ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ   作:nightマンサー

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お待たせしました!
いやぁ、本当に難しくて難産でした(汗)
何度も可笑しくないかチェックしてますので多分大丈夫なはず……(苦笑)

いつも感想・評価・ここすき、誤字報告ありがとうございます!
それでは、どうぞ!



Episode 72 LIAR GAME

 

 

 

 

───無人島北東の果て、I2エリア。

 

目の前にいる月城理事長代理によってこの場所に誘き出されたオレ───綾小路清隆は、昨日からオレを尾行していた1年Dクラスの七瀬翼に退路を塞がれる形となっていた。

 

「GPSサーチには引っ掛からない筈ですが、私の尾行に気付いていたんですね」

 

「……人の気配には敏感なんだ」

 

当たり障りの無い回答をしつつ、オレは置かれた状況の分析を始めた。

 

(尾行のレベルから、七瀬がホワイトルーム生である可能性は低い。オレの油断を誘うためであっても、尾行自体が気付かれない方が効果的だ)

 

確定まではいかないが、この場での優先順位において七瀬を最下位に位置付ける。月城と司馬については実力は未知数だが、実力者であることは間違いないだろう。そして、この場を収めるためには頭である月城をどうにかする他ない。

 

「ふむ。現状の対処法を考えてるのでしょうが、この場に来た時点で詰んでいるのですよ。綾小路くん」

 

オレの考えを見透かしたように月城は話を続ける。

 

「確かに300万と『半減』カードを持っているキミを、特別試験(・・・・)()ルール(・・・)()退学(・・)させる(・・・)のは事実上不可能です。

 

 

───ですが、手がない訳ではありません」

 

 

オレと七瀬にそれぞれ視線を向ける月城の言葉から、その()が何であるかを把握した。

 

 

「……国内最高峰の教育機関の理事長が、犯罪の捏造は笑えないですよ」

 

 

───特別試験の説明会。月城は性的トラブルについては退学を含む厳しいペナルティを躊躇なく与えると警告していた。つまり、最初からこれを狙っていたということだろう。

 

「出来るなら、このような手段は取りたくなかったのですがね」

 

本当に残念だと言わんばかりに月城は頭を振る。隣に佇む司馬は、その間にスマホを此方へと向け写真を撮った。

 

「ですが、これで詰みであることはキミであれば分かっているでしょう?この場にキミと七瀬さんが揃った時点で、筋書きはどうとでも出来ます」

 

「大人しく従った方がお前の為だ、綾小路」

 

勝利宣言と言わんばかりの月城と司馬の言葉に、オレは後ろにいる七瀬へと顔を向ける。

 

「冤罪の片棒を担ぐみたいだが、いいのか?」

 

「……綾小路先輩、貴方はこの学校にいるべき人間じゃありません。強引であることは理解していますが、このまま退学して頂きます」

 

どうやら月城が選んだだけあり、理由は分からないがオレに対して良くない感情を持っているようで意思は固いらしい。

 

「さぁ、綾小路くん。船に乗り込んでもらえますか?」

 

冷静に月城は言葉を告げてくるが、オレはその場から動かない。既に(・・)十分(・・)だが(・・)、出来ればもう少し具体的な言葉が欲しい所だ。

 

「いくら考えても無駄だ、綾小路。していないことの証明(悪魔の証明)は不可能だ。仮にここから逃げ出せたとしても、この場で犯罪を犯したことにするだけ───」

 

司馬がそこまで口にした所で、月城が手で制する。それにより砂を歩く音にオレと月城以外の2人も気付いたようだ。その生徒はオレ達から少し離れた位置で立ち止まり、砂浜に手を入れ引き抜くとタブレットが姿を現した。

 

「「っ!?」」

 

生徒とタブレットの存在に司馬と七瀬が驚く中、月城だけはオレに視線を向けていた。

 

 

