ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ 作:nightマンサー
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―――夏休み前の最後の休日。
寮のエントランスで、私――佐倉愛里は待ち合わせをしていた。と言っても、相手は優くんではなく―――
「ごめん、遅くなった」
エレベーターから降りて、こちらに駆け寄ってくるのは同じBクラスの伊吹澪ちゃん。澪ちゃんとは優くんが実施した中間テストの勉強会から話すようになって、そこから休日に澪ちゃんの趣味で映画を一緒に観に行ったり、どちらかの部屋で勉強やお喋りをする程仲良くなった。
「ううん。私もさっき来たところだから」
「……ありがと」
澪ちゃんは口数は少ないけれど、私と違って人と話すのが苦手ではなく、寧ろ言いたいことははっきり言うし、いつも堂々としている姿に、私は密かに尊敬している。
「今日の映画、珍しく愛里からの要望だったね」
「う、うん。好きな小説の映画化で、気になってたんだ」
商業施設にある映画館へ向かう途中、今日観る映画について会話に花を咲かせる。その小説はマイナーではあるものの、一部の読書好きから多大な人気を誇る恋愛小説で、私のお気に入り作品の1つ。
「どこにでもいる普通の女の子が、好きな人の特別に成りたくて努力する姿が、とっても素敵なの」
中学生の時、この小説を読んで私もこの主人公みたいに成りたいって思って頑張れたのを思い出す。そんな私の様子を見て、澪ちゃんはやれやれって声が聞こえてきそうな顔をしていた。
「ほんと、愛里は虎城のこと大好きよね」
「み、みみ澪ちゃん!?」
澪ちゃんの言葉に、私は顔が熱くなるのを感じる。
「あんだけイチャイチャしてたんだから、言葉くらい恥ずかしくないでしょ?」
「あ、あれは、優くんが怪我してたからで、その、抑えられなくて……」
澪ちゃんが言っているのは、優くんが怪我をしていた先週までの事を言っているのだろう。あの時の私は、不安感から出来る限り優くんにくっついていた。優くんも私の気持ちを察してくれていたみたいで、何も言わずに傍に居てくれた。
「はいはい、ご馳走様」
「あぅ……」
結局、抵抗虚しく映画館までの道中、澪ちゃんに弄られ続けた私だった。
◆
映画館に着いた私達がチケット売り場の方に向かうと、見知った後ろ姿を発見した。
「……椎名さん?」
私の声に反応して、前にいた人物が振り返る。
綺麗な銀色の長髪に、黒いリボンが特徴的な同じBクラスの女子生徒―――椎名ひよりさんだ。
「佐倉さんに、伊吹さん。こんにちは」
「あ、はい。こんにちは」
「椎名が映画なんて珍しいね」
椎名さんの挨拶に返事をする私の隣で、澪ちゃんが驚いていた。椎名さんはBクラスの中で、1番勉強が出来る人で試験ではクラス内トップ成績の凄い人だ。休み時間は読書をしていて、よく図書室で見かけるので、確かに映画館に居るのは珍しかった。
「確かに私は書籍派なので、映画があまり観ないのですが、昔読んだ小説が映画化されていたようで少々気になって」
「あ、その小説って【貴方の特別に】?」
「はい、そうです。もしかして、お二人はこれを観に?」
椎名さんの言葉に私と澪ちゃんは頷く。
「私は読んだことないんだけど、愛里のお気に入りらしくてね」
「そうでしたか」
「あ、あの。良ければ椎名さんも一緒に観ませんか?」
映画を観るか迷っていたみたいだったので、思いきって誘ってみる。
「……そうですね。ご一緒してよろしいです?」
「私は別に構わないよ」
「あ、ありがとう、椎名さん。澪ちゃんも」
そうして急遽、椎名さんも交えて3人で映画を観ることになった。
◆
「想像以上に面白かったわ。特に告白前の主人公が決意を固めるシーンがぐっときた」
「私もその場面は好きなんだけど、1番は雨に打たれてる主人公に彼が傘をさしてあげる場面かな」
「私は雨に打たれる直前の、主人公の心理描写が1番好きですね」
あれから映画を観終わった私達は、近くの飲食店に入り遅めのお昼を食べながら、映画の感想を話していた。
「そういえば、以前から佐倉さんに聞こうとした事があったのを思い出しました」
「私、に?」
「はい。
