ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ 作:nightマンサー
「2グループ終わらせただけで、随分な物言いになったわね」
俺の言葉に先ず噛み付いたのは、予想通り堀北だ。普段なら煩わしい嫌味も、俺からすれば滑稽なピエロに見える有り様である。堀北がこの場に来てくれたことで、想定より多くクラスポイントを増やせることに感謝すら感じる程だ。
「どうやら、堀北は自分のクラスの『優待者』を把握してないみたいだな。まぁ、そう予想したから呼ばなかったんだけど」
「なんですって?」
堀北が疑問の言葉を口にする中、堀北とは対照的に沈黙している一之瀬に視線を向ける。
「今の通知を見て、自分のクラスの『優待者』を当てられたと気付いてないのだから当然だろう。一之瀬もそう思わないか?」
「……どういうことかな?」
自クラスの『優待者』のグループが終了し多少なりとも動揺している筈だ。それを悟られないよう振る舞う一之瀬には悪いが、早々に決めるため言葉を告げる。
「一之瀬や葛城なら、俺と同じく自分のクラスの『優待者』は把握しているだろう?今試験が終了した2つの内、猿グループの『優待者』はCクラスの生徒だ」
「まだ試験が始まって半日なのに、凄い自信だね」
「昨日言った通り、全力で相手をしているだけだよ。因みに、AクラスとDクラスの『優待者』も全て把握してる」
俺の言葉に葛城と平田達が驚愕する。
「あり得ないわ。貴方達Bクラスは、最初から話し合いに参加しないと...っ!?」
そう口にした堀北が何かに気付いたように、はっとして口に手を当て辿り着いた恐ろしい考えを呟く。
「話し合いに参加しないと言ったのは、あの時点で『優待者』を全て把握していたからだとでも言うの……?」
その呟きに、辰グループに属する面々は一様に龍園の言葉を思い出していた。
『今回の特別試験、俺はかなり寛大な処置をしてやってんだぜ?試験終了後には、お前ら全員俺に感謝することになる』
「……龍園が言っていたことは、どうやら紛れもない真実だったようだな」
『優待者』を全て把握していたのなら、1回目のグループディスカッションの前にBクラス以外の『優待者』を指名出来た筈だ。それをされなかったのは間違いなく温情であり、その温情は目の前にいる虎城とそれを許可した龍園のお陰であることは明白である。それを理解したからこそ、重々しく呟いた葛城の言葉を否定出来る者は居なかった。
「ここに坂上先生に作成してもらった契約書がある。葛城、一之瀬、平田の3人には、これにサインをしてもらう」
そうして俺は手元に置いておいたもう1つの契約書を手に取り、葛城達に渡す。
【船上試験ポイント支払い契約証書】
1.本契約締結後、船上試験にて結果ⅢによりBクラスのポイントが増加した場合、下記2の譲渡金額を10万に変更。減少した場合、下記2の譲渡金額を2000万に変更とする。本契約締結前に終了しているグループの結果に関しては、対象外とする。
2.葛城康平は虎城優斗に対し、船上試験終了後1週間以内に1000万プライベートポイントを一括で譲渡する。虎城優斗は受け渡しに関して拒否することは出来ない。
3.葛城康平が上記2を遂行出来なかった場合、Aクラス生徒全員が所持しているプライベートポイントを全て虎城優斗に譲渡し、毎月2万プライベートポイントを虎城優斗に譲渡する。毎月の支払い契約は、本校の卒業まで継続する。
4.下記に署名した者は、本契約内容に同意したものとする。
【船上試験ポイント支払い契約証書】
1.本契約締結後、船上試験にて結果ⅢによりBクラスのポイントが増加した場合、下記2の譲渡金額を10万に変更。減少した場合、下記2の譲渡金額を2000万に変更とする。本契約締結前に終了しているグループの結果に関しては、対象外とする。
2.一之瀬帆波は虎城優斗に対し、船上試験終了後1週間以内に1000万プライベートポイントを一括で譲渡する。虎城優斗は受け渡しに関して拒否することは出来ない。
3.一之瀬帆波が上記2を遂行出来なかった場合、Cクラス生徒全員が所持しているプライベートポイントを全て虎城優斗に譲渡し、毎月2万プライベートポイントを虎城優斗に譲渡する。毎月の支払い契約は、本校の卒業まで継続する。
4.下記に署名した者は、本契約内容に同意したものとする。
【船上試験ポイント支払い契約証書】
1.本契約締結後、船上試験にて結果ⅢによりBクラスのポイントが増加した場合、下記2の譲渡金額を10万に変更。減少した場合、下記2の譲渡金額を2000万に変更とする。本契約締結前に終了しているグループの結果に関しては、対象外とする。
