ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ   作:nightマンサー

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遅くなり申し訳ございません!
書きたいシーンだったので何度も細かく構想を練り直したと、出来る限り切りのいい所まで進めようとした結果、いつもの文字数の2.5倍位になって時間がかかってしまいました(汗)
楽しんで頂けると幸いです!

※前話の虎城くんの文字フォントが違う部分の台詞ですが、少し間違っていたので修正しました。

いつも感想・評価・ここすき、誤字報告ありがとうございます!
それでは、どうぞ!



Episode 76 想いが紡ぐ道

 

 

 

 

 

 

(はっ、雑魚が。バカ正直に突っ込んで来やがる)

 

自身に向かってまっすぐ突撃してくる虎城を見て俺───宝泉和臣は内心で嘲笑い、計画の成功を確信した。当初、自身の立てた計画では虎城優斗(腰巾着)佐倉と椎名(取り巻きの女)は眼中になく、純粋に綾小路だけを狙う予定だったのを、あの天沢とかいう女が雑で確実性に欠けると言ってきたのだ。

 

 

『その計画じゃ、綾小路先輩に600万持たせられたら終わりじゃん。たとえ600万持たされても退学させれるようにしないと、ね?』

 

 

そうして天沢は椎名ひよりと佐倉愛里(綾小路と虎城の女)を狙うことで俺の計画をより確実なものとした。虎城優斗(腰巾着)に恨みを持つ3年共と天沢が秘密裏にコンタクトを取り、駒も手に入れた。結果、椎名ひよりと佐倉愛里(綾小路と虎城の女)を手中に収めた時点で、この策はほぼ完了した。後は虎城優斗(腰巾着)を使って綾小路に救済処置を使わないと録音させリタイアするように命令するだけ。宇都宮や椿もこの特別試験で何か考えてたらしいが、今は俺らの策に乗っかる形で綾小路を包囲してるらしい。

 

(面倒だが、一発はもらってやるよ。虎城優斗(腰巾着)

 

近場に待機させたDクラスの奴()に暴力を振るっている写真を撮らせる。これで虎城優斗(腰巾着)は学校側からの追及は免れない。何せ自分でそういった行為に厳罰を与えるようにしたのだから。

 

(そら、てめぇが俺を殴れる最初で最後だ。しっかり狙えよ?)

 

被害者として写真に写るために形だけ身を守るような仕草をしながら、表情には出さず嘲笑う。

 

 

 

───しかし、虎城に()()掴ま(・・)れた(・・)ことで宝泉の表情は驚愕に変わった。

 

 

 

(……おいおい、マジか。ここまでバカな奴は初めてだぜ)

 

殴らず自身の首を掴んだ虎城優斗(腰巾着)を、心底呆れたように見下す。確かに首は人体における急所であるが、今のこの状況ならすぐに引き剥がせる上に殴りたい放題。つまり、虎城優斗(腰巾着)が自分からサンドバックになりに来たことに他ならない。

 

「バカがっ!」

 

写真を撮らせる数秒が過ぎた瞬間、虎城優斗(腰巾着)の顔面に右ストレートが炸裂し鈍い音が響く。

 

(はっ、これで終わ──っ!?)

 

確かな手応えを感じ呆気なかったと思った次の瞬間、片足を蹴られ重心をずらされる。そのまま後ろ向きに倒れたことで、虎城優斗(腰巾着)にマウントポジションを取られる形になった。

 

「っ、死ねっ!」

 

───乱打。その言葉が相応しい程に、虎城優斗(腰巾着)に拳を叩き込む。顔面だけでなく鳩尾や首を絞めている腕等、身体のあらゆる箇所を狙う。虎城優斗(腰巾着)が首を絞めてきた写真があるため、容赦はいらない。程なくして警告アラートが2度響き、次いで緊急アラートの甲高い音が鳴り響く。

 

 

(はっ、仕方ねぇ。綾小路への脅しは龍園の奴に……)

 

 

───そこまで思考して、()()()()()()()()()()宝泉(・・)()()()()表情(・・)()()()()

 

(腰巾着風情が、無駄な悪足掻きしやがって)

 

自分の拳をこれだけ受けてまだ首を掴んでいることには驚いたが、緊急アラートが鳴っている時点で、虎城優斗(腰巾着)が虫の息なことは明白だ。

 

(止めを刺してや───)

 

 

 

───そこで、俺は初めて虎城優斗(怪物)の目を直視した。

 

 

(なっ……)

 

