ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ   作:nightマンサー

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お待たせしました!
モチベだったり忙しかったりして遅くなりました(汗)
そして彼について書くのに丸々1話使うことになるとは(苦笑)

いつも感想・評価、誤字報告ありがとうございます!
それでは、どうぞ!


Episode 54 憧れに追い付くために

 

 

 

 

 

 

 

僕───平田洋介が虎城くんを知ったのは、入学直後に軽井沢さんからの頼みで偽りの恋人関係を築いてすぐだった。

 

『入学してまだ1週間なのにもう付き合いだしたんだ!』

 

『軽井沢さんいいなぁ』

 

『そういえば、Cクラスにもカップルいたよね?』

 

『そうそう、幼稚園からの幼馴染みって話。名前は確か……虎城くんと佐倉さんだったかな?』

 

僕と軽井沢さんが付き合った話の流れからクラスの女子生徒達の話に少し出た程度であり、その時の僕は殆ど気に留めなかったし話をしていたクラスメイトが別の話題へと移ったのでそれ以上深掘りすることもなかった。

 

 

 

───明確に彼を認識したのは、5月1日。

茶柱先生からこの学校の全貌が説明された後、他のクラス───特にBクラスへと昇格を果たした元Cクラスについて情報収集をした時だった。

 

『Cクラス……あ、今はBクラスだね。Bクラスを纏めてるのは龍園くんと虎城くんって男子生徒だよ』

 

他クラスの生徒とも交流していた櫛田さんから昇格したBクラスのリーダー格として名前が上がったため、純粋に凄い人物なのだと感心した。

 

 

 

───彼の優しさを知ったのは、船上試験。

『優待者』を当てるためのグループでの話し合いをする前から『優待者』全員を把握していたにも関わらず、虎城くんは龍園くんを説得してまで各クラス1人分の退学者救済のプライベートポイントを目指した。

 

『残りのグループが全て結果Ⅰなら、今回の契約があっても俺達Bクラス以外も頑張れば2000万を貯めることが出来る可能性がある。

 

───退学者1人を、救うことが出来る』

 

あの言葉を口にし、実行に移せる実力と優しさを僕は心から尊敬した。だからこそ、その優しさを裏切るような『優待者』当てを山内くんがした時は止められなかった事への不甲斐ない気持ちで一杯だった。

 

その後の体育祭とペーパーシャッフルでもBクラスの快進撃は続いて僕達DクラスとBクラスの差は大きくなるばかりで、その差を自覚する度に虎城くんを遠くの存在のように感じていた。

 

 

───それが間違いだと知ったのは、混合合宿6日目の夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───混合合宿6日目の夜。

 

なかなか寝付けないでいた僕は、気晴らしに部屋から出てすぐ傍にある石造りの階段に腰を下ろした。各クラスの男子生徒の主要人物ほぼ全員が集まったこの小グループの実力は、他のグループと比べて頭1つ以上飛び抜けている。ただ、それだけ実力者が集まれば厄介事も多くなるのは当然でありそれを纏めるとなれば疲労が溜まるのも無理はないと言えた。

 

「平田、寝れないのか?」

 

しばらく1人で涼んでいると不意に後ろから声を掛けられたので振り返ると、そこには欠伸をして少し眠そうな虎城くんが立っていた。

 

「なかなか寝付けなくてね。ごめん、起こしちゃったかな?」

 

「いや、トイレに起きただけだから気にしないでくれ。隣、いいか?」

 

「勿論、どうぞ」

 

僕の了承にお礼を言いつつ、虎城くんは隣に腰掛けた。

 

「責任者大変じゃないか?龍園とか言うことほぼ聞かないし」

 

「……そうだね。でも、総合テストで1位になるために課題はしてくれてるから大丈夫だよ。それに、虎城くんも手伝ってくれたからね」

 

「龍園の相手はいつもやってることだから、大したことじゃないよ」

 

「そんなことないと僕は思うけど……」

 

あの龍園くんの相手は誰でも出来るような事じゃないと思い、苦笑いしながらやんわりと否定する。

 

「龍園くんの相手をしたり、退学者救済を考えたり出来る虎城くんは凄いよ。……僕にはどっちも出来なかったから」

 

入学当初から最良の結果を出し続ける虎城くんとの差を考え、不意に思ったことが口から溢れてしまった。

 

 

 

 

 

「平田。───俺は、愛里が好きだ」

 

「……え?」

 

