ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ   作:nightマンサー

84 / 86
明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願い致します!

いつも感想・評価・ここすき、誤字報告ありがとうございます!
それでは、どうぞ!



Episode 73 育まれた感情

 

 

 

 

 

 

 

大人達が完全に撤退したのを確認した後、オレ───綾小路清隆は今回の功労者である八神に声をかけた。

 

「上手くやったな、八神」

 

「……利害が一致しただけです。僕の目標はあくまで先輩ただ1人ですので」

 

吐き捨てるように告げた八神は足早にこの場を後にした。月城の排除を達成した今、標的が再びオレに戻ったため八神の態度は正しいと言えるだろう。

 

「……綾小路先輩」

 

名前を呼ばれた方向に視線を向けると、そこには月城の手先だった1年Dクラスの七瀬翼が悲痛な面持ちで立ち尽くしていた。

 

「確か、七瀬だったか。オレにまだ何かあるのか?」

 

「先輩を嵌めようとした私が、お願い出来る立場でないことは重々承知です。それでも、私の話を聞いてもらえないでしょうか?」

 

「……分かった。オレとしても、冤罪をかけられる程に嫌われている理由は知りたいからな」

 

頭を深く下げて懇願する七瀬を見て、オレは少し間を置いて了承を示す。これまでの動向と八神の反応からもホワイトルーム関係者ではない可能性が高いが、そうなるとオレを知っている理由が分からない。

 

「ありがとうございます、先輩」

 

お礼を述べた七瀬は、1度深呼吸をしてからゆっくりと口を開いた。

 

「───私は幼馴染みの仇を取るために、綾小路先輩を退学させようとしたんです」

 

「幼馴染み?」

 

「はい。名前は、松雄栄一郎と言います」

 

七瀬の言った名前の苗字に聞き覚えがあった。ホワイトルーム停止中にオレの世話を行い、この高度育成高等学校に入学させてくれた恩人(・・)。しかし、彼はオレの父親(綾小路篤臣)の手によって息子共々未来を潰された末に焼身自殺をしたと、去年オレを連れ戻すために訪れた綾小路篤臣(あの男)に聞かされた。

 

「オレをこの学校に入学させてくれたのが松雄だが……」

 

「……栄一郎くんは、その人の息子です。栄一郎くんのお父さんは、焼身自殺をして亡くなっています」

 

「去年、あの男がオレを連れ戻すために学校を訪れた時、松雄の顛末を見せしめのように語っていた。息子については高校を退学させられアルバイトで生計を立てていると言っていたが、それが理由か?」

 

「……話は、まだ続きがあるんです」

 

オレの言葉を聞いた七瀬がジャージの裾を強く握り締めながら口にするのを見て、事態は更に深刻なのだと悟った。

 

「今年の2月14日、栄一郎くんが住むアパートを訪ねたんです。進学も諦めてお父さんを亡くしても、どこまでも前を向いて頑張る栄一郎くんを元気づけようと。でも───」

 

七瀬はそこまでしか言葉にしなかったが、何が起こったのか察するには十分過ぎた。

 

「綾小路先輩のことも、先輩のお父さんのことも私は詳しく知りませんでした。でも、それを教えてくれる人が現れたんです」

 

「それが月城か」

 

「はい。栄一郎くんの人生がネジ曲がってしまった理由を月城理事長代理から聞いて、この学校への入学手配もして頂きました。その時に綾小路先輩を退学させれば先輩のお父さんに会わせてもらう約束をしたので、栄一郎くんに謝ってもらうつもりだったんです」

 

仮に先程の月城達の作戦が成功し約束が果たされたとしても、あの男が謝るなんて真似はしないだろう。

 

「悪いのが綾小路先輩ではないことは、分かっていたんです。それでも、元凶である先輩のお父さんに会うために仕方ないと見ないふりをして、その元凶と同じような手段で先輩を……」

 

そこまで口にした七瀬の声に嗚咽が交じる。事情を知れば、彼女も大人に振り回された被害者であることは明白だった。

 

「七瀬。1つ、オレの頼みを聞いて貰えるか?」

 

「何でも言って下さい。それだけの権利が、綾小路先輩にはあります」

 

文字通り何でも従ってくれそうな雰囲気の七瀬に、オレは口を開く。

 

 

 

「───七瀬がこの学校を卒業した後、オレを松雄達の墓まで案内して欲しい」

 

「……ぇ?」

 

 

 

目を見開き驚く七瀬に視線を合わせ、オレは話を続ける。

 

「オレはこの学校で様々なことを経験した。入学当初は酷かったが、今は虎城達(友人)と呼べる相手にひより(恋人)も出来た。それらをオレが得ることが出来たのは松雄のおかげだ。

 

 

───だから、それを松雄と栄一郎に伝えたいと思っている」

 

「せん、ぱい……」

 

あの男が松雄の顛末を語ったのは容赦しないと伝えたかっただけであり、オレが怒りや罪悪感を感じるとは欠片も思わなかっただろう。

 

 

───だが、オレは皆から感情を学ばせて貰った。

 

 

「それから、あの男───オレの父親はオレにとっても()だ。松雄への謝罪もさせてみせる」

 

月城がオレの仮説通りの人物であったことはこれまでのやり取りで確認出来ている。七瀬を含め卒業後(・・・)()計画(・・)に加えられれば、そうした未来を掴める可能性も上がる。

 

「……引き受けてくれるか、七瀬?」

 

オレが差し出した手を見て感極まったのか、七瀬は涙を流しながらオレの手を両手で力強く握った。

 

「勿論です。2人の元に、必ず……!」

 

 

───こうして、オレは八神の協力によって月城を撃退し、七瀬と和解することに成功した。

 

 

 

 

 

 