一見して虎城優斗(怪物)の顔は殴られた箇所が腫れ上がり、今にも倒れそうな程に危うく見える。しかし、虎城優斗(怪物)の目はその評価を真逆のものに変えざるを得ない程の存在感を放っていた。それを裏付けるように、首に回された手は未だに離される気配が微塵もない。

 

 

───宝泉和臣(標的)を、再起不能にする(喰い◼️す)

 

 

「て、めぇ!本気、で……!」

 

此処に来て初めて焦燥感と危機感が急速に湧いてくる。今までの喧嘩で叩きのめした雑魚の中には、同じように女に手を出されて激昂した奴はごまんといた。しかし、虎城優斗(怪物)はそんな奴等とは全く(・・)別物(・・)()()()()()()()()()()

 

 

───虎城優斗(怪物)は、獲物を狩ることに躊躇しない。

 

 

「がぁぁぁ!!」

 

それを理解した瞬間、拳を握り虎城優斗(怪物)への攻撃を再開する。此奴を戦闘不能にしない限り、俺が喰い■される。拳で殴りつけつつ立ち上がろうと足に力を入れるが、虎城優斗(怪物)は拳を無抵抗で受けることで俺を立たせることだけは確実に阻止しており、立ち上がることが出来ない。

 

 

───虎城優斗(怪物)右手()が、俺の首を更に絞める(喰らう)

 

 

(クソっ、クソっ、クソがぁぁぁ!!!)

 

酸素不足で身体の力が段々と抜けていき視界が明滅を始めたことで、俺は心の内で叫びを上げる。作戦のために虎城優斗(怪物)の初手を受けなければ。取り押さえられた時に首を掴む腕を引き剥がすことだけに全力を使っていれば。そんなタラればが、頭を過っては消えていく。目の前に広がる覆しようのない現実が、俺が1対1(タイマン)負け(死に)かけていることを伝えてくる。

 

「ぁ……がっ……」

 

既に殴る力は失い、生存本能から首を掴む手を引き剥がそうとするが、虎城優斗(怪物)の手が動く気配はない。虎城優斗(怪物)の目を見るが、その瞳は何も変わらず俺の首を捉えてから一言も喋らない。

 

 

───その得体の知れない不気味さと強さに、俺は()()()恐怖(・・)()()

 

 

「っ!?が、はっ!!?」

 

───一瞬の首の解放。それにより無意識のうちに一気に酸素を取り込んだ次の瞬間、顎に大きな衝撃を感じ俺の意識はあっさりと落とされた。

 

 

 

 

 

 

(……早く、愛里の、ところ、に……)

 

目の前で気絶した宝泉和臣()の上から離れて立ち上がり、歩き出す。次は愛里と椎名を狙う3年生達(屑共)だ。しかし、宝泉和臣()から受けたダメージは甚大であり身体が思うように動かない。

 

「……ぁ」

 

数歩歩いたところで足が縺れてバランスを崩し、後ろ向きに倒れる。

 

 

───しかし、背中に感じたのは地面との接触による痛みではなく、誰かの腕の感触だった。

 

 

「よくやった、虎城」

 

「りゅ、ぇ……」

 

「後は任せて休んでろ。なに、心配はいらねぇ。伊吹が佐倉を守れねぇたまじゃねぇのは、お前も知ってんだろ?」

 

「……ぁ、わか、た……」

 

 

───龍園の言葉を聞いて安心した虎城優斗()は、そのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

気絶した虎城をその場に寝かせながら、俺───龍園翔は虎城が止まったことに安堵の息を吐き出した。

 

(狙いがあって初手を無抵抗で受けたのが大きいとはいえ、あの宝泉をタイマンで負かすとはな)

 

恐怖で顔を引き攣らせて気絶している宝泉を見ながら、思わず笑みを浮かべる。あれだけ殴られても急所から一切手を放さず、最後に意識を確実に刈り取る顎へのアッパー。奇しくも虎城の戦い方とその過程は、敗北しようとも最後に勝利すればいいと考える自分と同じだった。

 

「──龍園氏っ!」

 

そんなことを考えていると、置き去りにした金田達が一人の見知らぬ男子生徒を連れて此方にやってくる。

 

「よぉ、金田。どうやら最低限の仕事はこなせたみたいだな?」

 

「はい、様子が気になって龍園氏達が向かった辺りを確認していたら彼がいまして、既に動画と写真は削除させました。……っ、虎城氏!」

 

「あの音は虎城の緊急アラートだったのか……!しっかりしろ、虎城!」

 