佐倉さんは、グラビアアイドルの雫さん、ですよね?」
「っ!?…げほっ、けほっ……」
椎名さんから唐突に発せられた言葉に、私は噎せて咳き込んでしまう。隣の澪ちゃんも驚いたような顔をしている。
「し、椎名さん?あ、あの……」
「私は本を買いに本屋へ頻繁に行くのですが、本屋なので当然、少年誌や写真集も置いてあって表紙を見る機会はかなり多いんです」
そう言う椎名さんは、じっと私の顔―――正確には目を見ている。
「顔つきが似ているのは前から気付いていたのですが、先程その眼鏡が伊達眼鏡だと分かって、ほぼ確信しました」
椎名さんの言葉に、私は辺りを見回して人が聞いていないか確認する。映画を観た後で遅めだった為か、店内は疎らであり、こちらを気にしている人はいない様だった。
「……困らせてしまい、すみません。私はただ、疑問を解消したかっただけで、迷惑を掛けるつもりはなかったのですが……」
「っ!ち、違うの!ちょっと驚いただけで……」
私が何も言わずにいた為か、椎名さんが謝ってきたので大丈夫であると慌てて返す。
「えっと、もし時間があれば、2人共私の部屋に来てもらえないかな?そこで、話をするから」
◆
私の言葉に椎名さんと澪ちゃんが頷いてくれたので、あの後すぐ飲食店を後にし、3人で寮に戻り私の部屋に2人を招いた。
「えっと、澪ちゃん。ずっと隠してて、ごめんなさい」
「別に私も聞かなかったし。そりゃ驚きはしたけど、それで何か変わるわけじゃないでしょ?」
「……ありがとう、澪ちゃん」
それから私は、伊達眼鏡を外して話をした。
グラビアアイドル雫として中学2年生から活動していること。活動から1年経ったある日、ストーカー化したファンに襲われ、優くんが私を庇って刺されたこと。先程の理由から、極力雫であることを隠しておくことに優くんと決めたこと。
「ストーカーって、しかも虎城刺されたの!?」
「……4月に行った水泳の授業。虎城さんの水着はラッシュガードでした。もしかして―――」
「うん。傷痕が酷くて、それを隠すために……」
私の説明を聞いて、2人共黙り込んでしまった。
「えっと、その……」
2人に何か声をかけようとするが、何を言えばいいか分からず口を閉じてしまう。
「なんで、話してくれたの?」
そんな私に、澪ちゃんが少し躊躇いがちに聞いてきた。
「え?」
「いや、そんな理由があるなら隠しとくのも納得だしさ。それなのに、なんで話してくれたの?」
澪ちゃんの言葉に、私は本音を吐露した。
「だって、澪ちゃんも椎名さんも大切な友達だって、私はそう思ってる、から……」
私がそう言うと、澪ちゃんも椎名さんも一瞬きょとんとして―――
「はぁ、全く。やっぱ愛里はほっとけないわ」
「えぇ。その点は、伊吹さんに完全同意です」
「えっ?」
何故か凄く意気投合していた。
「とにかく、愛里が雫なことはこの3人と虎城だけで留める。椎名もそれでいいよね?」
「勿論です。それと、折角ですから、お二人共私のことも名前で呼んでください」
「えっと、私のことも名前で呼んで大丈夫だよ」
「私も平気」
「ありがとうございます。では、これからは愛里さん、澪さんと呼ばせて頂きますね。これからもよろしくお願いします」
「うん。えっと、私の方こそよろしくね、ひよりちゃん」
「こっちもよろしく、ひより」
その後はそのまま私の部屋で3人で楽しくお喋りしたりして、夜は更けていった。
―――同日。
虎城を含む各クラスの有力者達が、偶然にも一同に会していたのだが、それはまた別の話。
次回はいよいよ特別試験に入ります!
※他クラスの様子は冒頭辺りに入れる予定です!
【参考】もし虎城と佐倉の2人が龍園クラス以外だったら――
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葛城・坂柳クラス(初期Aクラス)
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一之瀬クラス(初期Bクラス)
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不良品クラス(Dクラス)
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龍園クラス以外認めない!