ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ   作:nightマンサー

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Episode 62 その瞳が映したのは

 

 

 

 

 

 

「なんだ、この学校はゴリラまで教育するようになったのか?」

 

俺───虎城優斗と同じく廊下に出て此方に向かってくる宝泉を見た龍園の第一声に、逆にいつも通りだと安心する。龍園の言葉が気になったのか、愛里や清隆といった主要メンバーも教室から出てきた。

 

「確か、1年Dクラスの生徒だな。大柄な男が宝泉、女子の方が七瀬だったか。2人ともDクラスだが、OAAの評価が高い生徒だ」

 

昨日の段階で確認していたが、龍園に見せるためOAAを開き携帯を龍園に向ける。そうしているうちに宝泉と七瀬は俺達の前までやってきた。

 

「よぉ。まさかこんな所で巡り会うとは思わなかったぜ、龍園」

 

敬語も使わず気安く話し掛けてくる宝泉だったが、注意していた俺は七瀬も含めその視線が1度後ろにいる清隆に向けられたことに気付く。

 

「龍園さん、知り合いなんですか?」

 

「実際に会うのは初だがな。宝泉つったら地元じゃちょっとした有名人だ。だが、ここまでバカそうな顔をしてるとは思わなかったぜ」

 

「ハッ。そういうてめぇは随分と貧弱な身体じゃねぇか。道理で遠征しても会わねぇ訳だ。兵隊に仕事させて俺から逃げ回ってたんだろ?」

 

「ククッ、自分の運の良さを誇るんだな。俺に出会わなかったから、てめぇは幸運にもまだ負け知らずなんだからよ」

 

正に売り言葉に買い言葉の見本のようなやり取りに、周りの生徒は少し距離を取っていた。

 

「宝泉くん。私達の目的を見失わないで下さい」

 

「あぁ?こんなの軽い挨拶だろ?」

 

「だとしても、その態度は良くありません」

 

そんな雰囲気をものともしない毅然とした態度で七瀬が宝泉に告げ、1歩前に出る。

 

「自己紹介が遅れて申し訳ありません。私は1年Dクラスの七瀬翼です。本日は、2年Aクラスのリーダーである龍園先輩に話があって足を運ばせてもらいました」

 

「ゴリラよりは話が出来そうな奴がいたか。で?俺に何のようだ?」

 

「宝泉くんは既にDクラスを纏めています。今回の特別試験、私達Dクラスと手を組んでは頂けないでしょうか?」

 

放課後とはいえ、人がそれなりに居る中での大胆な同盟打診。確かにクラス同士で手を組むことが出来れば、退学者を出さないようにペアの調整を簡単に行える。2年生は退学のリスクがあるため、本来(・・)なら(・・)受けてもいい提案だ。

 

「おいおい。まさか、それだけ(・・・・)じゃねぇよな?」

 

「……それは、龍園先輩達へのメリットを提示しろ、ということでしょうか?」

 

「生憎、こっちは引く手数多のAクラス様だ。ゴリラが纏めるクラスと手を組むほど困ってねぇのさ。それでも組みたきゃ、300万で手を打ってやっていいぜ?」

 

龍園の言葉を受けた七瀬の表情が若干曇る。龍園の言う通り、俺達はAクラスというブランドに加え潤沢な資金がある。加えて特別試験が始まる前に部活所属の1年生とはコネクションが出来ていたため、昨日の時点でペア候補はいくつか作成出来ていた。そんな中でDクラスと組むことにメリットはなく、言い方は悪いが龍園が足蹴にするのも当然といえる。

 

「ギリギリのAクラスの癖に、余程強い兵隊でも手に入れたのか強気じゃねぇか。何なら今ここで白黒つけるか?」

 

「見返りもない状況でゴリラと殴り合う趣味はねぇ。怖い生徒会書記様も隣にいるんでな」

 

大きな拳を握り込んだ宝泉は龍園を挑発するが、それに乗るほど龍園の器は小さくない。ただ、宝泉が痺れを切らす可能性も考え一旦話を纏めるために携帯を持って俺は七瀬に話しかける。

 

「同じ2年Aクラスの虎城だ。龍園の言い方はアレだけど、俺達にあまりメリットがない提案なのは理解して欲しい。俺の連絡先を渡すから、もし交渉材料が出来たり他の交渉がしたくなったら連絡してくれ」

 

「っ!ありがとうございます、虎城先輩」

 

「……念のため言っておくけど、今この学校は問題行動に過敏になってる。暴力沙汰なんて起こしたら生徒会含め学校側が厳正に対応するから、そのつもりでね」

 

七瀬と連絡先を交換しつつ宝泉に視線を向け釘を刺すと、宝泉は横目で俺をちらりと見たあと龍園に視線を戻した。

 

「大人に守ってもらうつもりの雑魚が粋がってんじゃねぇよ。こんなのが兵隊とは見る目がねぇな、龍園」

 

「頭だけじゃなく目も悪いときたか。治らねぇと思うが、さっさと病院に行った方がいいぜ」

 

「病院ならてめぇが行くことになるだろうよ。身体中ボロボロでな?」

 