2.平田洋介は虎城優斗に対し、船上試験終了後1週間以内に1000万プライベートポイントを一括で譲渡する。虎城優斗は受け渡しに関して拒否することは出来ない。
3.平田洋介が上記2を遂行出来なかった場合、Dクラス生徒全員は所持しているプライベートポイントを全て虎城優斗に譲渡し、毎月2万プライベートポイントを虎城優斗に譲渡する。毎月の支払い契約は、本校の卒業まで継続する。
4.下記に署名した者は、本契約内容に同意したものとする。
「1000万プライベートポイントの譲渡契約……」
契約内容を確認した3人が難しい顔に変わったのを見て、名前を呼ばれなかった櫛田達も契約書を確認し、驚愕する。1000万プライベートポイントの譲渡など、入学して1学期しか経っていない1年生は勿論、3年生でも出せるような金額ではない。しかし、今の1年生には払うことが出来る可能性が―――1つある。
「2つグループが減ったとはいえ、残りのグループを全て結果Ⅰとすれば、充分払える金額……」
「虎城くんは、最初からこれが狙いだったの?」
神崎と一之瀬の言葉に、俺は否定の言葉を返す。
「最初は勿論、全員結果Ⅰの報酬を貰うことを考えていたよ。それに合わせた契約書も用意していたけど―――
却下されたから、
俺の言葉に、一之瀬達は先程アルベルトが紙を破り捨てたのを思い出す。あの時破り捨てられたのは只の紙ではなく、自分達にとって最後の命綱だったことを一之瀬達は今になり悟るが―――進んだ時間が戻ることはない。
「契約を結ぶかどうか、今この場で決めてくれ。仮に契約前に何処かに連絡を取ろうとしたり部屋から出たのなら、容赦なく『優待者』を指名する」
この契約を受けない場合、自分のクラスの『優待者』が全滅することによりクラスポイントは減少し、虎城のクラスは大量のクラスポイントと数百万のプライベートポイントを得るだろう。
逆に契約を受けた場合、契約内容から全クラスが残りのグループ全てを結果Ⅰに目指す形となるだろう。そうして結果Ⅰで終了した場合、現時点で終了している2グループ分を除きクラスポイントは減ることがなく、結果Ⅰ報酬を満額とはいかなくても、数百万という大量のプライベートポイントを得ることが出来る。
―――答えは、決まっているようなものだった。
◆
―――3人が契約書にサインし、残りのグループの結果Ⅰがほぼ確定した後に部屋を出ようと扉を開けると、龍園が待ち構えていた。
「クク。グループが終了してるってことは、虎城の我儘は通らなかったようだな」
「嬉しそうな顔しながら言うなよ、龍園。望み薄なのは分かってたとはいえ、割と傷付くからな?」
龍園と軽口を言いあった後、龍園は会議室の椅子に座って動かない葛城達に向かって声を掛ける。
「折角虎城が全員得をするよう努力したってのに、それを踏み躙るだなんて、ひでぇことするもんだ」
龍園の煽りに、あの堀北ですら言葉を返さず沈黙していた。自分達にも利益のある話し合いを切り捨てたにも関わらず、被害を少しで済まされた後で得のある契約を切り出されたなら乗る他無い。結果、自分達にこれ以上被害が出ないばかりかプライベートポイントに関して言えばかなり得をしているのだ。だとしても、今回の船上試験は―――完全なBクラスの勝利であることは明白だった。
「言っておくが、俺は『優待者』が分かった段階で全て指名する気でいた。それでも、今回のような大量のプライベートポイント獲得機会はもう無い筈だからって虎城の考えで、この契約案に乗ってやったのさ。その恩恵に少しでも享受出来ることに感謝するんだな?」
そう言い残して、龍園は上機嫌にその場から去っていく。
「……虎城、1ついいか?」
龍園に続く形で俺と愛里、アルベルトもその場から立ち去ろうと動き出した所で、葛城が俺に声を掛けてきた為、立ち止まり振り返る。
「何故、そこまでして大量のプライベートポイントを得ることを選んだ?龍園の言う通り、全ての『優待者』を把握した時点で指名した方がクラスポイントも手に入る上に、結果Ⅰ程ではないにしてもプライベートポイントも手に入る。態々この契約を取り付けるより、その方が安全且つ確実に勝てた筈だ」
葛城の疑問は一之瀬達も思っていた様で、全員が俺に視線を向けてくる。その質問に俺は本音で答える。
「結果Ⅲのプライベートポイントじゃ、
「2000万?」
「そんな大金、一体何に……」
平田と堀北が疑問に思う中、葛城と一之瀬に神崎、更に櫛田が顔色を変える。どうやら4人は、2000万プライベートポイントが何を意味するか知っている様だ。
「2000万は、好きなクラスに移動する金額……だよね」
一之瀬の言葉に、平田と堀北の顔も驚愕に染まる。
