩み過ぎておるな」
乃木や山南は彩芽の言葉を蔑ろにした自衛官に憤慨する。もしこの報告がその時に上げられていればこの通信の主にもっと早く合流出来ていたかもしれないのだ。
「恐らくこの通信をしたのは東京の援護に来た海上自衛隊だろう。しかしここからでは彼らの状態を把握する事は出来ないのだよ」
山南が言う。大体彼らが何を言いたいのかが分かってきた。
「つまり、私達に様子を見てきて欲しい、という事、ですね」
「すまないな。君達にまた負担をかけてしまう事になるが……」
乃木が申し訳なさそうに言う。まあ、この皇居に居る中で東京湾まで辿り着けるのは私達だけだろう。空を飛んでいけばすぐなのだ。
「これは私の予想になるが……彩芽殿の言う事が確かであれば、その艦にもいる可能性が高いだろう」
「そう、ですね……この状況で、三日間生き残っている……」
「うむ。そしてその契約神だが……懐かしい気配を感じるのだ。私と同じ様に、
東京湾にポツンと浮かぶ一隻の灰色の艦。未来における駆逐艦に少し似ているその海の城は、ただ波に揺られるのみで何処へも動こうともしない。
ただ、甲板や艦橋上部にいる兵士達がこちらを指差して慌ただしく動いている。
「あの……何か銃向けられてません?」
「……そう、ですね」
なんだかデジャヴである。まあ突然空から飛んでくるものがあったら魔物だと思うのも仕方ないか。
それはそれとして撃たれてはかなわない。私は大きく手を振り、人間だという事をアピールする。それでも彼らは銃を下ろさない。
「ううむ……」
「あ、そうだ。発光信号とか送りましょうか。昨日暇だったんで乃木さんに教えてもらったんですよ」
「え、いつの間に……まあ、お願いする、です」
「はい! えっと……"ワ" "レ"……」
彩芽がポーチから懐中電灯を取り出してチカチカと点滅させる。昨日ちょっと教えてもらっただけでマスターするとか、物覚えが良すぎやしないだろうか。流石は未来で『元勲を超えた元勲』とか揶揄されるだけはある。
やがてあちらも意図に気付いたのかチカチカと信号を送ってくる。私にはさっぱり分からない。
「えっと、"
「凄い、ですね……」
兎も角、これであちらにも魔法使いがいる事が確定した。彼らは銃を下ろし、私達は誘導に従って甲板に降り立つ。
そこまで来ると流石に物騒な出迎えはなく、代わりに青髪の少女が私達を笑顔で迎える。爽やかイケメンといった顔立ちから繰り出される笑みに彩芽がほんのりと顔を赤らめる。
そして、彼女の顔は私にとってかなり見覚えのある物だった。
「キミ達が空から来てくれたっていう魔法使いちゃんだね? 発光信号を覚えてるなんて博識だね」
「貴女も、です?」
「ああ。自己紹介がまだだったね。ボクの名前は睡蓮真弓、この艦『まや』の魔法使いだよ」
ああ、やっぱりだ。だって身長以外はそっくりだもん。
つまり彼女の5か6代後の子孫が紅葉寮長という事になる。性格まで似てるって遺伝子が強過ぎる気がする。
返答として私達は姫星にした物と同じ──私は記憶喪失、彩芽とは街で会った──自己紹介をする。記憶喪失という点にはかなり怪訝な顔をされたが、皇居で数日間戦っていたという事を言うと納得してくれた。
「そっか、皇居に生き残りが居るんだね」
「はい。昨日に入った、通信で……ここに来た、です」
「良かった、無駄じゃなかったんだ……!」
彼女は言う。
まず、この艦──まや型護衛艦『まや』は民間人を乗せた見学航海中だった。その最中に今回の事件が起こり、にっちもさっちも行かない間に魔物にスクリューと舵を破壊されて動こうにも動けない状況にあったらしい。
なので藁にも縋る思いで通信をし、その一つが皇居に拾われた……という訳だ。
「本当に良かった……横須賀には一切通じないし、このまま戦い続けなきゃいけないと思ってたんだ」
「通信、繋がりづらい、ですからね」
基本的に『龍の篭』内外では通信は繋がらない。中に居る者同士であれば多少繋がるのだが、魔力濃度の差がそのまま緩やかな結界となって電波を妨げてしまうのだ。
「取り敢えず中に入って。会わせたい人……神も居るから」
「お邪魔、します」
「お、お邪魔しまーす……」
彼女に連れられて艦内に足を踏み入れる。
そこまで広くもない廊下を歩いていると、覇気の無い兵士や民間人らしき人々の視線が次々と突き刺さり彩芽が私の腕にしがみつく。
それに気付いた真弓が言う。
「ごめんよ、でも皆疲れてて気が立ってるんだ。もう一週間もこの狭い船の中に押し込められていつ来るかも分からない襲撃に怯えてる。せめて太陽でも出てくれれば話は違ったんだろうけれど、ずっと天気は曇りだろう?」
当たり前は失って初めて気付くって本当だったんだね、と彼女は締める。
皇居にいる民間人や兵士達は割と士気を保っている。太陽もそうだが、やはり広さと地上であるという事は重要なのだろう。皇居は広いし森もあるのだ。
「紹介するよ。こちらがボクが契約してる神様、平八郎さん」
