押してダメならぶっとばせ!(旧題:バッドエンド多めの魔装ハーレム物に最つよ魔女を登場させて力尽くでハッピーエンドにしていく話) 作:デュアン
思ったより長くなっちゃったので分割します
「た、大変です!! 魔物の大群がこちらに向けて進軍中!! 以前の倍の数です!!」
「な、ば、馬鹿な……」
魔女様の姿が消えた直後、顔面を蒼白にした自衛隊員が天幕の中に入ってくる。
その報告に山南と花音の顔が絶望に染まる。だが、これは想定内の出来事だ。何しろ魔女様が言っていたのだから、私はもう覚悟は出来ている。
魔女様に任されたのだ──皇居を守ると。
「山南さん」
「な、何かね……」
私は山南に話しかける。
今、この皇居で一番戦えるのは私なのだ。私が皆を引っ張らなければいけないのだ。
私の中の何かが切れて、痛い程頭が回る。現状の戦力でどうすれば皇居の人間を守り切る事が出来るのか。その作戦を考える。
「今皇居に居る人々を全て東御苑に集めてください。守るべき表面積を減らします」
「な……わ、分かった。すぐに手配しよう」
皇居が堀で囲まれているのは知っての通りだが、実は東御苑単体でも全周を掘で囲まれているのだ。今の戦力で守るには警戒すべき箇所を減らすべきである。
次に私は花音に向く。
「花音ちゃん。何かあるんですよね、あの男と」
「っ……!」
「私、まどろっこしい事は嫌いなんです。何かあるなら今すぐ吐き出して私に力を貸して下さい」
「あ……あ、たしは……」
あの男が彼女の親族でないのは明らかだ。全然似てないし、何より共にいるというのに安心した表情の欠片も無かった。
そして今、彼女は魔法を使う事を暗に拒否している。それが何故なのかを今すぐに解き明かさなければならない。私の作戦には彼女の魔法が必要不可欠なのだ。
彼女は何か言いかけて、しかし止める。埒が明かないので取り敢えず私達も姫星を連れて東御苑に移動する事にした。ここは直に魔物で埋まるのだ。
そうしてずかずかと歩いていると、何やら言い争う声が聞こえる。
「ここを捨てるだと!? 断る!!」
「早く移動して下さい!! さもなくば発砲しますよ!!」
「発砲!! 見て下さい皆さん、これが文民統制から離れた武力の末路であります!!」
見ると、先程演説していた男と山南が対峙している。
大半の住民は自衛隊の指示に大人しく従っているというのに、あの男とその取り巻きだけは思考を停止して頑なに従うのを拒否している。しびれを切らした山南が銃を向けるが、どうせ撃てないと高を括っている男は臆する様子を見せない。そして実際、山南に人間を撃つ勇気は無かった。
男の取り巻きが騒ぎ立てる。それに嫌悪感を示した自衛隊員が一人、また一人と離れていくがそれに対してもやいのやいのと責め立てる。
私は剣を抜いて彼らに近付いた。
「おや、貴女は以前来た英雄殿。剣を抜いて、君も私を脅そうというのかね?」
男はやはり侮った様な目線を送る。それに同調して取り巻きの矛先が私に向く。
「やれるものならやってみるといい! 私は決して武力には屈しな──」
そんな彼が大きく開いた右腕を私は斬り落とした。
「──い?」
一瞬、その場が静寂に支配される。
やがてボトリ、と腕が地面に落ちると同時に男は悲鳴を上げる。
「がっ、あ、ああああああああっ!!!???」
「えっ、きゃ、きゃあああああっ!!?」
「うわあああああっ!?」
まさか本当に斬るとは思っていなかったのだろう。男は情けなく悲鳴を上げてその場に倒れ込み、取り巻き共は口々に悲鳴を叫び逃げ惑う。
私は剣に付いた血を払うと銃を抜き空に向けて放つ。たったそれだけの事で叫んでいた声は止まる。
「死にたいのなら今すぐここで私が首を刎ねてあげます。それが嫌ならさっさと東御苑に行ってください」
私が言うと、顔を蒼白にした取り巻き共は逃げる様に東御苑へと走っていく──男を置いて。
「ま、まてっ!! ぐ……」
取り巻きに放置された男は顔を苦痛に歪ませながら花音へ向き、唾を飛ばしながら言い放つ。
「お前!! 俺を助けろ!! 分かっているんだろう!?」
「う……」