説明を終えた金田と葛城が血相を変えてボロボロの虎城の容態を確認する中、俺はアルベルトが拘束している宝泉の駒である一年生に近付く。

 

「ぁ、ご、ごめんなさい!僕はただ、宝泉くんに隠れて写真を撮れって言われただけ……うぐっ!」

 

「お前の事情なんざどうでもいい。ただ、このままだとてめぇも虎城の怒りを買った宝泉と一緒に退学するってだけだ」

 

言い訳を始める後輩の頭を掴み、現実を分からせる為にボロボロの虎城を見るように顔を無理矢理動かす。

 

「これだけの怪我を負わせておいて、宝泉の言い分を学校が信じるわけがねぇ。退学したくなきゃ、今後は俺の言う通りに発言して動け。二度は言わねぇぞ」

 

俺の言葉に同意を示すように激しく首を縦に振る1年を確認した後、佐倉に連絡を取るために虎城の荷物からトランシーバーを取り出した。

 

 

 

 

 

 

───時は、虎城が宝泉の首を掴んだところまで遡る。

 

「おい、石田。本当にこのまま何もしないのか?」

 

9人の3年生に囲まれ、身動きが取れなくなった私───佐倉愛里と澪ちゃん、神室さんは言われた通り動かずにじっとしていましたが、不意に3年生の1人が不満げにリーダーと思われる石田という人に声を掛けました。

 

「伊藤、当たり前のことを聞くな。喋って連絡を取ろうとした時に取り押さえるだけにしろ。やり過ぎれば証拠が残る。南雲と同じようになりたいのか?」

 

脅すように伝える物言いに、伊藤と呼ばれた3年生は舌打ちをして押し黙った。

 

「……虎城に敵わないから愛里を狙っておいて、退学になるのが怖いわけ?今まさに犯罪紛いなことしておいて、よく言えるわね」

 

「あぁ?」

 

澪ちゃんの言葉に、先程舌打ちした伊藤先輩が睨みつけてくる。

 

「喋るなと言った筈だ。それとも、本当に危害を加えられたいのか?」

 

「やれるもんならやってみなさいよ。愛里には指1本触れさせないし、返り討ちにしてやるから」

 

「てめぇ、あんまり舐めた口きいてんじゃ……っ!」

 

リーダー格の石田先輩の言葉に返すように腰を軽く落として構える澪ちゃんに、伊藤先輩が突っかかろうとするのを石田先輩が肩を掴んで止める。

 

「挑発に乗るな、伊藤。あの女は虎城の女から自分に矛先を向けつつ、俺たちにあえて手を出させて証拠を残させようとしてることに気付け。この状態を維持することだけを考えろ」

 

「……クソっ」

 

石田先輩の言葉に、悪態をつきながらも飛び出すのを止めた伊藤先輩を見て澪ちゃんが苦い顔をする。

 

 

 

───そうしてお互い動かずに数分が経過した頃、私達と先輩達の均衡は崩れることとなった。

 

 

『佐倉、応答しろ』

 

 

「「っ!」」

 

リュックに入れていても連絡にすぐ気付けるように手前に入れていたトランシーバーから龍園くんの声が発せられる。それは私と近くにいた澪ちゃんの耳に届き、澪ちゃんは反射的に声を上げる。

 

「3年に囲まれてる!」

 

そのまま澪ちゃんは私のリュックを開けてトランシーバーを取り出して私に握らせる。澪ちゃんの声と行動に伊藤先輩含む3人が驚きつつも、止めるために澪ちゃんに向かってきた。

 

「てめぇ!大人しくしてろ!」

 

「はっ!」

 

抑え込もうと向かってきた先輩達を澪ちゃんは蹴りを主体にした格闘技で応戦する。その動きは素人目の私から見ても洗練されており、守りに専念することで体格の大きい3年生3人を相手に善戦していた。

 

「このアマ……!」

 

「さっさとどうにかしなさいよ、龍園っ!」

 

『南雲のおこぼれ連中か。佐倉、俺の言葉を奴等に伝えろ』

 

「あ、は、はい…!」

 

澪ちゃんの言葉で状況を理解した龍園くんの言葉に、私は返事をして先輩達に向かって声を出す。

 

「ほ、宝泉は虎城が返り討ちにして、職員に受け渡した!退学になりたくなかったら、さっさと引き下がれ……!」

 

「なっ!?」

 