「……帝国海軍元帥、東郷平八郎だ。君達が皇居から来たという魔女だな」
「は、はい……海はこっちなんだ……」
彩芽が呟く。
艦橋に行った私達を出迎えたのは小柄な老人だった。彼は濃い髭をたたえ、古風な軍服の胸元には数多くの勲章が提げられている。
明らかにその場に居る自衛隊員とは空気が違う。皇居に初めて行った時を思い出すその老人は、やはり乃木が言っていた通りの人物だった。彼は私達が出発する直前、艦の魔法師と契約しているのが東郷平八郎である可能性を指摘していたのである。
東郷平八郎──日露戦争にてバルチック艦隊相手に完勝した名将を超えた名将。東郷神社に祀られている事もあり、神になる条件は満たしている。
彼は乃木とは違って寡黙な様で、最初に一瞥した時以外は話そうとしなかった。その代わりに艦長らしき人物が喋る。
「私は『まや』艦長の土方大吾、君達を歓迎しよう。早速だがここからの展望を説明しよう」
彼は言う。
まず、現在の『まや』は魔物によってスクリューと舵を破壊されて一切動けない状態になっている。食料や燃料は真弓の魔法によって何とかなっているが、艦そのものを動かすのは中々に骨が折れるのだという。
動かす事自体は可能、だがその為には魔法のリソースを全てそちらに回さなければならず、もし動かしている最中に魔物の襲撃に遭えば為す術もなくやられてしまうだろう。
「だが君達がいてくれるのなら話は別だ」
「そうだね。ボクが動かしてる間キミ達が守ってくれていれば艦を安全な場所まで動かす事が出来る」
土方と真弓が言うが、残念ながらその期待には応えられそうにない。
「申し訳ない、ですが……私は、皇居に帰らなきゃいけない、です」
「えっ……で、でも皇居には別の魔法使いがいるんだろう?」
「そう、ですが……」
私は先日起きた大規模な襲撃について説明する。アレを姫星だけで耐えるのは難しいだろう。花音が覚醒してくれればいいのだが……あと、別の懸念もある。
姫星は今非常に不安定な精神状態にある。傷付いた彼女の家族は私が延命したが、依然として彼女はまだ家族が「寝ているだけ」だと思い込んでいる。いつその思い込みが解けるか分からず、仮に真実を知ってしまった時、彼女の精神が保つか分からない。というか多分無理だ。
そして、そうなってしまった時私達までいなければ皇居は無防備になってしまう。
「成程……そうだったな。君達はまだ十三歳の少女だったな」
土方が目を伏せて言う。
魔法が発生して間もないこの時代、魔法師は別次元の存在だと錯覚しがちだ。彼とてそうだったのだろう。
だが、実際は違う。結局の所魔法という力を持つだけで彼女らの精神性は何一つ他の人間と変わらないのだから。
「土方さん……でも、どうしよう。キミ達が皇居まで戻れるギリギリの所まで移動するとか」
「魔女様、魔物ってどのくらい分布してるんですか?」
「そう、ですね……魔物は、日本からだけじゃない、です……寧ろ海は、ハワイの方が多い……」
「「ハ、ハワイ!?」」
私の言葉に土方と真弓が驚く。
「ですので、完全に安全となると……名古屋辺りなら大丈夫だと思う、です」
「名古屋、か……何日かかる?」
「そうですね……ボクの出力にもよるけれど、多分数日はかかると思います。最高速でもそんなに出ないので」
真弓の現状の能力ではこのサイズの艦を動かしても時速20キロ程度しか出ない。しかも魔力量の問題もある。
だが、それは彼女が艦を動かす場合だろう。私には私の考えがある。
「真弓、さん。スクリューと舵の換えは、出せる、です?」
「えっ、ど、どうなんだろう……」
「出せる。だがこの状況で換装は出来んぞ」
東郷が言う。出せるのなら大丈夫だ。
「私が交換する、です」
「ええっ!? そ、そんなの無茶だよ!!」
「そうだ! 今は襲っていないだけで海にはまだ魔物がうじゃうじゃといる。水中で襲われでもしたら」
「私は大丈夫、です……彩芽も居る、ですので」
私が彩芽に視線を送ると、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「はい! 魔女様の背中は任せてくださいっ!」
「しかしだな……」
「やらせればいいだろう。この二人が名古屋まで帯同出来ないというのならこれしか方法はあるまい」
東郷がそう言うと土方は何か言いたげな表情をしつつも潜水服と工具を用意する様に指示を出す。
真弓は目を伏せて何も言わない。ここで自分が何か言っても無駄だと理解してしまっているからだろう。結局の所、彼女らが安全圏に脱出する為には私の提案を呑むしかないのだ。
真弓チャン
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5…10秒で終わるので高評価お気に入り登録よろしくお願いします。
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