「お前、昨夜魔女になったと言ってたな。なら今すぐにその女を殺せェ!!」
彼が言うと花音の顔が恐怖と絶望に染まる。この様子だと彼女は何かしらの事情から脅されているらしい。
よく見ると昨日の夕食時と比べて彼女の顔に生傷が増えている。おかしい、あれから戦いは無かった筈なのに。それに加えて、男が言った『昨夜』という単語。昨日私達が喋っていた所に男はいなかった。
私は彼に近付きその首に剣を添える。山南は止める素振りも見せなかった。
「何があったのか教えてもらってもいいですか。教えないのなら今すぐに首を刎ねます」
「ひぃっ!? い、イカれてやがる……おい、花音!!」
「う……で、でも……」
「いいのか!? 優しい優しいお友達にバレる事になるんだ、ギャアアアアアッ!!」
男の右耳を斬り落とす。腕と比べれば優しい物だと思うが、それだけで彼は口を開く気になった様だった。
「グ……そ、ソイツはな!!」
「や、やめっ」
花音の顔が更に絶望に染まり手を伸ばす。
だが、男が言う方が早かった。
「ソイツはな、自分の親を殺したんだよ!! 魔物の方に突き出して、転がってきた生首を楽しそうに踏んづけてたんだよ!!」
男は得意げに言うので、私は首を傾げて返す。
「……それだけですか?」
「……は? いやそれだけって、そ、そいつは人殺しだぞ!! 大犯罪者だ!!」
「そうですか。なら貴女が姫星ちゃんを唆して大勢の人々を魔物のエサにしようとしたのは大大大犯罪ですね」
私の言葉に彼は目を見開き、顔を背ける。
「なっ……なんのことだ」
「言い訳しなくてもいいですよ。何の兆候も無かったのに突然発狂した姫星ちゃん、何故か漏れた情報、タイミング良く現れた扇動者、取り巻きはただ流されていただけの案山子。誰が見ても犯人は明らかでしょうに」
「ッ……魔女が」
どうやら図星らしい。
おかしいと思ったのだ。情報が漏洩する所まではまだ分かる。そこから放たれる言論が魔法使い危険論とは一体どういう事なのだろう。この限界状況で政治ごっこなどやっている場合でない事はマトモな人間であれば分かる筈だ。
特に目の前の男は政治家になれる程の見識を持っている。そんな人間が状況判断を誤るとは思えない。下手をしなくとも自分だって死ぬであろう事は分かるだろうに。
「ああ、もしかして自分は花音ちゃんに守ってもらおうとか思ってたんですか? 彼女が魔法使いになったという事を知ってこんな暴挙に出たんですね」
「な、な……」
「このまま魔法使いが活躍して事が収束した時、そこに自分達のポジションは無い。ならば今のうちに蹴落としておこうという魂胆ですか。それとも単純に自分より強い少女を支配下に置いておきたかっただけ? まあ、どちらにせよクズですね」
男が絶句する中、私は花音へと向き直る。
彼女は殺人がバレた事による絶望と、私が「それだけか」と言い放った事への困惑で硬直していた。
「花音ちゃん。東京の人口を知っていますか?」
「え……」
「答えは約1400万人です。そして今、皇居には自衛官192人と民間人2988人がいます。合わせて3180人、ではそれ以外の人々はどうなったのでしょう?」
別に全員が死んだ訳ではないだろう。ただ、私は先日まやから帰る途中に首都高を見たが、そこには果てが見えない程長く車列が続いていた。動く物は魔物のみ。人口の多い都市から逃げるというのは容易な事ではない。
どうやら彼女は私が何を言いたいのか理解した様だった。
でも、それでは納得できない様で彼女は口を開く。
「そ、それでも……あたしは、人を殺した。人の命は、数字じゃない、でしょう……」
「それはそうですね。でも私は貴女が意味も無く人を殺す様な子じゃないって何となく分かります。きっと何か事情があったんでしょう。それについては深くは訊きません」
私の言葉に彼女が震える。
「っ……あ、貴女に、何が分かるんですか。あたしの何が!!」
「分かりませんよ。私は貴女じゃないですから。心の中にでも入っていければ話は変わりますけどね」
まどろっこしいのは嫌いだ。こうしている間にも魔物は近付いてきているのだし。