虎城くんの唐突な彼女である佐倉さんへの愛の宣言に驚いて何も言えない僕に最後まで聞いてくれと告げた後、虎城くんは話を続ける。

 

「愛里のためなら俺は何だってする。龍園やクラスメイトは勿論、友達の神崎や綾小路も大切だけど、俺の優先順位の1位は愛里で絶対に変わらない。ここまではいいか?」

 

確認を取ってくる虎城くんに頷きを返す。

 

高度育成高等学校(この学校)はかなり特殊だ。そんな学校で愛里と高校生活を送る上で、心配性の俺は色々考えたんだ。

 

───愛里が傷つかない為にはどうすればいいか。

 

───愛里を退学から守るためにはどうすればいいか。

 

俺は退学者を全員救うみたいな、現実的に不可能に近いことをしようとしている訳じゃないよ。愛里を幸せにする───そんな自分勝手なたった1つの理由と目的最優先で、俺は動いてるんだ。手放しで褒められることじゃないだろ?」

 

自嘲気味であるものの、虎城くんの言葉にはこれ以上ない力強さがあった。

 

「凄いって褒めてくれるのは嬉しいけど、俺なんて好きな人の幸福を願う何処にでもいる普通の男だ。なら、平田が出来ないなんてことないさ」

 

そう言い切る虎城くんから、嘘は感じなかった。

 

「……ありがとう、虎城くん」

 

僕と軽井沢さんの恋人関係は偽物で、佐倉さんと心から愛し合ってる虎城くんとは違う。それでも、今の話で虎城くんが決して遠い存在でないと確信するには十分すぎたし、そんな彼から激励も貰った。

 

───その後、虎城くんと一緒に部屋に戻った僕は混合合宿で初めて熟睡することが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

───クラス内投票終了後。

 

龍園くん達が綾小路くんを連れて教室から出ていった後、教室内は正に阿鼻叫喚だった。

 

「ねぇ櫛田さん。どう言うことか説明してよ!」

 

「敵に媚び売ってたってこと?」

 

「堀北さん綾小路くんにそんなことしてたの?やばくない?」

 

「このままクラスの纏め役させていいわけ?」

 

最も多いのは、櫛田さんの裏切りを問い詰める声と堀北さんへの罵倒。起こったことを考えれば至極当然とも言えるこの状況を前に、僕は自分(・・)でも(・・)驚く(・・)()()冷静(・・)だった(・・・)

 

「皆、一旦落ち着いて欲しい」

 

騒がしい教室内にそれほど大きくない僕の声は静かに響き、全員が動きを止めた。

 

「須藤くんの退学に綾小路くんの移籍、櫛田さんの裏切りで混乱するのはよく分かる。実際、僕も全て飲み込めていないからね。でも、だからこそ冷静に考えることが大切だと思う」

 

「ほう?この状況で最も取り乱すのは平田ボーイだと思っていたが、どうも()は一途なのにプレイボーイのようだねえ」

 

僕の言葉を聞いて、高円寺くんは笑いながら僕の変化の原因をあっさりと看破していた。

 

(高円寺くんの言う通り、これまでの事や虎城くんとの会話がなければ……僕はきっと自暴自棄になっていただろうね)

 

退学者救済の認知と今日までの行動を振り返れば、自分の考えがどれだけ理想論で現実味がなく、それに対して何もしてこなかった自分に責任があるのは明白で、虎城くんがあれだけ怒りを見せるのも当然の結果だった。

 

(退学に移籍、そして裏切り者がいるこのクラスが纏まるのは、とても困難だ。

 

 

 

───だとしても、此処で投げ出したら……僕はきっと二度と虎城くんに顔向け出来ないっ!)

 

握る手に自然と力が入った。上手く事を運ばなければ、このクラスは完全に崩壊する。それを阻止出来るのは、この状況では自分しかいない。

 

「……先ずは、一番大事な事実確認をしよう。

 

 

───櫛田さん、君はこのクラスを裏切っていたで間違いないかい?」

 

ボイスレコーダーの録音という証拠を見せられたが、念のために櫛田さん本人から直接聞くことにした。

 

「あ、あれは堀北さんが船上試験辺りから急にクラスの方針に意見し出したから、それで私……」

 

「櫛田さん、裏切るまでの経緯は今は関係ないよ。龍園くん達と繋がって裏切っていたのか違うのか、それだけ答えてくれるかな?」

 

「……ごめんなさいっ」

 

