ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ   作:nightマンサー

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高評価が沢山貰えて嬉しい、嬉しい。
今回は今作品における佐倉愛里の過去になります。
オリジンっていいですよね。


Episode 4 佐倉愛里:オリジン

 

 

 

 

 

 

「……してないよ。あの時、愛里と約束しただろ?」

 

 

 

そう口にした優くんを見て、私―――佐倉愛里は優くんとの約束を、そして優くんとのこれまでを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は小さい頃から臆病で、人と話すのが苦手だった。それに加えて、周りの男子は私を誂うようなことをしてくるため、会話に対してより一層苦手意識が出来てしまっていた。

 

「やめろ、明らかに嫌がってるだろう。相手の気持ちを少しは考えたらどうだ」

 

そうして誂われてた時、いつも助けてくれたのは優斗くんだった。家が近所の幼馴染みであり、気弱な私の側にいつも居てくれた優斗くんは、他の同級生と比べると少し大人びていた。同年代と思えない細やかな気遣いで、先生や親によく褒められているのをよく目にしたし、勉強も高得点が多かった。

そんな凄い幼馴染みの優斗くんのことを、私は尊敬していた。今思い返すと、自覚が無かっただけで、この時にはもう優斗くんのことが好きだったんだと思う。

そんな中で、中学生になり考えるようになった。

 

 

―――優斗くんの隣に、私なんかが居ていいの?

 

 

気弱で引っ込み思案で、ただ守ってもらうだけの私が居ていいのか、と。

運動や勉強に打ち込んでみたが、結果はあまり良いとは言えなかった。優斗くんの側にいたら駄目だと思ってるのに、このまま優斗くんの隣にいたいとも思ってしまっている。

 

 

そんな二律背反な気持ちを抱いていた、中学2年生の夏。

 

 

 

―――転機が訪れた。

 

 

 

 

「スカウトされた?」

 

「う、うん。それで、やってみようかなって」

 

 

 

夏休みに出掛けてた時、女の人に声を掛けられた。

その人は大手アイドル事務所のスカウトマンで、是非私をグラビアアイドルとしてスカウトしたいと言って名刺を渡してきたのだ。

 

「そうか。愛里が決めたなら、俺は応援するよ」

 

「っ!うん。ありがとう、優斗くん」

 

この時の私は、舞い上がってしまっていたのだと思う。グラビアアイドルとして人気になれば、優斗くんの側にいてもいいと思えるんじゃないかって。

 

 

―――私は、(佐倉愛里)のためにグラビアアイドル()になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの事件が起きたのは、グラビアアイドルとして活動を始めて1年が経った中学最後の夏だった。

 

「凄い人気だな、愛里」

 

「そ、そんなことないよ」

 

その日は、久し振りに優斗くんと一緒に買い物に出掛けており、少年誌に載る私を見て優斗くんがそう言ってくれたのを覚えている。

グラビアアイドルとして活動をし始めた半年程はあまり仕事は無かったけれど、今では少年誌に載ったりと仕事も大きくなり、やりがいも感じていた。優斗くんは事情を知ってる人だから、偶に撮影やインターネットへの写真のアップを少しだけ手伝ってもらったりしているけど、基本は自分一人で活動出来ている。

これでようやく、優斗くんの隣にいれる自信が持てた。

 

 

―――それが思い上がりなのだと、気付かされることも知らずに。

 

 

 

買い物を終え家まであと少しという場所で、その人は佇んでいた。背恰好から男であろうその人は、私達の方を見るなり、怒気を含んだ声を上げる。

 

「やっと見つけたぞ、この嘘吐きがっ!!」

 

そう言ってその人はこちらに詰め寄ってくる。その手には夕陽に照らされて光る何かが―――

 

「っ、愛里!!」

 

優斗くんが私の前に身体を割り込ませた、瞬間―――

 

 

 

―――ドスッ

 

 

 

「……ぇ?」

 

何かが刺さったような音が、鼓膜を震わせる。

 

「じゃ、邪魔するなよぉ!どけぇ!!」

 

男は怒鳴り声を上げながら、私に向ってこようとしているが、優斗くんが身体全体を使って必死に食い止めてくれていた。

 

「逃げ、ろ……早くっ!!」

 

優斗くんの言葉を確かに聞いているのに、目の前の現実に、私は腰が抜けて立つことが出来ないでいた。

 