私は彼女を置いて男に向き直り、剣を仕舞う。それに男は安堵した表情を浮かべ。
「ま、待て彩芽君!!」
山南が制止する声を私は意図的に無視した。
銃口から立ち上る煙、カラン、と落ちる薬莢、倒れる身体。飛び散った血が頬につく。
固まる山南を他所に私は銃を仕舞い、花音に背を向けたまま言う。
「花音ちゃんは霧で富士見櫓前以外を覆ってください。敵の襲撃ラインをそこに限定させます。山南さんは戦力をそこに集めて下さい」
皇居の全面を全て覆ってしまえばかえって敵の襲撃ポイントが読めなくなる。敢えて穴を作る事で、そこに戦力を集中させ防衛しやすくするのだ。戦術の基本である。どこかで読んだ。
「どうして……」
花音が震える声で呟く。
「どうして、そこまで……出来るんですか……?」
彼女の顔は見えないが、どんな表情をしているのかは何となく分かる。
「私にはどうしても守りたいものがあるんです。だから戦います」
それが彼女が訊きたい事に対しての答えになっているかは分からない。でも、私が伝えたい事はこれだけだ。
私は彼女の方を向き、言う。
「戦って下さい花音ちゃん。貴女に戦う意味がないのなら──私の為に戦って下さい」
「っ……!」
ポロポロと涙を流す花音。だが今は泣いている暇はない。
「さっき私が言った作戦、覚えてますね?」
「っ……はい……!」
「なら良いです。姫星ちゃんを連れて東御苑に行ってください」
私が言うと彼女は頷き姫星を抱いて駆けていく。
後に残されたのは私と山南のみ。彼は男の死体を苦虫を嚙み潰したような顔で見つめ、呟く。
「……魔物に、殺された。そういう事にしておこう」
如何なる理由があろうとも殺人は殺人。自衛官たる彼が自身を納得させる為には合理的な理由を見つけないといけないらしい。
でも、それではダメなのだ。
「いいえ。私が殺しました」
「っ、し、しかし」
「私が、姫星を行動不能にし皆を危機に晒した男を処刑した。この手で、射殺した。そうでなければ、意味が、ない……さあ山南さん行ってください。一発では効かない銃弾も複数発当てれば少しは効くでしょう」
「……ああ」
そう言うと、彼も花音の後を追う。
手の震えが止まらない。頬についた血が焼き付く様に熱い。男の最期の顔が、引き金を引いた感触が、額にくっきりと空いた赤黒い孔が、その全てが頭にこびりついて離れない。
私が殺したんだ。人を、殺したんだ。
言い訳なら幾らでも用意出来る。姫星の事もそうだし、花音の男の間にあったであろう
でも、それはダメだ。それは花音の心を再起不能にしてしまうだろうし。
たかが殺人一つ。私は彼女にそう言った。そう、たかが殺人一つだ。
魔女様から受け取った剣の柄を額に当てる。
ごめんなさい魔女様。貴女から受け取った武器、人に使ってしまいました。許して下さい、ちゃんと守りますから。戦いますから。
「……こんな、事で……」
こんな事で挫けてはいられない。
これまでの魔女様の反応を見ていたら分かる。きっと私はこの先の日本を背負っていかなければならないのだ。魔法使いが何人いるのかは知らないがそれ程多くはないのだろう。
立場が高くなればそれだけ後ろめたい事もしなければならない。受け入れていかなければならない。直接殺さずとも私の行動の結果死ぬ人間は数百、数千倍と出てくる筈だ。一人殺したくらいで足を止めてはいられない。
地響きがする。血に飢えた多くの魔物が私達を食わんと向かってきている。
背後を見ると東御苑全体が深い霧で覆われている──ただ一つの通路を除いて。ああ、ちゃんとやってくれたみたいだ。取り敢えず真祖が来る様子もない。
左手に銃を、右手に剣を握る。押し寄せる魔物を睨み付ける。
魔女様は
私はいつか独り立ちしなければならない──
──私が一人でちゃんと出来る所を見せないと、魔女様が安心してもといた
「ブッ殺す」と心の中で思ったのならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!
「殺した」なら使ってもいいよ
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