「生徒を退学させるために犯罪の捏造とは、流石に見過ごすわけにはいきません。なんてね」

 

 

タブレットでの操作を終えた1年Bクラス生徒会所属の生徒───

 

 

───そして、ホワ(・・)イト(・・)ルーム(・・・)()である(・・・)八神(・・)拓也(・・)が笑顔を浮かべた。

 

 

 

「先程の出来事は全て録音しています。ここまでですよ、月城理事長代理」

 

「八神、何の真似だ?」

 

「現状を見れば分かると思いますよ、司馬先生?」

 

司馬が理解出来ないと言わんばかりに問い掛けるが、八神は挑発するように言葉を告げる。

 

「……なるほど。どうやら私は綾小路清隆(最高傑作)を過小評価していたようです。彼を味方につけているとは、流石に予想出来ませんでした」

 

「いえ、貴方のオレに対する評価は恐らく正しかった。

 

───ただ、オレの友人達の実力を知らなかっただけです」

 

 

 

 

 

 

───時は、1・2年生パートナー筆記試験が通知された3日後まで遡る。

 

 

特別棟近くに存在する人が近付かず今は殆ど使われていない用具室。その室内でオレはとある(・・・)人物を待っていた。

 

(───優斗の連絡から5分。そろそろだな)

 

そう考えた数秒後、用具室の扉が開く。現れたのは目的の人物である1年Bクラスの八神拓也。

 

「あれ?貴方は確か、綾小路先輩ですよね?それじゃあ、虎城先輩が言ってた僕と話がしたいっていうのは……」

 

「あぁ、オレだ。

 

 

 

───あの白い部屋(ホワイトルーム)の後輩から、直接話を聞いてみたくてな」

 

瞬間、八神は即座に間合いを詰め右ストレートを放ってきた。オレはそれを冷静に受け流し、カウンターとして足払いを決める。

 

「ぐっ!?」

 

体勢を崩され倒れ込んだ八神だったが、即座に立て直し逆に足払いを仕掛けてきたことに感心しつつ回避した。

 

「……僕の擬態は完璧だった筈だ。何故分かった」

 

先程まで見せていた人懐っこい表情が、今は見る影もない程に怒りで歪んだ八神が問い掛けてくる。

 

「見抜いたのはオレの友人だ。表情は誤魔化せても、その憎悪の目は隠しきれなかったみたいでその事をオレに教えてくれてたんだ」

 

「煽るのも大概にしろ、綾小路ぃ!!」

 

オレの話を嘘だと思い激昂し突っ込んでくる八神を相手にしながら、その力量に改めて感心する。オレを退学させるために送り込まれた刺客なだけあって相当の実力者であることは予想していたが、八神の年齢世代の首位だと言われても納得出来るレベルだ。

 

(───だが(・・)オレ(・・)には(・・)及ば(・・)ないな(・・・)

 

 

 

───八神との攻防は凡そ10分。実力者同士であれば、力量差を嫌と言う程に実感出来る時間だ。

 

 

 

 

「く、そ……どう、して……!?」

 

憔悴したように声を上げる八神を見る内に、オレは1つの疑問を投げ掛けた。

 

「八神、何故オレを憎む?」

 

「……は?」

 

質問の内容が理解出来ないとばかりに唖然とした後、その表情を更に怒りで染めた八神が口を開く。

 

「お前が、ホワイトルームで1番だったからだ!どれだけ努力しても、どれだけ抜きん出た成績を収めても認めて貰えない!いつも聞かされるのは、1年前の綾小路の方が凄かったという落胆の言葉だけだ!」

 

濁流のように溢れてぶつけられる言葉を、オレは黙って聞いていた。

 

「ホワイトルームの成功例になれなければ、失敗例の自分に価値はない!脱落した奴等と同じ失敗したサンプルの1つとして、価値のない惨めな末路を辿るだけだ!だからこそ、お前を殺してでも僕が成功例であることを認めさせるっ!!」