「このブス女ぁ!!よくも騙しやがったなぁ!!」

 

男の罵声も響き、周りにいる人達は何事かと様子を伺っているが、今の私に気にする余裕なんてなかった。

 

「殺してや……ぐぉ!?」

 

更に言葉を繋げる男の人を、優斗くんが押し倒したことで、鈍いうめき声と共に言葉が止んだ。

 

「お、おま……がっ!?」

 

それから優斗くんが男の人に馬乗りになって殴り出してからは、一方的だった。

何度も男の人を殴り、その右手を返り血で濡らしていく優斗くん。男の人が抵抗していたのは最初の方だけで、暫くすると止めてくれと懇願する泣き声に変わっていた。

 

 

 

―――どの位そうしていたのか分からないけれど、周りの人が呼んだらしい警察官が来たことで、事件は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件から1週間が経った。

あの後来た警察に優斗くんと男の人が取り押さえられ、そこで優斗くんが刺されていることに気付き、暫くしてやってきた救急車で優斗くんは運ばれていった。

不幸中の幸いか、ナイフの傷は深くなかったようで傷跡は残ってしまうが、後遺症等は一切ないということだ。

 

「……っ」

 

そんな私は、事情聴取が終わり面会が出来るようになった優斗くんの病室の前で立ち竦んでいた。

事件のあった夜、担当の人から聞かされたことが何度も頭を巡る。

 

 

『彼、最近佐倉ちゃんのサイトの管理を手伝ってくれてたの。コメントにストーカーじみた書き込みをする人がいるから、それを削除するためにって。それと念のため、出掛けるときは基本一緒にいるようにするからとも言ってたわ』

 

 

 

 

―――言葉が出なかった。

 

―――あぁ、結局私は、あの頃から優斗くんに護られたまま

 

 

 

「……愛里?」

 

後ろから今1番聞きたくて、聞きたくない声がする。 

振り返れば、入院着の優斗くんが驚いた表情をしていた。

 

 

止まることのない涙が、私の頬を伝い、足元に何度も落ちる。

 

 

「……ご、ごめ、わ、わた、し……」

 

嗚咽が治まらず、上手く言葉を紡げない。

そんな状態の私に優斗くんはゆっくり近づき、そっと抱き締めた。

 

「……先ずは落ち着こう。大丈夫だ」

 

そんな優しさに満ちた言葉で、涙は更に溢れ出てくるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、担当の人から聞いたのか」

 

あの後、優斗くんの病室に入り10分程経ってようやく喋れるようになって、私が知ったことを話した。

 

「私、全然駄目だね。結局、一人じゃ何も出来なかった……」

 

小さい頃から優斗くんに護られて、グラビアアイドルの雫としてなら、優斗くんの隣に居てもいいと思い始めていたのに。

 

 

―――けれどそれは結局、グラビアアイドル雫という仮面で、本当の弱い私を隠していただけ。

 

 

 

「一人で何でも出来る人間なんていないよ。愛里だけじゃない」

 

「でも、私、ずっと優斗くんに護られてた。昔も、今も……」

 

グラビアアイドルの雫ではない、本当の弱い私は、この先ずっと優斗くんに護られたままだ。

そうして暗い感情に押し潰されそうになった時、優斗くんが口を開いた。

 

「愛里、1つ言いたいことがあるんだが、いいか?」

 

「……うん」

 

優斗くんの言葉に肯定を返し顔を見るが、その表情は険しい。どんな事を言われるか、怖くて仕方ない。でも、これ以上私のせいで優斗くんに迷惑をかけられない。

そして私は―――

 

 

 

 

 

 

「俺は、愛里の事が好きだ」

 

「……ぇ?」

 

 

 

 

―――優斗くんに告白された。

 

「……昔からずっと好きだったんだ。他でもない、愛里を守れて嬉しかった。そもそも、好きな子に頼られて、嬉しくない男はいないよ」

 

顔を赤くしながら話す優斗くんに、嘘は一切感じなかった。

 

「タイミングがずるい事は、悪いと思ってる。それでも、誰でもない愛里の本音で……答えてほしい」

 

真剣な眼差しで、優斗くんは私を―――グラビアアイドルの雫ではない、佐倉愛里を見つめている。

その目は、昔から知っていて今も変わらない、とても優しい目。

 

「ずるいよ、優斗くん」

 

 

―――初めから、優斗くんは(佐倉愛里)を観ていてくれていた。

 