龍園くんからの言葉を出来る限り大声で伝えると、澪ちゃんの相手をしていた伊藤先輩は驚愕し周りの3年生も動揺する中、石田先輩は苦い顔をした。

 

「ちっ、見かけ倒しの役立たずが。……引くぞ。これ以上は俺達の身が危ない」

 

「は!?おい石田、ふざけてんのか!?この女を抑えとけば、宝泉がやられようが俺たちが有利だろうが!」

 

「……これ以上はリスクが高いと言っているんだ。行くぞ」

 

石田先輩はそう言って同じグループと思われる残りの2人と共に森の中に消えていく。

 

「あの野郎…!おい、俺達だけでもやるぞ!」

 

石田先輩がいなくなった方向を見つめ悪態をついた伊藤先輩は、石田先輩の言葉を無視し残った3年生に声をかけ再び私たちを包囲してくる。

 

「ちっ、往生際の悪い……!」

 

引かない3年生達を見て舌打ちをした澪ちゃんは、再び構える。そんな澪ちゃんの死角を補うように、私の隣にいた神室さんが動いた。

 

「手伝うわ」

 

「……ふん。足引っ張んじゃないわよ?」

 

構える神室さんを見て、言葉ではそう言いつつも笑みを浮かべる澪ちゃんは3年生達を見据える。

 

「はっ、2人で俺達全員を止められるかよ。数も数えられねぇのか?」

 

勝ち誇ったように伊藤先輩はそう告げて包囲を狭めてくる。口ではそう言いつつも、先程までの攻防で澪ちゃんを警戒して慎重になっているようだった。

 

「止めるに決まってんでしょ。

 

───今度こそ守るって、私自身が決めたのよ」

 

そう言って私を守るように構える澪ちゃんの背中は、とっても逞しく見えた。

 

「減らず口叩きやがって!今度こそ大人しく───」

 

 

「───そこまでだ、伊藤」

 

 

突然の第3者の声に、その場の全員が動きを止めて声が聞こえた方向に視線を向ける。

 

「生徒会長として、この場を預からせてもらう。両者とも、話を聞かせてもらおう。特に、2年生に危害を加えようとしていた伊藤達には、納得のいく理由があると考えていいんだな?」

 

───現高度育成高等学校の生徒会長、桐山生叶先輩とグループの面々が私達を守るように伊藤先輩達との間に立ち塞がり厳しい口調で伊藤先輩達に問い掛けた。

 

 

 

 

 

 

───時は、龍園達が宝泉と対峙したところまで遡る。

 

天沢さんの言葉を聞いて私───椎名ひよりは冷静に状況を推察し、天沢さんを警戒しつつ声をかける。

 

「……なるほど。狙いは清隆くんに賭けられた2000万プライベートポイントとプロテクトポイントですか?」

 

「んー、それはオマケかな?私の目的は綾小路先輩自身と、椎名先輩だから」

 

まるで友達とカフェで話をしているかのような気安さで天沢さんが答える。隣にいる石崎くんと西野さんは清隆くんの賞金について初めて知ったからか、ますます困惑していた。

 

「ねぇ、椎名先輩?先輩は綾小路先輩のこと、どこまで知ってるの?」

 

天沢さんは私を笑顔で見据えながら近付き、そう問い掛けてくる。

 

「勉強が出来ること?運動が出来ること?そんな誰でも知れる上部だけしか知らないんじゃない?」

 

「おい、お前何を……!」

 

石崎くんが私と天沢さんの間に入り声を上げますが、天沢さんは全く気にせず言葉を続ける。

 

「綾小路先輩のこと、何も知らないんでしょ?どうしてあれだけ勉強や運動が出来るのか、誰よりも強いのか。そして、綾小路先輩の過去すら」

 

天沢さんの言う通り、私は清隆くんのことについてまだ知らないことが多い。そして、それを語る彼女はそれを知っているのだろう。

 

「それで綾小路先輩の彼女だなんて恥ずかしくないの?それとも、振られるのが怖くて気付かない振りしてた?」

 

「てめぇ……っ!椎名?」

 

天沢さんの明らかな煽りに、石崎くんが怒りを顕にして詰め寄ろうとするのを私が肩に手を置いて止める。

 

「確かに、私は清隆くんの過去について知ってることは殆どありません」

 

「へぇ、認めるんだ。もしかして開き直った?」

 

つまらなさそうに尋ねる天沢さんに、私は1つ深呼吸をしてから目を合わせた。

 

 

「隠し事があったとしても、それを私が知らず貴女が知っていても関係ありません。

 