 

八神の脇腹を狙った左フックをガードし、逆に腹部にカウンターを決める。

 

「ぐぁ!?」

 

これまでのダメージもあり膝をつく八神だったが、数秒の内に立て直し未だに憎悪と闘志を漲らせていた。

 

 

「───お前は優秀だな、八神」

 

 

オレはそんな八神に対して、称賛の言葉を投げ掛けた。

 

「またそうやって、言葉で僕を惑わすつもりか」

 

「信じられないのも無理はないが、純粋に感心しての言葉だ」

 

ホワイトルーム(あの部屋)は感情で生き残れる場所ではない。事実、雪を含め残りたいと叫んでいた同期も実力が伴わなくなればあっさりと脱落させられていた。そんな環境の中で憎悪で己を奮い立たせ、オレを退学させるために刺客として選抜される程の八神が優秀でない筈がない。

 

 

「───だからこそ、お前が操り(・・)人形(・・)()なって(・・・)いる(・・)こと(・・)が残念でならないな」

 

「……何だと?」

 

 

オレの言葉を聞き、八神が眉をひそめる。

 

「逆に聞くが、仮にお前が此処でオレを殺すことに成功し罪に問われずホワイトルームに戻れたとしよう。それであの部屋の大人達が、お前を成功例として受け入れると思っているのか?」

 

「当たり前だ!殺せたということは、1番である綾小路を僕が出し抜いた揺るぎ無い事実になる!」

 

「だとしても、大人達は1度だけでは正当に評価しないだろう。そうなれば、お前が成功例になるためにはオレの記録を超えるしかない」

 

「それは……」

 

オレとの問答で八神から怒りの表情が僅かに薄れた所を見るに、少し冷静さを取り戻しているようだった。

 

「そもそも、ホワイトルームの成功例にどれ程の価値がある?そこまでして綾小路篤臣に、ホワイトルームの教官に認められたとして何になるんだ?」

 

「何を、言っている?ホワイトルームの成功例になることだけが僕達の存在意義の筈だ。成功例になる以上の価値なんてないっ!」

 

成功例(それ)にしか価値を見出だせないのは、お前が白い箱庭(ホワイトルーム)以外を知らないからだ。価値は自分で作ることも出来る上に人の数以上に存在する。それに、単一でないといけない決まりもない」

 

優斗と佐倉はそれぞれの存在、龍園は勝利と人によって価値とは千差万別だ。オレ自身も以前は自分の勝利にしか価値を見出だしていなかったが、今は大切な存在(ひより)がいる。

 

「運が良いことに、お前はこうして外の世界に出てきている。オレと同じように押し付けられた価値以外の、自分だけの価値を見付け出す良い機会じゃないか?」

 

「……お前に負けた僕に、これ以上の時間はないじゃないか」

 

「最初に言ったが、オレは直接話をしてみたかっただけだ。この意味が分からないお前じゃない筈だ」

 

暗に見逃すと告げるオレに、八神は信じられないといった表情になる。感情が大きな力を生むことを優斗を見て知ったオレは、恐らく八神に少しばかり期待をしているんだろう。

 

「───それでも、お前を殺してでも越えることが価値だと結論付けたらどうするんだ?」

 

射貫くような八神の瞳を、オレは正面から真っ直ぐ受け止め口を開く。

 

 

 

「───その時は、いつでも相手になろう。全力でオレを越えてみせろ」

 

 

 

「……今回は僕の負けです。ですが、いずれ後悔させますよ」

 

1度目を伏せて息を吐き出した八神から戦意が消え外向きの仮面を被ったのを確認し、話を次の段階へと進めることにする。

 

「それでいい。ただ、八神との勝負を外野に干渉されるのは避けたい」

 

「……なるほど、それが本命ですか。癪に障りますが、僕としても月城理事長代理は邪魔ですからね。彼の排除に関しては協力してあげます」

 