 

「………でも、優斗くんの言葉を嬉しいと思ってる私のほうが、もっとずるい、ね」

 

 

ようやく止んだ涙が、再び溢れてくる。

 

 

「私も、優斗くんの事が、好きです」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

口にした言葉は、酷い涙声ではあったけれど、確かに想い人には伝わって。

 

 

 

 

 

 

―――病室に降り注ぐ夏の日差しに映し出された2人の影が、1つに重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優くんと恋人になってから、関係が特別大きく変わる、ということはあまり無かった。

よく考えてみれば、恋人になる前も2人で出掛けたりしていたし、学校でもほぼ一緒だった。

つまり、既に昔から恋人の距離間であったということに今更ながら気付いて、3日程恥ずかしさに悶えたりした。

あの事件の男の人は、傷害罪で逮捕されあの女が悪いと、反省が見られず罪が重くなりそうなため、もう二度と会うことはないだろう。

納得いかなかったのは、優くんは刺された被害者なのに、過剰に反撃したとのことで厳重注意と1週間の停学処分が言い渡された事だ。

優くんは私とは違い、こういった時はこっちも罰を与えておかないと色々と面倒なんだと納得していたので、私も受け入れることにした。入院で1週間学校に通えないことに、罰が合わせられていたのも大きい。

 

 

「悪いな、愛里。手伝ってもらって」

 

「う、ううん。これくらい手伝わせて?その、か、かの、彼女……だし」

 

そうして今は退院する優くんの荷物の整理を手伝っている。

 

「ねぇ、優くん」

 

恋人になってからは、名前からとったあだ名で優くんと呼んでいる。私だけの呼び方だ。

 

「ん?」

 

「その、私ね。優くんが私を助けてくれたように、私も優くんのこと、助けられるよう頑張る。だから、その……無茶はしないで?」

 

今回優くんが無事だったのは、運が良かっただけかもしれない。次同じことが起こったとして、また無事だなんて保証はない。

 

「……あぁ、約束する。俺だって、愛里の側に居たいからな」

 

そんな私の不安を取り除く様に、優くんは私を抱き締めてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから少しずつではあるけれど、今まで色々と努力してここまでやってきた。優くんからの説明で、この学校はかなり特殊であることには驚いたけれど、今は優くんの力になろうと思っているし、勉強会の手伝いを頼まれた時は、頼られたことが嬉しかった。

 

「………」

 

「……無茶は本当にしてないよ。今後のこととか色々考えてて、少し気が重くなってるだけ。龍園は癖強いし、他のクラスの動向も確認しないといけないからね」

 

じっと見続ける私に降参と言わんばかりに、優くんは両手を上げて白状した。

 

「べ、勉強会以外でも、何か手伝えることがあったら、言ってね?」

 

「あぁ。心配してくれてありがとな、愛里」

 

そうして話を終え、部屋で一緒に夕飯を食べた後、部屋に戻る私を優くんは送ってくれた。

 

「それじゃ愛里、また明日」

 

「う、うん。優くん、また明日」

 

そうして自分の部屋に戻ってきた私は、寝間着に着替え、机に向かい教科書を広げる。

 

「優くん。私、頑張るよ」

 

 





愛というのは、
どんどん自分を磨いていくことなんだよ。

尾崎豊



【OAA】

名前:佐倉愛里(さくら あいり)

学力:C+

身体能力:D-

機転思考力:D

社会貢献性:B+

総合:C

●コメント
学力は平均より高いが、身体能力が著しく低いことが懸念される。グラビアアイドル雫として活動しており、その人気は高い。面接時の受け答えにやや難があるようにみえたが、自分を高めることに努力する姿勢が見えるため、Cクラスへの配属とする。




人物設定
楠田 ゆきつ 
今回逮捕されたストーカー。原作で佐倉をストーカーしていたのと同一人物。
原作と同じで佐倉に異様に執着し、鳥肌のたつコメントを大量に送ったりしていた。運良く実物の佐倉を見つけるが、男(オリ主)と一緒に居たところを目撃したため、凶行に及んだ。
今作品で出てくることはもうない。

【参考】もし虎城と佐倉の2人が龍園クラス以外だったら――

  • 葛城・坂柳クラス(初期Aクラス)
  • 一之瀬クラス(初期Bクラス)
  • 不良品クラス(Dクラス)
  • 龍園クラス以外認めない!
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