───綾小路が七瀬と和解してから数分後。

 

『───以上が、さっき起こった出来事になる』

 

「そっか。何はともあれ、無事撃退出来たみたいで安心したよ」

 

葛城達から少し離れ、龍園と一緒にトランシーバーで経緯を聞いた俺───虎城優斗は清隆に労いの言葉をかけた。

 

「はっ。まさか本当に釣れる(・・・)とはな。八神(やつ)の話も全くのハッタリって訳じゃ無さそうだ」

 

「俺からしてみたら、いい迷惑だけどね」

 

原作知識故に元から知っていた為に苦笑する俺は、無人島サバイバルが通知された直後の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

───時は、無人島サバイバルが通達され葛城と同盟を結んだ翌日に遡る。

 

 

「綾小路に懸賞金だと?」

 

会議場所の定番であるカラオケルームにて龍園を筆頭に俺───虎城優斗と清隆に椎名の4人が集まっており、招集者の話を聞いた龍園は怪訝な表情で相手に問い掛けた。

 

「はい。ペア筆記試験通達の前に、僕を含めた1年生数人が月城理事長代理に集められ宣言されたんです。2学期開始までに綾小路先輩を退学させることが出来れば、プロテクトポイント1つと2000万プライベートポイントを支払うと」

 

龍園の問いに対して、今回の招集者である1年Bクラスの生徒───八神拓也は肯定し話を続ける。

 

「僕の他にはAクラスの石上京くんに高橋修くん、Cクラスの宇都宮陸くんにDクラスの宝泉和臣くんと七瀬翼さん。僕以外に最低でもこの5人が知っている形になります」

 

「どうして、清隆くんが……」

 

いつも冷静な椎名も、清隆が狙われていると聞いて言葉が漏れていた。

 

「月城理事長代理は上級生の中からランダムに選出したと言っていましたので、運悪く綾小路先輩が選ばれたのではないかと思います」

 

「それで?そんな与太話をするために、てめぇは俺達を集めたのか?」

 

「……この話をペア試験が終わった今更しても、簡単に信じて貰えないことは理解しています。それでも、次の特別試験が全学年参加の無人島サバイバルであるのなら話をしなければいけないと思ったんです」

 

「仮に八神の話が本当なら、無人島サバイバルはこれ以上ない程に絶好の機会ということになるからか」

 

俺の言葉に八神は頷く。原作でもそうだったように無人島という監視が完全に行き届かない環境は、何かを起こすのに打ってつけであることは間違いない。

 

「特に宝泉くんは良い噂を聞きませんし、何をしでかすか分かりません。なので、せめて注意して頂ければと」

 

「今更言う理由がそれだけの筈がねぇだろ。その情報の見返りに無人島試験で援助でもしろってか?」

 

「見返りだなんてそんな。むしろ龍園先輩にはペア試験でお世話になりましたから、そのお礼という方が近いですよ」

 

「……まぁいい。今は(・・)そう(・・)いう(・・)こと(・・)()しと(・・)いて(・・)やる(・・)

 

鋭い視線で八神を見据えながらそう告げた龍園は内ポケットに手を入れて1枚の紙を取り出し、八神に突き付ける。

 

「お礼ついでだ。てめぇのクラスの奴等が持ってる7枚の便乗カードの権利もつけてもらおうか?」

 

「なるほど。龍園先輩が直接時間を作ってくれたのはそれが目的ですね。……安くてもいいので、買い取りという形にして貰えないでしょうか?流石に無償では反発が避けられません」

 

そうして龍園と八神が話した結果、『便乗』カード1枚につき5万プライベートポイントで買い取ることで合意した。

 

「それで、龍園。これからどうする?」

 

八神が去った後に俺が問い掛けると、龍園は笑みを浮かべた。

 

八神()が何を考えて話したのかは、どうでもいい。

 

 

───だが話が本当なら、いいじゃねぇか。学校の試験だけじゃ物足りなくなってきた所だ」

 

そう言った龍園が清隆に視線を向ける。

 

 

「綾小路、半減カードを持ってるてめぇに300万貸し付けてやる。単独で暴れてやれ。

 

 

───それで敵が釣れたなら、徹底的に潰してやる」

 

 

 

 

 

 

「それで龍園。小宮にはこれ(・・)まで(・・)通り(・・)八神の(・・・)監視(・・)を続けるよう指示を出すけど、いいよな?」

 

───時は現在に戻り、清隆との通話を一旦終えた俺は龍園に問い掛ける。元から八神を信用していない龍園は大グループの作成で余ったトランシーバーを小宮達のグループに渡し、秘密裏に八神の監視役として動かしていた。

 

 

「あぁ、それでいい。奴が何を考えていようが利用出来る内は使ってやる。

 

 

───仮に歯向かってくるなら、一緒に潰すだけだ」

 

 

そう言って龍園はタブレットでGPSサーチの結果を見ながらいつものように笑みを浮かべた。

 

 

『上位10組一覧』(6日目 午前10時時点)

 

3年 鬼龍院グループ 167点 1位

2年 高円寺グループ 161点 2位

3年 桐山グループ  159点 3位

2年 一之瀬グループ 157点 4位

2年 龍園グループ  154点 5位

2年 綾小路グループ 149点 6位

3年 落合グループ  148点 7位

3年 黒永グループ  145点 8位

1年 高橋グループ  145点 8位

3年 三木谷グループ 142点 10位

 

 





次回予告

桐山生叶「2週間に渡る無人島サバイバル試験は後半戦に入り、1位争いは更に苛烈さを増していた。そんな中、不穏な影がある生徒達に襲い掛かろうとしていた」

桐山生叶「次回『Episode 74 暗躍』」

桐山生叶「……嫌な予感がするな」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。