そうしてオレは双方の同意での喧嘩であったことをボイスレコーダーに録音して八神と別れた後、用具室から少し離れた場所で待っていた優斗と合流した。

 

「待たせて悪い、優斗」

 

「いや、大丈夫だ清隆。それで、どうなった?」

 

「問題ない。無事和解した。多少拳で語り合うことになったが、双方同意だったことは記録してる。仮に誰かに露呈しても優斗に迷惑はかけない」

 

八神とは学習塾が同じで喧嘩別れしていたという設定で優斗に話しており、仲直りするためという理由で今回の場を設けて貰っていた。

 

「気にしなくていいよ。石崎の言葉を借りるなら、ダチだから助けるのは当たり前だってところかな?」

 

「……確かに、石崎なら言いそうだな」

 

「此処に長居するのも良くないな。戻るか」

 

「あぁ、そうしよう」

 

 

───こうしてオレは、八神と一時的とはいえ同盟を結ぶことに成功したのである。

 

 

 

 

 

 

「……なるほど。キミは全て自分のみで解決すると私は考えていましたが、それは間違いだったようだ」

 

月城の視線がオレから海へと向けられる。そこには月城達が乗ってきた小型船とは別の小型船が此方へと向かって来ており、船の先には担任である坂上先生と学年主任の真嶋先生が見える。

 

「言うまでもなく根回しは行っていたのですがね。どうやら、そちらに関しても手を打たれていたようで感心しますよ」

 

「オレ達の勝ち、ということで認めて貰えますか?」

 

「えぇ。キミを追い込む為に色々と無理を通しましたからね。綾小路くんの指定エリア偽装だけであれば粘れたかもしれませんが、未遂とはいえ犯罪の捏造が露呈すれば致命的です」

 

負けたというのに子供の成長を喜ぶ親や教員のような様子の月城に、オレの中に元々あった仮説が現実味を帯びていく。

 

「八神くん。キミは失格の烙印を押されるでしょう。戻るべき場所はないので、この学校に留まるも去るも好きにするようにして下さい」

 

「……アンタに言われるまでもない。僕は僕のやり方で綾小路を越える。だから、此処で消えてくれ」

 

八神と月城のやり取りの間に、坂上先生と真嶋先生を乗せた小型船がビーチに辿り着き此方に駆け足で向かってくる。

 

「月城理事長代理、説明して頂けますね?」

 

「えぇ、勿論です。誤解がないよう、経緯を説明致します」

 

その後、八神が録音した内容を聞いた坂上先生と真嶋先生は驚愕し月城と司馬に詰め寄るが、司馬が七瀬の担任であることを上手く利用し元々七瀬から相談されていた為に脅迫するような聞き方になってしまったという筋書きを完成させた。

 

「───以上が、ことの経緯になります。勿論、勘違いとはいえ生徒を不当に罰しようとしたことは変わりませんので、処罰は受けるつもりです」

 

「っ……分かりました」

 

月城の言葉に真嶋先生は何か言いたそうだったが、罪を認めている以上下手に追及することが出来ないのに加え、オレ達をこの場に引き留め続けるのも悪いと思ったのか了承を示しただけに留まった。

 

「では、引き上げましょう。八神くん、七瀬さん、そして綾小路くん。特別試験、期待していますよ」

 

月城は最後にそう言い残し小型船に向かって歩き出す。他の大人達もそれに続いていくのを確認し、オレは月城を退けることに成功したことに胸を撫で下ろした。

 

 

 





次回予告

鬼龍院楓花「八神と結託し月城を退けることに成功した綾小路は、七瀬の願いにより彼女の話を聞くこととなる。1位争いも続く中、特別試験は後半戦へと突入し水面下で動いていた者達がその牙を見せ始める」

鬼龍院楓花「次回『Episode 73 育まれた感情』」

鬼龍院楓花「さぁ、もっと私を楽しませてくれ」

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