「宝泉くん、やめて下さい。こんなことをしてもメリットは1つもありません」

 

再び龍園と宝泉の言い合いが始まりそうになるが、七瀬が強い口調で咎めると面白くなさそうに舌打ちをしてポケットに両手を突っ込んだ。

 

「それで、お前はいつまでこそこそ見てるつもりだ?」

 

「───他クラスの動向を探るのは普通のことですよ、宝泉くん。それに先を越されてしまいましたが、僕も龍園先輩に用がありましたので」

 

後ろを振り返った宝泉の視線の先にいる1年生の男子生徒───八神拓也がゆっくりと姿を見せる。

 

「今回はあくまで挨拶だ。いずれ叩きのめしてやるよ、龍園センパイ」

 

「……お騒がせしました。失礼します」

 

用は済んだとばかりに宝泉は言いたいことを言って踵を返し、七瀬は頭を下げ謝罪しつつ宝泉の後を追って行った。

 

「割って入る形になってしまい申し訳ありませんでした。僕は1年Bクラスの八神拓也といいます」

 

宝泉達と入れ替わるように八神が声をかけてくる。

 

(やっぱり接触してきたか……)

 

清隆を連れ戻すためにホワイトルームから送られた刺客───『憎悪』のホワイトルーム生、八神拓也。

 

「てめぇもゴリラと同じで手を組もうって腹か?」

 

「宝泉くんとは少し違いますね。僕は1年Bクラスの代表として、龍園先輩の条件に応えられるクラスメイト達の提示に来た形になります」

 

龍園の言葉に自信を持って応える八神。どうやら、昨日クラスメイトを使って龍園が流した根回しを把握し接触してきたようだ。

 

「行動の早い奴は嫌いじゃねぇ。虎城」

 

「了解。俺が話を聞いておくよ」

 

俺の肯定を聞き龍園は石崎とアルベルト、金田を連れてその場を後にする。

 

「八神だったよな?龍園はこれからクラスメイトがペアを組む予定の1年生に会いに行くので忙しいから、今日は連絡先の交換だけして話は明日でもいいかな?」

 

「なるほど、そういうことですか。無駄のない行動と考えはとても参考になります」

 

龍園達が去っていくのに困惑した八神に事情を説明すると、八神は感心するように龍園達が去っていった方向を見て呟いたあと携帯を取り出した。

 

「ありがとうございます、虎城先輩。候補のクラスメイトの情報は後程送らせて頂きます。では、今日はこれで失礼します」

 

連絡先を交換し八神は俺にお礼を告げ、1度清隆達に視線を送ったあと頭を下げてその場から立ち去るの確認した俺は、宝泉含め初っ端から大きく仕掛けてこなかった事に安堵し堪らず息を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、綾小路くん。ちょっといいかな?」

 

宝泉達1年生が龍園達に接触してきた後。急な生徒会の仕事が入った優斗を除く勉強会に参加する佐倉達と図書室へ移動していたオレ───綾小路清隆に佐倉が声を掛けてくる。

 

「佐倉?どうかしたのか?」

 

「えっと、最後に優くんと話してた1年生の八神くんだったかな。

 

 

 

───その、綾小路くんの知り合いなのかなって……」

 

唐突な佐倉からの言葉に、オレは疑問と同時にある考えが頭を過った。

 

「……いや。覚えがないから違うと思うが、なんでそう思ったんだ?」

 

「その……あの子の目が、見たことある目だったから」

 

「目?」

 

以前、優斗から佐倉は視線を向けられることが多く、その経験から相手の目を見ることで少しだけ感情を読み取ることが出来るのだと聞かされたことを思い出す。不安そうな少し怯えた表情をする佐倉は伝えるべきか少し悩んだようだが、ゆっくりとその口を開いた。

 

 

「───相手を許さない、憎しみに染まった目。昔私を襲った、その、ストーカーと同じ目で、あの子は綾小路くんを見てたから……」

 

 

「……そうなのか」

 

「だから、知り合いなのかなって思ったんだけど……私の見間違いだったのかな。ごめんね、変なこと言って」

 

気にしないでと告げる佐倉を見ながら、オレは1つの解に辿り着いていた。

 

「いや、恐らくだが見間違いじゃない。そう言われて、少しだけ心当たりを思い出した。伝えてくれて助かった」

 

「ぁ、うんっ。どういたしまして」

 

その後、図書室に到着し勉強会を行い夕方に解散した後、オレは今回の特別試験に対して昨日考えていたとある(・・・)保険(・・)を施しに職員室へと向かった。

 

 





次回予告

葛城康平「一之瀬達はパートナー選びは順調そうだな」

一之瀬帆波「にゃはは。まぁ、ぼちぼちかな?正直、今回の特別試験は今後を見据えてって部分が大きいからね」

葛城康平「クラスもプライベートポイントも負けている中でのマネーゲーム程、勝ち目のない戦いもないからな」

一之瀬帆波「それでも、1年生との交流は楽しいよ?ただ、1年Dクラスは1人も参加してくれないのが少し心配かな」

葛城康平「次回『Episode 63 小悪魔の嫉妬』」

一之瀬帆波「憧れは理解から最も遠い感情、か……」

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