「確かに、2000万はその値段でもある。だが、もう1つ……
「とある処置?」
「学校から言い渡される、退学処置だ」
続けた俺の言葉に、今度は全員が驚愕した。どうやら、退学処置の取り消しは、クラス移動より知られていないらしい。
「残りのグループが全て結果Ⅰなら、今回の契約があっても俺達Bクラス以外も頑張れば2000万を貯めることが出来る可能性がある。―――退学者1人を、救うことが出来る」
そこまで言い切ってから葛城達に視線を向けると、全員が俺の事を食い入る様に見てきており、思わずギョッとしてしまう。
「えっと……契約したから大丈夫だとは思うけど、残りのグループは結果Ⅰで終わることを願うよ。『優待者』は、最終日の投票時間になったら教えるつもりだ」
変な空気になってしまった会議室から退散するため、若干早口気味で言葉を紡ぎ、その場を後にした。
「優くんは、やっぱり優しいね」
「……そんなことないよ。だから愛里、それにアルベルトもそんな笑顔で見ないでくれ、流石に恥ずかしい」
◆
「……完敗だな。何もかも」
虎城が去った会議室にて、俺―――葛城康平はそう言葉にせずにはいられなかった。
―――『優待者』を全員把握した上で、各クラスの退学回避のプライベートポイント獲得を、一体何人が考え、実行に移せるだろうか。
虎城は、結果Ⅲでは2000万には届かないと言ったが、その言葉は正確ではない。
―――
仮に『優待者』が各クラス公平に3人ずついるとすると、Bクラスだけならば結果Ⅲで2000万に届く可能性は大いにある。このクラス対抗において、彼は自分のクラスだけでなく、敵である各クラス1人分の退学回避を選んだということだ。
「虎城が入学時Cクラス所属なことが、不思議でならないな」
「葛城くんの言う通り、だね」
「……っ…」
俺の言葉に一之瀬が同意し、堀北と呼ばれたDクラスの生徒が歯噛みしていた。
「この船上試験は、虎城の勝利だ。
―――だが、次の試験まで譲るつもりはない」
人としての器の大きさを見せつけられた。だが、それに追いつき超えたいと思うのもまた、人というものだろう。
「それは私達も同じだよ、葛城くん」
「特別試験は、これがまだ2回目だ。これからの特別試験は、Cクラスも積極的にいく」
一之瀬と神崎の2人も、虎城に触発され一皮剥けたようで、先程までと雰囲気がまるで違っているのを見て、Cクラスも警戒する必要があると改めて認識した。
◆
「……平田くん、櫛田さん。ごめんなさい。私のせいで、クラスポイントを減らしてしまったわ」
会議室から他のクラスの生徒が居なくなったタイミングで、私は平田くんと櫛田さんに
「頭を上げて、堀北さん。堀北さんの意見だって間違ったものじゃない。今回はタイミングが悪かっただけだよ」
「そうだよ、堀北さん。この時点で『優待者』を全部把握してるなんて、誰も予想出来ないよ」
私の謝罪を受けて、平田くんと櫛田さんは励ましの言葉を掛けてくれる。
「とにかく、先ずは他の皆に契約書へサインを貰わないと。クラスポイントについては、僕が皆に説明を―――」
「いえ、私の失態だもの。私が、皆に説明するわ」
DクラスをAクラスへ昇格させる、その為に今まで色々としてきたつもりだったが、それは本当に上辺だけだったことを思い知らされた。他のクラスのリーダーは、自身のクラスの『優待者』を全て把握し勝ちを目指していた。Bクラスの彼は自分の意見を通すためにリーダーである龍園を説得し結果、大きな戦果を上げた。
―――私は、このクラスに対して何も出来ていない。
Aクラスを目指すと言っていた、少し前までの自分はかなり滑稽だったのだと、他のクラスのリーダー格の生徒を見て漸く理解することが出来た。
(先ずは、Dクラスの生徒との繋がりからね)
そうして堀北は、平田と櫛田の3人でクラスメイトの元へ急いだ。
―――
契約に関してはもしかしたらガバあるかもしれませんが、大目に見て貰えると助かります……(豆腐メンタル
【参考】もし虎城と佐倉の2人が龍園クラス以外だったら――
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葛城・坂柳クラス(初期Aクラス)
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一之瀬クラス(初期Bクラス)
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不良品クラス(Dクラス)
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龍園クラス以外認めない!