 

 

───私は、清隆くんを愛しています。だからこそ、清隆くんが信頼して話してくれるのを、私は隣で支えながら寄り添って待ちます。それが、私の考える恋人の在り方ですから」

 

 

私の本心からの誓いと言える言葉。それを聞いた天沢さんは目を見開いた後、纏っていた雰囲気が完全に変わった。

 

「……なにそれ、結局秘密を話されてない自分を正当化してるだけじゃん。そんな椎名先輩如きに、綾小路先輩が話すわけないよ」

 

「っ、西野!椎名連れて逃げろっ!」

 

「は?石崎、あんた何言って───」

 

「いいから、早くっ!!」

 

天沢さんの雰囲気に、石崎くんは何かを感じたのか西野さんに声をかけて私達に逃げるように伝える。

 

「いやいや、普通に考えて逃がすわけないでしょ。頭悪いなぁ」

 

天沢さんが私目掛けて駆け出す。それを石崎くんが応戦する───

 

「はい、いっぽ~ん」

 

「ぐぁ!?」

 

───僅か数十秒後、石崎くんは一方的に殴られ背負い投げを受けて地面に倒されていた。

 

「ざっこ。さて、椎名先輩にはその思い上がった考えを改めてもらわないとね?」

 

まるで散歩をする気軽さで天沢さんは私に向かって歩いてくる。隣の西野さんは天沢さんの異質さと強さを見て動けないでいた。

 

「それじゃあ……?」

 

瞬間、天沢さんの歩みが止まる。いや、止まらされたと言うべきだろう。天沢さんの左足に、倒れた石崎くんがしがみついていた。

 

 

 

 

 

 

「い、かせねぇ……!」

 

椎名達を襲おうとしている天沢とか言う1年女子の足を掴みながら、俺───石崎大地は言葉を振り絞る。

 

 

『石崎、ちょっといいか?』

 

『おぉ、綾小路!どうした?』

 

『───ひより(・・・)()ことを(・・・)頼む(・・)。この無人島試験、体力の低い生徒は2週間サバイバルするだけでも厳しいからな』

 

『なんだそんなことか!安心しろよ、綾小路!元々それを考えて椎名とグループ組んだからな。椎名のことは任せろ!』

 

『……あぁ、助かる。ありがとう、石崎』

 

 

無人島試験が始まる直前、港に集まって椎名達と合流する前に綾小路と話したことを思い出す。身体を奮い立たせ、椎名達の所へ行かせまいと力を込め大声で叫ぶ。

 

「───ダチが、俺を信じて任せたんだ。なら、それに応えるのが男だろうがっ!」

 

地面に投げつけられた事で身体は土で汚れ、女の足にしがみ付く俺はさぞかしみっともない姿だろう。だが、それがなんだというのだ。ダチへの信頼を裏切ることに比べれば、安過ぎる。

 

「しつこいなぁ。そんなに女の子の足に触りたいの?」

 

「がっ、ぐぁ!?」

 

「石崎くん!」

 

「石崎っ……!」

 

女の蹴りが脇腹に当たり、声が漏れる。何度も蹴られるが、それでも決して掴んだ足を離さない。その様子に、女は初めて俺をしっかり認識したように目を向けてきた。

 

「へぇ、ちょっと見直したかも。男の意地ってやつかな?でも、流石にもう限界じゃない?」

 

女は笑顔でそう言って再び蹴りを入れるため足を振り上げるのを見て、衝撃に備えて身構え───

 

 

 

「───なんとも暑苦しい声が聞こえたと思ったらキミか、昭和の不良くん?」

 

 

 

───そんな、キザで自信に満ちた声が響いた。

 

 

「いやはや、何とも面白い場面に遭遇してしまったようだねぇ?」

 

「こ、高円寺……!?」

 

 

───唯我独尊の化身、高円寺六助が不敵な笑みを浮かべ俺達を見据えていた。

 

 

 

 





次回予告

宇都宮陸「虎城先輩はその強さで宝泉を打倒し、佐倉先輩は伊吹先輩達が守り桐山生徒会長が介入したことで事なきを得る」

椿桜子「しかし、時を同じくして椎名先輩は天沢に強襲され石崎先輩が応戦するも窮地に陥る」

宇都宮陸「そこに現れたのはDクラスの異端児、高円寺先輩だった。その頃、綾小路先輩はとある生徒と対峙していた」

椿桜子「次回『Episode 77 道を進む者達』」

宇都宮陸「……すまない、椿」

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