櫛田さんの言い訳を切り捨て再度問い掛けると、櫛田さんは顔を伏せながら謝罪を口にしたことで裏切りが事実であるとクラス全員が理解した。

 

「裏切りは事実なんだね。それじゃあもう1つ、いつから(・・・・)裏切っていたか聞かせてもらえるかな?」

 

「……ペーパー(・・・・)シャッフル(・・・・・)前から(・・・)だよ」

 

「……あれ?それっておかしくない?」

 

僕が最も聞きたかった質問に、櫛田さんは予想通りの回答をした。それに疑問の声を上げたのは、軽井沢さんだった。

 

「軽井沢さんの言う通り、それだとおかしいんだ。堀北さんが皆に話をしたけど、裏切り者は体育祭で参加表を横流ししたことで発覚した。ということは、少なくとも体育祭から裏切っていたことになるんだ」

 

「櫛田さんが嘘ついてるだけじゃないの?」

 

「龍園くんに裏切られた櫛田さんが、今更嘘をつく理由はないよ。だからこそ、この矛盾は証拠になる。

 

 

 

───裏切り者は櫛田さんと綾小路くん、2人だったんだ」

 

僕の言葉に対するクラスメイト達の驚きは、想像以上に大きかった。

 

「龍園くんが綾小路くんを引き抜く理由を言っていたけど、あれは大半が綾小路(・・・)くんの(・・・)理由(・・)であって、龍園くんの理由は言葉通りなら善意で2000万を出したことになる」

 

「それは、流石に考えられないな……」

 

混合合宿で同じ小グループだった幸村くんの言葉に、三宅くんも同意するように頷く。

 

「だからこそ、龍園くんは綾小路くんに2000万の価値があると判断して、移籍させたんだと僕は思う。その中にスパイ行為も入っていたと考えられないかな?」

 

「そんなことあるか?あの影が薄い綾小路だぜ?」

 

「……確かに綾小路くんはこのクラスでは交流は少なかったかもしれない。でも、それすら意図的だったんじゃないかな?混合合宿の小グループで同じになった他クラスの生徒とは普通に話をしていたからね」

 

山内くんの失礼な発言を上手く返して纏める。一連の流れと現状の雰囲気から、クラスメイトの大半は僕の話の信憑性は高いと判断してくれている様だった。

 

「後は、綾小路くんが言っていた堀北さんからの行為だけど……」

 

「…………事実よ。あの頃の私は、とても身勝手だったわ」

 

「申し訳ないけど、堀北さんには1度クラスの指揮から降りてもらう。今は、信用回復に努めて欲しい」

 

「……ごめんなさい」

 

───1年生で唯一退学者が出ることとなり、更にはクラスを支えてくれていた櫛田さんに堀北さんが揃ってダウンすることとなったが、クラス崩壊は崖手前で何とか踏み留まる結果に出来たことに僕はそっと胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

───選抜種目試験の対戦クラス決定後。

 

「平田、少しいいか?」

 

特別棟から出て寮へと戻ろうとするタイミングで、後ろから虎城くんに話しかけられた。

 

「虎城くん?どうかしたのかい?」

 

「あぁ、いや。なんだが雰囲気変わったなと思って、少し気になってな」

 

少し気まずそうに言葉を伝える様子に虎城くんらしさを感じながらも、僕は真っ直ぐに虎城くんの目を見て宣言する。

 

「色々と覚悟を決めたからね。僕なりに全力で頑張ることにしたんだ。

 

 

 

───そして、憧れ(虎城くん)に追い付くよ」

 





次回予告

軽井沢恵「やだ、アタシの彼氏カッコよすぎじゃない?」

佐倉愛里「あの状況で堂々と出来るなんて、凄いなぁ」

軽井沢恵「ねね、虎城くんのカッコいいエピソードないの?」

佐倉愛里「うぇ!?え、えっと、最近だと、その……ゴニョゴニョ(Episode 46 愛してる 参照)」

軽井沢恵「うわ、やっばいわ。アンタめちゃくちゃ愛されてるわね」

佐倉愛里「え、えへへ……」

軽井沢恵「次回『Episode 55 束の間の休息』」

佐倉愛里「えへへ……」

軽井沢恵「そろそろ現実に帰ってきなさい!」

【参考】短めの小話(日常の一部切り取り的な話や入学時別クラスの番外編等)って需要ある?

  • 読んでみたい!
  • 本編の執筆に影響がなければOK!
  • それより本編を進めるんだよぉ!
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